古川雄大・京本大我、お互いの魅力を知る二人が切磋琢磨して挑む ミュージカル『モーツァルト!』製作発表会見レポート
(左から)古川雄大、京本大我
2025年より建て替えのために休館する帝国劇場のクロージングラインナップとして、2024年8月より上演されるミュージカル『モーツァルト!』。
脚本・歌詞/ミヒャエル・クンツェ、音楽・編曲/シルヴェスター・リーヴァイというゴールデンコンビによる本作は、2002年の日本初演以来、多くのミュージカルファンを魅了してきた。約3年ぶりの公演でヴォルフガング・モーツァルト役を演じるのは、2018年より同役を務める古川雄大と、『エリザベート』『NEWSIES』などでキャリアを積み、今回が帝劇初主演となる京本大我。演出を小池修一郎が務め、キャストに真彩希帆、大塚千弘、涼風真世・香寿たつき(Wキャスト)、山口祐一郎、市村正親といった実力派が顔をそろえた。
ミュージカル『モーツァルト!』ビジュアル 提供:東宝演劇部
古川雄大・京本大我による製作発表会見では、古川と京本によって新ビジュアルが公開され、古川は「すごい迫力ですよね。これだけヴォルフガングが全面に出ているビジュアルは未だかつてなかったんじゃないでしょうか。圧倒されますし、素敵なビジュアルで公演が楽しみです」と感嘆の声を上げる。京本は「ずっと憧れていた作品で、まさか自分ができるとは思っていませんでした。改めて見ると感動しますね。雄大くんとご一緒できるのも感慨深くて嬉しいです」と語った。
(左から)古川雄大、京本大我
■お互いに刺激を受けられるWキャスト
ーーまずはご挨拶をお願いします。
古川:この作品に参加するのは3回目。様々なミュージカルに出演していますが、特に大好きな作品の一つです。初めて参加した時はとにかく足掻いてやりきりました。2回目は技術的にも少し余裕が出ましたが、いろんな方から「初演のほうがよかった」と言われた(笑)。足りないものを追い求める姿が役に活きたと思うので、3回目は自分を追い込んでいこうかと。自分に課題を与え、自身ベストのヴォルフガングを演じられたらと思っています。
そして歴代5人目のモーツァルト、京本くんと一緒に演じます。『エリザベート』のルドルフをWキャストで演じたり、トートとしてルドルフと向き合ったりし、彼の魅力は僕が一番よくわかっている。素晴らしいヴォルフガングを作ってくれると思います。稽古場でも刺激を与え合って切磋琢磨していきたいです。
京本:約10年前に『エリザベート』で初めて本格的にミュージカルに挑戦し、難しさ・過酷さと面白さや奥深さを感じました。いろいろ勉強する中で出会ったのがこの作品。その時は(井上)芳雄さんや(山崎)育三郎さんが出演されているのを見て、いつかモーツァルトを務められるくらいミュージカルを頑張ってみたいと感じました。
その後、毎年舞台に挑戦し、自分の中で戦いながらやってきて、20代最後にこの役に挑戦する機会をいただけて光栄に思っています。しかも、僕が初めて『エリザベート』に出演した時にWキャストだった雄大くんが一緒にやってくれる。僕にとってお兄ちゃんのような存在で、10年前からたくさん甘えて、引っ張ってもらっていました。稽古場でも楽しく役と向き合って、自分らしいヴォルフガングを作っていけたらと思っています。
(左から)古川雄大、京本大我
ーー出演が決まった時の気持ちはいかがでしたか?
古川:またやれるんだという喜びが大きかったです。ただ、成長とともに失われるものもきっとあると感じた2回目でした。初めての時のフレッシュさをどうにか出したいと悩んでいます。フレッシュな若い人が登り詰めるための役だと思うんですが、まだやりたい。まだやれるという喜びとともに、自己ベストを作りたいという意欲があります。
京本:帝国劇場が一旦クローズしてしまうと聞いていたのでチャンスはないと思っていました。なんとなく20代のうちに挑戦してみたいという生意気な思いがあったので、叶うのが嬉しかったです。同時にプレッシャーもありますが、任せていただく以上は頑張りたいと思います。
ーーお互いの印象、リスペクトしている点を教えてください。
古川:芸能界にいると美しい方やかっこいい方をたくさん見ますが、特に美しいですよね。そしてすごくストイックな努力家。彼が主演している作品を見た時に、改めて彼の成長、見えないところでの努力が伝わりました。この見た目があったらもっと調子に乗っていいと思うんですが、それだけじゃなく努力するところを尊敬しています。
京本:僕も全く同じ気持ちです。雄大くん、羨ましいくらいかっこいいじゃないですか。前回の『モーツァルト!』のビジュアルも大好きで、それを見るために帝劇作品中にわざわざロビーに見に行っていました。お芝居もすごく繊細で細かいところまで突き詰めているし、男らしさもあって僕にとって理想の男性です。それでいてほんわかした部分やマイペースなところもある素敵な先輩です。
ーー帝国劇場に関する思い出やエピソードはありますか?
