憧れのネコバスに乗れる! 関西エリア初開催の特別展『ジブリパークとジブリ展』で魅惑の森誕生の軌跡を辿る
写真撮影のレギュレーションは来場日によって異なる。会場特設サイトで要確認。 (c)Studio Ghibli
特別展ジブリパークとジブリ展 2023.4.15(SAT)~6.25(SUN) 神戸市立博物館
4月15日(土)から神戸市立博物館にて『特別展「ジブリパークとジブリ展」』がスタートした。2022年11月に愛知県長久手市の「愛・地球博記念公園」内に第1期がオープンした「ジブリパーク」。同展では制作現場を指揮する宮崎吾朗監督の仕事や作品を振り返るとともに、現在も制作進行中のジブリパーク誕生の舞台裏を明らかにする。すでにジブリパークに行ったことのある人もまだの人も、大人も子どもも楽しめる、ファン垂涎の内容となっている。
(c)Studio Ghibli
宮崎吾朗監督の仕事を振り返り、ジブリパーク誕生を紐解く
神戸市立博物館 油井洋明館長
神戸市立博物館の油井洋明館長は、同展について「ジブリの世界の現場監督をつとめられた宮崎吾朗監督のこれまでの仕事、作品を振り返ります。同時にジブリパークをどのように描き、考え、そして作られているのか、数多くの制作資料を通して実際に見ていただく展覧会となりました」と紹介。神戸市立博物館は1982年11月に開館して41年。「今回の展覧会を通じて、これまで馴染みのなかった方々にも来館いただけるのではないかと考えています。ジブリの中に入り込んで舞台裏を知れて、非常にワクワクする楽しい想いをしました。私のような年代だけではなく、上の年代、若い方、お子さまたちも十分楽しんでいただける展覧会だと思います」と述べた。
ここからは、ジブリパーク展示・イベント部の上村早江子による解説も交えながら各章の内容を紹介しよう。
トトロとカオナシの歓迎を受けて、ジブリの世界へ
(c)Studio Ghibli
自撮りができる台が用意されている。写真撮影のレギュレーションは来場日によって異なる。会場特設サイトで要確認。 (c)Studio Ghibli
最初のワクワクは会場に足を踏み入れた瞬間にやってくる。トトロがどんぐりのお土産を差し出すシーンの立体展示の歓迎を受けると、『千と千尋の神隠し』(2001年公開)で千尋がカオナシらと一緒に電車に乗って銭婆の元へ向かうシーンを表現した「ジブリのなりきり名場面」が現れる。ジブリパーク内にある「ジブリの大倉庫」の企画展示のひとつを再現したもので、カオナシの隣に座って写真を撮ることができる(ただし平日のみ)。
(c)Studio Ghibli
序章となる「Prologue」では、1984年公開の『風の谷のナウシカ』から2021年公開の『アーヤと魔女』まで、劇場で公開されたジブリ作品のポスタービジュアルが壁一面に展示されている。
(c)Studio Ghibli (c)Museo d'Atre Ghibli
そして高畑勲、宮崎駿、宮崎吾朗の3人の監督と鈴木敏夫プロデューサーという、ジブリの立役者の紹介を経て、「ネコバスに乗って、いざ。」というチラシのコピー通り、大迫力のネコバスが登場。行き先が「こうべ」になっている演出も最高だ。このネコバスには大人も子どもも座ることができる。劇中でサツキとメイが感じた座り心地を追体験できるのだ。もう、とにかく座ってみてほしい。きっと感動するはずだ。なお混雑状況によるが、ネコバスの写真撮影は外観のみ可能となっている。
1章 はじまりは三鷹の森ジブリ美術館
(c)Studio Ghibli (c)Museo d'Atre Ghibli
「1章 はじまりは三鷹の森ジブリ美術館」では、宮崎吾朗監督が初めてスタジオジブリと仕事の関わりを持った、三鷹の森ジブリ美術館の建設プロジェクトの軌跡を辿る。建築コンサルタントとして公園緑化や都市緑化の計画や設計に携わっていた。
(c)Studio Ghibli (c)Museo d'Atre Ghibli
宮崎駿監督の息子である宮崎吾朗監督は、1998年より三鷹の森ジブリ美術館建設の総合デザインを手がけ、2001〜2005年まで初代館長もつとめた。建設のキッカケとなった宮崎駿監督の1枚のイメージボードをいかに実際の建物や内装に落とし込んでいったかという過程を、吾朗監督が自ら描いたサインや看板などのデザイン画を通して見ることができる。
2章 アニメーションの世界をつくる
(c)Studio Ghibli
2章の「アニメーションの世界をつくる」では、吾朗監督が手掛けた『ゲド戦記』(2006年公開)、『コクリコ坂から』(2011年公開)、そしてスタジオジブリ初のフル3DCGアニメーション作品として2020年に公開された『アーヤと魔女』について紹介する。
(c)Studio Ghibli
(c)Studio Ghibli
映画のベースやイメージのヒントとなった資料、背景美術などを展示。『魔女の宅急便』(1989年公開)や『崖の上のポニョ』(2008年公開)なども手がけたアニメーターの近藤勝也によるキャラクターデザイン画も見ることができる。
(c)Studio Ghibli
同章最後には、2021年6月〜2022年5月まで三鷹の森ジブリ美術館で開催された企画展示『アーヤと魔女展』が登場。吾朗監督が企画監修を行い、制作の舞台裏を資料や映像、模型などとともに自身の言葉で解説したもので、たっぷりボリューミー。
(c)Studio Ghibli
