ホリエアツシ(ストレイテナー)、2人でのバンド結成から25周年を経て辿り着いた完全なるフォーピースへの道程を聞く

2023.10.7
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ストレイテナー

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バンド結成25年、メジャーデビュー20年、現在の4人編成になってから15年。キリのいい数字の並んだ2023年、新たに編まれたベストアルバムは、その名もずばり『フォーピース』。4人編成楽曲の中からファン投票上位に選ばれた曲に、リアレンジ曲と新曲を加え、コンセプチュアルな流れを持たせた2枚のディスクは、オリジナル作に劣らぬほどスムーズな流れとドラマチックな盛り上がりで、あらためてストレイテナーの魅力を発見する驚きと感動を運んでくる。2人で始めたバンドは、いかにして完全なるフォーピースへと進化したのか。ホリエアツシの証言を聞こう。

――結成25周年記念ベストと銘打たれていますけど、中身は大山さんが加入した2008年以降の15年間のベストなんですね。どういう経緯でこうなったわけですか。

5年前にベストアルバム(『BEST of U -side DAY-』『BEST of U -side NIGHT-』)を出して、全部の歴史のベストをファン投票で作った時に、セカンドアルバムの曲がほぼほぼ入ってきて、『TITLE』っていうアルバムなんですけど。ストレイテナーというバンドが世の中に認識された作品でもあったから、その時好きになってくれて、今も好きでいてくれる人は、そこへの思い入れが強くて、圧倒的に『TITLE』の色が強いベストアルバムになったんですね。でもそれは今の自分たちからしたら、懐かしい昔の曲という感じだし、今もライブでやってますけど、そうじゃなくて「現在進行形のベストアルバムを作ったらどうなるんだろう?」という興味から、今回のコンセプトになりました。ガラッと変わるのかな?と思ったんですけど、前作ベストに入っていた4人になってからの曲もほとんど入ってきてるし、かと思えば、ここ4,5年ぐらいの曲もけっこう乗っかってきたので、すごく嬉しいなというところですね。ちゃんと今を聴いてくれてるファンが、頑張ってくれたベストアルバムだなと思います。

――おおむね、予想通りでした? ファン投票の結果は。

いや、けっこう意外な曲もありました。「原色」が強かったりとか、前の時には全然上位に来なかった「Little Miss Weekend」とか。あと、僕が個人的に好きだって猛烈にアピールしてた「Man-like Creatures」が、前回のベストには入ってて、今回は何も言ってないけど入ってきましたね。この曲はもともと、僕はそうは思ってなかったですけど、お客さんを置き去りにする曲だったんですけど(笑)。ポカーンみたいな。でも春のツアーで久しぶりにやったらめちゃくちゃ盛り上がって、イントロからワッ!となるぐらいで、「あれ、こんな曲だっけ?」みたいな、それがすごく嬉しくて。

――新たな発見もあったと。それにしてもストレイテナーって、昔からファン投票スタイル、好きですよね。ちょいちょいやってる。

そう、初めてやったのが10年前の武道館で、その当時はアイドルしかやってなかったと思います。斬新なんじゃないかな?と思ってやったら、その後はけっこういろんなロックバンドがやってましたけど。

――面白いけど、不安はありますよね。何が来るんだろう?って。

まあ、今はもう、何が来てもいいかなっていうぐらい落ち着いてるというか、ガチガチに自分の意図を反映させる時期は、だいぶ前に過ぎ去ったので。「そんな曲選ばれちゃ困るよ」みたいなのはないです。(10年前の)ライブの時はありましたよ、「やりたくねぇなー」って(笑)。やりたくねぇなというか、思い出し作業が大変なんで、思い出したくねぇなーって。でもそれも、今後もやっていきますけどね。ライブの投票も。

――時間が経つことで、曲はみんなのもの、という感覚にどんどんなってきたのかなと思います。

そうですね。一人一人、違う思い入れがあるから。「自分がこういう状況に置かれてる時にこの曲を聴いて」とか、それは僕らにはわからないというか、僕が作った時に思っていたこととは違う受け取り方をされますよね。

――仮にホリエさんが全曲選んでいたら、全然違うものになったと思いますか。

かなり、裏ベストみたいなものになってる可能性はありますね。それか、表と裏を分けちゃうか。そうなったかもしれない。

――DISC1とDISC2の流れが非常に良かったですね。DISC1はライブチューンというか、アップテンポのギターロックが多い感じで、DISC2はキーボードチューンも多いし、ミニマルなダンスっぽい曲もあって、バラエティに富んでいる。それぞれ新曲と再録音曲を最初と最後に置いて、すごくよくできた流れだなぁと思いました。ただ並べただけのベストじゃないぞということは、みなさんに言っておきたいと思います。

この曲順で聴くことによって違ってくるし、新曲の意味とかもまた、伝わってくると思うので。ライブのセットリストもそうなんですけど、ストーリー性みたいなものがあったりするので、それをベストアルバムでも、自分なりに考えて作ってみました。

――新曲の「Silver Lining」と「246」がまた、いい味を出してるんですよね。大好きです。25年経った今もなお、なんてみずみずしいんだという感じがします。最近の曲作りって、何かモードがあったりしますか。

