ODD Foot Works・Pecori×Aile The Shota 相思相愛の初の2マン開催を前に、強く共鳴するクロスオーバーな活動スタイルを語る

インタビュー
音楽
2023.7.19
ODD Foot Works・Pecori/Aile The Shota

ODD Foot Works・Pecori/Aile The Shota

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7月26日に開催されるODD Foot Works の2マンライブシリーズ『GALAXY MOTEL vol.7』にゲスト出演するAile The Shota。きっかけは、ShotaがラジオでODDが昨年リリースしたアルバム『Master Work』に収録されているODD流のニュージャックスウィング曲「I Love Ya Me!!!」を絶賛したことだった。Shotaは以前から、ODDのクロスオーバーな音楽解釈に強い感銘を受けていたという。一方、ODDのラップ担当・Pecoriはオーディション「THE FIRST」の頃から、Shotaの高いクリエイティヴィティに注目していたそうだ。初の2マン開催を前に行われた初対談をお届けする。

──7月26日に渋谷 WWW Xで開催されるODD Foot Worksの2マンライブシリーズ『GALAXY MOTEL vol.7』のゲストがShotaさんです。ShotaさんがODDの「I Love Ya Me!!!」をラジオで熱くレコメンドしたことがきっかけということですが。

Aile The Shota:そうなんです。僕、ODDの曲は何回かラジオでかけてるんですが、「I Love Ya Me!!!」をかけた割と直後に2マンのお誘いが来たのでびっくりしました(笑)。

Pecori:面識もなかったからね(笑)。僕はオーディション番組が好きなので、「THE FIRST」も観ていて、その頃からShotaのことは知ってたんです。

Shota:マジですか? 変な汗かいてきた(笑)。

Pecori:Aile The Shotaとして活動し始めたのも知っていて。マネージャーからShotaがラジオで俺らの曲をかけてくれたことを聞いて、radikoで追いラジオしたんです。そうしたら、俺が思っていたよりも熱量高めに「I Love Ya Me!!!」の音楽構造を分解してくれてたのがすごく嬉しかったんですよね。

Shota:あの曲は本当に衝撃的でした。僕はダンスがルーツなので、曲を作る時のアイディアの元としてダンスの存在が大きくあるんです。僕がODDを知るきっかけになった親友がニュージャックスウィングで踊る子だったっていうこともあって、「ニュージャックスウィングの曲を作りたい」と思いながらも、ハードルの高さを感じて踏み込めていない時期に「I Love Ya Me!!!」を聞きました。「こういう角度があるのか!」と思いましたね。フックはニュージャックスウィングのビートを使っているけど、思いもよらない展開をする。「これだわ!」って思って喰らいました。

Pecori:イェーイ!

Shota:(笑)聞いた側もイェーイ!でした。

Pecori:今Shotaが話してくれた部分は狙ってたわけではないんですが、いろんな解釈をしてもらえるのが音楽の最大の醍醐味だと思っているし、俺らの楽曲はいろんな解釈をしてもらえるのが良いところだと思っているので嬉しいですね。

ODD Foot Works・Pecori

ODD Foot Works・Pecori

■Pecoriさんのメロディセンスは意味がわからないです(笑)(Aile The Shota)

──ODDのことはいつ頃から知ってたんですか?

Shota:「髪と紺 feat. AAAMYYY」(2019年)がきっかけで聞くようになりました。自分のルーツとしてもうひとつ、日本のR&B/ヒップホップがあって。高校生まではヒットチャートに入っているJポップをずっと聴いていて、大学に入ってダンスをやる中で日本のヒップホップとR&Bに出会い、SIRUPくんとかを聞くようになった僕にとって「髪と紺」は衝撃でした。僕は曲によってオートチューンを使いますが、ODDはオートチューンなのに硬くならない音像で、「こういうアプローチもあるんだ」って思ったんです。Pecoriさんのボーカルに惹かれていろいろな曲を聴きましたね。Pecoriさんのメロディセンスは意味がわからないです(笑)。

Pecori:まあ、そこに関しては天才だと思います(笑)。

Shota:天才ですよ(笑)。「なんでこうなるんだろう?」「これはできないわ」みたいな角度でODDの曲をずっと聞いてます。

Pecori:嬉しい。

──PecoriさんはShotaさんの活動をどう見ていたんですか?

