孤島に取り残されたロボットを描く傑作SF『ロボ・ロボ』間もなく開幕! 西田シャトナー・玉城裕規 インタビュー
2016.1.17
インタビュー
舞台
-
ポスト -
シェア - 送る
西田シャトナー・玉城裕規
西田シャトナーが2014年に始動させたプロジェクト「シャトナー of ワンダー」。その第1回作品として話題を呼んだ『ロボ・ロボ』が、新キャストによって1月16日から上演される。(24日まで。天王洲 銀河劇場にて)
この作品は、西田が96年に発表した傑作SFで、南の島に飛行機が不時着、乗っていた7体の家電ロボットたちは、指示するユーザーもなく、限られた時間しか残っていない電池とともに取り残されるという、ある種の極限状態を、独特の身体表現「ロボットマイム」によって役者たちが演じきる舞台だ。
今回は玉城裕規のアナライザー(分析ロボット)を中心に、小澤亮太、佐藤流司、荒木健太朗、山川ありそ、根本正勝、村田充が出演、あの不思議で美しい世界をまた現出させる。
この作品は、西田が96年に発表した傑作SFで、南の島に飛行機が不時着、乗っていた7体の家電ロボットたちは、指示するユーザーもなく、限られた時間しか残っていない電池とともに取り残されるという、ある種の極限状態を、独特の身体表現「ロボットマイム」によって役者たちが演じきる舞台だ。
今回は玉城裕規のアナライザー(分析ロボット)を中心に、小澤亮太、佐藤流司、荒木健太朗、山川ありそ、根本正勝、村田充が出演、あの不思議で美しい世界をまた現出させる。
そんな作品への思いを西田シャトナーと玉城裕規が語ってくれた、演劇ぶっく2月号(発売中)のインタビューを、別バージョンの写真とともにご紹介する。
あまりに素晴らしかったので出たくないと
──2年ぶりの『ロボ・ロボ』ですが、西田さんは再演ではなく「時を越えた上演の続き」とおっしゃっていますね。
西田 なかなかわかっていただけないんですが、「再演」と言われる言葉に抵抗がありまして。前の楽日から年月が経ったけど、また次のステージがあるというだけの話なんです。この『ロボ・ロボ』も初演は1996年ですが、以来、機会をつかまえては繰り返し上演してきました。2014年には10年以上ぶりに上演の続きができて、さらに今回あまり長い時間が経たずにまた上演の機会をいただいて。すべて初演からここまで全部がつながっているという認識なんです。
──玉城さんはこの舞台は観ましたか?
玉城 前回の公演を観ました。すごく感動して、楽屋裏に行ったときシャトナーさんと会ってハグしました(笑)。久しぶりということもありましたけど、興奮していたので。僕、あまり興奮しないんですけど。
西田 そうなの?
玉城 興奮しても楽屋とかで前面に出さないんですよ。それを出しちゃって(笑)。でも、まさかすぐまた上演されて、そこに僕が出るとは思ってもみなかったです。観ている時って「もしこの作品に出させてもらえるなら」とか勝手に想像するじゃないですか。でも「絶対出たくない」と思ったんです。あまりに素晴らしかったので。ですから今回、すごくプレッシャーもあるのですが、シャトナーさんもおっしゃられたように再演ではないので、今回の役者たちでできることを素直に出せればと。それが僕らがやる意味だと思っています。
役者が「見る」ことと量子力学の関係とは
──前回はレコーダーが中心になっていましたが、今回の玉城さんはアナライザーなのですね?
西田 前回も今回も、レコーダーとアナライザー、その2体が中心です。笑顔と妖しさを同居させられる俳優・玉城くんには、あえて激しい葛藤を抱えているアナライザーを演じてもらうことにしました。その葛藤を表面には出さないのがロボットですけど、奥深い演技を見られると思います。
──表情に出せないのはたいへんですね。玉城さんは西田さんの『弱虫ペダル』に出ていますが、身体能力の可能性を追い求めるような舞台でしたね。
玉城 ご本人を目の前にして言うのも恥ずかしいのですが、僕の演劇に対する考え方とか価値観を覆されました。めちゃめちゃ幅を広げてくださったし、作品1つ1つへの取り組み方が変わるぐらい影響を受けました。だからこそ、またご一緒させていただけるなら真っ白でいこうと、そう思っていました。
──西田さんから見た役者玉城裕規とは?
