日本デビューのキッカケは『テラスハウス』ーータイの歌姫イン、日本語セルフカバーに「なんでこんなに可愛くなっちゃったの!?」

インタビュー
音楽
2022.12.27
イン・ワラントン 撮影=大橋祐希

イン・ワラントン 撮影=大橋祐希

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タイ本国で絶大な人気を誇る歌姫、イン・ワラントン。母国タイではシンセポップの女王と呼ばれ、発表する楽曲のYoutube総再生回数は2億8,000万回超え。収容人数10,000人クラスのバンコク・インパクトアリーナでコンサートを行えば即完売という、名実ともにタイを代表するシンガーだ。そんな彼女が、日本でのコンサート並びにEPアルバム「bloom.」リリース記念のために来日。11月15日(火)に渋谷WWWでコンサート『INK WARUNTORN Live in Tokyo2022』を開催した翌日、興奮冷めやらぬ中、インに話を聞いた。

ーー昨日のコンサートはいかがでしたか?

イン:日本では2018年に一度舞台に立ったことがありますが、バンドとしてライブをするのは、初めてでした。演奏も良かったと思うし、何よりお客さんの雰囲気がとても良かったです。日本のお客さんはすごくかわいかった。

ーーTwitterでも話題沸騰でした。

イン:本当ですか? 嬉しい。日本にこんなにファンがたくさんいるとは思いませんでした。コンサート前日にサイン会を実施したのですが、とてもかわいいカードを作ってくれる人もいて、本当に嬉しかったです。

イン・ワラントン

イン・ワラントン

ーーモダンドッグのポッドさんもサプライズで参加されましたね。驚きました。

イン:P'ポッド(P'は目上の人に使う敬称)は元々観光で来日していたのです。先日タイで彼と会い、同じ時期に来日することを知ったので、コンサートにお誘いしたら本当に観に来てくれました。そして「少し一緒に歌わない?」と聞いてみたら、「やろうぜ」と返事をしてくれました。彼の出演は、お客さんにとってもサプライズだったけれど、バンドのメンバーにとってもサプライズでした(笑)。曲の練習を全然してなかったし。まさにぶっつけ本番でセッションしました。コンサート後にP'ポッドから写真が送られてきたのだけれど、なんと、インのファン達と一緒に呑んでいたんですよ(笑)。 ファン達に梅酒を呑みに連れていかれたそうです。多分ファン達は、P’ポッドが渋谷で寂しそうに歩いているのを見かけたんだと思います(笑)。

ーーものすごいお話ですね(笑)。昨日のコンサートは撮影もOKだったと伺いました。日本のコンサートでは珍しいことで、ファンとの距離の近さに改めて感動しました。

イン:日本では撮影禁止が多いのですか? ほんと!? 初耳です(笑)。日本人の鑑賞スタイルは拍手もそうですが、スマホを持ち上げる時も自分の体を越えない高さですよね。後ろの人の邪魔にならないように心掛けていると聞いていました。なので、インのファングループに少しだけ「あまり他の観客に迷惑をかけないでね」と案内しました。でも昨日は雰囲気もとても良かったし、あまり制限しないほうが良いなと思ったんです。気楽に写真を撮れて楽しめるような。自分自身、人に制限をかけようとしないタイプなので、みんなに思い切り楽しんで欲しかったんですよね。みんなが自由に楽しんでくれたらとても幸せな時間を共有できるでしょう。インにとっては、みんなの幸せそうな姿を見ることが喜びなのです。手を上げたかったらいつでも上げて、写真を撮りたかったらいつでも撮って。(お菓子を首にかける)レイを持ってきてくれても全然OKです。彼らのしたいことなら何でも構いません。日本だとそれもあまりないでしょう? タイはお土産文化なので、ある意味とてもクリエイティブなんです。

イン・ワラントン

イン・ワラントン

ーー観客との一体感、素晴らしいです。日本とタイの違いは何か感じましたか?

イン:ものすごく感じます。6年前にソロデビューしましたが、当時はあまり知られていなかった。でも今では多くの人が曲を聴いてくれて、インパクトアリーナでコンサートを開催するまでになりました。日本に来て感じたのは、アーティストになり始めた頃に戻ったような懐かしい感覚です。新たな物事を最初からスタートできる喜びですね。新しい人と知り合い、新たな活動が始まる感じ。日本とタイでは、文化も鑑賞の仕方も言葉も違うけれど、ファンは同じくかわいいです。

ーー6年にわたる音楽キャリアの中で、いつ頃、シンセポップに移行しようと思われたのですか?

イン:大学ではクラッシックを勉強していました。様々なジャンルの音楽を聴いて学んでいました。ある日、曲を作る機会が訪れたんです。タイの音楽マーケットにふさわしいスタイルで、自分の好きなものが作れるチャンスが。日本のシティポップを聴くのが好きだったので色々実験して、最終的にシンセポップにたどり着きました。本当にイケていて、これが正解だと思えました。

イン・ワラントン

イン・ワラントン

ーーTHREE1989とのコラボはどのようなキッカケで始まったのですか?

