PassCode、激しさと美しさのハイブリッド 最新作『GROUNDSWELL ep.』を通して語る現在地とは
PassCode
スクリーモ、メタルコアを基調としたバンドサウンド、シャウトとスクリームを取り入れた歌唱スタイル、キレの良いダンスパフォーマンスを融合させながら、唯一無二の存在感を放ち続けているPassCode。昨年は初の日本武道館での単独公演を成功させて、『NUMBER SHOT 2022』『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022』にも出演するなど、活躍の場が着々と広がっている。このような状況をさらに加速する強力な武器になりそうなのが、最新作『GROUNDSWELL ep.』に収録されている4曲だ。メンバーたちに今作について語ってもらった。
――活躍の場がどんどん広がっていますね。
南菜生:トータルすると10年くらい活動してきて、いろいろありつつも安定してきているのかなと思います。コロナ禍の規制が緩和されてきている中、ライブをまた一から作っている途中という感じですね。
――思うように前に進めなくて悔しい想いをしたことも、最近のような状況に至るまでには、たくさんあったんじゃないですか?
大上陽奈子:悔しいことは、いっぱいあったかもしれないです。
南:涙は流してない?
大上:うーん……夜にひとりでいる時に流したことは、あったんかなあ?(笑)。イベントとかのタイムテーブルにPassCodeの名前が載ってるのを見て「なんでいるの?」って言われることもあったんです。でも、そういう声をあんまり聞かなくなってきたというか。どのイベントでも歓迎していただけるようになってきたのが嬉しいです。
――今年の3月にはFear, and Loathing in Las Vegasの主催イベント『MEGA VEGAS 2023』、昨年は『NUMBER SHOT 2022』や『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022』にも出演しましたね。
南:ロッキンは去年初めて出演したので、まだ「挑戦者」という感覚の方が強かったんですけど、『MEGA VEGAS』は音楽の系統が似ている先輩というのもあって、初めてPassCodeのライブを観るお客さんも、最後の方には手を挙げて盛り上がってくださったんです。2017年に出演させていただいた時とは、かなり変わったのを感じました。
高嶋楓:受け入れていただけていたのが嬉しかったです。
有馬えみり
――有馬さんは2021年に加入しましたが、充実した活動ができているんじゃないですか?
有馬えみり:そうですね。最近、時間と心に余裕があります。加入した頃は練習もたくさんしたのでスケジュールがいっぱい詰まってたんですけど、曲をたくさん覚えたので、余裕が持てるようになりました。
――新メンバーの加入に関しては、ファンのみなさんの間でも様々な意見があったと思いますが、この編成でこれだけ活動を重ねてきたら、説得力が生まれていますよね?
南:そうですね。加入してから2年くらい?
有馬:うん。
南:「もう続けられないかもしれない」と思った瞬間は何度もありましたけど、こうやって続けてきてふと振り返ると、大変だったことも楽に話せるようになっているというか。大人から与えられたことしかできない環境で活動するアイドルもいますけど、PassCodeは自分たちがやりたいことについてスタッフとかと話し合って物事を進められるんです。昔は「事務所が小さいから、イベントに出られない」とか悩んだこともあったんですけど、今はこの環境の方が自分たちに合ってると感じるようになりました。
大上陽奈子
――現在、全国ツアー中ですね。ライブでお客さんにも声を出していただけるようになっていますが、どのようなことを感じていますか?
大上:久々のお客さんの声は、感動します。お客さんの声があることによって、ライブに関するいろんなことが増すんですよ。私たちもテンションがより上がりますし、やっぱりお客さんの声は最高です。「お客さんと一緒に作ってるライブ」という感覚が高まります。
――有馬さんは、お客さんの声が聞こえるPassCodeのライブを最近までやったことがなかったんですよね?
有馬:はい。コロナ禍が続いていた2021年の加入なので。
――加入前はPassCodeのライブを観に来たこともあったわけですから、ステージに声を届けるお客さん側だったということですか?
