ホリエアツシ(ストレイテナー)、2人でのバンド結成から25周年を経て辿り着いた完全なるフォーピースへの道程を聞く
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ストレイテナー「246」
――もう一つ、5月に配信のみで出ていた「246」も収録されてますけど、これって何かのタイアップとかでしたっけ。
じゃないです。
――これも、今のモードで書いた曲の一つですか。
これはちょっと懐古的な歌詞でもあって、「吉祥寺」という曲にも通じてくるんですけど。悪くもあり、今考えると良かった時代というものがあって、何も先が見えなかったけど、そういう時のガムシャラ感がないと今もないなと思うんで。僕の中ではいい時代のイメージですね。
――それは、バンドが始まったばかりの頃の。
音楽でメシ食えるか食えないか、ぐらいの時代ですね。周りに競争相手がいっぱいいて、その中でも仲間ができていって、やっと世の中に希望が持てるというか、自分たちがかっこいいと信じてることが、かっこいいとされる世の中が来た!みたいな頃とかって、そこで初めて希望を感じるじゃないですか。「あの先輩が売れたんだったら、俺たちも行けるんじゃない?」とか(笑)。「大嫌いだった街」という歌詞は、傍から見たら何も成し遂げられていない自分というものを思い知らされる街として、渋谷があって、渋谷に行って戦わなきゃいけないんだけど、なかなか勝てなくて、渋谷を出て246を車で走って西に向かうと、進行方向に太陽が沈んでいく、という画を思い描いてます。「勝てなかったのは自分だ」という、そういう歌です。
――曲調は明るいですけど、これは本当に沁みます。ある意味、これも希望の歌なんだと思います。
そうですね。僕が歌いたいのは、誰かになろうとする憧れとか、こうなりたいとかじゃなくて、結局自分でしかないから、誰にもなれないけど、「自分のままで自分に勝つしかない」という、そういうことを歌ってます。
――このベストアルバムにふさわしい曲だと思います。また、この『フォーピース』というタイトルが実にハマっていて、もうみなさん知ってると思いますけど、二つの意味があるわけですよね。
はい。
――英語表記で言うと「FOR PEACE」と「FOUR PIECE」。今回再録音された2曲に「ETERNAL(FOR PEACE)」と「MARCH(FOUR PIECE)」というタイトルが付けられていて、なるほどそういうことかと思いました。これはどんなふうに思いついたものですか。
これも「Silver Lining」と同様に、「来た!」と思いました(笑)。タイトルどうする?ってスタッフから言われて考えたんですけど、思いついた瞬間にメンバーにLINEしましたね。そしたらOJから「いいタイトル」って返ってきました。
――4人が揃ってフォーピース。そして「平和のために」というもう一つの意味は、今の時代にふさわしいものだと思います。今最も必要なものとして。
ストレイテナーはずっと、平和の歌を歌っているつもりではあって、「NO~命の跡に咲いた花~」とか、前面に打ち出してる曲もあるんですけど。でも昔から、ファンタジックな世界を書いている時から、映像的には、自分の中では平和を願って書いた曲が多くありますね。それで、リアレンジした「ETERNAL」という曲に、「ETERNAL(FOR PEACE)」というタイトルを付けました。もともとそういう意味の曲じゃないんだけど、歌詞を日本語訳して歌い直してみたら、この曲は「永遠の平和のための」曲と言ってもいいなと思えたので。
――ああ、それで「ETERNAL(FOR PEACE)」という一つの言葉になる。
この曲を日本語に変えて、ライブで演奏したのが、10年前の武道館で、その頃はまだ、震災後の、自分の中で音楽に向かうスタンスが強かったから、そういう意味で日本語に変えたんですけど。かっこつけて英語で歌ってたけど、それは今はいらないと思ったんですね。「また日が昇って、また逢えるように」みたいなことを歌ってるので、これは「平和、平穏を表現している曲だな」と。
――それがまた10年経って、新しい実をまとって再生したと。もう1曲のリアレンジ曲「MARCH(FOUR PIECE)」については?
