花總まりと谷原章介、G2が作り出すファンタジックで暗喩に富んだ奇跡の物語に挑む 舞台『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』ゲネプロレポート

2024.4.2
レポート
舞台

(左から)谷原章介、花總まり

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2010年(日本では2013年)に出版されるやかつてない独創的な世界観が話題を読んだカナダの小説「銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件」が舞台化される。“舞台化不可能”とも言われるファンタジー小説の世界初の舞台化に挑むのは、演劇界の名匠G2。10年の構想を経て、奇妙な銀行強盗に“魂の51%”を奪われた13人の被害者たちの身に起こる不思議な事件とある夫婦の愛と奇跡の物語に挑む。

主演を務めるのは、『エリザベート』や『マリー・アントワネット』などでタイトルロールを務めた花總まりと、俳優のみならず司会としても絶大な支持を得る谷原章介。初共演の二人が、日常のすれ違いやもどかしさを紡ぐ。

花總まり

4月1日には、初日会見と公開ゲネプロが行われ、花總と谷原が登壇。花總は「G2さんの演出で舞台に主演するのは2作目ですが、前回も不可思議な作品だったので、私のG2さんのイメージは不可思議な作品を手がけたらナンバー1です。当初、舞台化不可能と言われていた作品ですので、G2さんが舞台でどう描いていくのか、キャストたちも不安でいっぱいだったのですが、それを見事に、ユーモアを交えながら演出してくださいました。すごく分かりやすく、お届けしやすい形になっているんじゃないかなと思います」とアピール。

谷原章介

一方、谷原も「この作品はダンス、映像、音楽、場面転換、舞台装置を多く使った作品です。ここまで転換が激しい舞台はないです。いろいろな力が結集している舞台になっていて、僕も客席から舞台を観たいと思うくらいの作品ですので、ぜひ見に来ていただきたい」と本作の魅力を語った。

花總まり

谷原章介

今回、花總が演じるのは、体がどんどん縮んでいくという女性。花總は「今までもさまざまな難しい役をいただいてきましたが、今回は種類が違う難しさがありました。多分、最後まで悩み続けるのかなと思います。まずは、自分を騙さないといけない部分が大きいので、自分を騙せないとお客さまも騙せないと思って、毎日、取り組んでいきたいと思っています」とステイシーという役柄について言及した。

原作を読んだ段階で最後のシーンがどのように表現されるのかを楽しみにしていたという谷原。実際に形になってみると「僕が想像したのとは全く違う絵になっている」そうで、「二人がどうなっていくのかは舞台でご確認いただきたいですが、夫婦は片方だけでは成立しません。ステイシーが歩み寄り、僕も歩み寄らなければならないですが、この舞台のどこの時点で歩み寄り始めたのかを確認してもらうと、最後のシーンがより味わい深いものになると思います」と本作の楽しみ方をレクチャーした。

(左から)谷原章介、花總まり


 

※以下、ゲネプロレポート。ネタバレが気になる方はご注意ください。
 

物語は、13人の人々がいる銀行から始まる。そこに僕(谷原)が登場し、妻のステイシー(花總)から聞いた奇妙な銀行強盗について語り始める。そして、僕が聞き及んだシーンがその場で再現されていく。

銀行には、突如、風変わりな強盗(平埜生成)が現れる。強盗は、天井に向けて一発の銃弾を放つと、「今持っている物の中で最も思い入れのある物を差し出せ」というのだ。13人がそれぞれの思い出の品を渡すと、「私はあなた達の魂の51%を手にした。それによりあなた達の身に奇妙な出来事が起きる。自ら魂の51%を回復しない限り、命を落とすことになるだろう」と伝えるのだった。

『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』舞台写真

『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』舞台写真

こうして、13人の被害者たちに信じられないような出来事が起きる。デイビッドの年老いた母親は98人に分裂し、ドーン(入山法子)は足首に彫ったライオンのタトゥーが体から抜け出し追いかけ回される。ジェニファーは自宅の居間で神と遭遇する。自らも被害にあった刑事(栗原英雄)は被害者たちを集めるが、解決の糸口が見つからないまま、新たな“不思議”が起き続ける。

一方、目に見えて被害に見舞われていなかったステイシーだが、ある晩、自分が少しずつ縮み始めていることに気づく。夫は気のせいだと笑うが、縮んでいくペースを計算したステイシーは、自分が8日後には消えてしまうことを知るのだった。