セルアニメーションと3DCGアニメーション、双方の技法で作品を手掛けた監督ならではの解説は、非常に興味をそそられる。3DCGキャラクターのモデリングから、背景美術や小物の表現、ライティングの当て方など、完成までの制作過程が、工程ごとに事細かに紹介されている。
(c)Studio Ghibli
タッチパネルを使用して、主人公アーヤの表情に動きをつける体験コーナーは子どもも楽しい。吾朗監督のデスクを再現した展示もあり、アニメーション作りの裏側にどっぷり浸れる章となっている。
3章 アニメーションの世界を本物に
(c)Studio Ghibli
「3章 アニメーションの世界を本物に」では、2005年に開催された『愛・地球博(愛知万博)』のパビリオンとして建てられた、『となりのトトロ』(1988年)の主人公、サツキとメイの家を紹介。現在ジブリパークのどんどこ森にある家を、5分の1サイズの模型で展示している。
サツキとメイの家は、ただのセットではなく実際に住める家としてこだわって建築された。そのポイントを写真やパネル、建築資材などで解説。劇中でもリアルさを追求する、ジブリの建物への並々ならぬ情熱が感じられるだろう。会場で展示されている日焼け棚のパーゴラは、実際にジブリパークの展示で使用されていた初代の柱(現在ジブリパークで展示中のものは2代目の柱)だ。
(c)Studio Ghibli
模型を覗くと、お父さんの書斎、サツキとメイが蚊帳の中で寝ていた和室、サツキがお弁当を作っていた台所などが、実にリアルに表現されている。
4章 ジブリパークのつくりかた
(c)Studio Ghibli
最後を締め括る「4章 ジブリパークのつくりかた」では、昨年11月に第1期オープンしたジブリの大倉庫と青春の丘、どんどこ森の3つのエリアの資料や展示を中心に、ジブリパークがどのように作られたかを迫る。
(c)Studio Ghibli
(c)Studio Ghibli
『耳をすませば』(2020年公開)に出てくる「地球屋」にある古時計のドワーフやバロンとルイーゼ、黒木馬などの模型は精巧で思わず心が踊る。また「ジブリのなりきり名場面展」から『千と千尋の神隠し』のワンシーンである、千が湯婆婆に「ここで働かせてください!」と言ってサインをした「にせの館長室」を再現展示。ぜひ湯婆婆の迫力を感じてほしい。
(c)Studio Ghibli
ジブリパークは現在も制作が進行中で、今年秋にはもののけの里が、2024年3月には魔女の谷が第2期として新たに開園予定。これらの鳥瞰図やイメージスケッチ、模型が展示されている。
(c)Studio Ghibli
同展の展示のこだわりについて「柵を張って遠くから眺めるとか、規制することはなるべくしていません。実際に見て触って体感していただける、ジブリパークとも通ずる展示になっております。ネコバスにも実際に座って、資料をじっくり近くで観ていただいて。本展をキッカケにジブリパークに行ってみたくなる、もう1回行きたくなるような展示にできたんじゃないかなと思っております」(上村)と意欲を覗かせた。ますます拡大していくジブリパーク。今後の展開にますます期待が高まるばかりだ。
特設ショップ登場、カフェではタイアップドリンクも
(c)Studio Ghibli
展覧会特設ショップの外観にもこだわりが。外灯のついた石門のオブジェをくぐるとそこには同展オリジナルグッズをはじめ、限定のコレクション、ジブリパークやジブリ作品に関するグッズがずらりと並ぶ。街角のお店でショッピングしているような感覚になれるディスプレイが素敵だ。
(c)Studio Ghibli
また、神戸市立博物館内1Fにあるティーサロン、TOOTH TOOTH 凸凹茶房では、ジブリ作品をイメージした雨降りバス停と森のココア、隣国の王子様のボタニカルレモネード、火の悪魔のキャラメルオーレの3種のコラボドリンクが登場。展示の余韻に浸りながら、思い出を家に連れ帰ってみてはいかがだろう。
特別展『ジブリパークとジブリ展』は6月25日(日)まで神戸市立博物館で開催中。は現在発売中。
(c)Studio Ghibli
取材・文・撮影=久保田瑛理
展覧会情報
開催期間:2023年4月15日(土)〜6月25日(日)
休館日:月曜日
開館時間:9:30〜17:30(金曜、土曜は〜19:30。入場は閉館の45分前まで)
会場:神戸市立博物館 〒650-0034 神戸市中央区京町24番地
観覧料:一般 1,800円/大学生900円/高校生以下 無料(要証明)(税込)
※神戸市在住で満65歳以上の方は一般料金の半額。(要証明)
※障がいのある方は障害者手帳などの提示で無料。(要証明)
※団体券の販売はなし。
入場方法:入場日時予約制
※購入不要の方(小学生以上高校生以下および障害者手帳、無料観覧券、ミュージアムカードをお持ちの方)も入場予約が必要。
主催:神戸市立博物館/読売テレビ/産経新聞社/キョードー関西
協賛:DNP大日本印刷
後援:FM802/FMCOCOLO
企画制作協力:スタジオジブリ/三鷹の森ジブリ美術館/ジブリパーク
問合せ:神戸市立博物館 078-391-0035(9:30〜17:30 月曜休止)
問合せ窓口:0570-00-0995(10:00〜18:00 6月26日(月)まで)
公式サイト:https://ghiblipark exhibition.jp/
兵庫会場特設サイト:https://www.ytv.co.jp/ghiblipark exhibition/
神戸市立博物館ホームページ:https://www.kobecitymuseum.jp/