これも、周年の武道館や、大きい舞台で、すごく大事な場面で演奏してきている曲ですね。3人バージョンで作って、音源ではギターを入れてるけど、ライブでは鍵盤だけで演奏していて、OJが入って4人バージョンになって、より壮大な曲になってるけど、「そういえばレコーディングしてないよね」と。3人の頃の曲で、今一番4人バージョンを録りたい曲だったので、選んでみました。
――ずーっと2枚聴いてきて、最後にふさわしい曲だと思います。すごく壮大で感動的。
この曲も、バンドのテーマと言える歌なんじゃないかなと思います。
――それにしても。2人で始めて、3人になって、4人になって15年。あんまりいないというか、前例のない歴史を持つバンドだなぁとつくづく思います。
そもそも、2人で始めないですからね(笑)。
――そうそう(笑)。やむをえず2人で始めた、ということだったとは思うんですけど。だから、増えていく運命だったのかなという気もします。旅するうちに、一人ずつ仲間が増えていくという、まるで桃太郎のような…それじゃお供になっちゃうか。
ONE PIECEのような。
――そっちのほうがいい(笑)。そうやって仲間が増えていった20年の物語、という感覚はありますか。
結果としてそうなるのかな、と。必要に迫られてというわけではないし、友達だから一緒にやろうというきっかけから来ているので、「一緒にバンドやったら絶対楽しいでしょ」というところからの、4人なんですよね。だから今も、「このバンドのために」という縛りみたいなものはなく、それぞれがそれぞれとして、好きなことをやりながら、でも4人集まった時に最強になれるみたいな状態で、仲良くやってますね。縛りつけたりすると、どうしても歪みが出てくるから。
25TH ANNIVERSARY ROCK BAND
――あらためて聞いていいですか。メンバー3人は、ホリエさんにとってどんな存在なのか。まず大山さんから。
OJが入って、バンドの空気が和んだというか、OJのマイペースさが、頑張ってバランスを取ってたところをうまくかわしてくれた、というか。3人の時は、型がないと崩れちゃうみたいなところがあったのが、4人になることによって、「型はなくていいじゃん」という雰囲気になったんですよ。ちょっと、だらしないですけどね。最近寝坊が多いんで(笑)。でも、そのマイペースさはすごく魅力的ですね。
――和ませ役で、愛すべきマイペース。大事な存在ですね。寝坊はともかく(笑)。
たぶん飲みすぎじゃないですかね。最近、朝起きてこないことが多いんで。乗り物に乗り遅れるとか、そこまでは行ってないんで、なんとかなってますけど(笑)。
――日向さんは、どうですか。
ひなっちは、ムードメーカーで、真面目な時はちゃんと真面目になるんですけど、基本はふざけて、みんなが笑ってる雰囲気作りがめちゃくちゃうまい。どこへ行ってもそうなんだろうけど、ストレイテナーもやっぱり、ひなっちがいることによって、4人だけじゃなくて、周りの人も気を張らなくていいという感じはありますね。ひなっちにとっても、(ストレイテナーは)そのまんまでいられる感じがあると思うんで。
――そして、最も古い付き合いのシンペイさん。
バンドに対しては、僕とは違った目線で立ってると思います。僕は昔から「こうなりたい、こうありたい」とか、「外からこう見れられたい」というものを強く持ってるし、「ここまではこのバンドはやらなくていい」とか、捨ててきたものもたくさんあって、振り返ると「かっこつけすぎてたな」と思うところもあるんですけど、今もこだわるところはたくさんあって。そういう時にシンペイは、また違う見方で「こうしたほうがいいんじゃないか」と言ってくれたりして、「そういう発想があったのか」と思ったりする。こだわってるというよりも、ふっと拾ってくる感じ。
――はい。なるほど。
OJはマイペースと言いましたけど、シンペイもどマイペースで、我が道を行く系なんですね。OJは、「あんまり俺のことは気にしなくていいよ」みたいな感じのマイペースですけど、シンペイは自分がやりたいようにやるというタイプのマイペースで、やりたくないことはやらない。それぞれが違うからこそ、気にかけなくていいというか、自然とそうなってますね。「気にかけてくれ」という人が一人もいない。
――という、類まれなるフォーピース。