Pecori:おこがましいかもしれないですが、オーディションの時から確実にクリエイティヴィティが高い人だと思っていたので、グループで活動をしても強みは発揮できるとは思うけど、ソロで自分の演出のもとにやりたいことをやるのが向いている人だろうなとは思っていました。今はクリエイティヴィティをすごく発揮できている状態だと思うので、ここからの未来も楽しみですね。

Shota:ああ、嬉しいです。オーディションの終盤に、「グループとは違う形でBMSGで活動してくれませんか?」と日高(光啓)さんに言ってもらった時は「ソロでやりたい」とははっきり伝えてはいなくて。BE:FIRSTが生まれた後のミーティングで「軸足はソロに置いた上で活動したい」とお伝えした延長線に今の活動があります。すごく好きにやらせてもらっているので、どんどんソロ活動がしっくりきてる感覚はありますね。

──Pecoriさんは先日Shotaさんの初のワンマンツアーを観に行ってましたが、どんな印象でした?

Pecori:ダンスをやっていたっていうのが大きいのかもしれないけど、Bボーイマナー的な昔からの友達と一緒に駆け上がっていく感じがあったのがすごく良かったですね。客演の人たちは昔からの友達なの?

Shota:そうです。Aile The Shota以前の仲間だったり、昔はリスナーとして聞いていたラッパーとデビュー後に知り合えて、今では僕が兄貴分みたいになっているようなゲストもいました。地続きであることを大事にしたいんですよね。

Pecori:そう。その感じが良くて喰らいました。一番大事だと思う。

Shota:嬉しいです。友達を作ることが大好きな分、ずっとある繋がりを通してどんどんその場所を大きくしていきたいんですよね。

Aile The Shota

Aile The Shota

■お互いのファンがクロスオーバーしてWin-Winな形になりそうだなと思った(Pecori)

──『GALAXY MOTEL vol.7』のゲストとしてShotaさんを呼ぶのは、もう迷いなくという感じだったんですか?

Pecori:そうですね。これまで6回開催してきて、それこそ昔からの友達にも出てもらってきた中で、音楽性は通じる部分がたくさんあるけれど、界隈がちょっと違くて意外性のある人が良いよねっていう話をしている時に、ちょうどShotaのラジオを聞いたんです。出会いのタイミングを大事にしている俺としては、「これはすごく良いタイミングなんじゃないか」と思って誘いました。他に候補はいなくて一択でしたね。

──確かに界隈は少し違うかもしれませんが、2組ともジャンルレスでクロスオーバーな印象があるのですごく納得しました。

Pecori:そこが盛り上がるひとつのポイントでもあると思っていて。お互いのファンがクロスオーバーしてWin-Winな形になりそうだなと思ったんですよね。

──去年の『Master Work』のSPICEのインタビューでPecoriさんは「ODD自体がジャンルだと思っているので、ジャンルジャンルうるさいなって思いながらODDをやってる」って言ってましたけど、ShotaさんもEP「IMA」の時に、「Aile The Shotaという存在自体をジャンルにしていきたい」と言っていたので、そこもリンクするなと思いました。

Shota:そうですね。ODDは何でもありっていうことを示してくれるので、すごく勉強になりますし、自信をもらいます。『Master Work』はまさに「ジャンルとは?」みたいなアルバムで、「こんなにいろんなサウンドをここまでかっこよく消化できるんだ」と思いました。

──Shotaさんの曲の振れ幅もかなり大きいですよね。

Shota:これまでの曲はほとんど毎回プロデューサーが違うんですけど、その人の100点に僕が100点を乗せる修行だと思って取り組んできているところもあります。ずっと「こういうビートにも乗せられるようになったか」みたいなことを感じながらやってきてますね。これまでのプロデューサーのおかげで、自分では気付いていないルーツを引き出してもらえているのですごく感謝してます。楽しいですね。

■ODDはバンドであれだけの幅があるのがすごい(Aile The Shota)

──ODDはメンバーは3人ですけど、去年はDJとMPCを加えた4人編成で、今はキーボードとドラムを入れた6人編成でライブをやっていて、どんどん引き出しが増えてますよね。

Pecori:そうですね。ODDの良さとしてメンバー全員ルーツが同じではないっていうのが一貫してありますね。それぞれのいくつもあるこだわりをはめ合わせるのが難しかったりもします。でもそれがバンドの良さでもあると思うし。

