吹奏楽部アニメ「ハルチカ」放送開始

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2016.1.7
アニメ「ハルチカ ~ハルタとチカは青春する~」  c 2016 初野晴/KADOKAWA/ハルチカ製作委員会

アニメ「ハルチカ ~ハルタとチカは青春する~」  c 2016 初野晴/KADOKAWA/ハルチカ製作委員会

吹奏楽、青春、そしてミステリ!

この数年、クラシック音楽とアニメの距離が急速に縮まっているように感じる。昨年も「四月は君の嘘」、「響け!ユーフォニアム」の二作がヒットしたのは皆さまもご記憶だろう。放送終了とタイミングを合わせて原作も完結した「四月は君の嘘」はいまも読者、視聴者の心に残っているし、先日のテレビ番組では「ワンピース」の尾田栄一郎が嫉妬したマンガとして挙げていた。「響け!ユーフォニアム」はTVシリーズの大好評を受けて映画化、そしてTVシリーズ二期がすでに決まっている。

どちらの作品も魅力的に演奏を描写してくれたことは、ひとりのクラシック音楽好きとして喜ばしいことだった。また、ふだんクラシック音楽に距離を感じる皆さんがこれらの作品を通じてクラシック音楽に興味を抱いてくれるならば、まさに望外の喜びである。

そしてその二作に続くように、高校の吹奏楽部を舞台に物語が繰り広げられる「ハルチカ ~ハルタとチカは青春する~」が昨晩1月6日深夜の東京MX、そしてサンテレビの放送からスタート、明けて本日は作品の舞台である静岡県(小説発表当時の清水市が舞台)などで放送され、以降も各地の放送局およびBS11での放送、Web配信が順次開始される。

アニメの原作となる「ハルチカ」シリーズは、初野晴の連作小説集、いわゆるライトノベルではなく一般向けのミステリ小説だ。2005年に雑誌掲載された短編「結晶泥棒」からシリーズははじまり、2008年に刊行された「退出ゲーム」から昨年発刊された「惑星カロン」まで、現在五作が刊行されている。

今回のアニメ化に際して、「TARI TARI」で”合唱時々バドミントン部”を魅力的に描写した橋本昌和が監督に起用された。そしてキャラクターは「棺姫のチャイカ」でもおなじみのなまにくATK(ニトロプラス)が原案、紅白出場でますます話題のμ'sを「ラブライブ!」TVシリーズで魅力的に描いた西田亜沙子のデザインだ。ちなみにおなじキャラクター原案によるコミカライズ(漫画:ぶーた)がアニメの放送に先駆けて月刊少年エースに連載され、すでに第一巻が刊行されているので、このキャラクターたちの「ハルチカ」の雰囲気が気になる方はそちらもチェックしてみてほしい。

穂村千佳(チカ)と上条春太(ハルタ)は三角関係のライバル?

穂村千佳(チカ)と上条春太(ハルタ)は三角関係のライバル?

そして制作が「TARI TARI」「SHIROBAKO」のP.A.WORKSとくればなるほど、それはPVの仕上がりが美しいわけである。

キャストには初の主演作となるブリドカットセーラ恵美ほか、斉藤壮馬、花江夏樹と若手の人気声優が並ぶ。声が、演技がつくことでキャラクターたちのドラマがどう立ち上がってくるのか、第一話の若さあふれる顔見せの賑やかさからどう展開してみせるのか、大いに期待が高まる。

注目の音楽は、「おおきく振りかぶって」「ガールズ&パンツァー」でブラバン、吹奏楽を上手くドラマに活かした浜口史郎が担当。
「ハルチカ」は、前述の「響け!ユーフォニアム」同様に高校の吹奏楽部が舞台ではあるのだが、「響け!ユーフォニアム」のように”部員は数多く、良い指導者が来て、生徒がやる気を出せばすぐにも全国大会を目指せる”部ではなく、……いや、ネタバレは避けよう。「ハルチカ」シリーズでは「彼ら彼女らの吹奏楽部がどうできあがっていくか」も見どころのひとつなので。これからのアニメの展開なり、原作なりコミカライズなり、ぜひ皆さまご自身でお確かめいただきたい。

