「緻密で繊細でなければ成り立たない」塚原大助×佐藤達の二人芝居『ソラニテ』絶賛稽古中!~稽古レポート&インタビュー
2024年3月20日(水)より下北沢OFF・OFFシアターにて、ゴツプロ!Presents/ブロッケンver.2『ソラニテ』が上演される。
ブロッケンは、ゴツプロ!主宰の塚原大助が、新たな作家、演出家、役者との出会いを求めてプロデュースする舞台公演企画で、2023年4月には作・深井邦彦、演出・西沢栄治による『ブロッケン』を上演し好評を得た。第2回目となる今回は、演劇ユニット・ナイーブスカンパニー主宰でつかこうへい作品の演出にも定評がある高橋広大(「高」ははしご高が正式表記)が作・演出を担当、劇団桃唄309の佐藤達が出演し、二人芝居を上演する。
塚原大助
佐藤達
塚原が演じるのは、田舎を離れて都会で暮らす狐塚柾(こづかまさき)。離婚した妻との間に10歳の娘がいる。一方の佐藤が演じる綿貫透(わたぬきとおる)は、狐塚の同級生で、地元の動物園で働きながら今も田舎で暮らしているという役柄。透からの手紙を受け取り、柾が田舎を訪れるところから物語が始まる。
役について聞くと、塚原は「正しく向き合って生きていきたいと思っているからこそ、正しく生きていけない、そんな葛藤をしている正しい人」、佐藤は「ある出来事をずっと覚えていたい、忘れたくない人」と説明した。
この日で3回目という通し稽古を終えて、二人が再会する冒頭のシーンから稽古が始まった。言葉数の少なさや、間、目線から、35年振りに再会した二人のぎこちなさが伝わってくる。他愛のない会話から、二人が共有しているある事件の記憶の話に変わっていく。事件の話をしたかった透とは反対に、忘れようとしていた柾。会話が進むにつれて徐々に事件の全体像も明らかになっていく。作・演出の高橋も交えて、距離感や細かい感情の動きを確認していた。
稽古を終えた二人に話を聞いた。
――役柄とご自身の共通点、異なるところは?
塚原:傷を背負って生きている。これは誰しもが多少ならずとも抱えていることだと思います。言いたいことが言えなくて、言えた方が楽だったのかもしれない、言えないからこそ自分で自分の首を絞めているような、そんな経験は自分にもあります。
忘れようとするから逆に忘れられないとか……自分はもっと楽観的に生きていきたいと思ってはいますが……。
佐藤:僕の演じる「透」の「覚えていたい」とはまた違うのですが、僕は自分の小さい頃の思い出を紙芝居にしてライブ活動をしていまして、思い出を忘れたくない気持ちが僕にもあるなと初めに思いました。
あ、役名がまさかの「透(とおる)」です。ぼくは「達(とおる)」で漢字は違うのですが同じ読み方。稽古の始めの頃は「とおる」が稽古場で飛び交うと、どっちのことか、なにがなんだかみんなで分からなくなっていましたが、もう慣れました(笑)。そして僕は山奥育ちです。「透」が日々眺めている景色をきっと共有できていると思っています。今日も発見がありましたが、もっともっと「透」のことを知りたいし共有したい。壁にぶち当たって「しょえー!」ってなっているのでこれも利用したいくらいです。透との違いは彼の行動力かもしれません。僕よりもひろいです。そう思います。
――二人芝居はいかがですか?
塚原:小松台東やJr.5、そして劇団道学先生などに出演されている達さんを観て素敵な役者だなと思っていました。2022年にゴツプロ!の本公演で上演した『十二人の怒れる男』で共演してその独特な個性に魅了されて。そんな達さんと自分の二人芝居を書きたいと、今回の作・演出家の高橋広大から言ってもらった時、直感でそれは面白いと感じたし、全く異なる2人が交わった時、どんな化学反応が起きるのだろうかとワクワクしました。
佐藤:二人芝居は過去にやったことがありました。でもそのころの苦労は思い出せず、楽しかった思い出が残っています。そして今は大変です。ふたりの毎日が新鮮だったころは過ぎて、今は緻密さを求めて苦労しています。
塚原:演出家と演者二人。一つひとつのシーンを三人が納得するまで議論を交わして、三歩進んでは二歩下がるような稽古を繰り返しています。約80分の上演時間をOFF・.OFFというお客さんとの距離がとても近い空間で、二人の演者だけで濃密な時間にするには、緻密で繊細でなければ成り立たないと感じています。そういう脚本でもあるし。正直苦しいですが、それが面白さとも言える。喜びに変わる日は近いと信じています。
佐藤:相手に影響を与えられるのは舞台上で僕だけ。僕しかいない。これが大変で難しいです。塚原さんは舞台上でいろんなものをくれます。ぼくも出来ているならいいのですが。それが叶った時に輝く作品に出来るのだろうな、そうしたい! と目指しています。
――見どころは?
塚原:小学生時代、親友だった二人は当時起こったある事件を共有しています。それを忘れずにずっと真摯に向き合ってきた男と、忘れたい忘れたいと思ってきた男が35年振りに再会する。ぎこちない会話から始まり、真相が明らかになるまで、そして未来に向かっての一歩を踏み出すまでを紡ぐ作家・髙橋広大の言葉と、二人の役者の心の揺れ動きを感じていただければ。是非劇場でご覧ください。
撮影=片山享
公演情報
●出演:塚原大助 佐藤達(劇団桃唄309)
●日程:2024年3月20日(水)〜3月27日(水)
●会場:下北沢 OFF・OFFシアター(東京都世田谷区北沢2-11-8 TAROビル3F )
※アフタートークあり。詳細は公式サイトにてご確認ください。
※受付開始・開場は開演の30分前 ※未就学児童の入場不可
一般:4,500円 U-25:3,000円 養成所割引:3,000円
※U-25:25歳以下。枚数限定。当日引換券対応にて要証明書提示
※養成所割引は要証明書提示
※当日券は+500円
※U-25・養成所割引は一般発売より「ゲキラブ!」のみ取り扱い
●ゴツプロ!公式サイト:https://52pro.info/
●協賛:株式会社ニューロードグループ ヘアークリアー
●助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京【東京ライブ・ステージ応援助成】
●主催:ゴツプロ合同会社
話したいのは、君が忘れられたこと、
そして、僕が覚えてしまっていることについて、です。
あの⽇からの僕は、折り始めにズレてしまった折り紙みたいなもので、
取り返しのつかないことから⽬を背け、歪な出来上がりを赦し、
そうして、その⼩さなズレの積み重ねが、僕を根こそぎ失わせてしまうような、
そんな⽇々を過ごしてきました。
それでも、
空は洗い⽴てのように澄んで⾼く、
街は正しく朝に出会う。
やっぱり、君と話がしたいのです。
「はなしがたい」僕たち⼆⼈の、幼過ぎた記憶のために。