Shota:バンドであれだけの幅があるのがすごいなって思います。ODDは全員が舵を取れるわけですし。

──曲ごとにメンバーの内の誰がプロデュースを担うかが違います。

Pecori:そうですね。でもMCの自分としては、さっきShotaが言ってた話にも通じるけど、全然通ってないようなビートアプローチとかにどうラップを乗せられるかで自分の成長が楽しめるところもあります。だから、ラッパーとしてもODDの存在はありがたいです。

──Pecoriさんは去年からヒップホップによりフォーカスしたソロプロジェクトを始動させましたが、それはODDとは別にそういうアウトプットがあった方が良いという気持ちがあったんでしょうか?

Pecori:そうですね。俺も雑食なので。中学の時はバンドをやっていて、高校でヒップホップにはまったんですが、ODDが去年『Master Work』でバンドとしての形をがっつり示したところで自分はラッパーとしてどう生きるべきかを考えて、自分が100%やりたいことをやる場所がないと絶対にダメだと思いました。ODDは他のメンバーもソロで活動していますし、両方あるのがベストな形ですね。

──Shotaさんもソロ名義がありつつ、客演もあり、BE:FIRSTのSOTAさんとMANATOさんとのShowMinorSavageもあり、BMSG POSSEもあります。複数のアウトプットを持つことはどんなポジティブな作用があるんでしょう?

Shota:ソロは行き詰まることもあるんですよね。自分だけで大いに迷って、正解がわからなくなることもあります。そこでプロデューサーに助けてもらったり。ShowMinorSavage では、SOTAとMANATOはまた僕とは正解の出し方が違うので、2人が「これがイケてる」と思うものを僕も正解にしたい。客演は肩の力を抜ける部分もあるし、呼んでくれた人が喰らってくれるのが正解だし、自分で「喰らわせられた」と思えたら正解だと思ってます。それぞれ力の入れ方が違って、どれもやれていた方が僕としてはバランスが良いんです。外でやるとソロの力みが良い意味で抜ける感覚がありますね。必要な力み方だけできるようになるというか、迷い過ぎずに柔軟になれるところがあるかもしれないです。

──Pecoriさんも客演を多くやられていますが、Shotaさんが言ったような感覚はありますか?

Pecori:ありますね。客演は喰いにいってるし、喰えると思ってはいます。でも最近客演が増えている中で、結論は全然出てないんですけど、喰らわせる以外の客演のやり方ってあるのかなって思ったりします。50/50で作り上げてる感じをどうしたら見せるのかっていう意識も芽生えてきてますね。

Shota:僕の場合、誰かと曲を作る感覚が自分を助けてくれているところは結構ありますね。「あ、そっちでいいんだ」みたいな刺激を受けて吸収して、強く自分を持ちつつ、側(がわ)はめちゃくちゃ柔らかいみたいなバランスが良いなと思っています。

■ジャンルはいろいろだけど一貫性があって、全部がAile The Shotaの曲だったから完璧だと思った(Pecori)

──Shotaさんはいろんな人と関わることで、アーティスト同士を結ぶ媒介のような存在になってる感じがします。

Shota:ああ、嬉しいですね。デビュー当時は「いろんなことをやりすぎて、『何がしたいの?』って思われないかな」っていう不安がすごくあったんです。本当にシーンやジャンル問わず、いろんな人と曲を作りたいと思っていたので。でも、とりあえずわからなくなるまでやりたいことをやってみようと思ってやってみたら、わからなくなるより前にAile The Shotaが掴めたので「よっしゃ!」と思ってそのまま突き進んでいますね。

Pecori:それはライブ観てても思った。ジャンルはいろいろだけど一貫性があって、全部がAile The Shotaの曲だったから完璧だなと思ったよ。

Shota:ODDのクリエイティブはお手本みたいな感じがするので、そう言ってもらえてすごく嬉しいですね。

──ODDは今のライブ編成はキーボードとしてパスピエの成田ハネダさんが参加していますが、定期的に「こういう変容の仕方があるんだ」っていう風に提示してくれてると思うんですよね。

Pecori:キーボードは3~4年前から入れたいと思っていたんですけど、いろんな形を見せながらも、核にある部分の一貫性を常に提示していきたいですね。それがないとフェイクになってしまう。大事なのはそこですね。

──そうですよね。ジャンルレスな時代ではあると思うので、どう軸を作るかがすごく大事になってくる。

Pecori:そうですね。だからさっきの『Master Work』の時に言った、「ジャンルジャンルうるさいよ」っていう発言に追記すると、「結局何がしたいの?」って思われるのは良くないから、ちゃんとわかってもらえるようにしなきゃダメだと思うんですよね。

──Shotaさんは、Zeppクラスのワンマンをやって、「これだけの人が自分のスタイルを支持してくれてるんだ」という手応えはありましたか?

