主演・山下美月、舞台『成瀬は天下を取りにいく』で芽生えた思い――「成瀬あかり役を誰にも譲りたくない」
山下美月 撮影=ハヤシマコ
2024年『本屋大賞』を受賞した宮島未奈のベストセラー小説初の舞台化となる『成瀬は天下を取りにいく』が東京・サンシャイン劇場での上演を終え、 7月16日(木)~26日(日)まで京都・南座、7月28日(火)・29日(水)と滋賀・大津市民会館 大ホールにて上演される。同作は、中学2年生の成瀬あかりが主人公。閉店を控えた百貨店・西武大津店に通ってテレビ中継への映り込みを狙ったり、『M-1グランプリ』やかるた選手権大会に挑戦したりと、さまざまな“野望”に突き進む姿を描く。圧倒的な存在感の成瀬を演じるのは、NHK連続テレビ小説『舞い上がれ!』(2022年~23年/NHK総合)、ドラマ『Eye Love You』(2024年/TBS)、映画『愚か者の身分』(2025年)などで活躍する山下美月。今回はそんな山下に、舞台への思いや成瀬役への向き合い方について話を聞いた。
「この役に出会えて良かった」と感じる瞬間が何度もあります
山下美月
――山下さんにとって舞台出演は2018年『ザンビ』以来となります。どのような心構えで久しぶりの舞台に臨まれますか。
プレッシャーをたくさん感じていて、舞台に立つこと自体に「自信がある」とは言える立場ではありません。ただ、原作を読んで主人公・成瀬あかりの格好良さにすごく惚れてしまったので、「この作品だったら舞台に挑戦したい」という気持ちになりました。
――久しぶりの舞台出演の緊張感を、「成瀬あかり役を逃したくない」という気持ちが上回った感じですか。
確かに「成瀬役をほかの俳優さんに譲りたくない」という気持ちが一瞬で芽生えました。みんなが憧れるような存在感のある主人公を自分自身ができるのかな、という気持ちもありましたが、それでもやる気満々でお話をお受けしました。
山下美月
――「ほかの俳優さんにこの役を譲りたくない」という言葉に、すべてが集約されている気がします。
「この役を演じられたら、とても楽しいだろうな」と感じました。自分以外の俳優さんが成瀬として舞台に立っている姿を見ると、きっと悔しかったはず。難しい役ではありますが、自分にとっても良い挑戦になると思いました。
――成瀬役の難しさとはどういうところですか。
お芝居をするにあたり、自分が持ち合わせていないものをそのキャラクターが持っていて、それを作り上げていくのは私にとってもっとも難しい作業なんです。特に成瀬には人間的なおもしろさ、力強さ、生命力のようなものが備わっています。「これほどスター性を持った人物はなかなかいないぞ」って。難しいけど、演じがいがあるだろうと思いました。実際に稽古をしていて、「この役に出会えて良かった」と感じる瞬間が何度もあります。
「こういう『成瀬』の世界観があるのか」と感じてほしい
山下美月
――稽古を通して成瀬像をどのように固めていっていますか。
演出・脚本のG2さんからは「ちゃんと成瀬になれているから大丈夫ですよ」とおっしゃっていただいているので、役作りの面では大きな不安はありません。むしろ「こんなに自分でいろいろ考えて、楽しくやらせてもらっていいのかな」と考えてしまうくらいなんです。G2さんから唯一アドバイスをいただいたのが、声のボリューム感。ほかのキャラクターよりも目立つボリューム感の方が、成瀬の力強さが出るんじゃないかという話になりました。
――声がポイントの一つなのですね。
ただただ声が大きいということではなく、人の心にちゃんと届く声を出すことを意識しています。この作品に入る前から舞台用のボイトレにも通っていたのですが、それでも成瀬は私の地声より若干低い声を意識しているので、そうしたお芝居を毎日2公演おこなう面での負担はすごく大きい。その点をどう乗り切るかが今の自分の課題です。
山下美月
――ベストセラーでファンも非常に多い原作ですが、これまで“実写化”はされてきませんでした。生身の役者が演じるのは今回の舞台が初めて。“リアル”な成瀬像を提示・表現するプレッシャーも相当ありそうですね。
その点の重圧はすごくあります。でもそれは座長として背負わなければならない責任だと考えています。小説の読者のみなさんがそれぞれイメージした成瀬あかりではなかったとしても、「こういう『成瀬』の世界観があるのか」と感じていただければ、一つの成功だと思っています。舞台として楽しんでいただきたいです。
山下美月
――ちなみに成瀬は、周囲の目や評価を気にせず自分の道を進んでいきます。こういう生き方はなかなかできないですよね。
私自身は学生の頃からこのお仕事をやらせていただいているので、「周囲の評価が自分のすべて」という感覚がどこかにあります。自分はそうした状況に慣れたところもあります。ただ、周囲の目を気にするのは決して悪いことではありません。作品のなかには呉間言実、篠原かれんなど周囲の目を気にしてしまう悩みを持つキャラクターも出てきます。成瀬はもちろん、呉間言実、篠原かれんなどいろんなキャラクターに感情移入できるはずです。
――成瀬は、やりたいことがあればすぐに行動へ移すタイプ。山下さんはそのような面は持ち合わせていますか。
私は旅行が好きで、本能的に「明日、旅行に行こう」みたいな感じで動きます。『成瀬』のエピソードのなかにも、誰にも行き先を知らせず知らない場所に行って、「心配をかけてすまなかった」と帰って来るシーンがありますが、私も似たような経験をしています。前もって旅行の計画を立てることは好きなんですけど、旅行当日までの時間が苦手なんです。だから急に行くことにして、寝ずに計画を立てて次の日の朝には飛行機で発ちます。そういうところは成瀬っぽいかもしれません。
山下美月
――7月22日(水)の南座での公演はイープラスの貸切公演となります。作品を楽しみにしていらっしゃる方も多いと思います。
私にとって初めての南座公演です。一人で京都へ旅行をするとき、南座の前をよく通っていました。まさかそんな舞台に立たせていただけるなんて、びっくりしています。ぜひ『成瀬』の世界を南座で堪能してください。私も、舞台の貸切公演はあまり経験していないので、どんな雰囲気になるのか楽しみです。
イープラスポーズを披露する山下美月
取材・文=田辺ユウキ 撮影=ハヤシマコ
公演情報
【京都公演】
日程・会場:2026年7月16日(木)~26日(日)南座
観劇料(税込):S席(1、2階) 13,500円 / A席(3階) 8,500円
<イープラス貸切公演>
日程:2026年7月22(水)
会場:京都・南座(京都府)
開演:13:00
\独自席種・独自価格・手数料0円/
詳細・お申込は【こちら】から
【滋賀公演】完売御礼
日程・会場:2026年7月28日(火)・29日(水)大津市民会館 大ホール
観劇料(税込):S席 13,500円 / A席 8,500円
脚本・演出:G2
出演:
山下美月
藤野涼子
ISSEI
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