尾上右近インタビュー~イベントも開催!尾上右近と現代美術家のコラボBOX『右近 plus 4人』発売
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尾上右近 (撮影/古水 良 ヘア・メイク/西岡達也)
人気歌舞伎俳優の尾上右近と現代美術家4人によるコラボレーションBOX『右近 plus 4⼈』が2023年10月27日(金)に発売される。今年6月に上梓した、8人の現代美術家とのアトリエ対談をまとめた『右近 vs 8人 尾上右近アーティスト対談集』の特装版を、オリジナルの和小物とセットにした珠玉の限定BOXだ。11月には、発売を記念した尾上右近のトークイベントとお渡しサイン会も開催される。初披露された『右近 plus 4人』の中身をこの日初めて手にした右近に、話を聞いた。
『右近 plus 4⼈』BOX内容
――右近さんと4人の現代美術家がデザインし、老舗専門店が制作を手掛けた『右近 plus 4人』の品々。実物をご覧になった率直なお気持ちは?
なんて贅沢! もうその一言に尽きます。今年の6月に『右近 vs 8人』が出た時もすごく嬉しくて、つい先日も撮影で一緒になった俳優さんたちに「けんけん(右近さんの愛称)、めちゃくちゃ面白い対談やってるじゃん! うらやましい!」「本屋で立ち読みしたら、すごく面白くて、僕は本、買いました」と言われて、喜びを新たにしたところだったんです。そこに、この『右近plus 4人』。喜びのダメ押しと言うんでしょうかね(笑)、嬉しくて仕方ないです。
――グッズの大半は、右近さんをイメージしてデザインされたものだとか。
そう聞いています。この『右近 plus 4人』は、もちろん買ってくださった方へのプレゼントなんですけれども、僕へのプレゼントでもあるのだなと感じますね。「歌舞伎一筋」という気持ちで活動している自分が、対談で8人のアーティストの方々と出会い、それが仕事を通じた関わりに発展して、そこから4人の方とこういった形でご一緒できることになって……。出来上がったグッズを実際に手にすると、一体どれだけの方が関わってくださったのだろうと思いますね。関わりが形になる、御縁が形になるというのは、本当に嬉しくてありがたいことだなと感じます。それを今度は、僕が届ける番です。お客様にも、きっと喜んでいただけるんじゃないかと思います。
――外箱(文箱)と特装版用のカバーには、今年8月に開催された右近さんの自主公演「第七回 研の會」のポスタービジュアルが使われています。『右近 vs 8人』での対談をきっかけに、横尾忠則さんがデザインなさったものですね。
自分で直にお願いに伺って、作っていただいたポスターなので、こういう形になって嬉しいです。横尾さんとは『右近 vs 8人』の対談で初めてお会いして、じっくりお話しできただけでも最高だったのに、「いつか一緒に仕事しましょうよ」という言葉までいただいて、どれだけ感激したことか。僕みたいな若造が横尾さんにポスターを依頼するなんて、生意気かなとも思ったんですが、このとんでもなく素晴らしいチャンスを逃さなくて本当によかったです。文箱になっても素敵だし、この赤が効いた特装版カバーもカッコイイですね。
特装版用カバーつき書籍『右近 vs 8人』/横尾忠則×マツダオフィス
文箱/横尾忠則×日本橋榛原
――江戸扇子と、千代紙の匂い袋「花くるま」をデザインされたのは、日本の伝統文化を現代に翻訳した作品づくりで知られる舘鼻則孝さんです。
まず、僕が好きな舘鼻さんの“雷雲”のモチーフがお扇子にデザインされていることに、感激しました。作っていただいたのは、僕が以前からお世話になっている浅草文扇堂さん。お扇子作りとお祭りが大好きな五代目がいて、三社祭では一緒に御神輿を担がせてもらっています。匂い袋「花くるま」は、『右近 vs 8人』の舘鼻さんとの対談にも名前が出てくる京都のお香の老舗・松栄堂さんの商品で、今回は特別に、舘鼻さんがデザインされた千代紙で作っていただいたと聞いて、それこそ「なんて贅沢!」と思いました。とても可愛らしいですよね。優しい香りなので、クローゼットに吊るしたり、あと、枕元に置くのもいいんじゃないかと思います。
江戸扇子/舘鼻則孝×浅草文扇堂
匂い袋「花くるま」/舘鼻則孝×香老舗 松栄堂
――美しいデザインのDVDも目を惹きます。中身は『右近 vs 8人』の各対談後に撮った右近さんのコメント動画。盤面とジャケットの写真は、中野泰輔さんの作品です。
