「おとこたちの生きにくさは誰かの人生に当てはまる」~ユースケ・サンタマリアら出演のミュージカル『おとこたち』が開幕
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ミュージカル『おとこたち』会見より (左から)岩井秀人、吉原光夫、ユースケ・サンタマリア、藤井隆、橋本さとし 撮影:翡翠
PARCO劇場開場50年を記念したシリーズ、ミュージカル『おとこたち』が2023年3月12日(日)に東京・渋谷のPARCO劇場で幕を開けた。記事では、出演者のユースケ・サンタマリアや藤井隆らが登壇した初日前会見と公開舞台稽古の様子をレポートする。東京公演は同地で4月2日(日)まで上演。大阪公演は森ノ宮ピロティホールで4月8日(土)、9日(日)。福岡公演はキャナルシティ劇場で4月15日(土)、16日(日)に開催される。
同作品は2014年に初演、16年に再演された演劇『おとこたち』を初めてミュージカル化したもの。ユースケら4人の男たちの愛、不倫、老い、病、死、暴力など、現代を生きている“おとこ”になら誰もが経験しそうな人生の悲喜劇を描いている。
物語の始まりは老人ホーム。老人たちの世話をするために介護施設にやって来た山田(ユースケ)が、その情景を音楽に乗せて、歌うように語っていく。食事をこぼさないように首にエプロンを付けた男、腰が曲がった老女らが行き交う施設では、老人の食事を世話した後、いつも食事を提供されるが、「今日は出なかった」と山田は不満そうだ。介護を手伝っている男に「食事が出なかった」と伝えると「食べていましたけど」と返され憤慨する。「食べていない」とカッカする山田の姿を見た男たちは、やれやれという表情を浮かべていた。
どうにもかみ合わない会話の謎を解くように、舞台は山田が82歳の時代から、大学時代へとさかのぼっていく。老人ホームから、カラオケボックスへ。山田の大学卒業を祝う会を開いていたおとこたちは、風俗店に足を運んだときのエピソードを語り合い、ゲラゲラと笑い始めた。
ミュージカル『おとこたち』公開稽古より
ミュージカル『おとこたち』公開稽古より
ラップで体験談を語るユニークな展開があった一方で、ミュージカルの金字塔『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャン役を経験した吉原光夫、橋本さとしは、たくましい歌声で舞台のために書き下ろされた「おとこたち」を熱唱するなど、ミュージカル版ならではの演出で盛り上げていく。ミラーボールが輝く下で歌う鈴木(吉原)の声に合わせて、くねくねと腰を揺らして踊るユースケらの姿には、客席から笑いが起こっていた。
ミュージカル『おとこたち』公開稽古より
ミュージカル『おとこたち』公開稽古より
森田(橋本)が風俗店に行った経験を話した時間には、山田が森田が不倫をしていることを暴露。舞台に不穏な空気が広がっていく。社会人になった4人を待ち受けていたのは、世間の荒波だ。山田は望んでいなかった職場で認められ、クレーム対応をする日々。「負のオーラが凄い」と皮肉を言われてしまう。
ミュージカル『おとこたち』公開稽古より
戦隊ヒーローで脚光を浴びた津川(藤井)は俳優としての地位を確立するも、酒癖の悪さで、その仕事を失ってしまう。舞台に新しい活躍の場を見い出すも、再び同じ失敗で信用はがた落ちに。追い打ちをかけるように火災で自宅が全焼。大やけど負うなど踏んだり蹴ったりだ。
ミュージカル『おとこたち』公開稽古より
ミュージカル『おとこたち』公開稽古より
妻と不倫相手が連絡を取っていることを知らず、2人の女性の間をフラフラしていた森田にも、裁きの日が訪れる。不倫相手との“三者面談”で妻から、離婚と400万円の慰謝料の支払いを求められ、顔面蒼白になってしまう。
製薬会社勤務の営業マンをしている鈴木は、4人のおとこたちの中で、唯一の成功者。東日本1位という優秀な成績を収め表彰された鈴木だったが、喜びの宴の晩に、部下が自死したことを告げられ、天国から地獄へ。憔悴した夫を見て驚く妻の花子(大原櫻子)に、本当の事を打ち明けられず閉じこもってしまう。夫を愛し、支えたいと願う妻と夫。すれ違う心は、夫婦のデュエット曲「愛される資格」で切なく表現された。
ミュージカル『おとこたち』公開稽古より
ミュージカル『おとこたち』公開稽古より
ミュージカル『おとこたち』公開稽古より
4人のおとこたちの22歳から85歳になるまでの人生が描かれた今作。脚本・演出を手掛けた岩井秀人は会見で「この作品は、古典にしようと始めました。近現代を生きるおとこたちの生きにくさは、(目にした)誰かの人生に当てはまるもの。そして女性から見たら“近くにこういう人がいるな”と思えるはずです。色々な人生のロールプレイと思って見てほしい」と呼びかけていた。
