ちゃんみなが初めてフェスのトリを務め、ASH ISLAND、BIG Naughty、唾奇×CHICO CARLITO等、日本・韓国のHIPHOPアーティストが集結した新たなフェス『GO-AheadZ(#ゴーアヘッズ)』初日レポート!
ちゃんみな
日本と韓国のヒップホップアーティストを中心にさまざまなジャンルのアーティストが集結したイープラス主催のフェスティバル『GO-AheadZ(#ゴーアヘッズ)』。1日目は午前中にWes Atlas、SKRYUら若手の注目株から、(sic)boyや釈迦坊主といった日本ならではのミックス感で独自のヒップホップを追求するアクトが登場した。お昼頃になるとデジタルとバンドをミックスしたCVLTEの演奏が始まり、新作『DIGITAL PARANOIA 2052』からの楽曲、「hellsong.」「happy.」では釈迦坊主を招いたコラボステージを披露した。その後はいま日本のヒップホップシーンでもっとも勢いある若手ラッパーのひとりであるWatsonの出番。アルバム『Soul Quake』の「Rando」「Working Class Anthem」から代表曲「reoccurring dream」を挟み「MJ Freestyle」までを一気に駆け抜けるようにラップした。
Watson
Paul BlancoはRM(BTS)のソロアルバム『Indigo』に参加してさらに知名度を高めたラッパー/シンガーだ。韓国のさまざまなアーティストの客演にひっぱりだこの人気者。前述のRMのアルバムに収録された「Closer」に加え、この後に出演するASH ISLANDと制作した「Paranoid」も披露。リリースから1年以上経ってから人気曲になった「Summer」は『GO-AheadZ』でも大合唱となった。
Paul Blanco
続いてステージに立ったのは沖縄出身のシンガー・Yo-Sea。端正なルックス、優しく繊細な声と歌唱力で着実にファンを増やしている。マイクスタンドを使ってしっかりと聞かせるセットリストで臨んだ今回は、「Me&You」「Moonlight」など新旧織り交ぜたナンバーを聞かせた。Paul BlancoからYo-Seaの流れはメロウな土曜の午後にぴったりだ。
Yo-Sea
この日は沖縄のアーティストが特に大きなインパクトを残した。柊人は体調不良のためキャンセルになったOZworldの代打で急遽出演することに。「OZworldを観たかった人もたくさんいると思うけど、自分はこのチャンスをCHOUJIさん、唾奇さん、CHICO(CARLITO)さんのおかげで掴むことができました」と話した。「歩くところ(花道)があるステージでやるの初めてで」と緊張感を感じさせるも持ち前の実力で尻上がりに観客を惹きつけていった。18scottをゲストに招いた「Cry Later」や、沖縄ともつながりが深い福岡のプロデューサー・Olive Oilと制作した「あなたがいいと」といった曲で包容力ある歌声を響かせた。
柊人
さらに強烈だったのは唾奇×CHICO CARLITO。CHICOがヒップホップにハマるきっかけが唾奇だ。「街から街」「Let me」「一陽来復」など、柔らかい音色のトラックにハイエナジーなラップを乗せて会場の温度を上げていく。観客とのコールアンドレスポンスも完璧。盟友二人が最高のコンビネーションで盛り上げた。CHICOから「何もなかった頃からずっと背中を押してくれてきたしーじゃ(兄貴)」と紹介されたELIONEは「Keep Going(feat. CHICO CARLITO&唾奇)」と新曲「Warumono(feat. 唾奇)」を歌った。CHICOは柊人を呼び込んでFIRST TAKEでも歌った「Let Go」を聞かせた。唾奇は「俺は気分屋だからばんばん出ずっぱってわけでもないし、気分の向いた時に音楽やるんですけど、ただモテたいとか目立ちたいとかだったらとっくに音楽はやめてる。30こえた俺の目標は音楽をやり遂げて死ぬってことになりました。でもまだまだ準備が足りない。今日も今まで生きてきた道も俺が胸張って死ぬまでの準備運動段階です」と話した後、「Wonder Child feat. 唾奇」(NF Zessho)の自分のパートをアカペラでラップした。そして、「俺の大切な友達は遠いところに行っちゃったけど、音楽でなら、今日ここに集まってくれた人たちとなら、届くと思うんすよ。歌ってくれますか」と言って「All Green」を歌った。ラストは「ニノクニ」(OZworld)、「RASEN FREESTYLE in OKINAWA」をぶちかましてライブを終えた。これからもいろんな場所でライブを観たいと思わせるような唾奇×CHICO CARLITOのパフォーマンスだった。
唾奇×CHICO CARLITO
約1年前、活動を終演させたKANDYTOWNのメンバー、Gottz&MUDが「+81」「Cook Good」などで抜群のラップ力を見せつければ、IOは「Honto」などでトランペット奏者を招いて渋く決め、さらにMonyHorseとのピースな名曲「TOKYO KIDS」も披露。日本のヒップホップシーンを背負って立つ貫禄を漂わせたパフォーマンスだった。
IO×MonyHorse
