「一度見たらもう一度観たくなる」 富本惣昭×緒形 敦×白樹 栞プロデューサーが語る舞台『ル・ゲイ・マリアージュ』の見どころとは?
富本惣昭、緒形敦
2023年3月31日(金)より東京・六本木トリコロールシアターにて、舞台 “Le gai mariage”『ル・ゲィ・マリアージュ~愉快な結婚』が上演される。
本作は、モリエール賞最優秀コメディ賞にノミネートされたフランスの名作。演出は横内謙介、主演は、関西ジャニーズJr.としてコンサート、舞台など数々のステージをこなし、2023年からは本格的に俳優業に邁進する今江大地。今回、主人公のアンリの親友で、彼と偽装の同性婚をするドド役の富本惣昭、アンリの友人の弁護士ノルベール役の緒形 敦、そして公演プロデューサーの白樹栞氏に本作の見どころなどを聞いた。
「めちゃくちゃよくできたコメディ」
ーーお稽古はいかがですか?
緒形 敦(以下、緒形):順調すぎますね。かなり進みも早いです。
ーーそうなんですね。なぜ「早い」のでしょう?
緒形:(演出家の)横内さんが1つ1つ細かく丁寧に演出をつけてくださって、稽古が円滑に進んでいるからだと思います。
また、今回は劇場入り(※劇場に入って稽古をすること)がとても早いんです。本来、劇場入りは初日の5日前ぐらいがほとんどなのですが、公演プロデューサーである白樹さんの劇場ということもあって、(この取材が初日の2週間前)すでに実際に舞台に立って、稽古ができているんです。(トリコロールシアターは稽古場としての使用もO K!)役者にとっては、最高の環境ですね。そのおかげで焦る必要がなく、安心して稽古に取り組めています。
ーー富本さんはどう感じていますか?
富本惣昭(以下、富本):本読みの稽古を長くとっている印象があります。そのおかげで、セリフが頭に残やすかったり、感情の整理がつきやすかったりしています。劇場に入って、実際に立ってやると課題が見えてきますが、本読みの土台ができていたので、安心感があります。……それに皆さん、セリフ覚えがめちゃくちゃ早かったんですよね。あの量を覚えるの結構大変ですよね?(笑)
緒形:そうだね(笑)。
白樹栞(以下、白樹):(今江)大地さんが特に覚えが早いなと思いました。……今回、外の稽古場を借りるのではなく、舞台にそのまま立ってもらったらどうだろうとアイディアを出したら、横内さんが喜んでご了承くださったんです。稽古場使用料は他よりも高くつくけれど……その分、この作品にかける気持ちの方が大きかった。それに俳優たちも気分が盛り上がるかなと思って。
富本:いや、盛り上がりますよね!
緒形:うん、なかなかない現場ですよ。
ーー脚本を読まれた感想を教えてください。
緒形:やはりフランスの戯曲なので、日本人にはないユーモアが散りばめられているなと思いました。最初に読んだ第一印象は、とてもよくできたコメディだなということ。それぞれの登場人物が向かっている目的地が全員違うのですが、それがうまく交差して物語が進んでいくんです。いろいろなことが起きて、もう笑っちゃうような、ありえないような話も出てくるんですけど、それもなぜか安心して見える。すごく面白かったですね。
これを演じるとなると、挑戦になるんだろうなと思っていたんですけど、いざやってみると、フィットしている感覚があって、楽しんで芝居ができています。それはよかったなと思いますね。
富本:そうですね、最初に台本を読んだとき、読んでるだけで面白くて笑っちゃうような台本だなと思いました。いざみんなで本を読み合わせたときも、自然と笑いが起きましたしね。人と人との掛け合いって大事なんだなと思いますし、くだらない会話でさえも面白く感じる台本です。
白樹:セリフに無駄がなくて、お洒落なんです。全部必要なセリフなんです。だから全員が主役のような舞台。1人でも欠けたら話がつまんなくなると思います。
「生まれ持った才能がある」「オーラが感じられた」
ーー改めてキャスティングの理由や、どういうことを期待されているか教えてください。
白樹:みんな大事な役なんですけど、特にこだわりたいのが、この2人の役でした。期待通り、本人たちも役を好きになってくれている気がします。いやいややるのではなく、毎日毎日役を深めてくれていて……私にとってはいい孫ができた感覚です(笑)。
ーーそれぞれの役についてはいかがですか。面白いな、難しいなと感じる部分はありますか?