有馬:声は出してなかったです(笑)。聴く専門だったので。でも、周りのお客さんが盛り上がってるのは、すごく感じていました。お客さんの乗り方がどこにも属さない感じだったというか。フロアの後ろの方から見ていると、クラブみたいに飛び跳ねて盛り上がっていて、楽しそうな光景でしたね。最近、そういうのをステージから見ることができて、すごく感慨深いです。たまにイヤモニを外してお客さんの声を聴くと感動します。
高嶋:ずっと声を出せなかった分を思いっきり出そうとしているファンのみなさんの気持ちも、声に乗って伝わってきます。私もテンションが上がって、「パフォーマンスを頑張ろう!」ってなるので、やっぱりお客さんの声は嬉しいです。
南菜生
――今回のEPで生まれた強力な曲は、ライブでも大活躍しそうですね。「Lord of Light」、かっこいいです。
南:ありがとうございます。歌声にオートチューンはかかっているんですけど、歌を聴かせるようなアレンジが以前よりも増えてきているんですよね。ライブをたくさんやってきた中、メンバーそれぞれが昔よりも歌えるようになってきているので、「もっと前に出してもいいのかな?」ってなってくださっているのかなと。メンバーの声質の違いも、昔の曲よりも活かしていただけるようになってると思います。
――昔の曲は、「歌もトラックを構成する音の一部」みたいな感じの作り方が多かったですよね?
南:そうですね。今は「歌もの」までは行かないですけど、ボーカルのメロディが前よりも強くなっていて、歌が前に出ているアレンジが多いので、「ちょっと信頼を勝ち取ってきたんかな?」って思ってます(笑)。
――(笑)。温かさがある曲も増えてきたかもしれないですね。
南:そうですね。昔は、もう少し機械っぽい感じもあったので。
――前作の「SIREN」は、まさに温もりを感じる曲でした。
南:息づかい、声の特徴、癖をわりと残していましたよね。私は歌う時にしゃくったりするんですけど、あんまりしゃくらないで歌ってたら「やちい(南の愛称)、しゃくるやつやってや。あれやった方が、やちいが歌ってるっていう感じがするから」って、平地さん(サウンドプロデューサー・平地孝次)に言われたりもして。メンバーそれぞれの歌の良さ、特徴を引き出してレコーディングすることが多くなってきたのを感じます。
――みなさんの頑張りによって、歌声の魅力を平地さんに認めていただけるようになったということですかね?
南:どうでしょう? ライブをやる毎に少しずつお歌が歌えるようになってきているんだとは思います。昔は……ね?
高嶋:うん(笑)。
南:「平地さん、大変やろな」って思ってたので(笑)。
高嶋:私は自分が思ってるよりも声が高いことに気づくようになってます。今回のEPに入ってる「GROUNDSWELL」を初めて聴いた時、Aメロがものすごく高くてびっくりしたんです。自分の声なのに他人事みたいですけど、「少しずつ声が変化してるのかな?」と(笑)。
大上:歌の振り幅は、ここ数年で広がってきましたね。「もっと自由に歌っていいんや」って、様々なトライができるようにもなってます。いろんな声を試して歌うのが楽しいんですよ。幅をもっと広げていきたいですね。
高嶋楓
――メンバー各々の多彩な歌声があって、そこに有馬さんのシャウトも加わることによってさらに無敵になっているのが、今のPassCodeではないでしょうか?
有馬:そうですね(笑)。シャウトしている時、私は自信満々です。電車の先頭にいる気分ですね。
南:「電車の先頭」ってどういうこと?
――なんとなくニュアンスはわかります(笑)。各駅停車ではなくて、新幹線とかの先頭車両みたいな精悍なイメージ?
有馬:そういうことです(笑)。
――この4人体制は、揺るぎないものになっていますね。
南:そうですね。みんなで同じようなことで笑って、同じようなことで怒ってっていうようなのを繰り返してたら、こうなってました。平地さんも曲を作るのが楽しくなってるのかもしれないです。曲を歌いながら、そういう感じが伝わってくることがあるので。「次はどういう曲がいいかな?」とか、ご飯を食べながらよく話しているんですよ。
――今作の各曲も、充実した活動から生まれているのを感じます。歌詞に関しては、道を切り拓いて前に進む姿が様々な形で描かれている印象がするんですが、この点に関してはどのように思いますか?
南:そうなんだと思います。歌詞を書いてくださる方々は、今のPassCodeの状況を汲み取ってくださることが多いんですよ。コロナ禍が明けた中で、こういうメッセージが多くなってきているんだろうなと思います。
――サウンドの切れ味も抜群ですね。
南:今回の曲も、バンドのみなさんがはしゃいでくださってます。演奏するのが楽しいらしいです。そういう姿を見ると、私たちも嬉しくなりますね。ずっとPassCodeの曲を演奏してくださってる方々ですから。