韓国の若手実力派・BIG Naughtyが出てくると黄色い声援が上がった。「Vancouver2」「Beyond Love」「Romance Symphony」など人気曲を歌唱して、簡単な韓国語と片言の日本語で積極的に観客とコミュニケーションをとった。「Love Dovey」ではファンが作ってきたメッセージボードを受け取るシーンも。imaseの「NIGHT DANCER(BIG Naughty Remix)」、サビを日本語にして歌った「Just 10 centimeters」など日本向けのセットリストで、初めてのファンでも楽しめる仕掛けをたくさん用意してきたように感じた。際立っていたのはとんでもない歌唱力だ。繊細な感情表現や声量の安定感、音域の広さに思わず聞き惚れてしまった。しばしば彼のスタイルはシンギングラップと称されるが、熟練のシンガーと言っても差し支えない実力の持ち主であることを証明した。
BIG Naughty
カラフルな照明に彩られたSIRUPを挟んで、「一緒に歌いましょう!」というシャウトとともにASH ISLANDがステージに現れた。BIG Naughty同様、歌とラップにとても安定しており、観客とコミュニケーションを取りながら、楽曲の魅力を伝えていくのが非常にうまい。「Error」「Rainy day」「Because」「I remember」と客演曲も交えて会場をどんどん自分のフィールドに変え、「俺の一番好きな曲です。一緒に歌いましょう」と言って「Nightmare」を歌い、続く「MELODY」では大合唱が巻き起こった。「Paranoid」ではステージから降りて、最前列の観客が陣取る柵に登って歌うという熱いパフォーマンスも。一方、MCでは「元気ですか? ASH ISLANDです。日本語ちゃんと勉強します。日本大好き」とサービス精神満点のトークを聞かせ、あらゆる角度から楽しめる素晴らしいライブで力を発揮した。
ASH ISLAND
1日目のトリは生まれ故郷の韓国でも活動を始めたラッパー/シンガーのちゃんみなが務めた。意外にもフェスのヘッドライナーは『GO-AheadZ』が初だという。日韓のアーティストが集結して新しい体験を提案する本フェスにぴったりの人選と言える。彼女の名前がコールされると場内に大きな歓声が上がった。まずはGRAYと制作した「RED」をバンド編成で披露。差別をテーマにしたこの曲のラストに「君の血も君の血もRED/マジで何してるの現在(ここ)で/愛してるよみんなサランへ」というヴァースがある。国境や政治ではなく、文化に共感して集まった観客の前でこの歌詞を歌うことには大きな意味があるだろう。「君に勝った」を挟んで「FXXKER」「Princess」「Picky」のハードでダークなメドレーにはダンサーチームが登場。ちゃんみなは「今日は私が最後だよ! (みんなのエネルギーを)全部ちょうだいね」と叫び、イントロのリズムに合わせて「踊れ!」と口にし、観客たちは最後のエネルギーを爆発させた。
ちゃんみな
「今日は好きなアーティストさんがいっぱい出てたから、普段はそういうことしないんだけど、自分の出番を忘れていっぱい叫んじゃいました(笑)。But Now My Time。めいっぱい声からして帰ってください。私もみんなの恥にならないようにめちゃくちゃかっこいいとこ見せるんで。次はあなたたちの番です」と言って「B級」に突入。ダンサーと一緒にヒップをシェイクするダンスがかっこいい。「ボイスメモNo.5」からの「Angel」はイントロの段階で大歓声に包まれ、疾走感あるアコギとダンスホールのビートに合わせてちゃんみなワールドで幕張メッセを制圧していった。攻撃的なサウンド、畳み掛けるラップ、張り裂けそうなシャウトに圧倒される「ダイキライ」の後は、スペシャルゲストのASH ISLANDが登場して「Don't go」を一緒にパフォーマンス。2人が向かい合って歌った2ヴァース目では大歓声が上がった。ASH ISLANDと短い会話をした後、ちゃんみなは「(今日の出番も)あと少しになってきたけどみんなもっと声出せますか? (観客の声が聞こえるように)片っぽイヤモニ外しとくね」と嬉しいコメントを残し、「ハレンチ」「美人」というキラーチューンをしっかりと聞かせた。この時のちゃんみなの本当に楽しそうな素敵な表情が印象に残った。
ASH ISLAND×ちゃんみな
「私はちゃんみなを8年やってるんですけど、初めてフェスの大トリを務めさせていただいて。こんなに素敵な機会を与えてくださったことが本当に嬉しくて。(この時間を)ここにいるみなさんと一緒に迎えることができて胸がいっぱいです。ちゃんみなをやってきて、今まで諦めなきゃいけないこと、諦めたいこともたくさんあって。本当死ぬほうがマシじゃんってくらいしんどかったこともいっぱいあったけど、(気持ちを)強く持って続けてみるもんですね。こんなに最高な景色がまってるなんて、その時の私は思ってなかったです。今はすごく生きづらい世の中で、何やっても嫌なこと言われる。そんな中、みんなその足でしっかりと心を持って立ってことはマジでかっこいいです。音楽をこんなにも愛してくれてありがとうございます。みんなみたいな人がこの世界を変えると思ってるし、あの日報われなかった私みたいな小さい女の子を助けるんだと思います。みんなに任せたから、私にも任せてね。精一杯頑張るから」と話して、ラストソング「Never Grow Up」で1日目の幕を下ろした。
文=宮崎敬太 撮影=藤田陽介、小林一真
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