「裏『ラ・ラ・ランド』かも?」[Alexandros]川上洋平、デイミアン・チャゼルの賛否両論作『バビロン』を語る【映画連載:ポップコーン、バター多めで PART2】
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『バビロン』より
■輝き続けるのは大変なことだなと改めて思いました
──確かに。『バビロン』にはレッチリのフリーも出てましたね。
フリー、良い味出してましたね。今回ほぼ予備知識なく観たので、出てることにまずびっくりしました。これまでも『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の2とかに出てるけど、監督がちょっとした役で起用したくなる感じ、わかるなあと。俺このポジション目指そうかな(笑)。あと、トビー・マグワイアが出てるってことも知らなくて、最後ヤベえ役で出てきたな、と。
──あの出方良かったですよね。
あとマニー役のディエゴ・カルバさんは特に良かったですね。まだ新人なのかな? メキシコシティを拠点に活動してて、今回がアメリカ映画は初みたいですけど。
──そうですよね。あと、マーゴット・ロビーも良かったですね。
完璧な配役でしたね。得意とするやつ。
──確かに。ハーレイ・クインとかがあった上でっていう。
『バビロン』の脚本を読んだ時に「この役は絶対に私がやる」って言ったみたいですけど、納得だよね。俳優さんっていろんな役ができるわけですけど、その中でも得意とする役ってやっぱりあるんだなって。自分も2回ドラマに出させてもらって、なんとなくそういうことがわかってきた感覚があって。『ラ・ラ・ランド』をリアルタイムで観た時は役者をやったことがなかったけど、今ちょうどドラマ(『夕暮れに、手をつなぐ』)が放送されているし、演じるということを経験した上で映画を観るとまた違う感想が出る(笑)。
──へえ!
ブラッド・ピットのジャック・コンラッド役もすごくはまり役だと思うし。ブラッド・ピットってもちろん今も大スターですけど、僕の世代からするとまさにスターに駆けあがっていった様を目の当たりにしたわけで。
──『セブン』や『12モンキーズ』の頃ですね。
そうそう。世代的にデイミアン・チャゼルも同じような感覚で見ていたと思うんですよ。そのブラッド・ピットが歳を重ねていって、アンジェリーナ・ジョリーとの離婚問題で苦しめられ、アルコール依存に苦しめられ、親権争いで苦しめられ……でもその中で『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』でアカデミー賞助演男優賞を取った。我々はスターのことをスクリーンの中だけじゃなくて外にも注目してて、彼らが上がっていくところ、落ちていくところ、そしてまた這い上がるところを見られる。ブラッド・ピットってそのどれもを味わっている人だと思うので、その彼がジャックを演じたのは大きいんじゃないかなと思います。
──なるほど。
「アカデミー賞における芸術性って何だろう?」って思うこともあって。例えばマーベルの映画や、ヒット作だけどいわゆるイケメン俳優が出てるような映画は作品賞を取らないわけじゃないですか。でも映画の興行ってそっちで成り立ってる部分もあるわけで。
──日本でいうとアニメ映画というか。
そうそう。ブラッド・ピットって最初はイケメン俳優として注目されたけど、そこに抗って『12モンキーズ』でクレイジーな役をやったりして方向転換したと思うんだけど、ずっとアカデミー賞は取れなくて。でも奮闘してきて、50代になってようやく取れた。かっこいいよね。あと、レオナルド・ディカプリオも何度もノミネートされるのに取れなくて「いじめか」って言われたりしながらも、ようやく『レヴェナント』で取って。別に賞が到達点ではないけど、僕としてはブラッド・ピットやレオナルド・ディカプリオみたいな人が取ると「本当のスターが取った」っていう風に思えて、すごく嬉しいんですよね。『バビロン』ですごく好きなシーンがあって。ジャックが雑誌にオワコンだって書かれたことに対して「どういうことだ」って言ってそれを書いた批評家に抗議をすると、「あなたが時代遅れになる理由? 理由なんてないのよ」って言われるんですけど、ぞっとしましたね(笑)。
──残酷なことに時間はどうやっても流れていくという。エンタメの性(さが)ですよね。
僕も2010年代にデビューしたのでひと昔前のバンドに成り下がろうと思えばいくらでも成り下がってしまえる。ジャックは彼なりの終着点を選んだわけですけど……でも俺はやっぱりくらいついていくぞって改めて思いましたね。でもジャックの気持ちもわかる。輝き続けるのは大変なことだなと改めて思いました。映画のチラシには「夢をつかむ覚悟はあるか」って書いてあって、映画を観る前は「なんでこんな華やかなビジュアルでこんなこと書くんだろう」って思ったんですけど、観た後じゃ全然捉え方が違ってきましたね。