そんな吹奏楽部が舞台なので、音楽的には「作中の草壁先生による清水南高校吹奏楽部にあわせた絶妙な編曲をどう聴かせてくれるか」がポイントとなる。第一話ですでに原作読者なら思わずうなる楽曲の使い方も見られたので、この先も浜口史郎によるサントラには大いに期待したいところだ。また、本作では楽器専門の作画監督を配して演奏描写を徹底しているとのことなので、音楽と映像のケミストリーにも期待しよう。

なお、オープニング/エンディングはそれぞれfhána、ChouChoが担当する。第一話ではオープニングのfhána「虹を編めたら」のみ使用されたが、男女のヴォーカルの用い方が実にfhánaらしい、爽快な一曲に仕上がっていた。ChouChoが担当するエンディング「空想トライアングル」にも期待が高まる。

演奏シーンも注目!

演奏シーンも注目!

注目のTVアニメ「ハルチカ ~ハルタとチカは青春する~」は、昨晩の東京MX、サンテレビでの第一話がTwitterなどSNSでも大いに話題となっている、ここではあえて指摘していないことも含めて、いろいろな面から(意味深)。アニメ好き、吹奏楽好きにとどまらず、クラシック音楽ファンの皆さまもぜひお楽しみいただきたい。音楽の知識などなくても楽しめる、青春ミステリアニメの開幕である。

◆ ◆ ◆

ここからは少し違う角度から、原作読者のひとりとして書きたい。先ほども書いたとおり、原作小説は吹奏楽青春もの、そして同時にミステリ作品だ。生々しい犯罪行為は描かれない、おそらくは「日常の謎」ジャンルに分類されるのだろう作品で高校が舞台とくれば、アニメ化作品としては米澤穂信の「氷菓」が思い出されるが、「ハルチカ」シリーズは部活動や学校生活といった”高校生の日常”の枠からはみ出てしまうところにその独自の魅力があるように私見する。高校生が高校生のままで、学校という”結界”の外側にある”謎”に向き合うことで生じるドラマは、音楽に負けない本シリーズの見どころになるのではないだろうか。

幸いなことに”音楽とアニメ”に負けず”ミステリ小説とアニメ”の距離も近年縮まっている。昨年も「六花の勇者」「すべてがFになる」と長編ミステリの見応えあるアニメ化があったことは、ミステリ好き各位はご存知かと思う。この流れの中で登場する「ハルチカ」が、音楽好きのみならずミステリ読みをも存分に楽しませてくれることにもまた、期待したい。

放映情報
アニメ「ハルチカ」

監督:橋本昌和
制作:P.A.WORKS
キャスト:ブリドカットセーラ恵美(穂村千夏 役) 斉藤壮馬(上条春太 役) 花江夏樹(草壁信二郎 役) ほか

■OA:
TOKYO MX:1月6日から毎週水曜日    25:35~26:05
テレ玉:1月10日から毎週日曜日    24:30~25:00
チバテレ:1月10日から毎週日曜日    24:30~25:00
tvk:1月10日から毎週日曜日 24:30~25:00
静岡放送:1月7日から毎週木曜日 25:41~26:11 ※第1話 1月7日(木)25:36~26:06
北日本放送:1月7日から毎週木曜日 26:29~26:59
岐阜放送:1月11日から毎週月曜日 25:00~25:30 ※第1話 1月11日(月)25:30~26:00
三重テレビ放送:1月12日から毎週火曜日    26:20~26:50
サンテレビ:1月6日から毎週水曜日 26:00~26:30
TVQ九州放送:1月12日から毎週火曜日 27:05~27:35
BS11:1月11日から毎週月曜日 27:00~27:30
テレ朝チャンネル1:1月20日から毎週水曜日 24:30~25:00
dアニメストアにて1月13日(水)12時より先行配信

■公式サイト:http://haruchika-anime.jp/
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