脚本・演出の岩井秀人
舞台のような悲劇や喜劇を経験したか問われた4人。ユースケは「学校がキライで、ウソをついて、早退を繰り返していたのですが、ある日の朝礼のときに『ぼうこうの辺りが刺すように痛い』と芝居をしたら、救急車で病院に運ばれました。最終的には盲腸だと診断されて、手術を受けた。生まれて一番最初の衝撃でした」と明かし、周囲を驚かせていた。
藤井は5歳のときに初めて骨折してから、中学までの間に7カ所以上骨折したと吐露。「マラソン中に両手を脱臼したときは、驚いた先輩に『大丈夫?』と両手を揺さぶられて、複雑骨折してしまいました。僕もすぐオペしました」と両手をさすりながら、痛そうな表情を見せていた。
(左から)ユースケ・サンタマリア、藤井隆
「オペ話が続いていますが」と口を開いた吉原は「僕は尿管結石を持ちなんですけど……」と始め「駅で電車を待っているときに、痛みが出てしまったことがあって、『うぅ』とのたうち回っていたら、駅員さんに警察に通報されてしまいました。駆け付けた警官に腕をまくられ『(薬物を)だいぶやってるな』と厳しく追及されて、(誤解を解こうと) “尿管結石”であることを告げたら、救急車を呼んでもらうことができた」と自らに起きた悲劇を語っていた。
3人の仰天トークを聞いていた橋本は「僕は、本番中に肉離れになったことがありました。舞台袖にはけるまでは、何事もなかったように務めて、(楽屋で)ガムテープで足をぐるぐる巻いて固定して、痛み止めを飲んで本番を続けました」と告白。それぞれの“痛い”話に、4人は顔をしかめていた。
3月10日に51歳の誕生日を迎えた藤井は、現場で寄せ書きなどのプレゼントを贈られたことを公表。「若いときは自分の誕生日を忘れたりもしていましたが、歳を重ねて現場で祝っていただけることがうれしい」とにっこり。舞台初日に52歳の誕生日を迎えるユースケに、「盛大にサプライズを仕掛けます」と明かすと、「期待しちゃうよ」と声を弾ませたユースケに、藤井は「期待してください」と胸を張っていた。
(左から)岩井秀人、吉原光夫、ユースケ・サンタマリア、藤井隆、橋本さとし
なお、東京公演ではスペシャルゲストを迎えたアフタートークショー、キャストによるアフタートークショーの開催も実施される。
取材・文・撮影=翡翠
公演情報
ミュージカル『おとこたち』
【音楽】前野健太
【出演】
ユースケ・サンタマリア 藤井隆 吉原光夫
/大原櫻子 川上友里/橋本さとし ほか
演奏:pf.佐山こうた b.種石幸也
【日程】2023年3月12日(日)~4月2日(日)
【会場】PARCO劇場
【料金】(全席指定・税込)
11,000円
全席指定平日早割=10,500円(3/14~3/17の5公演限定)
【一般発売日】発売中
【お問合せ】パルコステージ03-3477-5858(時間短縮営業中)
3月16日(木)13:30公演 海宝直人(ゲスト)+岩井秀人+吉原光夫
3月18日(土)13:30公演 佐久間宣行(ゲスト)+岩井秀人
3月21日(火・祝)13:30公演 小川絵梨子(ゲスト)+岩井秀人
※公演当日の公演
※公演当日の公演
【日程】2023年3月23日(木)
【会場】PARCO劇場
【開演】18:30~(開場 17:45~)
【手数料0円・座席選択】一般発売
受付期間:2022/11/19(土)10:00~2023/3/23(木)18:30
<大阪公演>
【日程】2023年4月8日(土)~ 2023年4月9日(日)
【会場】森ノ宮ピロティホール
【料金】11,500円(全席指定・税込)
【一般発売日】発売中
【主催】サンライズプロモーション大阪
【お問合せ】キョードーインフォメーション 0570-200-888(平日11:00~18:00)※日・祝は休み
<福岡公演>
【日程】2023年4月15日(土)~ 2023年4月16日(日)
【会場】キャナルシティ劇場
【料金】S席:11,000円 A席:8,000円 B席:5,000円(全席指定・税込)
【一般発売日】発売中
【主催】サンライズプロモーション東京/キャナルシティ劇場
【運営】シアターマネジメント福岡
【お問合せ】サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(平日12:00~18:00)※現在平日12:00~15:00までに短縮営業中
【公式ホームページ】https://stage.parco.jp/program/otokotachi