カネヨリマサル メジャーデビューを目前に控えた今、何を想う “今を歌う”ことを大事にしてきたソングライター・ちとせみな(Vo/Gt)インタビュー

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音楽
2023.1.25

昔の恋人と会いたいなんてもう全く思わないけど、何かのきっかけでこびりついていた気持ちをふと思い出しちゃうことは未だにある。

――“今を歌う”ことにこだわり続けてきたということは、昔書いた曲と最近書いた曲を比べて、ご自身の変化を感じることもあるのでは?

「26」や「息をしているよ」を書いた頃は悲しみを晴らすのに必死だったんですけど、最近は「二人」や「スーパームーン」、「さくら色」のように悲しさを主軸にしていない曲も作れるようになりました。悲しさ以外の感情も自分にとっての“今”やから、それを音楽にするのもいいなと思えるようになって。さっきも話したように、昔は“こうしないと生きていけない”という切実さがあったんですけど、今は自分たちの音楽を聴いてくれる人や支えてくれる人がいるので、いろいろな想いを音楽にする余裕ができたというか、やってみたいという好奇心も湧いていて。心がやわらかくなってきたんやろなと思います。

 

――個人的には「息をしているよ」と「ゲームオーバー」で“いつか”というワードが共通して出てくるのに、テンションが違うのが気になりました。「息をしているよ」では《いつか近道が出来るようになったり》と歌いつつ《戻れないのに》という言葉を付け加えているから、過去の後悔をやり直すことはできないという諦めが少し感じられる。「ゲームオーバー」では《いつかをただ待っていたくない/新しい日を生きていく》と、つまり今この瞬間から変わっていこうと歌っているから、ポジティブなテンションが感じられる。「息をしているよ」は2018年頃に書いた曲で、「ゲームオーバー」は最近書いた曲とのことでしたが、ちとせさんの心境が変化していったのか、それとも現在進行形で両方の気持ちがあるのか、どちらの方が近いですか?

陰と陽みたいな感じで、両方ともあるのが今の自分ですね。「ゲームオーバー」では“こう思いたい、こう生きたい”という自分のモットーを書いたんですけど、心がぺっちゃんこになった時は「息をしているよ」みたいな思想に戻っちゃいます。

――「背中」で歌っているように、《大人になってしまっても強くなれる訳じゃないらしいね》という実感があると。

そうですね。「ゲームオーバー」のような視点を取り入れたいと思えるようになったのは成長やと思うし、シャキッと背筋を伸ばして、周りに囚われずに生きたいと思うんですけど、そうやって生きていても、季節が変わったり、気温が変わったり、何かの音楽を聴いて思い出しちゃったりすることもあるじゃないですか。確かに新しい自分になっているし、昔の恋人と会いたいなんてもう全く思わないけど、何かのきっかけでこびりついていた気持ちをふと思い出しちゃうことは未だにあって。大人になっても全部を跳ね除けられる強い心は持てていないし、根本的な悲しさはやっぱり拭えないけど、日々を生きることでその悲しさを噛み砕いて、ちょっとずつ減らしていくことが今の正解なんやろなと思います。

これから自分がどんな曲を作るのかも楽しみだからこそ、鈍感でいるんじゃなくて、いつまでも心をとんがらせて、アンテナバシバシで生きていきたい。

――今回のアルバムを聴いていると、“私のための歌である”という前提がありつつも“君に贈る歌でもある”と伝えてくれているように感じたんですが、ここまでのお話を聞いて、その想いがさらに強くなりました。特に「BOOK COVER」の“君”は、当時の恋人とも、後悔を抱えていた過去のちとせさん自身とも、離れた場所で同じ悲しみを抱えているリスナーとも解釈できるように感じたのですが、この曲の成り立ちを伺えますか?

