屋良朝幸×原嘉孝インタビュー~初共演の2人がミュージカル『天翔ける風に』にかける思いとは
(仮写真)屋良朝幸、原嘉孝
ミュージカル『天翔ける風に』(振付・演出:謝珠栄 原作:ドストエフスキー 脚色:野田秀樹『贋作・罪と罰』より)が、2023年9月29日(金)~10月9日(月)、東京芸術劇場プレイハウスにて上演される(その後、兵庫と豊橋で公演あり)。
『天翔ける風に』は、ドストエフスキーの『罪と罰』をもとに野田秀樹が幕末の日本を舞台に描いた『贋作・罪と罰』(1995年にNODA・MAP第2回公演として初演)をミュージカル化した作品だ。原作小説の舞台を幕末の日本に、そして、主人公のロシアの貧しい青年を江戸末期の女塾生に置き換え、確固たる理想と信念によって高利貸しの老婆を殺害した主人公が罪の意識に苛まれていく姿と、新たな時代への変革のうねりを描き出したのが、野田の『贋作・罪と罰』。これを謝珠栄がミュージカル『天翔ける風に』に生まれ変わらせ、好評を得たのが2001年のことだった。2003年に再演、2009年には野田秀樹芸術監督就任記念プログラムとして東京芸術劇場で上演され、2013年には東宝プロデュースでも上演された。今秋の上演は、優れた頭脳と剣の腕を持つ女塾生・三条英に元宝塚歌劇団月組トップスターの珠城りょうを迎え、ミュージカルなどで活躍する実力派俳優たちが顔をそろえた待望のリニューアル上演となる。
このほどSPICEでは、三条の親友・才谷梅太郎役で、ミュージカルを中心に数々の舞台に出演するのみならず、振付や舞台のプロデュースなど幅広く活躍する屋良朝幸と、志士ヤマガタ役で、ミュージカル、ストレートプレイと数々の舞台に出演して活躍の場を広げている原嘉孝に、今作に挑む思いを聞いた。二人は、ジャニーズ事務所の先輩・後輩の間柄。
■初共演の二人「会うたびに一緒にやりたいとうるさいぐらい言っていた」
―― お二人は舞台作品での共演は初めてと伺いました。
屋良 よく会ってはいるので、何かしらどこかで共演していてもおかしくないはずなんですけど、意外と初めてなんですよね。
原 屋良くんとは僕の周りの人ばかりが共演していて、僕だけ全然なかったんです。
屋良 会うたびに「一緒にやりたいです」ってうるさいぐらい言ってくれていたので、ようやくだよね。
―― お二人とも様々な舞台にご出演されていますが、お互いの舞台での活躍をどのように見ていたのでしょうか。
屋良 最初に見たのはなんだろうな、劇団☆新感線かな?
原 2018年に『メタルマクベス』に出演したとき、観に来てくれましたよね。
屋良 すごく気合が入っていて、舞台上で周囲の人たちに巻き込まれていく感じがすごく面白かった。「こういう人材も後輩にいるんだ」と印象に残り、その後も原が出演している舞台をいろいろ観ました。それで、彼が初めて『SHOCK』に出たときだったと思うんだけど……。
原 昨年の『Endless SHOCK -Eternal-』ですね。
屋良 最後に一人ずつ喋るときに、何かベテランのように肝が据わったコメントを出していて(笑)。
原 えーっ? 何て言ったんだっけ(笑)。
屋良 それでまた「面白いな」って思ったんです。でも、今回はミュージカルじゃないですか。これまでお芝居をしている姿こそ観て来ましたが、歌ったり踊ってるところはほとんど観ていないんだよね。
原 でも僕、(中山)優馬くんのシングル曲「YOLO moment」の振付を屋良くんが担当した時に、直々にご指導いただいてるんですよ。
屋良 ?! 全然覚えてない(笑)。
原 何年前だったかな、優馬くんが歌番組に出演したときでした。印象残せてなかったんですね(笑)。
―― 原さんから見た屋良さんのご活躍ぶりはいかがでしょうか。
原 屋良くんがコンサートなどで歌って踊っている姿を特に多く観させていただいて、やはりポテンシャルが高く、全身からエネルギーが溢れていて、本当に楽しそうにパフォーマンスをするので、観ているこちらも楽しくなってくるんですよね。だからこそ共演したいとずっと言い続けて来ました。こうなりたいな、と憧れる先輩の一人です。
―― ときに原さんはタンクトップをよく着ていることで有名ですが、本日もタンクトップですね。
屋良 そういえば、数日前に街で偶然見かけたんですよ。
原 マジですか?!
屋良 その日は天気が良く、でも夜は寒くなりそうだったので、僕はカーディガンを着て歩いていました。すると、前方にタンクトップで歩いている男を見かけて。顔は見えませんでしたが、あれは絶対に原でした。自分の服装と見比べて、何だろうこの季節感の違い、と思いました(笑)。
原 うわぁ、見られてた(笑)。
■稽古場でのコミュニケーションの取り方
―― 今回の作品の舞台は幕末です。
屋良 これまでやってきた舞台は、洋楽テイストのものだったりオリジナルのものが多かったので、和物の舞台をやったことが今まで一度もないんですよ。『SHOCK』で少し日舞をやったことはありますが、そのときの先生に「君は日本の心がないね」と言われてしまって(笑)。普段やっているダンスのスタイルがヒップポップ系なので、姿勢が日舞とは全然違うんです。今回はどんなテイストになるのかまだわかりませんが、自分にない引き出しを新しく作れる機会ですから、そういう意味ではすごく楽しみですし、新しいチャレンジになればいいなと思ってます。
原 僕は何度か和物をやったことがありますが、今回のようにガッツリと時代に沿った作品は初めてです。僕は歴史に全く詳しくなく、そこは本当に不安なので、しっかりとリサーチすることも必要だなと思っています。それから今回、歌パートが非常に多い作品でもあり、僕には初めてのタイプなので、そこも不安なんです。
屋良 原がミュージカルでバリバリ歌うイメージはないからね。
―― 普段、稽古場で共演者の方たちとはどのようにコミュニケーションを取っているのでしょうか。
屋良 作品によっていろんなパターンがあります。稽古場で楽しく親睦を深めていくパターンもあれば、稽古中はガッと集中するパターンもあって、どちらにもいいところはあります。今回は再演を何度も重ねてきている作品なので、みんなで話しながらどうブラッシュアップできるか、だとは思いますが、でも意外とそういう真面目じゃないところで絆ができたりもするので、そんな時間も作れたらいいですね。
原 実は僕、稽古場の座席をすごく気にしているんです。だから、なるべく屋良くんの横に僕を置いていただきたいです。ちょっとしたことを喋れるだけで、仲が深まっていくと思うので。
屋良 たしかに、席順って、大事かもね。
原 これは稽古場あるあるだと思います。
―― 会場となる東京芸術劇場プレイハウスに抱いているイメージがあれば教えてください。
屋良 10代の頃、劇場の前の広場でずっとストリートダンスをやっていました。『SHOCK』の2回公演が終わった後で踊りに行って、次の日また『SHOCK』に出てたっていう、無敵の体力を誇っていた時代の思い出があります。あの場所に行くのは久しぶりになるので、そういう意味でも楽しみですね。
―― 原さんは2021年にミュージカル『BARNUM』で東京芸術劇場プレイハウスに出演しています。そのときに抱いた劇場の印象は?
原 大きくて綺麗な劇場だな、という印象でした。劇場の大きさはすごく意識します。それによって声の出し方も変わってくるので。今回は歌う量がこれまでにないくらい多いですし、血気盛んな役なので、ちゃんとした声の出し方をしないともたない気がしています。なので、声のコントロールの仕方を諸先輩方から学ばせていただきたいと思っています。
■オリジナルミュージカルの魅力は?
―― この三年間、お二人はコロナ禍でも数々の舞台に立ってきました。この点について、何か感じたことや、改めて考えたことなどあれば教えてください。
屋良 初日を迎えるとか、千秋楽を迎えるということが、絶対に当たり前なことではないんだな、と思うようになりました。1公演やれることがどれだけ幸せなことか、お客さんに喜んでもらえることがどんなに幸せなことか、ということを思うと、今日来てくれたお客さんにいかに楽しんでもらえるか、何を渡せるかということは今まで以上にすごく考えるようになりましたね。だからお客さんにも、キャストやスタッフにも大いに感謝ですよね。
原 僕も同じことを感じました。それから、客席の人数制限があったときに、本来のキャパシティの半分のお客さんにしかお届けできないのはやっぱり残念でしたよね。配信で見るというのも、新しい形としてはプラスだと思いますが、やっぱり生で見ていただきたいな、という思いはあるので、コロナ禍が落ち着いて、少しでも多くのお客さんに観に来ていただけたらと思っています。
―― 今作はオリジナルミュージカルですが、翻訳物のミュージカルと何か違いを感じる部分はありますか。
屋良 オリジナルの面白さは、みんなでアイディアを出し合って作っていけるところだと思っています。例えば音楽に関して言えば、自分が一番歌いやすいキーに変えることができたり、なんならメロディーもちょっとこうしたらどうかな? というようなディスカッションができる場合があります。チャレンジして足し引きして……など、稽古場で実験のようなことができるところが魅力だと思います。
―― 今回もそういった部分を楽しみにされていますか。
屋良 今作は何度も再演されてきた作品なので、それをどこまで変化させるかですよね。映像で拝見したときにダンスのエネルギーがすごかったので「ここに巻き込まれてみたいな」と思いました。人から溢れ出すパッションが魅力的なのですが、それは自分が得意とするところとはまた違うスタイルなので、自分らしさも入れつつ、どうやってはまっていったらいいのかを模索するという楽しみがあります。それと、自分は振付もするので、今回の振付・演出を担当する謝さんが稽古場でどういうふうに作っていくのかを勉強したいなという思いもあります。
原 屋良くんの話を聞いていると、屋良くんは自分をちゃんと理解していて、自分の見せ方をわかった上で、作品全体をどうやってお客さんに伝えていくかを考えている。そういうところがやっぱりすごいなと思いました。僕はそういうことを考えられるところまでまだ達していません。どんな作品においても自分なりに役を捉える、という形でしかまだ脳が使えていないんです。なので、翻訳物とオリジナルの違いが何かも明確に見出せていないのが現状で、でも逆に言えば、今はストレートに役を捉えて自分らしくその作品に向き合える時期でもあるのかな、とも思っています。とにかく全てに体当たりで臨んでいきます。
―― 原さんは、今作で屋良さんと一緒に踊ることについてはどのように思っていますか。
原 いやぁ、やばいですね、プレッシャーがハンパなくて緊張しますよ。これまで屋良くんが歌って踊っている姿をたくさん見てますから。でもパッションは負けないように、がんばります。
屋良 ガッチガチに踊りたいよね、一緒にね。
原 はい。やりたいです!
取材・文=久田絢子
公演情報
■原作:ドストエフスキー
■脚色:野田秀樹『贋作・罪と罰』より
珠城りょう 屋良朝幸
今拓哉 東山義久 原嘉孝 加藤梨里香
駒田一 剣幸
加藤翔多郎 川勝太地 川原田樹 榊海塔 高瀬育海 望月凜 吉田朋弘 (五十音順)
ミュージシャン:辻 祐(太鼓) 匹田大智(津軽三味線)
音楽:玉麻尚一 作詞:謝珠栄 美術:大田創 照明:小川修 音響:山本浩一 衣裳:西原梨恵
ヘアメイク:趙英 殺陣:渥美博 太鼓アドヴァイザー:上田秀一郎 歌唱指導:満田恵子
稽古ピアノ:太田浩子 演出助手:武田篤 振付助手:千田真司 舞台監督:浅沼宣夫
宣伝スタイリスト:ゴウダアツコ 宣伝ヘアメイク:西川直子
宣伝:DIPPS PLANET
■公式サイト:https://www.amakake2023.jp
■日程:2023年9月29日(金)~10月9日(月・祝)
■会場:東京芸術劇場 プレイハウス
■料金:(全席指定・税込)
S席:9,500円 A席:7,500円 サイドシート:5,000円
65歳以上(S席):7,500円 25歳以下(A席):5,000円 高校生以下:1,000円
※未就学児入場不可
※65 歳以上、25 歳以下、高校生以下割引は東京芸術劇場ボックスオフィスにて
前売のみ取扱(枚数限定・要証明書)。
※やむを得ぬ事情により、記載内容・公演情報等に変更が生じる場合がございます。
※営利目的の転売は固くお断りいたします。
※公演中止の場合を除き、ご予約・ご購入いただきましたのキャンセル・変更は承れません。
※ご来場前に必ず劇場webサイト内の注意事項と本公演の最新情報をご確認ください。
■助成:
文化庁文化芸術振興費補助金
劇場・音楽堂等活性化・ネットワーク強化事業(地域の中核劇場・音楽堂等活性化)
独立行政法人日本芸術文化振興会
■問い合わせ:
東京芸術劇場ボックスオフィス https://www.geigeki.jp
0570-010-296(休館日を除く 10:00~19:00)
■会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
■料金:(全席指定・税込)A席:9,500円 B席:7,500円
■一般発売:
一般発売(プレイガイド) 2023年7月1日(土)
芸術文化センター発売 2023年6月24日(土)
■主催:兵庫県、兵庫県立芸術文化センター
■問い合わせ:芸術文化センターオフィス 0798-68-0255(10~17時 月曜休/祝日の場合翌日)
■会場:穂の国とよはし芸術劇場 PLAT 主ホール
■料金:(全席指定・税込)
S席一般10,000円 U25:5,000円
A席一般7,000円 U25:3,500円
■一般発売: 2023年8月19日(土)10:00~
■主催:公益財団法人豊橋文化振興財団
■助成:文化庁 劇場・音楽堂等の子供鑑賞体験支援事業
■問い合わせ:プラットセンター 0532-39-3090(休館日を除く10:00〜19:00)