昆夏美×大原櫻子×海宝直人×村井良大が語る、ミュージカル『この世界の片隅に』 「舞台化されることでまた新しいフィルターを通して新しいものができる」

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2024.4.5
村井良大、大原櫻子、昆夏美、海宝直人

村井良大、大原櫻子、昆夏美、海宝直人

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日本中が涙した、こうの史代による不朽の名作『この世界の片隅に』。太平洋戦争下の広島県呉市に生きる人々を丁寧に描き、これまで、2度にわたる映画化、実写ドラマ化されてきた。そして、2024年5月に待望のミュージカル化となる。

主人公の浦野すず役は昆夏美と大原櫻子がWキャストで務め、すずの夫・北條周作を海宝直人と村井良大がWキャスト、すず、周作と三角関係になる白木リンを平野綾と桜井玲香がWキャストで、周作の姉ですずにとっては義姉の黒村径子役を音月桂が演じる。音楽を手がけるのは、2014年の渡米からミュージカル音楽作家として10年ぶりに再始動するアンジェラ・アキ。オリジナル楽曲に乗せて、生きることの美しさを描き出す。

すず役の昆と大原、周作役の海宝と村井に公演への思いを聞いた。

――最初に、ご出演が決まった今の率直なお気持ちを教えてください。

:原作を読んで、映像を観させていただいて、これをどうやってミュージカルにするのだろうという期待がありました。新しい試みだと思います。ストレートプレイではなく、ミュージカルでこれを表現する意味を見つけて挑んでいきたいと思います。

大原:ミュージカルでここまでたくさん歌わせていただく作品は初めてです。なので、すごく楽しみですが、少し不安もあります。

海宝:(原作漫画は)とても可愛らしいキャラクターなのに、生々しく生きる姿がすごく繊細に描かれているので、これを映像化するのはとても大変だったんだろうなと感じました。この原作をアニメーション映画化するにあたって、監督はかなりリサーチをして、忠実に作り上げた部分もあれば監督自身の思い入れを込めて描いた部分もあったと聞いたので、映像はそれぞれ“もう一つの新しい『この世界の片隅に』”なんだろうと思います。今回、舞台化されることで、また新しいフィルターを通して新しいものができるのだろうと考えると、きっとこれまで他の媒体でこの作品をご覧になった方もまた新たな解釈やメッセージを舞台から受け取っていただけると思います。それはすごく楽しみであると同時に、ハードルの高いことでもあると思うので、クリエイトする難しさを感じながら、皆さんと一緒に作っていきたいと思います。

村井:数々のメディアで描かれている原作をミュージカル化するとどうなるんだろうと、僕も思いましたし、きっとストレートプレイではなくミュージカルにする理由があるのだとも思います。アニメーション映画は、挿入歌がたくさん入っていて、それがすごく自然でした。なので、この作品は音楽が身近にある作品なのかなと。『この世界の片隅に』の世界観の中で優しい旋律がずっと流れている。そういった空気感を感じたので、ミュージカル化するにあたっても、無理がないのではないかなと僕は思いました。音楽だからこそ伝わるものがあるし、言葉にできないことも歌と歌詞と旋律に乗せることでメッセージを伝えられるのかなと思います。

――今もお話にありましたが、改めて、この原作をミュージカルで表現することの魅力をどう考えていますか?

海宝:先ほど村井さんがおっしゃっていましたが、言葉にできない思いを伝えられるということだと思います。原作を読んだ時もアニメーション映画を観た時も、具体的に何かに感動したとか、何かがあったから泣けたというよりは、全体を通してすごく圧倒されるような感覚がありました。言語化しづらい感動というのかな。そういう意味では、音楽の力でそれをさらに深めていくことができるのではないかなと思います。難しいですが、やりがいがあることだと感じました。

大原:初めて楽曲を聴いた時に、感動して泣いてしまったんですよ。今、海宝さんがおっしゃったように、言語化できないものがこの作品の音楽にはあると思います。メロディーが語るではないですが、アンジェラさんの作り出す音楽の力を改めて感じました。この作品に限らずですが、ミュージカルでは、音楽があることによって、登場人物の心理状況が何十倍にもなってお客さんに届くと思います。それから、戦争というテーマで描かれている本作ですが、音楽があることによってすごく受け取りやすくなっているとも思います。そこがミュージカルの素敵なところだと考えています。

アンジェラ・アキ - この世界のあちこちに / THE FIRST TAKE

:お二人が言ってくださったことが全てだと思います。今回のミュージカルでは、歌い上げる、劇場型の楽曲は実はそんなにないんですよ。ですが、それがこの作品の温度感にすごく合うのだと思います。この原作には、温度がある気が私はしていました。決して沸点が高いお湯ではないけれど、包み込むようなまろやかな温度がある。それが、当時を生きてきた人たちがささやかな幸せを見つけたことと重なってくるんだと感じました。そういった温度感とアンジェラさんが作る楽曲が、私はすごく合っているなという印象を受けました。

村井:日本人は、「実はこう思っていたけれど、その場では言えなかった」ということが多いと思います。ミュージカルでは歌で心の声を伝えることができるので、込み上げてくる感情をストレートに表現できる。それから、先ほどもお話ししましたが、この作品の世界観は音楽や歌と密接な関係にあるので、作品の雰囲気を壊さないままお届けできるのではないかなと思っています。

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