The Birthday × Kroiの異色の対バン!大阪の新ライブハウス・GORILLA HALL OSAKAで『たとえばボクが踊ったら、#4.5』レポート
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『The Birthday × Kroi GORILLA HALL OSAKA KOKERAOTOSHI series たとえばボクが踊ったら、#4.5』
『The Birthday × Kroi GORILLA HALL OSAKA KOKERAOTOSHI series たとえばボクが踊ったら、#4.5』2023.2.24(FRI)大阪・GORILLA HALL OSAKA
2月24日(金)、大阪・GORILLA HALL OSAKAでThe BirthdayとKroiの対バンイベント『たとえばボクが踊ったら、#4.5』が開催された。本イベントは大阪・服部緑地公園で開催されてきた公園周遊型の野外フェスのシリーズのひとつだが、今回は1月に新たにオープンしたライブハウス・GORILLA HALL OSAKAのこけら落とし公演の一環として開催。
『たとえばボクが踊ったら、』(以下、『ボク踊』)といえば、いつもは野外の心地よい空間のなかで音が鳴り響いているが、この日の会場はライブハウス。会場は少し縦に長い1階フロアと、ステージを囲むようなコの字型の2階フロアからなる。しかも2階フロアからはのぞき込むようにステージが観られるという、他にはない造りになっていて、なんだか新鮮な気分だ。普段なら開場と同時にステージ前方へ駆け込む人が多いけれど、この日の観客は2階席にある広々としたバーエリアやソファ&テーブルエリアで開演まで思い思いの時間を過ごしていた。こののんびりとした雰囲気は、いつもの野外での『たとえばボクが踊ったら、』に通じるものを感じる。
そもそも、今回の対バンの組み合わせには驚いた人も多いはず。両者は『ボク踊』の常連バンドだが、過去のイベント内容を振り返っても、ロックにヒップホップ、R&Bにソウルにジャズと、ジャンルの壁を取っ払った組み合わせばかり。数ある日本のフェスのなかでも、これだけのラインナップがそろうのは他にはないだろう。『ボク踊』は関西のイベンター夢番地・大野氏が企画したもの(イベントの経緯や歴史、過去のレポートもぜひ https://spice.eplus.jp/articles/309041)で、今回の対バンも大野氏が提案したもの。ベテランと若手、ロックとミクスチャー、どんな化学反応が起こるのか……。開演時間が待ち遠しくて、観客はみなソワソワしているようにも見える。
開演前にはイベントの会場MCとしてお馴染みのFM802・DJの加藤真樹子氏が登壇。「気持ちよく過ごして、良い夜にしましょう」と言葉を掛け、開幕を宣言。(ちなみにイベントの略称「ボク踊」はこの日からSNSで発信されることに。前回までは「たと踊」だったとか。確かに「ボク踊」のほうが言いやすい!)
Kroi
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トップバッターのKroiは「Kroiちゃん、はじめます」とフランクな言葉を投げかけ、「Noob」からご機嫌なビートを打ち鳴らし、一気に観客の視線を集める。関将典(Ba)、千葉大樹(Key)、長谷部悠生(Gt)、益田英知(Dr)、それぞれの音色が緩急をつけながら次から次へと主張しまくる。対バン相手のThe Birthdayではなく、バンド内で互いに負けん気をぶつけ合うようなサウンドは上り調子になるしかなくってとにかく痛快だ。
Kroi
ファンクにソウル、ロックにヒップホップにR&B……。多様なジャンルを混ぜこんだ、いわゆるミクスチャーな音楽を鳴らす彼らだが、その軸にあるのは踊れるか否か。「Monster Play」ではゆるりとした心地よいサウンドと絶妙に耳に残るフックが観客を夢中にさせる。気付けばどっぷりとハマるドープなサウンド、赤×青のサイケデリックな照明が頭の中の意識をビンビンに尖らせていく。
Kroi
かと思えば、「Suck a Lemmon」では内田怜央(Gt.Vo)が変幻自在に鳴り変わっていくサウンドを絶妙なフロウで乗りこなしていく。情感のあるメロに肉厚なリズムが身体を纏い、なんともいえない開放感が身体を包み込んでいく。「Custard」ではファンキーなギターのリフ、性急なラップに高揚した観客から歓声が沸き起こる。気持ちよさをキープし続けるサウンドも素晴らしいけれど、内田のキャラ変しまくる歌唱もたまらなく楽しい。踊る場所というか、遊び場を提供し続けるような彼らのサウンドは時間が経つごとに興奮と笑顔が増していく。
Kroi
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「声があると、ライブのパフォーマンスも変わる。(歓声が上がるのは)嬉しい限り。光栄な夜でございます」、この日のライブが声出しOKだったこともあり、高まる歓声に喜びを隠せないメンバーたち。こけら落とし公演への祝いのメッセージを送りつつ、The Birthdayとの対バンについて「(The Birthdayは)生ける伝説。この2マンに恥じない夜に。バシバシ踊って、脳裏に焼き付けて帰ってください」とコメント。ジャンルレスな音を鳴らす彼らも元を辿ればロックキッズで、憧れの先輩の前でのステージに緊張も気合も高まっていたようだ。
Kroi