西田 玉城くんの俳優としての良さは、液体みたいな柔らかさです。役者は舞台の上でストーリーとか役者同士とか、舞台装置のオブジェクトとかに、ぶつかったり触れたり離れたりして芝居する。でも玉城くんの場合は、液体のように染み込んで、いろいろなところに影響を及ぼすんです。
──玉城さんが空間とか物語に染み込む感じはわかるような気がします。
西田 玉城くんが舞台を通過したあと、その舞台の上で起こる出来事は通過する前とは違っています。まるでリアクションしていないような場合でも、彼が一度板の上に立って何かを見たら、もう「見た」だけで済まない。量子力学とかが好きな人はわかる話だと思うのですが、根源的なレベルでは、「観測する」ことは観測された対象物に影響を及ぼすんです。たとえば人間が一度も足を踏み入れたことのない島のトカゲと、人間が見た島のトカゲとはその後の進化のあり方が違ってゆく。玉城くんは単にその力が強いということじゃなくて、影響力の量が多いし柔らかいですね。あちこち染み込んで、それがお芝居2ステージぐらいではなくならないだけの質量があって、いくらでも染み出してくる。芝居が終わったら玉城くんでベットベトになってるという、ハチミツみたいな影響力がありますね(笑)。
玉城 ハチミツなんだ(笑)。
西田 人と交わることは怖いですから、我々は自分の殻をつい固めてしまう。でも子供の頃は誰でも玉城くんのように柔らかいんです。そういう柔らかい影響力を、玉城くん自身は自分なりに社会と戦ってきて身に付けた部分もあるかもしれないけど、本来、修行とかで身に付くものではないんじゃないかな。さっき、レコーダーとアナライザーのどちらがメインかというような話が出ましたが、ストーリー上どちらがメインというふうには捉えられないし、実際7体ともメインです。ただカンパニーというものは、誰かを中心にまとまってゆくものではあります。その意味では、今回は玉城くんから染み出すハチミツの中を歩いてみようかなと思っています。
にしだしゃとなー〇大阪府出身。作家・演出家・俳優・折り紙作家。90年、神戸大学在学中、腹筋善之介・保村大和・佐々木蔵之介らと劇団「惑星ピスタチオ」を旗揚げ。SF素材を盛り込んだ大胆な演出とパワフルな俳優の演技で、代表作『破壊ランナー』などを発表。00年に解散。最近の演出作品は『ソラオの世界』(09年~)『銀河英雄伝説』(10年)『弱虫ペダル』(12年~)『遠い夏のゴッホ』(13年)SHATNER of WONDER『小林少年とピストル』など。折り紙作家としても活動している。
たまきゆうき○沖縄県出身。舞台を中心に活躍中。主な出演舞台は、『弱虫ペダル』『ライチ☆クラブ』『メサイア』『里見八犬伝』『曇天に笑う』『カレーライフ』など。2016年は公開予定の映画『のぞめき』と『血まみれチェーンソー』が控えている。
※2014年の公演レビューはこちら
http://blog.livedoor.jp/enbublog-forecast/archives/51932983.html
http://blog.livedoor.jp/enbublog-forecast/archives/51932983.html
【取材・文/吉田ユキ 撮影/岩村美佳】
〈公演情報〉
キティエンターテインメント・プレゼンツ
SHATNER of WONDER #3
『ロボ・ロボ』
作・演出◇西田シャトナー
出演◇玉城裕規 小澤亮太 佐藤流司 荒木健太朗 山川ありそ 根本正勝 村田充
●1/16~24◎天王洲 銀河劇場
〈料金〉S席¥7,600 A席¥6,500(全席指定・税込)
〈料金〉S席¥7,600 A席¥6,500(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東京音協 03-5774-3030 (平日10:00-17:30)