めちゃくちゃ綺麗ですよね。中野さんがこの企画のために新たに制作してくださったと聞いて、感動しています。アーティストの皆さんにとっては当たり前のことかもしれないですけど、期限の中で、依頼されたものにバチッとハマる自分の表現を提供できる、しかも予想を軽く超えてくるというのが、本当にすごいと思います。僕がジャケ写なんて頼まれたら、きっと考えるだけで1年はかかりますよ。
尾上右近コメントDVD /ジャケット写真:中野泰輔
――そう言いながら、右近さんご自身も今回、素敵な手拭いの図案を描き下ろしていらっしゃいますよね。短時間で描かれたと聞いていますが。
確かに、5分くらいで描き上げたかもしれない(笑)。僕が親しくしている浅草のふじ屋さんに手拭いをお願いすると聞いて、どんな図案にしようかなあと思いながら筆を取ったら、意外と早くアイディアが閃いて。でも、まあそれは、普段から筆で絵や字を描いているからだと思います。自然に思いつくものは、やっぱり歌舞伎に寄ったものだったりしますね。
手拭/尾上右近×染絵手拭 ふじ屋
―― 一筆箋はエリイさんのデザインです。描かれているのは、歌舞伎町の王城ビルを丸ごと使ったChim↑Pom from Smappa!Groupの新しいアートプロジェクト「ナラッキー」のキャラクター。テーマになっている“奈落”の暗闇にちなんで、黒い紙が使われているところも斬新です。日本橋榛原さんで黒地の一筆箋を作ったのは、創業以来初めてだそうです。
この一筆箋のデザインは、雑誌の取材でエリイさんと対談した時に「ナラッキー」の会場で見せてもらいました。さすが、発想が面白いですよね。実は「ナラッキー」には僕も協力させてもらっているんです。今年8月の「研の會」の前に、エリイさんから「奈落をテーマにした新しいプロジェクトのために、本番中の奈落の音を録らせてほしい」と連絡があって、Chim↑Pomの皆さんで「研の會」の初日を観に来てくださって。「ナラッキー」の会場で、その時録った自分の声や音を聴くのは面白い体験でした。そんなふうにお互いの企画にちゃんと関われたことが、とても嬉しいです。
一筆箋/エリイ(Chim↑Pom from Smappa!Group)×日本橋榛原
――『右近 vs 8人』で出会った作家さんたちと、交流が続いていて素敵ですね。
ありがたいことだなと思います。あの本で対談させていただいたアーティストの皆さんには、“同級生”とか“同窓生”みたいな感覚があって、Instagramやネットニュースで活躍を知ると、「そうか、〇〇さんは今、××で展覧会をやっているのか」って、ちょっと嬉しくなったりするんです。こういう間柄って、一緒にいた時間とか付き合いの長さは関係ないんだなと思いますね。お互いにとってちょうどいい距離感だったり、いい形で繋がれるかどうかがポイントのような気がします。
――『右近 plus 4人』での作家さんたちとのコラボレーションを通して、改めてどんなことをお感じですか?
これは『右近 vs 8人』で対談した時にも感じたことなんですが、やっぱり皆さん、自分が思うものを形にするという素直な状態を、健康的に維持していらっしゃるというか、“自分はこうなんだ”と腹を括って生きている表現者なんだなと感じます。その一方で、すごくちゃんとしたところも持っていらっしゃるのが素敵だなと。それで今、思い出したんですが、横尾さんは若い頃、「横軸が礼儀・礼節、縦軸が創意・創造。その二つの軸が交わるところに、何が生まれると思う?」と三島由紀夫さんに聞かれたことがあるんですって。
―― 一体、何が生まれるのですか?
三島さんは「それは霊性だ」とおっしゃったそうです。「だから表現者たるものは、普段は礼儀・礼節を心がけること。縦軸だけでは、人の心を打つ通力や神秘性のあるものは生みだせない」と。要は、ぶっ飛んでいるだけではダメなんでしょうね。僕も表現の仕事に携わっていますが、一人では何もできないし、特に歌舞伎は同じ組織のメンバーで作っていくものなので、人と一緒にちゃんと仕事ができるって、やっぱりすごく大事なことだなと思います。
――軸といえば、右近さんからはいつも、歌舞伎愛と、歌舞伎という軸をしっかり持った人の強さを感じます。
歌舞伎愛かどうかはわからないですけど、自分にとって歌舞伎は絶対的に必要なものだという実感はあります。自分の中では歌舞伎がすべての基準になっているし、自分から歌舞伎を取ったら何が残るんだろう? 自分らしさというのはどこにあるんだろう? と考えた時に、「ああ、これだな」と思えるものがあまりなくて。映像の仕事をしていると、逆に「自分らしさというものは、やっぱりあるんだな」と感じるんですが、その大半は“歌舞伎らしさ”だったりします。でも、それは嫌なことではなくて、今はむしろ、ありがたいと感じています。
――以前は違ったのですか?