今は、けっこうシンプルに作りたいですね。いろんなチャレンジはしてきたけど、背伸びして作った曲もあったし、作り込んでいろんな音を入れたこともあったけど、今はバンド感とか、打ち込みを入れるにしても、展開によってバンドに回帰するとか、「Silver Lining」がそうですけど、足し算しないというところで作ってますかね。

――それが今は一番しっくりくると。

バンドっぽいのが、今また楽しいんですね。やっと(コロナ禍の規制がとけて)ちゃんとライブができるようになってきたし、ライブバンドっぽい音作りもしたいなというのがあったのと、あとは人間っぽさというか、人間っぽい曲を作りたいな、人間っぽいライブをやりたいなというのが強まってますね。世界観を作り込んで、舞台を見せるみたいなライブだったりとか、作り込まれたものの魅力はあるし、そこを目指したこともあるんですけど、今はもっと、人が作ってて一個一個全然違うとか、「それでもいいか」と思うようになってます。

ストレイテナー「Silver Lining」

――確かに、過去にも打ち込みばりばりの『LINEAR』のあとに、一発録りの『Immortal』を出したり、四つ打ちのダンスロックの時期もあれば、歌ものロックに特化した時期があったり。常に変化してきたなと思います。その時々の流行りの要素もあったと思いますけど。

自分の中でのモードというか、それがさっき言った「背伸び」ということにも近いんですけど、「これで受け入れてもらえたから、これでいいんだ」じゃなくて、また全然違うことをやりたくなっちゃうタイプだったんで。

――確かに、若干アマノジャクな面はあった気はします。

何よりも、自分が面白がっていたいので。だから、今は人間性が伝わる曲作りとライブをやりたいけど、それがまた急に変わる時が来るかもしれない。でも今は本当に、時期的にも、繋がりを持ちたい時ではあるんですね。世界がそうだと思うので。そこはアマノジャクにならずに、世界の一員としていたいです(笑)。

――新曲「Silver Lining」は、どんなふうに作った曲ですか。

「Silver Lining」は、かなり今の自分のモードで作ってます。スピード感のある曲を作りたくて、頭の中では速いビートのイメージだったんですけど、まずメロディができた時に、緩急つけて、サビだけ疾走するようなアレンジにしたら、より広がりが出て、意味が強くなるだろうなと。「Silver Lining」という言葉自体は、曲を作る前からあって、25周年の1年間のキャッチコピーみたいな意味で、25だからシルバーを使って、いい言葉ないかな?と思って探してたら、「Silver Lining」=希望の兆しという言葉が見つかって、「今しかないじゃん」と。出会っちゃった感ですね。雲の縁から覗く太陽の光というものは、景色もすごく好きなので。まず「Silver Lining」といういい言葉が出てきて、「Silver Lining」ツアーというタイトルで回ることになった時に、新曲のタイトルもそれにしちゃおうということで、歌詞もそこから書き始めました。

――ホリエさんらしい世界観だなと思いましたよ。心象を映しだす叙景詩のような、ファンタジックで美しい光景が。

そうですね。元からある自分らしさ、みたいなものに反する歌詞作りを心掛けてた時期もあって、空想的な言葉選びを控えたり、使いやすい言葉をあまり使わないようにしていたこともあったんですけどね。ついつい使ってしまう言葉があるんですけど。「夢」とか「光」とか。

――それ、前に聞いたことがあります。「夢」と「星」と「世界」って言ってた気がする。

そうそう(笑)。それをなるべく排除しようとしていた時期もあって。でも「Silver Lining」は原点に返って、「光」をテーマにしました。でも、今まで使わなかった言葉もあって、「大丈夫」とか、初めて使いました。大丈夫とか、頑張れとか、使わないようにしてきたんですけど、やっぱり、ちゃんとした意味を持たせれば響く言葉だなと思いましたね。誰も彼もに「大丈夫」と言いたいわけじゃなくて、大丈夫じゃないんだけど大丈夫と言ってしまうような人に聴いてほしい「大丈夫」ですね、これは。

――そう考えると、コロナ禍の3年間の様々な出来事が、曲の下敷きにあるような気がします。

震災のあともそうだったんですけど、裏側というか、根底にある「今の境遇を打破したい」というものが、すごくリアルになった気がします。単純に、ロックバンドとしてもっと成功したいとか、そういうマインドにおける現状打破みたいなものは、初期の曲にはすごく表れてるんですけど、それが逆に、しんどい場面で自分に返ってきたりして。それこそ『TITLE』に入ってる「REBIRTH」という曲で、「羽が折れても飛び続けた/何をなくしても手に入れるよ」という、それって本当に現状打破を歌ってるんですけど、そうじゃなくて、なんとしてでも届けたいから、「今は直接届けられないけど、この歌を歌ってその時を待つよ」という、そういう気持ちで返って来たりするので。違う意味で作った曲が、違う意味で自分にも返ってくるという。

――それってすごい経験ですよね。自分のことでしかなかったのに、いつのまにかもっと大きな意味を持ってしまう。

そういう経験が積み重なりますね。長年やってると。

――それこそが25年の意味だと思います。あと、僕は「Silver Lining」を聴いて、ああ、また飛行船が飛んでるな、懐かしいなと思いました。

そうなんです、それはオマージュですね。ちなみにサビのリズムは「TRAIN」のリズムを使ってるんで、そこで「よし、飛行船だな」と。

――ファンの心をよくわかってらっしゃる。

そういう、作家的な技術もだいぶ備わってきました(笑)。伏線とかね。

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