Quubi、初のバンドセットツアー東京ファイナルに見た掴んだ自信と初見を一撃で仕留めるほどの攻撃力
Quubi 撮影=ヨリモリユウナ
『Quubi Take me now Tour 2023』 2023.02.24(fri) Spotify O-WEST
大阪発女性4人組アイドルグループQuubiが、東京Spotify O-WESTにて『Quubi Take me now Tour 2023』のツアーファイナル公演を行った。前回、東京でワンマンライブを行ったのは昨年6月のShibuya eggman。それから8か月後となる今回はO-WESTだ。着実にステップアップしているし、O-WESTという会場が決して大きく感じなかったのは、4人の成長の証にほかならない。
具体的にどう成長していたのか。これまでのQuubiはそれぞれの得意な分野がはっきりしていた。ざっくり分けると、歌の鈴猫りさ、ラップの藤宮紬、ダンスの川原みなみ、言葉の村上華花といった具合。これがはっきりわかるのは、例えば、この日6曲目に披露された「Pump It」だ。藤宮と川原のポップなラップパートからサビの鈴猫と村上へとバトンパスする展開。この連携の巧みさは気持ちがいいぐらいだ。しかし、そういった役割分担は今やいい意味で曖昧になってきている。
Quubi 撮影=ヨシモリユウナ
まず、全体的に歌のレベルが上がってきている。その上で、やはり鈴猫は頼りになる存在。ラップに関しても藤宮の一強状態に川原がグイグイ食い込んでくるようになった。川原に関しては、それに加えて村上ともにフロアを煽って全体を牽引する場面が増えているが、村上も自分の言葉に対する意識が高まっているのを節々に感じるし、ライブ全体をコントロールしようという姿勢が前に出ている。他のメンバーから刺激を受けながら、お互いに日々切磋琢磨しているのは想像に難くない。
今回は初のバンドセットツアーだったのだが、フロントに立つ4人とバンドとの連携は万全。ずっとこの体制で活動していたと言われても不思議に思わないぐらいだ。これは楽屋で事前にしっかりミーティングを行ったり、実際のパフォーマンス以外もおろそかにしていないことが大きい。ただバンドセットにしただけでいいライブになるわけではないのだ。今やQuubiはバンドセットにかなり馴染んでいる。このスタイルは今後も大事にしてほしいが、だからといって4人だけのパフォーマンスが物足りなくなるということではなく、どちらの形でもしっかり魅力を発揮できる状態にある。
村上華花 撮影=ヨシモリユウナ
川原みなみ 撮影=ヨシモリユウナ
今回のツアーから新たに試していることがある。4人ともイヤモニに切り替えたのだ。つまり、これまではステージ上に置いてあるモニタースピーカーから出る音を頼りにしていたが、今はそれぞれの耳に合った音をイヤホンから出しながらパフォーマンスできるということ。ただ、これも簡単なことではない。自分に合ったセッテイングを見つけるのには時間がかかるし、そもそもすぐに慣れるものではない。しかし、4人はあっさりこの新しい環境に順応したようだ。確かに、ライブが終わるまでイヤモニをしていることをまったく感じさせなかった。うーん、すごい。
だからなのか、オープニングの新曲「Take me now」から鈴猫と川原が2人並んでピースをしていたり、いきなり余裕たっぷり。鈴猫と言えば、これまで彼女の歌唱力にばかり気を取られていたが、よく見ていると彼女はライブ中ずっと笑っている。ずっとだ。しかも、こちらも釣られてしまうぐらいいい笑顔。Quubiのアイドル的な部分をいちばん担っているのは鈴猫なのかもしれない。もちろんこれはメンバー全員のビジュアル力の高さを前提にした話で、そういう意味でもQuubiは強い。
藤宮紬 撮影=ヨシモリユウナ
鈴猫りさ 撮影=ヨシモリユウナ
では、ほかのメンバーはどうだろうか。まず、村上の話をしよう。今や、ライブ終盤に披露される「Lights」のイントロで観客全員に自分の想いを伝えるのが定番化していたり、力強い煽りでフロアを引っ張ったり、彼女はライブ中の重要な役割を多く果たしている上に、力強いボーカルも聴かせている。どちらかというと、村上はパワー寄りの印象を与えやすいが、実はそうではない。彼女はちょっとした歌のニュアンスの表現に秀でているし、歌以外での感情表現も豊かだったりする。強い表情だけでなく、物憂げな顔を見せる場面もあったり、楽曲の解像度を上げるための表現が随所に散りばめられている。
表現という点では藤宮も同じだ。ラップの切れ味にばかり意識を向けていたが、彼女は指先まで意識した繊細な表現が素敵だ。いや、「指先」だけでは説明としては不十分か。1本1本の指の角度まで美しいし、色気がある。ときに鋭く、ときにやさしく投げかける視線にも意味を感じさせるのが藤宮紬のパフォーマンスなのである。
