三宅健「こんなぶっ飛んだ役は初めて」ーー劇団☆新感線『ミナト町純情オセロ』で関西弁にも初挑戦、大阪で演出のいのうえひでのりと意気込みを語る
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左からいのうえひでのり、三宅健 撮影=ハヤシマコ
3月10日(金)から東京と大阪にて上演される、2023年劇団☆新感線43周年興行・春公演 Shinkansen faces Shakespeare『ミナト町純情オセロ~月がとっても慕情篇~』の合同取材が、大阪市内で開催された。当日は、主演を務める三宅健、そして演出のいのうえひでのりが出席。関西が舞台となる本作の見どころや公演に向けての意気込みが語られた。
いのうえひでのり
12年ぶりの再演、いのうえ「シェイクスピアのおもしろさを伝えたい」
『ミナト町純情オセロ~月がとっても慕情篇~』は、2011年に劇団☆新感線としては異色であった『港町純情オセロ』の再演となる。シェイクスピアの四大悲劇『オセロー』を劇作家の青木豪が大胆に翻案、書き下ろして話題となった。同作では物語の舞台を戦前〜戦中から、戦後のアメリカ文化が流れ込んできたポップな時代に改めて書き直され、当時を彷彿させる歌謡曲の要素を取り込みながら装いを新たに上演される。
『オセロー』は、部下イアーゴの計略によって破滅へと突き動かされる軍人オセロと、妻デズデモーナを描いた悲劇である。これが1950年代の日本のヤクザの世界に置きかえた物語となり、三宅はブラジルの血を引いた若頭筆頭、亜牟蘭オセロを、その妻のモナを松井玲奈、ふたりを翻弄する先代組長の未亡人・アイ子を劇団の看板女優である、高田聖子が演じる。
いのうえひでのり
新たに書き直された物語について、いのうえは「12年前の作品は、橋本じゅんと田中哲司の男ふたりがメインで、イアーゴがオセロを騙していく話になっていました。それが今回は、女性の高田聖子をイアーゴのポジションにおいています。ここが最大の見せ場になっている」と語る。
また、シェイクスピアの作品は台詞回しや登場人物の名前、時代背景が複雑なため難しいイメージがあり、ハードルが高くなりがちであることに触れ、「本作のように翻案したことで、お芝居に慣れてない人にも親切な内容になっていると思います。なのでシェイクスピアのおもしろさに、いろいろな人に触れてもらえる機会にもなってほしい。会話劇が中心で、舞台が関西で登場人物も関西弁だからこそ笑えて泣ける雰囲気になっている」と想いを伝える。
三宅の起用については、「女親分のアイ子が、可愛さがあいまってオセロに裏切られたことが憎悪に変わり罠をかけていく。まっすぐがゆえにコロコロと騙されていくので、今回はまっすぐな男がいいなと思い、三宅くんにお願いしました」と明かした。
三宅健「思いっきり楽しみたい」初の新感線の舞台で、関西弁も猛勉強
三宅健
劇団☆新感線に初参加となる三宅は、今回のオファーについて「ずっと新感線の公演を観てきましたし、いのうえさんも僕の芝居を観にきてくれていて、いつかご一緒したいと思っていたので率直にうれしかったです」と喜びを伝える。
また「劇場でもよくお会いしていたのですが、道端で散歩しているメタルのTシャツを着た人がいるなと思ったら、いのうえさんだったということがよくありまして(笑)。散歩しているところしか見たことがなかったので、今回初めて演出をしている姿を見ることになりました」と三宅。「噂に聞いていた以上に、手取り足取り演じながら演出されるのですが、ここまでするのかと。それだけ、いのうえさんの中にキャラクターのビジョンがしっかりと見えているところがおもしろい。そのビジョンを指針に、役者としてどう構築していくのか、一緒に作りあげていけるのが楽しみでもあります」と期待を寄せていた。
自身の役どころについては、「純粋でまっすぐな人」と紹介しながら、共通点を聞かれると「僕自身もまっすぐなタイプなので、純粋だから通じるところはあるかも。自分で言うのもなんですが(笑)」と会場を和ませ、「まっすぐすぎるが故に暴走も過ぎる、ぶっとんだキャラクター」だと紹介し、「そういう役はやったことがなかったので、この物語だからこそ発せられるセリフを楽しみながら思いっきりやりたい」と力強く意気込んだ。
ただ、オファーを受けた当初は不安もあったそうで「『オセロー』は(蜷川幸雄の演出で)吉田鋼太郎さんの屈強なイメージがあるので、僕で務まるのかと最初は思いました。だけど「今回は、イアーゴも女性になっているし設定も変わっているので大丈夫だよ」と、いのうえさんが言ってくれて。舞台も関西ですし、自分なりのオセロで新しい作品として演じられたら」と背中を押されたエピソードも。
三宅健
さらに初の関西弁での演技に不安もあるとし、「本場の大阪公演に向けて体に馴染ませるために、いろんな方にアドバイスをいただきながら関西弁を学んでいます。マスターするために、関西の方に電話をしまくっています。こないだもトミーズ雅さんとか、(笑福亭)鶴瓶さんに電話しました(笑)」と意外な学習方法が発覚した。
最後にいのうえは、「初演が3月11日の震災の直後だったので、いつもは千秋楽で煎餅を配るところを、宮城県の工場を支援するために笹かまを配ったのですね。そんな記憶が蘇る、思い入れも強い作品です。今回は装いも新たに、高度成長期で夢がいっぱいあって、石原裕次郎さんや浅丘ルリ子さん、吉永小百合さんらが出演されていた、純愛やロマンティックな映画やドラマにかぶせているところもあるので、あの元気だった頃の日本に対するラブレターを送るような思いもしっかりと伝えたい」と意気込んだ。
2023年劇団☆新感線43周年興行・春公演 Shinkansen faces Shakespeare『ミナト町純情オセロ~月がとっても慕情篇~』は、3月10日(金)~3月28日(火)に東京建物 Brillia HALLにて、4月13日(土)~5月1日(月) に大阪のCOOL JAPAN PARK OSAKA WWホールにて上演される。
文=大西健斗 撮影=ハヤシマコ
公演情報
Shinkansen faces Shakespeare『ミナト町純情オセロ~月がとっても慕情篇~』
【原作】ウィリアム・シェイクスピア
(松岡和子翻訳版『オセロー』ちくま文庫より)
【作】青木 豪
【演出】いのうえひでのり
【出演】三宅 健/松井玲奈 粟根まこと 寺西拓人/高田聖子 他
【企画】ヴィレッヂ/劇団☆新感線
【製作】ヴィレッヂ/東京グローブ座
【公式サイト】http://www.vi-shinkansen.co.jp/othello2023
【東京公演】
日程:2023年3月10日(金)~3月28日(火)
会場:東京建物 Brillia HALL
料金:S席14,000円/A席11,000円/ヤング2,200円(全席指定・税込)
日程:2023年4月13日(土)~5月1日(月)
会場:COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール