城田優インタビュー「ガウディの建築物に触れることは“日常”だった」 『ガウディとサグラダ・ファミリア展』の魅力を語る

インタビュー
アート
2023.6.21
城田優 (写真提供=東京新聞)

城田優 (写真提供=東京新聞)

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建築家アントニ・ガウディが後世に託した夢の聖堂“サグラダ・ファミリア”の完成への道を追う『ガウディとサグラダ・ファミリア展』が、2023年6月13日(火)から9月10日(日)まで、東京国立近代美術館にて開催中だ。本展の音声ガイドナビゲーターを務めるのは、エンターテイナー 城田優。幼い頃にバルセロナで暮らし、自宅から歩いて行ける距離にサグラダ・ファミリアがある生活を送っていた城田にとって、とても身近な建築物だったという。未完の世界遺産として知られるサグラダ・ファミリア、そして建築家ガウディの魅力について、またスペイン・バルセロナのことまで、城田にとことん語りつくしてもらった。

生活の一部にあったガウディの建築物

――城田さんは幼少期をスペインで過ごされて、その後何度もスペインを訪れているんですよね。ガウディの建築との思い出はいくつもありますか?

思い出はたくさんあります! 僕が住んでいたのは7歳までで、その後も行ったり来たりしていました。小学生のときの夏休みは丸々スペインの滞在にあてていたので、毎年2~3か月はスペインにいたことになります。それから10年以上あいて、20歳を超えてからはありがたいことにお仕事で行く機会も増えて、様々な形でバルセロナという街に触れてきました。

そんな僕からしてみたら、ガウディの建築物に触れることは“日常”でした。バルセロナの通りに普通にある感じなんですよね。街を歩いていると、サグラダ・ファミリアもですけど、グエル公園も小さい頃は普通に走り回っていたし、ガウディの建築物がありふれていたような感覚でした。本当に生活の一部として、そこにいてくれるものでした。

――城田さんの日常に溶け込んでいたわけですね。ちなみに、何回くらい行かれたなどは数えられますか?

えー! もう、覚えていないです(笑)。100回は行っているかなあ……。サグラダ・ファミリアから僕の家まで、大体地下鉄で4駅くらいなんです。買い物しながらぶらぶらしていたら徒歩圏内の距離でした。スペインに帰省するたびに、サグラダ・ファミリアの周りに行くことが多いので必ず見ていましたし。あるから見る、というくらい日常にはなってしまっています。

――今回は音声ガイドを務めたわけですが、新たな発見もありましたか?

僕、サグラダ・ファミリアの豆知識を結構知っているつもりではいたんです。そんな僕でも「へえ!」と初めて知ることがたくさんありました……! 特に今回展示されているものは、まったく見たことのないものばかりで。ちょっとした設計図や、ガウディのデスマスクなど、普段は触れられないものがたくさんあります。たとえこれまでバルセロナやスペインに旅行に行って、サグラダ・ファミリアを見たことがある方でも、今回の展示で出てくるものは恐らく目にしたことのないものばかりではないでしょうか。

サグラダ・ファミリアは140年も前からずっと作られてきていて、まだ未完成というところも含めて謎めいていますよね。そもそもその設計図自体、ガウディの頭の中にしかないから世の中にない、みたいなことも言われていましたし。紆余曲折あって今の状態になっているわけで。これだけの施設なので、中や外、設計上の秘密までいろいろなものがあります。ぜひ興味を持っていただいて「うわ、これどうなってるの?」という方はそこからまた深く調べるきっかけにもなると思いますし、反対に自分なりの「こうであってほしい」というものを信じることも決して悪くないとは思います。そういった神秘的な部分まで楽しんでいただける展示じゃないかなと、僕は思います。

サグラダ・ファミリアの完成は……?

――実際、ガイドの収録にあたっては、どういった点を意識して臨みましたか?

ありがたいことに、声のお仕事は時々させていただくんです。僕なりのナレーションの美学みたいなものがあるんですけど、今回は聴いている方がなるべく耳ざわりがいいようにと心がけました。聴きながら歩いている人たちのことを想像してしゃべっています。資料もたくさん用意していただいたので、「これを見ながら皆さんは聴いているんだ、見ているんだ」と思いながら、そこに息を吹き込んでいく感覚でした。

なるべく臨場感や想像力を駆り立てるような、そして主張をしすぎないように、声のトーンも普段自分がしゃべっている雰囲気とは違って、少しフォーマルっぽい感じを意識しました。でも、やりすぎるとちょっと違うので、そのバランスは絶妙に難しいなあと思いながらやっていました。

僕自身も先日、大河ドラマの特別展『どうする家康』では音声ガイドを聴きながら回ったんです。そのとき、改めて声の力はとても大切だなと思いました。もちろん目で見て得る情報、読んで得る情報も大事なんですけれど、耳に直接入ってくる情報はすごくヘルプになっていると気づいたので、僕もその助けになれればという気持ちです。

――ガイドを読みながら、特に心に残ったフレーズはありましたか?

「ガウディがこんなことを言ってるんだ、面白いな」と思うことはたくさんありました。中でも印象的だったのが「この聖堂(サグラダ・ファミリア)を完成したいとは思いません。このような作品は長い時代の産物であるべきで、長ければ長いほど良いのです」というフレーズでした。作っている人が完成させないと言っている、この矛盾……! それが面白いなとすごく思います。実際、非常に時間をかけて作っていますけど、「ちょっと、あなた何もしていないよね?」という人もいるんですよ。僕、住んでいたんでわかるんです(笑)。

――遅々として進まず、ですか?

本当に、はい。「やってるよー、俺たち!」「工事してるよー!」というパフォーマンスなんです。今、「2026年で完成」と言われているんですよね? 前は「あと100年」とか言われていたのに、いきなりものすごい早まっていて(笑)。

――「そんなことある!?」という感じですよね。

僕が高校のときには、「あと100年完成しない」と言われていたんです、確か。あれから20年しか経っていないのに、なんで突然80年分縮まっているんだろうと思いますよ(笑)。もしかしたら、とてつもなく文明が進化して、めちゃくちゃ急ピッチで進むようになったのか、バルセロナの民がいよいよ完成の方向に動いているのかはわからないですけれど。

少なからずガウディは完成させるつもりはなくて、時代の産物として作っているさまが長ければ長いほどこれはいいんですよ、と言ったとされている。そこが僕はやっぱり面白いなと思います。

――2026年に完成予定と聞いて、城田さん的にはちょっぴり残念な気持ちがあるんですか?

僕は、2026年には完成しないと思っています。バルセロナに住んでいる人間は、みんなそう思っているんじゃないかな(笑)。完成するのか、しないのか……そこは神が味方するのか、ガウディが味方するのかはわからないけど、何か起こるんじゃないかな、とは思います。何かを理由にまた工事が必要になるようなところが見つかるとか、スペイン人としては「何か起こるんじゃないかな」という期待を持ってしまうんですよね。

延期になったら「ほらね」だし、完成したら完成したでみんなお祭り騒ぎで「うわぁ! 完成したー!!」となると思う。どちらにしても僕を含め、ハッピーな人たちなんです(笑)。

先人たちに想いを馳せて、学びを得る

――これまで様々な美術館や博物館に行かれたと思いますが、特に思い出に残っているところはありますか? また、そうして出向いて見ることのよさみたいなものを城田さんはどう感じていますか?