イン:NETFLIXの『テラスハウス』という番組に、THREE1989のボーカルを務めるshoheyさんが出演していたのです。曲を作ったり歌ったりしていて、その楽曲が素晴らしくて感動しました。それからTHREE1989の音源を聴き、ライブDVDを観て、SNSのアカウントをフォローしていました。ある日スタッフから、「どこかコンサートをしたい場所はある?」と聞かれ、「日本でやりたい」と話しました。大好きなTHREE1989とコラボをして一緒にコンサートをしてみようと思ったのです。それで生まれたのが「Last Train」です。

ーーコラボ曲「Last Train」も収録されているEP「bloom.」では、全曲日本語で歌うことに挑戦されています。

イン:はい。このEPは3年前に「Bliss」というEPをリリースした直後から制作を始めました。スタッフ達と新しい目標をたてようと努力していた時に、全曲日本語で歌ってみようと思いついたんです。キッカケは代々木公園で開催された『タイ・フェスティバル2018』で歌ったことです。あの時、少しですが、日本人にも伝わるように日本語に訳して歌ってみたら、「かわいい! なんで自分の曲がこんなにかわいくなったの!?」と自分で驚いちゃって。それで自分の曲を全曲日本語にして歌ってみたいと思いました。THREE1989とコラボする機会にも恵まれ、ワクワクしていました。MV撮影やコンサートも3年前から企画していましたが、結局コロナの影響ですべて一旦中止になりました。あの時は怖かった。このままだと日本でのコンサートができなくなるんじゃないか、次のステップにも進めなくなるんじゃないかと恐れていました。でもこれで終わりじゃない。必ずまた日本で歌える日が来る、曲を届けることができると信じ、相応しいチャンスを待っていました。3年かかったけれど、皆さんに届けることができて本当に良かったです。

ーーそんなドラマがあったのですね。驚きました。インさんの想いに感動しています。

イン:そういえば『タイ・フェスティバル』に参加した後、神楽坂にある神楽音という小さなライブハウスで歌ったことがあるんですよ。その時の心地良かった想いがずっと残っていたんです。

イン・ワラントン

イン・ワラントン

ーーインさんはビルキンやモダンドッグなど、様々なアーティストとコラボされていますが、今後一緒にコラボしてみたいアーティストはいますか?

イン:コラボに関しては、色々な機会をいただいています。新たな人と仕事ができるのは、自分にとっても素晴らしい経験になります。例えばP'ポッドとはじめて仕事をした時、良いエネルギーを与えてくれました。よく覚えています。ビルキンもその一人です。色んな方と働けば良い勉強になり良い経験になるので、タイのアーティストでも日本のアーティストでも機会をいただければ全力で参加します。是非連絡して下さい(笑)!

ーー今後のプランは何かありますか?

イン:日本でのコンサートを皮切りに、来年は色々な国で演奏したいと思っています。小さなワールドツアーですね。また新アルバムも出す予定です。

ーー楽しみにしています! 今回、もし時間があったらどんな場所に観光に行きたいですか?

イン:先日、昔行った事のあるお店に行きました。懐かしい味を食べたかったんです。スタッフも喜んでくれました。行きたいところはいっぱいあるけれど、今回は観光する時間があまりなくて残念です。でも東京ディズニーランドには行きます! 久しぶりに行けるからとても楽しみです。 実はインと家族は、毎年来日していました。中学生の時からほぼ毎年です。機会があったら家族全員でまた来ますね。 

イン・ワラントン

イン・ワラントン

ーーそれでは最後に、日本のファンに一言!

イン:日本のファンの皆さんサワッディーカー。正直にいうと、こんなに日本のファンができると思っていなかったんです。前回来た時に誰にも知られていなくて、自己紹介に来た感じで終わってしまったので。だから、こんなにインを愛してくれるファンがいて本当に嬉しかったです。サイン会でも多くの日本人のファンが並んで待ってくれていましたし、昨日のコンサートも、日本人のファンが喜んでくれていました。コンサートでは、前回観に来てくれた人達が戻ってきてくれたのもはっきり見えました。本当に想像以上のファンの方にインを知ってもらえたんだなと、感動しています。インに機会を与えてくれて、コンサートにも足を運んでくれたこと、ものすごく感謝しています。機会があったら、また会いましょうー!

コンサート翌日であったにも関わらず、疲れも見せず、笑顔を携え、多くの言葉を紡いでくれたイン。彼女の柔らかくしなやかな歌声は国境を越え、EP「bloom.」のタイトルそのままに、世界各地で花を咲かせるだろう。

イン・ワラントン

イン・ワラントン

取材・文=渋谷のりこ 撮影=大橋祐希

リリース情報

配信シングル「Last Train feat.THREE1989」
タイ語版 YouTube : BoxxMusic ( https://youtu.be/_NPF8DKkiIk )
日本語版 YouTube : THREE1989( https://youtu.be/mPeGWWLlgVI )
配信リンク:https://lnk.to/LastTrain

ライブ情報

ライブ『INK WARUNTORN Live in Tokyo2022』
出演:INK WARUNTORN
Guest : THREE1989
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