ライブ後半は「Mr. Foundation」「Flight」と、個性をぶつけ合うサウンドはそのままに溢れる音の洪水をぶつけていく5人。濃赤の照明の下でディープな音色を鳴らす「侵攻」から「夜明け」への流れも絶妙で、メンバー同士の音のせめぎ合いに負けじと、観客もみな思い思いに踊り騒ぐ。黙々とグルーヴを高めていた関がぐっと前に乗り出し、一層グルーヴが唸りをあげた「Juden」。ファンクネスなサウンドに乗り遅れないよう、手を掲げ音を浴びる観客たち。「徐々に大きなハコでライブができるようになってきた。The Birthday兄貴のように、変わらず自分たちのやりたい音が続けられれば。最後までブチブチに楽しんで!」、内田が声高らかに叫び、最終曲「Fire Brain」へ。メンバーが互いに向き合い、怒涛の音を鳴らし続け、全10曲の渾身のステージが終了した。
Kroi
The Birthday
The Birthday
おなじみのThe Crestsの「Sixteen Candles」がオープニングSEで流れるだけで、会場からはわっと大きな歓声が沸きたつ。もうこれで十分、The Birthdayへのスイッチが入ったことが伝わってくる。クハラカズユキ(Dr)が軽快にスティックを鳴らし、1曲目「青空」へ。晴れやかなタイトルに相反する、ソリッドでいてぐっと腹に刺さるリズム、感情を震わすツインリードに観客が掲げる拳がぐっと強くなる。<悲しみはもう捨てていいよ><お前の未来はきっと青空だって言ってやるよ>、リリックのひと言々が心に刺さって、初っ端から涙がこぼれてしまう。
The Birthday
フジイケンジ(G)のギターのカッティングがロマンチックで美しい「咆哮」。タイトルのままに吠えるチバユウスケ(Vo.Gt)の歌声は力強くもどこか悲し気で、クリアに響くリズムがその声をさらに際立たせていく。続く「スカイブルー」は、前曲と同じく昨年12月にリリースされた新作「月夜の残響 ep.」からの楽曲。フジイのギターリフが鮮やかで、チバのしゃがれというか、歪んだ声にたまらない多幸感を含ませていく。爽やかでポップなのに、ヒライハルキ(Ba)のグルーヴがしっかりと芯を捉えて離さないもんだから、観客もご機嫌になって揺れている。
The Birthday
最新曲を連発するかと思いきや、続いて披露したのは「カレンダーガール」。2008年に発表された1stミニアルバム『MOTEL RADIO SiXTY SiX』に収録されている初期の楽曲だ。盛大なハンドクラップが鳴るなか、ガレージロックサウンドでオーディエンスをとことん躍らせていく。新旧の楽曲を混ぜこみつつ、最新型のロックを鳴らす4人はやはり頼もしい。
The Birthday
クハラが新しいライブハウスの誕生を祝いつつも、観客がやんややんやと声を懸けるものだから、チバは面倒臭そうにサングラスを外してフロアにじろりと視線を送り「やんぞ、もう!」と、流れを変えて披露したのは「月光」だ。渋みを増すフジイのギター、グルーヴィに跳ねるヒライのベース、タイトに刺し込んでいくクハラのリズム。チバはハンドマイクを握りしめ、足元でリズムを刻みながらスポークンワードを放っていく。サビに突入する寸前、マイクを高く掲げて会場全体の空気を一瞬にしてピタリと止めるチバ。それを合図にフロアの興奮は最高潮となり、観客の目はもっともっと彼らの音を欲して貪欲な目をステージに向けていく。心をひりつかせる鬼才集団、それがThe Birthdayだ。
The Birthday
チバがブルースハープを鳴らし、メンバーの個性がさらに際立つ「Red Eye」では、殴りかかるように歌うチバに煽られ、そしてヒライの官能的なグルーヴに誘われ、全身で踊り明かす観客たち。この時点で6曲を披露したわけだが、すでに心が囚われた、嬉しい悲鳴にも似た歓声があちこちから聞こえてくる。
「不思議な画だな」、ぐるりと囲む2階フロアを見渡しポツリと話すチバ。全国各地、大小のライブハウスを巡ってきたライブバンドであっても、GORILLA HALL OSAKAのフロアのデザインは珍しく感じるようだ。フロアデザインだけでなく、天井高な会場は音響の響きも素晴らしく、轟音がよりクリアに耳に身体に響いてくるのもいい。
The Birthday
ステージ後半は再び新作「月夜の残響 ep.」から「トランペット」「LOVE ROCKETS」と続けて披露。前者は愛しさに満ちあふれたロックサウンドで、後者はここから何かが始まるような期待と興奮を煽るスリリングなナンバー。じりじりと迫りくるリズムに体を揺らし、音に塗れる感覚が楽しくて仕方がない。
The Birthday
ロックバラードにも似た、心の奥をぎゅっと締め付ける「ブラックバードカタルシス」で、観る者の感情を解き放っていく4人。ボーカル、ギター、ベースにドラム、個々の音の存在感はとにかく純粋で、ロックンロールが美しいと思える瞬間がそこにあった。そしてラストは「DISKO」のパンキッシュなサウンドで駆け抜け、本編が終了。アンコールでは「ギムレット」でフロアを愛しさで満たし、最後まで観客をめいっぱい躍らせてイベントは閉幕。
The Birthday
この日の『たとえばボクが踊ったら、』はライブハウス版だったが、すでに次回公演として2年ぶりの『たとえばボクが踊ったら、presents「Chillaxx」』の開催が7月2日(日)決定している。もちろん、会場はおなじみの服部緑地野外音楽堂だ(2年前の様子はこちら https://spice.eplus.jp/articles/290857)。気になる詳細は公式サイト・SNSをチェックしよう。
取材・文=黒田奈保子 写真=オフィシャル提供(ハヤシマコ)
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