Shota:ありましたね。ビートアプローチとかが全部違う中でお客さんがずっと乗っててくれていたことに対して、リスナーを育られている感覚もありました。すごくメロウな曲がある一方で、ディープハウスでも躍らせることができるライブを作っていきたいと思っているので、まだまだこれからではありますが、ファーストワンマンでそういう光景が見られたのはすごく嬉しかったです。僕、ライブでは全然緊張しないタイプだったんですが、この前のワンマンは楽しむっていうことだけじゃなく、リスナーや関係者の方に僕のマインドを提示する目的もあったので、超緊張しました。

──ODDの『Master Work』には「超音楽宣言」というコピーが付いていましたが、宣言して提示するっていう意味合いもありましたよね。

Pecori:そうですね。コロナがあったからかわからないですが、どんどん伝わり辛い世の中になっていると思ったので、宣言することが大事だなって思ったんですよね。自分たちとしては「伝わるヤツにだけ伝わればいい」っていう時期は終わっているので。だから自分のリリックの書き方も変わったし、伝わってなんぼだなって思いました。

Shota:あのアルバムは、何をやったとしても正解にする方法をまさに提示してもらいました。それこそAile The Shotaのやり方が間違ってないと思えた。『Master Work』にはザ・バンドサウンドみたいな曲もあったので、僕もバンドサウンドをやってみたいなって思いましたね。Jロックは学生時代に通ったし。すごく幅を見せてもらったし、「超音楽宣言」をまっすぐに受け止めました。

Pecori:そうやってアーティストに伝わるのはやっぱり嬉しいですね。

Shota:ODDの作品は「どれだけのアーティストが喰らってるんだろう」って思う曲が本当多いイメージがあります。

■50/50でひとつのイベントを築き上げるようなところを目指したい(Pecori)

──7月26日はどんな2マンにしたいですか?

Shota:僕はまだODDのライブを映像でしか体験できていないので、会場での時間の作り方をどうしようかなって思ってます(笑)。リハも観たいから、アップの時間どうしようとか。すごく楽しみですね。

Pecori:今のODDのライブのやり方はここ5年ぐらいやってきたライブとは違って完全に生音で、正直俺らも探り探りな部分はあるんだよね(笑)。

Shota:ODDのライブは映像でもヴァイブスがすごく伝わってくるので、いい形でバトンを繋ぎたいですね。それに、ODDのライブに来る人はジャンル関係なく曲を聴いてくれる人だと思うので、それも嬉しいです。

Pecori:そうだね。もしShotaのことを知らなくても好きになってくれそうだなと思って誘ってるから。俺らは基本自分よがりなグループなので、ゲストを呼んでおいて、「結果一番俺がかっこいいだろう」って風に見せたいグループなんですけど(笑)、今回は50/50でひとつのイベントを築き上げるようなところを目指したいと思います。だからShotaも遠慮なく自分のライブをやってもらえるのが一番いいかなと思います。

──ありがとうございました。おかげさまでいい話がたくさん聞けたと思います。

Pecori:良かったです。

Shota:僕がODDに惹かれてる理由がよりわかりました。

Pecori:ODDのことが好きでも、割と睨んでくる人が多いんですよね(笑)。俺もそういうタイプで、相手のことが好きだけど「超好きです」とは言えなくて、結果睨んじゃってるみたいな。だから、こんなにダイレクトに言ってくれる人は珍しいし、すごく嬉しかったですね。

Shota:良かったです(笑)。すごく楽しかったです!

取材・文=小松香里 撮影=岩澤高雄(The VOICE MANAGEMENT)

ライブ情報

『GALAXY MOTEL vol.7』
2023年7月26日(水)東京・渋谷 WWW X
出演:ODD Foot Works
ゲスト:Aile The Shota
前売:¥5,000(税込・1ドリンクオーダー)
Open 18:15 / Start 19:00
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