20代前半は、自分は歌舞伎に依存しているんじゃないかと思っていました。歌舞伎をやっていなかったら、自分には存在価値がないんじゃないか、何もできないんじゃないかって。でも、歌舞伎と出会い、歌舞伎をやり続けているのは、自分の力だと思えるようになったら、気持ちが楽になって、より感謝の気持ちが湧いてくるようになりました。立川談志さんの言葉に「人生は死ぬまでの暇つぶし」というのがあるんですが、その暇つぶしを歌舞伎とともにできることが、自分にとっては最高に嬉しいことなんです。
――11月には、5か月ぶりに歌舞伎座にご出演。さらに都内2か所で、この『右近 plus 4人』をお客様に直接手渡せるイベントも開催されます。
とにかく楽しみですね。このところずっと映像のお仕事で山の中にいるので、どういうマインドになるんだろう?とは思いますけれども。いきなり大勢のお客様を前にして、オドオドしちゃったりして(笑)。とはいえ、お客様との時間が僕の活力になることは間違いないので、イベントにもぜひ来ていただけたら嬉しいです。僕もエネルギーをお渡しするつもりで臨みます。最近、本当に山ばっかり見ている毎日なので、皆様のお顔を見たら、嬉しくて泣いちゃうかもしれないです(笑)。
1992年、東京都生まれ。歌舞伎俳優。曽祖父は名優・六代目尾上菊五郎。母方祖父は映画俳優・鶴田浩二。映画『燃えよ剣』で第45回日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。2023年8月に浅草公会堂で開催した自主公演「第七回 研の會」DVDの予約受付中。11月には歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」夜の部『顔見世季花姿繪~三社祭』に出演予定。また、出演映画『身代わり忠臣蔵』が2024年2月9日 より公開予定。
公式ウェブサイト|https://www.onoeukon.info/
撮影/古水 良 ヘア・メイク/西岡達也 取材・構成・文/岡崎 香
商品情報
◎文箱/横尾忠則×日本橋榛原
◎手拭/尾上右近×染絵手拭 ふじ屋
◎匂い袋「花くるま」/舘鼻則孝×香老舗 松栄堂
◎江戸扇子/舘鼻則孝×浅草文扇堂
◎一筆箋/エリイ(Chim↑Pom from Smappa!Group)×日本橋榛原
◎尾上右近コメントDVD/ジャケット写真:中野泰輔
◎特装版用カバーつき書籍『右近 vs 8人』/横尾忠則×マツダオフィス
商品名:「右近 plus 4⼈」
価格:25,300円(10%税込)
発売日:2023年10月27日
販売元:PARCO出版
BOXサイズ:336×256×66mm
商品ページ: https://publishing.parco.jp/books/detail/?id=451
開催日時/2023年11月11日(土)14:30~16:00(開場14:15)
会場/銀座リベルタンゴ (中央区銀座5-10-6 第一銀座ビル7階)
出演(登壇):尾上右近 MC:岡崎 香(ライター・編集者)
参加費:2,970円(ONLINE PARCOで『右近 plus 4人』をご予約済の方限定)
申込受付:10月20日(金)12:00よりONLINE PARCOにて。先着65名様
詳細:PARCO出版公式サイト
https://publishing.parco.jp/news/detail/?id=56
◎POP-UPショップ
展示期間:2023年11月4日(土)~19日(日)
場所:代官山 蔦屋書店 アート関連売り場(渋谷区猿楽町16-15)
◎お渡しサイン会
開催日時:2023年11月18日(土)14:00~(入場13:45)
会場:代官山 蔦屋書店 2号館・1F建築デザインカウンター (渋谷区猿楽町16-15)
参加費:無料(代官山T-SITEにて『右近 plus 4人』をご予約の方限定)
申込受付:10月27日(金)12:00より代官山T-SITEにて。先着50名様
詳細:代官山T-SITE
https://store.tsite.jp/daikanyama/event/architectural-design/36555-1751121015.html
出版情報
尾上右近の初の書籍。人気現代美術家たちのアトリエを訪れ、その素顔やマインドに迫りつつ、歌舞伎音楽を担う家に生まれながら役者になった自身についても語る対談集。
◎登場アーティスト(登場順)
井田幸昌/田名網敬一/エリイ (Chim↑Pom from Smappa!Group)/佃弘樹/横尾忠則/舘鼻則孝/中野泰輔/友沢こたお/尾上右近ソロインタビュー
A5変型・オールカラー208p 税込2420円
PARCO出版より2023年6月1日に発売
https://publishing.parco.jp/books/detail/?id=440