この曲は当時付き合っていた恋人との関係が上手くいかなくなった時……もっと言うと、気持ちが離れていってしまっているのをキャッチした時に書いた曲で、伝えたかったけど伝えられなかった自分の気持ちを歌詞に書いているんです。“それなら恋人に直接言えばいいのに”って思われるかもしれないし、あの時ちゃんと話していたら上手くいったのかもしれないけど、でも、人と人ってそんな簡単にできていなかったりもするじゃないですか。だからこの曲では自分の思っていることをさらけ出しているし、当時は“君”=当時の恋人のつもりで書いていました。だけど今歌詞を俯瞰すると、本当におっしゃる通りで、聴いてくれている人も含め、自分の周りにおる人全員にも当てはまるような歌詞やなと私も思っていたんですよね。

――ちとせさんの中でも曲の捉え方が変わっていったんですね。

はい。自分のスタンスとして、“どれだけ元気に振る舞っている人でも、みんな悲しさを持っている”ということを忘れずにいたいんですよ。そういう前提で人に接することを心がけているし、そうできる自分でいたいなとずっと思っていて。なので、“心が離れていきそうな恋人に向けて”というところから始まった曲だけど、今は聴いてくれている全ての人に対して、この曲で歌っていることを思っています。

 

――初のフルアルバムを完成させた今、どんな手応えを感じていますか?

全曲リード曲にしたいくらいお気に入りですね。私たちが今まで頑張ってきたこと、思ってきたこと、信じてきたことがこのアルバムに詰まっているので、作れてよかったなと思っています。自分たちの信じてきた音楽が形になるのってめっちゃ嬉しいことなんですけど、ただ、バンドをやればやるほど、“積み上げてきたものを越えていきたい”という気持ちが強くなっていくんですよ。大切なアルバムになったけど、今後作る曲でちゃんと更新していきたいという気持ちもあります。

――ちとせさんの心の変化や成長が表れているアルバムであると同時に、“想い合っていたはずの人たちの心がやがて離れていってしまう”という恋の終わりを描いたアルバムでもあると思います。今のちとせさんにとって、人の心はやがて変化していくという必然は、悲しいことでしょうか。それとも、面白いことでしょうか。はたまた、恐怖でしょうか。

昔は恐怖が強かったので、離れる=悪だと思っていたんですけど、年齢を重ねる中で自分の軸もしっかりしてきたからなのか、今は離れることの正しさも理解できます。いろいろな形の答えを純粋に受け止められるようになってきていますね。今しか歌えない歌を書き続けているからこそ、何年か後に曲を聴いた時に面白さを感じることもあると思っていて。このアルバムの曲を聴いて“あ、こんなふうに思ってたんだな”と懐かしむ日がいつか来るのかと思うとめっちゃ楽しみやなと思いますし、これから自分がどんな曲を作るのかも楽しみですね。だからこそ、鈍感でいるんじゃなくて、いつまでも心をとんがらせて、アンテナバシバシで生きていきたいなと思ってます。

――最後に、3月から始まる『1st Full Album リリースツアー2023"いまを生きるツアー"』への意気込みを聞かせてください。

今までのカネヨリマサルがしっかり詰まっている、自信満々のアルバムができたので、この曲たちをちゃんと生で届ける機会をとれるのがすごく嬉しいです。私たちが育ってきた場所で、原点でもあるライブハウスで、みんなに自分たちの音楽を届けるということは、私たちの一つの夢の形でもあるので、ぜひ、ライブでも『わたしのノクターン』を受け取ってほしいなと思います。


取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=大橋祐希

 

リリース情報

major 1st full album『わたしのノクターン』
2023年1月25日(水) 発売
■初回限定盤A(CD+Blu-ray): VIZL-2143 / 5,390円(税込)
■初回限定盤B(CD+DVD): VIZL-2144 / 4,730円(税込)
■通常盤(CD): VICL-65776 / 2,750円(税込)
☆ビクターオンラインストア限定商品
■<初回限定盤A+わたしのノクタオル+わたしのノクファイル(サイン入り)> 6,890円(税込)
■<初回限定盤B+わたしのノクタオル+わたしのノクファイル(サイン入り)> 6,230円(税込)