Quubi 撮影=ヨシモリユウナ
ところで、Quubiのライブは人間臭さが魅力だと思っている。よくも悪くも<ショー>や<エンターテインメント>にはならない。<ライブ>なのだ。特に、この日の終盤に披露された「Empathy」でそれは顕著だった。ドラマ性があるボーカルの畳み掛けに、4人の生き様が滲み出るパフォーマンス。笑いたいときは笑うし、しっかり思いを届けたいときは真剣に。作られた熱さでは決してない。そんな4人のナチュラルな姿に惹かれるから、こうやって多くのファンがQuubiのライブに足を運ぶんだと思う。そんな人間臭さを影で放出しまくっているのが川原という人なのではないか。ファンなら周知の事実だが、川原のダンスのキレはすごい。この日、自分はライブ写真の撮影もしていて、そこで苦労したのが川原の姿を収めること。ファインダーに収めようとしても彼女はすぐにそこからはみ出していく。その姿を捉えたと思ってもボケていることが多く、シャッタースピードをゴリゴリに上げる羽目になる。川原からは野生動物のようなむき出しの本能を感じるのだ。特に「Three」のような緩急のある楽曲での彼女は手に負えない。表のエンジンが村上だとしたら、裏のエンジンは川原なのかもしれない。
村上華花 撮影=阿刀"DA"大志
川原みなみ 撮影=阿刀"DA"大志
こういった各メンバーの魅力がより深く伝わってきたのがこの日のツアーファイナルだった。パッと見だけでは掴みきれない魅力、実力が今のQuubiには備わっている。そんなグループの成長を運営側も見逃さない。いまの4人に見合った演出をしっかり考えていた。随所で登場したど派手なレーザーはその最たるもの。より華やかな空間が生まれていた。
そして、何よりも大きいのはファンの歓声だ。コロナ禍に結成されたQuubiはこれまで観客からの歓声を知らずに成長してきた。ワンマンライブとして初めて自分たちに向けられた声がどれだけ支えになっただろうか。フロアにいる一人ひとりの声や熱気が、前述したような各自の魅力を引き出しいるところも大きいだろう。積極的にフロアにマイクを向ける村上のうれしそうな顔が非常に印象的だった。
メンバーそれぞれが思いの丈を打ち明けたのはライブ中盤のMCでのこと。川原はこれまで名古屋でワンマンをしたことがなかったという話から、全国各地で盛り上がり方が異なることを知ったと話した。彼女の言葉を受けて鈴猫は、東名阪でバンドセットのワンマンができていることは当たり前じゃないと引き締まった表情で話した。そして、大好きなみんなといろんなところに行って、いろんな思い出を作りたいと新たな野望を掲げたのだった。それを後押ししたのは藤宮のひと言。バンドセットで東名阪を回れているのはすごいことだと改めて強調した上で、全国に行くのも夢ではないと力強く言い放った。いちばん穏やかそうに見えて、いちばん力強いことを言うのが藤宮だったりする。最後に言葉を伝えることになった村上は、このツアーが新しい一歩になったと宣言。まだ規制があるし、我慢しなきゃいけないことはいっぱいあるけど、このツアーで間違いなく足跡を残せていると実感を込めて言い残した。
藤宮紬 撮影=阿刀"DA"大志
鈴猫りさ 撮影=阿刀"DA"大志
アンコールで披露した「Change my life」ではさすがに歌が乱れていたけど、それを4人は自らの熱量でしっかりカバー。そんなことまで彼女たちはできるようになっている。個々のスキルだけでなく、4人の調和も素晴らしい。アンコールラストの曲「DIVE YOURSELF」は初期からパフォーマンスしてきたものだが、本当に強い曲へと成長した。今や初見の客を一撃で仕留めることができるぐらいの攻撃力が備わっている。そんな曲にしたのは間違いなくこの4人。もっと上へ行くためにはさらなる努力が必要になるだろう。それは決して楽な道のりではない。だけど、少なくともいま4人が進んでいる道は間違ってはいない。そんなことを強く感じた90分のライブだった。
これで一息つくかと思いきや、次の一手もしっかり用意されていた。6月11日にGORILLA HALL OSAKAで開催される自主企画『Quubi Presents KiTSUNE Party 2023 at GORILLA HALL OSAKA』だ。スペシャルゲストが登場するということで、3月21日の第一弾発表が今から楽しみでならない。さあ、Quubiの進撃はまだまだ続く。
取材・文=阿刀”DA”大志
Quubi 撮影=ヨシモリユウナ
セットリスト
ライブ情報
2023年6月11日(日) 大阪・GORILLA HALL OSAKA
開場 13:00 開演 13:30
前売り ¥4,000