緒形:自分はこの台本を初めて読んだときに、この3人だったら、僕は完全にノルベールだろうなと思ったんですよね。理由としては、ノルベールは知的でにじみ出てくる上品さがあって、好きなんですよね。自分が知的と言っているわけではないんですけど(笑)。彼はちょっとアホなことをしたり、汚いことを言ったりしても、それですら品がある。こういう役をやりたいと思っていたので、ノルベールを演じることになって嬉しいです。自分も役も一緒に成長して、いい部分をお見せできればなと思っています。
ーーご自身と共通点が結構ある印象ということですね?
緒形:はい。“カッコイイ”の定義みたいなものが心底一致しているなと思いました。
ーー富本さんはいかがですか?
富本:ドドは自由度が高いキャラ。もちろん決められたところは決められた通りにやるんですけど、それでも他と比べて動けるキャラですし、全部が決めたままだとつまらないなと思ってしまうので、毎日毎日ちょっとずつ細かい動きを変えていこうかなと考えています。ドドは子どもらしさもありつつ、周りの空気も読めるんですよね。意外と周りもしっかり見ている。
緒形:賢い。
富本:それも親友との偽装結婚したからこそ学んだものなのかなと思っていて。結婚して、学んで、成長して、ちょっと大人っぽさも増えたよというドドが好きですね。
ーー緒形さんと富本さんのお互いの印象や、お稽古通じて思うことなどを教えてください。
富本:事務所が一緒だったことにびっくりしました(笑)。うちの事務所はどちらかというと映像系の事務所なので、舞台で共演できるとは。
白樹:本当に偶然なのよ!同じ事務所で2人探せばいいという気持ちでキャスティングしたわけではなくて、たくさんの人に会って、そこで決まったのが、たまたま同じ事務所だっただけ(笑)。
富本:ありがとうございます(笑)。緒形さんは先輩なんですけど、喋ってみるとすごく柔らかくて、格好いい人です。お兄ちゃん的な存在です。
緒形:惣昭は20歳で、20歳なりの若いエネルギーがあるんですよね。目の前のものに対して、初めて見たかのような、子どものような反応をする。まさにドドのようだなと感じます。
自分は今26歳なんですけど、役者は子どものような部分を捨てちゃいけないと思っていて、今回ドドを演じている惣昭と芝居を一緒にする中でそういったところを勉強させてもらっています。
白樹:オーディションのときに、経験の年数を全部調べているんですけど、そのほかに生まれもった才能というか、向く/向かないがあると思うんですね。(富本さんは)経験の年数は浅いけど、生まれ持った才能がある。役をつくるというよりも、本人自体がその役になって表現ができる。芝居くさくなくて、すごく役者に向いている人だなと思っているんです。その点がドド役にぴったり。楽しんでやってくれているので、彼に役を任せてよかったなと思っています。
ーー緒形さんについてはいかがですか?
白樹:全部素敵よ!オーディションのときに、劇場の前に立っている彼を見て、そのときからノルベールのオーラが感じられた。ただ、オーラだけで決めるのも忍びないので(笑)、ノルベールの役の分析をしてもらったんです。そうしたら「他の人は会話を楽しむセリフのやり取りだけど、僕のセリフは、お客さんがそれ聞かないと、そのストーリーのことを理解できない。大事なセリフがたくさん潜んでいるから、きちっとそれを置いてかなきゃいけない」と100点の回答をしたんです。
今回の舞台で、2人が友達になって、いい競争相手になって、それぞれの舞台で違う分野で活躍してくれたら嬉しいと思う。……ブロードウェイには小さな劇場があるんですけど、今でも有名な役者さんがそこの前を通ると「僕はこの劇場に立ったことがある」と自慢できる小劇場がある。私が死んで、あなた方はすぐに大物の役者になると思う。だから、そのときに、この劇場の前を通ったり、この劇場の話が出たら「僕は若いときに出た舞台なんだ」と自慢してくれたら嬉しいと伝えてあります。
緒形:そう言っていただけて、ありがたいです。
一度見たらもう一度観たくなる
ーー演出の横内さんについて。改めてどんな演出家だと思いますか?