【CD収録楽曲】
01. 息をしているよ
02. 二人(JR西日本 #青春まきもどし旅 タイアップソング)
03. さくら色(ヤマダデンキ【新生活キャンペーン「ヤマダならまるっと揃う」篇】CMソング)
04. ゲームオーバー
05. I was
06. ピアノのうた
07. 今年はもう君はいない
08. スーパームーン
09. 背中(TOKYO FM 「Skyrocket Company」1月テーマ)
10. 26
11. BOOK COVER

【Blu-ray / DVD 収録内容】
カネヨリマサル初のワンマンライブ
「SAVE YOUR YOUTH」(2022.5.29 at 梅⽥CLUB QUATTRO)を80分超で収録!


「26」
iTunes、レコチョク他主要配信サイト、及びApple Music、Spotify、LINE MUSIC、AWA、dヒッツ他主要音楽ストリーミングサービスにて配信中
https://dto30.lnk.to/kaneyorimasaru26

ライブ情報

カネヨリマサル アルバムリリースパーティ 「あの日見た、おんなじ月を今」
1月29日(日) 心斎橋 JANUS w.) TETORA
OPEN 17:00 / START 18:00
※SOLD OUT!!

 
2月4日(土) 代官山 UNIT w.) the shes gone
OPEN 17:00 / START 18:00
※SOLD OUT!!

カネヨリマサル 1st Full Album リリースツアー 2023 いまを生きるツアー
3月31日(金) 北海道 Bessie Hall 開場 18:00 / 開演 18:30
4月8日(土) 仙台 enn2nd 開場 17:30 / 開演 18:00
4月15日(土) 新潟 CLUB RIVERST 開場 17:30 / 開演 18:00
4月16日(日) 金沢 GOLDCREEK 開場 17:30 / 開演 18:00
4月21日(金) 高松 DIME 開場 18:00 / 開演 18:30
4月23日(日) MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎 開場 17:30 / 開演 18:00
4月30日(日) 恵比寿 LIQUIDROOM(ONE MAN) 開場 17:00 / 開演 18:00
5月5日(金祝) 名古屋 CLUB QUATTRO(ONE MAN) 開場 17:00 / 開演 18:00
5月12日(金) 京都 MUSE 開場 18:00 / 開演 18:30
5月19日(金) 福岡 LIVEHOUSE CB 開場 18:00 / 開演 18:30
5月20日(土) 広島Live Space Reed 開場 18:00 / 開演 18:30
6月25日(日) 心斎橋 BIGCAT(ONE MAN) 開場 17:00 / 開演 18:00

*東名阪公演以外は対バンあり(詳細後報)
:スタンディング(整理番号付き) 前売り¥3,900-(税込み)
申し込み詳細はHPまで!

イベント情報

<インストアイベント>
カネヨリマサル 1st full album「わたしのノクターン」発売記念 インストアイベント
ミニライブ & サイン会

*タワーレコードNU茶屋町店
日時:2023年1月28日(土) 
場所:タワーレコード梅田NU茶屋町店イベントスペース
集合時間:13:30
開演時間:14:00
内容:ミニライブ&サイン会

*タワーレコード渋谷店
日時:2023年2月5日(日)
集合場所:タワーレコード渋谷店5Fイベントスペース
集合時間:15:30
開演時間:16:00

*タワーレコード名古屋パルコ店 イベントスペース
日時:2023年2月11日(土祝) 
場所:タワーレコード名古屋パルコ店イベントスペース
集合時間:15:30
開演時間:16:00

参加方法 / 注意事項は それぞれ以下をご確認ください。
1/28:タワーレコード梅田NU茶屋町
https://www.jvcmusic.co.jp/-/News/A026739/3.html
2/5:タワーレコード渋谷店
https://www.jvcmusic.co.jp/-/News/A026739/4.html
2/11:タワーレコード名古屋パルコ店
https://www.jvcmusic.co.jp/-/News/A026739/5.html
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