ファンタジックな作品世界を、さまざまな演出方法で再現した本作。特に物語冒頭の銀行強盗のシーンは印象深い。芝居と並行して、僕がビデオカメラでその場を写した映像が、舞台上部のスクリーンに投影される仕組みとなっていた。さらにその映像には、それぞれの被害者が強盗に渡した物が映し出されるなど、芝居を補足する映像がところどころに組み込まれており、観客の想像をより広げる効果を発揮していた。(実際には、舞台上には強盗に渡した物は登場せず、映像でのみ視認することができる)

『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』舞台写真

『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』舞台写真

物語はステイシー夫妻を中心に描かれているものの、13人それぞれの“事件”もしっかりと描かれているため、群像劇の様相を呈している。それぞれの不思議な出来事が、パペットや美術、小道具や音響、ダンスを使って見事に表現されており、その幅広いG2の演出に脱帽する。また、13人の被害者たちがカラフルな衣裳をまとっていることで、それぞれのキャラクター説明がなくとも混同することなくストーリーに集中できたのもありがたいポイントだった。

本作の中で、もっとも気になるであろう“縮んでいくステイシー”は、立ち位置を変えて芝居をしたり、パペットを活用してその大きさを表現したりと、さまざまな手法を用いて表されていた。実際に花總が小さくなっていくわけではないのに、花總の高い演技力も相まって本当に小さなステイシーがその場にいるように感じられ、観客も一緒に不思議な世界に迷い込んでいる…そんな感覚を覚えた。

『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』舞台写真

『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』舞台写真

『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』舞台写真

この作品で描かれる不思議な出来事は、現実社会で起こるさまざまな事象の暗喩となっている。なので、“縮んでいくステイシー”は、夫婦のディスコミュニケーションを表しているとも考えられる。一見すると良い夫の僕だが、彼の行動をよくよく見ると、嫌な一面が次々と見えてくる。突然、大きな声をあげる。ステイシーの意見を鼻で笑い、自分の意見を突き通す。話を聞いてほしいステイシーを適当にあしらう。それらは、誰からも非難されるほど罪のある行為ではないが、毎日、相対するステイシーにとっては自分がどんどん小さくなっていってしまうような思いだったのだろう。そんな夫婦が、どのような未来をつかむのか。ぜひ会場で確かめてもらいたい。

花總は、健気で真摯、聡明でありながらも、夫には強く意見をできないでいるステイシーを好演。先にも書いたように、体が縮んだ後の演技は特に秀逸で、本当に手のひらサイズのステイシーがいるかのようだった。劇中では、美しい歌声を聴かせるシーンもあり、悲しげなその歌声が場面を際立たせていた。

『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』舞台写真

『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』舞台写真

谷原が演じる僕は、この物語を進行する役割も持つ。それぞれの“事件”を回想、説明しながら、観客を物語に引き込む。さらに、谷原が持つ穏やかな空気感と、垣間見える“嫌な男”の演技が絶妙に混じり合い、僕というキャラクターが見事に立ち上がっていた。

そして、銀行強盗を演じた平埜、被害者の一人を演じた入山をはじめとしたキャスト全員が、安定感のある演技を見せ、極上のファンタジーを作り上げていた。

『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』舞台写真

原作同様、一度観ただけでは味わい尽くせない本作。4月14日(日)まで東京・日本青年館ホールで上演された後、4月20日(土)・21日(日)に大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール、4月26日(金)~28日(日)に名古屋・御園座でも公演が行われる。
 

取材・文・撮影=嶋田真己

公演情報

舞台『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』
 
【東京公演】2024年4月1日(月)~4月14日(日)日本青年館ホール
【大阪公演】2024年4月20日(土)~21日(日)COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
【名古屋公演】2024年4月26日(金)〜28日(日)御園座
 
【CAST】
花總まり  谷原章介
平埜生成  入山法子  栗原英雄
中山祐一朗  吉本菜穂子  幸田尚子  楢木和也  西山友貴  吉﨑裕哉  山口将太朗  山根海音  黒田勇  須﨑汐理
 
【STAFF】
原作:アンドリュー・カウフマン
脚本 / 演出:G2
 
情報】
S席:¥11,800- A席:¥9,800-
 
<公演に関するお問い合わせ>
舞台『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』事務局0570-002-029(平日10:30~18:30)
に関するお問い合わせ>お問い合わせダイヤル 0570-084-617(11:00~16:30)

主催:TBS / ローソンエンタテインメント
 
 
(C)2010 by Andrew Kaufman
Used by permission of The Rights Factory Inc. through Japan UNI Agency, Inc., Tokyo
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