だから、結束!という感じでもないんですよね。たぶん4人それぞれが、それぞれに居場所があると思うんだけど、音楽をやるんだったら、この4人で集まってる時が一番楽だったり、自然体なんじゃないかなと思います。
――素晴らしいです。最後にライブの話をすると、10月15日にアニバーサリーの武道館公演がありますね。セトリは、ベストアルバムに準じたものになりそうですか。
それもありつつ、3人時代の曲もやるし、今やりたい曲をやります。今作りたいベストアルバムを出して、今やりたいライブを、全力でやりたいなと思います。
――ノスタルジーモードではないということですね。あくまで現在進行形を見せる。
確かに、ノスタルジーモードじゃないです。20周年から25周年の5年間は、ちょっと異質な時間だった気がしますけど、「頑張ってきたよね」というよりは、やっと今のこのバンドのすごさを見てもらえるライブになるかなと思います。5年前より良くなったバンドを見てほしいです。
――楽しみにしてます。そして、そのあとの11月8日に、21年前の初ワンマンの会場だった下北沢SHELTERでライブをやるというのも、いい企画だなぁと思います。落差がすごい。落差とか言っちゃいけないか(笑)。
シェルター側からお声がけいただいたんですよ。ストレイテナーの2002年の初ワンマンと同じ日程を押さえてくれて、「ここでやりませんか」と。僕はシェルターのロゴが好きで、このフォントで「STRAIGHTENER」というロゴを作りたいとずっと思っていて、「SHELTER×STRAIGHTENER」のTシャツを作るために(ライブを)やります(笑)。
――あれ、いいですよね。左右の「S」と「R」が同じだから、すごくきれいにハマって見える。
あのロゴを作った人の権利とか大丈夫なのかな?って聞いたんですけど、シェルター的には「大丈夫」とのことで、有り難く作らせてもらいました。意外にもあのフォントを使ったロゴを作るって、まだ誰もやってないらしくて、だったらやるしかないでしょうと。 シェルターのグッズとしても、まだあのロゴのTシャツは作ってないらしいんで。
――じゃあ、本家より先にストレイテナーがTシャツを作っちゃう。
そうそう(笑)。
――いいですね(笑)。
シェルターはファンクラブ限定だし、キャパ的にかなり狭き門ではあるので、とにかく武道館に、全国から一緒にお祝いしに集まってほしいです。現在進行形のストレイテナーとストレイテナーファンの素晴らしさを感じてほしいと思います。
――次、30周年とかになると、さすがに年輪を感じるような気がしますけど。もちろん、まだまだ続けますよね。
体との戦いですよね、これからは。だから、飲みすぎて寝坊してちゃ駄目です。
――という、バンド内への個人的メッセージを最後に置いて(笑)。これからも良い音楽を期待してます。
はい。まずはあと5年、頑張ります。
取材・文=宮本英夫
リリース情報
2023年10月11日(水)Release
PDZV-1289 10,000円(+tax)
■初回限定盤【2CD+BD】
TYCT-69287 7,500円(+tax)
■通常盤【2CD】
TYCT-60217/8 3,500円(+tax)
1.Silver Lining ※新曲
2.原色
3.叫ぶ星
4.クラッシュ
5.冬の太陽
6.Braver
7.イノセント
8.Toneless Twilight
9.Sunny Suicide
10.From Noon Till Dawn(feat.Tabu Zombie&Kunikazu Tanaka)
11.Little Miss Weekend
12.羊の群れは丘を登る
13.吉祥寺
14.彩雲
15.ETERNAL (FOR PEACE) ※CDのみ収録
1.246 ※新曲
2.タイムリープ
3.プレアデス
4.Ark
5.DAY TO DAY
6.Man-like Creatures
7.Lightning
8.シンクロ
9.DONKEY BOOGIE DODO
10.瞬きをしない猫
11.ネクサス
12.シンデレラソング
13.シーグラス
14.スパイラル
15.MARCH (FOUR PIECE) ※CDのみ収録
2023年5月27日(土)、バンドとして初めてにして最後となった中野サンプラザでのワンマンLIVEをアンコール含め完全収録予定(全26曲)!
“ベストアルバム楽曲投票結果の全貌が分かる!”
25th ANNIVERSARY ROCK BAND オリジナルトランプ