『バビロン』より
■実際のブラッド・ピットはジャックとはむしろ真逆の方向に進んでいるっていうメッセージがあったのかも
──確かに。スポーツ選手だと試合の結果とかで突きつけられるんでしょうけど、役者の場合、興行成績とかはあるにせよ、時間の流れが突きつける部分は大きいですよね。
そうそう。でも、実際のブラッド・ピットは今が全盛期というぐらい大活躍してますよね。20代30代の時に『セブン』や『リバー・ランズ・スルー・イット』があって、そこから40代50代になって、今60代直前っていうタイミングでこのジャックを演じたのって、もしかしたら「実際のブラッド・ピットはジャックとはむしろ真逆の方向に進んでいるでしょ?」っていうメッセージがあったのかも。必ずしも時間の流れによってジャックみたいになるわけじゃないっていうか。だから絶妙な配役だなと思いました。
──役者としても認められ、プロデューサーとしても成功してますからね。
そうなんです。あと、これだけは言えるのは、やっぱり男前は強いんだなって思いました(笑)。
──その結論(笑)。でも確かにトム・クルーズとかもそうですもんね。
そうですよ。トム・クルーズもディカプリオもアイドル視されていた時代があったけど、未だにかっこいいし素晴らしい役者さんだなって。だって、普通の60歳の人の髪型見て真似しようってあまり思わないけど、『ブレット・トレイン』のブラッド・ピットのロン毛いいなって思いましたし(笑)。日本だと木村拓哉さんも本当にそういうところに君臨してるよね。
──木村さんも50代ですもんね。
昨日レイバンのショップに行ったんですけど、木村さんがかけてるモデル買いたくなりました(笑)。やっぱり木村さんって身に着けているものが欲しくなっちゃうんだよね。
──この前スタイリストさんが「木村拓哉さんは着てる服が売れる最後のスターだ」って言ってました。
本当そう思う。単純にかっこいいだけじゃなく言葉にならない魔法があるんだよね。それこそさっきの『バビロン』のセリフにも通じるかもしれないけど、時間が経つと理由もなく人は離れていくけど、だから好かれる理由もないんだろうなって。もうそういう星の下に生まれたという表現しかない(笑)。だから、『バビロン』を観て落ち込む人もいるかもしれない。でも、是非いろんな人に観てほしいですね。長いので観る前に絶対トイレに行ってほしいです。「3時間トイレ行かず観る覚悟はあるか」っていう(笑)。
取材・文=小松香里
※本連載や取り上げている作品についての感想等を是非spice_info@eplus.co.jp へお送りください。川上洋平さん共々お待ちしています!
上映情報
監督・脚本:デイミアン・チャゼル/出演:ブラッド・ピット、マーゴット・ロビー、ディエゴ・カルバ、ジーン・スマート、ジョヴァン・アデポ、リー・ジュン・リー、トビー・マグワイア、オリヴィア・ワイルド、キャサリン・ウォーターストン、サマラ・ウィービング
あらすじ:1920年代のハリウッドは、すべての夢が叶う場所。サイレント映画の大スター、ジャック(ブラッド・ピット)は毎晩開かれる映画業界の豪華なパーティの主役だ。会場では大スターを夢見る、新人女優ネリー(マーゴット・ロビー)と、映画製作を夢見る青年マニー(ディエゴ・カルバ)が、運命的な出会いを果たし、心を通わせる。恐れ知らずで奔放なネリーは、特別な輝きで周囲を魅了し、スターへの道を駆け上がっていく。マニーもまた、ジャックの助手として映画界での一歩を踏み出す。しかし時は、サイレント映画からトーキーへと移り変わる激動の時代。映画界の革命は、大きな波となり、それぞれの運命を巻き込んでいく。果たして3人の夢が迎える結末は…?
大ヒット上映中
©2023 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
アーティストプロフィール
ロックバンド[Alexandros]のボーカル・ギター担当。ほぼすべての楽曲の作詞・作曲を手がける。毎年映画を約130本以上鑑賞している。「My Blueberry Morning」や「Sleepless in Brooklyn」と、曲タイトル等に映画愛がちりばめられているのはファンの間では有名な話。
ツアー情報
5/17(水)・18(木) KT Zepp Yokohama
5/26(金) Zepp Sapporo
6/14(水)・15(木) Zepp Fukuoka
6/22(木)・23(金) Zepp Osaka Bayside
6/29(木)・30(金) Zepp Nagoya
全会場 OPEN 17:30 / START 18:30