一番最初に今ぱっと出てきたのは、ルーヴル美術館やオランジュリー美術館でした。先日ロンドンに行ったときは、大英博物館にも行きました。衝撃的だったのが、大英博物館は無料なので、誰でも入れるんですよ。でもゴッホもあったりしてハチャメチャすごくて、これを「タダでみんなに見てくれ」と言っている国はすごくいいなと感動しました。博物館に来ている現地の学生さんとちょっとしゃべったときに、「無料で観られる。だから私はここによく来るんです」とお話していて。生活の一部として普段から行き来できる、普段から芸術に触れられて、その中で勉強できる環境がすごく羨ましくなりました。

……とはいえ、僕の若い頃は、美術館や博物館には興味がなくて全然行っていなかったんです。それでも歳を重ねるうちに、芸術品の構造に興味が湧いてきました。博物館で言うなら、何百年も前の食器や時計を見て「うわ、どうなってんの、これ!」とワクワクしたりします。

ガウディもそうですが、今の僕らが行っている生活とは種類や体感の速度がまったく違うものに触れると、つくづく先人たちが作ってきたもの、いろいろなジャンルにおいての歴史、今、未来、みたいなものを振り返るきっかけをくれるんだなと思います。過去の誰かが言ったり、やったことを見て、だから僕はこうしよう、という学びがある。振り返られる産物みたいなものが、博物館、美術館にはたくさんあって、過去のできごと、歴史から学ぶことがたくさんあると思っています。それらから考えて行動できる今の時代の僕らは、すごく幸せ者だなとも思うんです。

――貴重なお話の数々、ありがとうございました。最後に、展示を楽しみにしている皆さんにぜひメッセージもお願いします。

日本にもとてつもなく素敵な神社やお寺がたくさんありますけど、そういった感覚と同じように、このスペインのバルセロナには世界が認めるサグラダ・ファミリアという素晴らしい建物があります。この建物に、全人生をかけていらっしゃる方たちが作られたもので、そしてそこは祈りを捧げるための場所だというのが、とてもまた素敵なんです。貧しい人たちが神に「幸せをつかみたい」と祈るための場所になっているという。その歴史や奥ゆかしさみたいなところが見られるので、ぜひ見に来ていただきたいです!

今回の展示は、行ったことがある人・ない人の両方が楽しめると思っています。例えば、すでに行ったことのある人は、やっぱり見たときの感動が蘇ると思うので、その細部に「実はこういうことがありますよ」ということを勉強できる素敵な機会になると思います。反対に、行ったことのない人は「これを見てからいつかスペインに行こう、バルセロナに行こう、見てみたい!」というステップになると思います。2段階で楽しめるとでもいいますか。

――ちなみに、バルセロナという街のよさについてももう少し教えていただけますか?

これだけは自信を持って言います。ガウディもサグラダ・ファミリアもですが、バルセロナは本当に最高の街です! そこに住んでいる人たちは、家族一番、友達二番みたいな感じで生きていて、仕事よりも人としての付き合いみたいなものを大事にするんです。大概の人たちはとてもやさしくて、モノを落としたら「落としたよ」と教えてくれるようなコミュニティなんですね。東京だとほとんどの人がスルーだけど、バルセロナだと電車に乗っていても、普通に知らない人と話をし始めるくらいの感覚なんです。

芸術も楽しめて、食も美味しいし、人も優しいし、気候も夏はカラっとしていてジメジメしていないし、22~23時ぐらいまで明るいし、もう最高です! なので「バルセロナに遊びに行く」ことを目標に、『ガウディとサグラダ・ファミリア展』を楽しむのもありかなと思います(笑)。


取材、文=赤山恭子 写真提供=東京新聞

展覧会情報

ガウディとサグラダ・ファミリア展
会期:2023年6月13日(火)~9月10日(日) 
会場:東京国立近代美術館 1F 企画展ギャラリー
開館時間:10:00~17:00(金・土曜日は20:00まで)
*入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(ただし7月17日は開館)、7月18日(火)
主催:東京国立近代美術館、NHK、NHK プロモーション、東京新聞
共同企画:サグラダ・ファミリア贖罪聖堂建設委員会財団
後援:スペイン大使館
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