緒形:芝居に対して一切の妥協がなく、かつ、的確な指導をいただける信頼のおける演出家だと思います。毎回無駄のないアドバイスをいただけるので、1つ1つの芝居を細かく改善することが出来ています。そのおかげで稽古のスピードも早く、安心して本番を迎えられる姿が見えるので、役者にとってはありがたい限りです。
富本:本当に妥協ないのはその通りなんですが、謙介さんご自身が舞台を作ることを楽しんでいるなと思うんです。面白いことがあったら、すごく笑ってくれる。「あ、これは面白いんだ」と自分の自信にもつながって……謙介さんの笑顔には救われますね。
緒形:確かに1番楽しんでいるかもしれない。
富本:それに謙介さんが「こっちの方がいいんじゃない」と提案してくれるものが全部面白くて。役者として幸せな経験をさせてもらっているなとつくづく思います。
ーー最後に観劇を楽しみにされているお客様に一言お願いします!
緒形:この作品は、それぞれの人間らしさが全面に出ている部分が面白く、見終わった後に幸せになれる物語です。また、自分たちの欲や目的に対してまっすぐな人間たちのぶつかり合いが見どころだと思っています。本作を観て、「演劇って楽しいな、面白いな」と素直に感じてもらえたら嬉しいです。
富本:僕たち役者全員が楽しんでいるものを素直に受け取って、一緒に同じ空間で楽しんでいただければなと思っています。堅苦しい舞台ではないので、たくさんの方に観にきて欲しいですね。ぜひご来場お待ちしています!
白樹:コロナ禍で2年半以上、公演中止が繰り返されました。毎週のように劇場に足を運んでいた人々が、劇場が閉鎖されて、観劇を控えた。そうしたら新しいことに喜びを見出して、「あ、観なくても生きていけるじゃない」と思うようになった。演劇から離れてしまった人が非常に多いような気がするんです。「こんないい演劇なんです!こんなに考えさせられるんです!」と声高に宣伝しても戻ってきてくれない。でも、この作品なら演劇ファンも今まで演劇を知らなかった方達にも魅力を浸っていただける思うんです。1度観た人はリピートしたいと思うと思うから。ストーリーの面白さはもちろんなんですが、細かい演技を横内さんがつけてるので、彼たちの素晴らしい演技もしっかり観てもらいたいです。
そして……4月1日と4月15日土曜17時の追加公演が決定しました!アフタートークやフォトセッションも決定!!お隣の方とヒザたたき合って思いっきり笑ってくださいませ!
取材・文=五月女菜穂
公演情報
翻訳:岩切正一郎
演出:横内謙介
出演 :今江大地 富本惣昭 緒形 敦 清水麻璃亜(AKB48) 岡森 諦
企画製作:社団法人Société Le Théâtre Elysée
プロデューサー:白樹 栞
公式サイト:http://tricolore-theater.com
日程:2023年3月31日(金)~4月16日(日)
会場:六本木トリコロールシアター
料金:7,800円(全席指定・税込)
お問合わせ:六本木トリコロールシアター 03-3796-7771
公演終了後に休憩挟まず、ご来場いただいたお客様にイベントを開催いたします。
清水麻璃亜×白樹栞プロデューサー「女性ふたりだけのアフター・トーク」
●6日(木)19:00
今江大地×富本惣昭 ふたりのスペシャル・カーテンコール!
●7日(金)19:00
今江大地×清水麻璃亜×岡森諦スペシャル・カーテンコール
●11日(火)19:00
横内謙介×今江大地
「演出家横内謙介氏と今江大地氏が語るアフター・トーク」
●13日(木)19:00
富本惣昭×清水麻璃亜×緒形敦のアフター・トーク
●15日(土)17:00
今江大地×富本惣昭×緒形敦「親友3人揃いぶみ❗️」スペシャルカーテンコール