古川:2012年に『エリザベート』で帝劇に出会い、それをきっかけにトートという役に憧れを抱きました。ありがたいことに何度も帝劇に立たせていただく中で成長し、なんとかトートにたどり着いたので、自分を育てていただいた場所です。
京本:小さい頃から先輩の作品などで立たせていただいていましたが、20歳の時に『エリザベート』で立った時に見た景色がそれまでと違って、帝劇の凄みみたいなものを感じました。その時も芳雄さんや雄大くん、城田優さんが僕をすごく気にかけてくれて。雄大くんとも地下のお蕎麦屋さんにご飯に行った。ステージ上だけではなく、周りのお店や楽屋にも思い出がたくさん詰まっています。
(左から)古川雄大、京本大我
■難しいぶん、やりがいも大きな作品
ーーお二人が考える『モーツァルト!』の魅力とは。
古川:天才の生涯を描いているんですが、成長するにつれていろいろな人間関係が生まれる。天才を描いていながらみんなが共感できる、身近なものだと思います。それを演劇的な表現しているのが魅力の一つ。クンツェさんとリーヴァイさんの楽曲もすごく素敵。キツイけど、ヴォルフガングってそういう人生。音楽が自然と導いてくれる。芸術性が高いのが魅力です。
京本:僕はまだ客席や映像でしか見ていないので、ステージ上からヴォルフガングとして見る景色も楽しみです。ヴォルフガングの「自由に輝きを求めて生き続けたい」という無邪気さや熱さも素敵ですが、繊細さもあると思う。何より楽曲が全てキャッチーで、難易度が高いぶん聞いていても圧巻。ヴォルフガングとしての熱い思いをしっかり歌に乗せて届けていきたいと思います。
ーー役作りについてどう考えていらっしゃいますか?
古川:ヴォルフガングは音楽の天才で、何も考えずに直感で動いてしまう人。そこが魅力でありダメなところでもある。いろいろな人との関係性がしっかり描かれているので、僕もそこをきちんと演じたいです。役だけじゃなく古川雄大も追い込むことで、初演の時のような切羽詰まった感じを出したい。妥協せずにやらないといいものができないと思うので甘えずにいきたいと思います。
京本:この役は肉体も精神面も鍛えておかないといけない。京本大我としての強さも持っていないといけないので、いろいろなことに気をつけながら向き合いたいです。ヴォルフガングは幼少期に「奇跡の子」と呼ばれているくらいのキャラクター。天才を天才が演じるのは難しいと思うので、僕のような特別秀でていない人間がコツコツ作り上げる面白さがあると思います。グループ(SixTONES)にも天才だと思うメンバーがいるんですが、そういうキャラクターを日々勉強しながらヴォルフガングという役に奥行きをつけたいです。
ーーちなみに、天才だと思うメンバーとは。
京本:みんなですが、特にジェシー。フィーリングでやることがかっこよかったり、音楽的なレベルが高かったり。もちろん努力をたくさんしていますが、元々持っているセンスを見ると刺激を受けて切磋琢磨し合えています。今後もいろいろなメンバーがいろいろな舞台に触れて、いい刺激を与え合い、それぞれをリスペクトしていけたらと思っています。みんな得意分野はあるけど、やってみるとなんでもできちゃう。そこがSixTONESの尊敬するところで好きなところです。
(左から)古川雄大、京本大我
ーー『モーツァルト!』は1回では満足できないと言われますが、古川さんが1回目と2回目でできなかったこと、今回やりたいことはあるでしょうか。
古川:歌に関してはすごくあります。今まで中川(晃教)さんをはじめ、素晴らしい方が演じてきているので、聞いていると「こんなふうに声が出せたら」というのがあります。ただ、僕が「1回目の方が良かった」とたくさん言われているように、上手さや貫禄だけじゃない。今回それを見つけたいです。
ーー京本さんから今のうちに聞いておきたいことはありますか?
京本:雄大くんのヴォルフガングは美しいし芯の強さがあるしすごく魅力的でした。決して真似するわけじゃないけど、素敵なところは勉強させてもらいたいです。あと、長期の公演になるので、体調管理とか。『エリザベート』では地方公演で一緒にカラオケに行って高音対決とかしてたけど、今回はそういうのは控えつつ、楽しくできたらと思っています。
ーー古川さんからアドバイスはありますか?
古川:ないです。彼は天才じゃないって言うけど天才。ルドルフの時も、僕があんなに苦労したナンバーを軽々やっちゃう。彼は天才なので刺激をたくさんいただきたいです。
ーー最後に、ファンの皆さんへのメッセージをお願いします。
古川:今回5代目のモーツァルトが誕生し、他にも新キャストが参加します。今まで愛してくださった方は変化を感じていただけたらいいなと思いますし、このカンパニーならではの色をお届けできるように頑張っていきたいと思いますので、応援よろしくお願いします。
京本:今までの経験も大事にしつつ、新鮮にいろいろなことを取り込んでいく勇気を大切にしてヴォルフガングという役を演じたいです。育三郎さんも難しいといっていたくらい役。雄大くんが自分を追い込むと言っていましたが、僕は自分を追い殺すつもりで。壊れる寸前くらいまで自分を痛めつけながらやらないと皆さんに感動していただけないと思う。共演者・スタッフの皆さんに支えてもらいながらも、自分の足でしっかり立って演じたいと思います。
本作は2024年8月19日(月)~9月29日(日)まで帝国劇場で上演。10月に大阪公演、11月には福岡公演も行われる。
取材・文・撮影=吉田沙奈
公演情報
<東京公演>2024年8月19日(月)~9月29日(日) 帝国劇場
<大阪公演>2024年10月8日(火)~27日(日) 梅田芸術劇場メインホール
<福岡公演>2024年11月4日(月)~30日(土) 博多座
脚本/歌詞:ミヒャエル・クンツェ
音楽/編曲:シルヴェスター・リーヴァイ
オリジナル・プロダクション:ウィーン劇場協会
演出/訳詞:小池修一郎(宝塚歌劇団)
平日 S席17,500円 A席11,000円 B席6,000円
土日祝・千穐楽 S席18,500円 A席12,000円 B席7,000円
(全席指定・税込)
製作:東宝