ネコだらけでにゃんとも素敵、夏休みの自由研究にもぴったりな『特別展「ネコ」 ~にゃんと!クールなハンターたち~』
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特別展「ネコ」 ~にゃんと!クールなハンターたち~ 2024.07.13(SAT)~9.23(MON) 大阪市立自然史博物館
7月13日(土)~9月23日(月・振休)の期間、大阪・大阪市立自然史博物館 ネイチャーホール(花と緑と自然の情報センター2階)にて『特別展「ネコ」 ~にゃんと!クールなハンターたち~』が開催されている。
哺乳類の中で完全に肉食に特化した「究極のハンター」である、ネコ科の動物たち。現在、41種の野生ネコ科動物が地球上に存在するとされ、多様な環境に適応し、生態系のさまざまな生き物と関わり合って暮らしている。同展ではライオンやジャガーなどのカッコ良い野生ネコ科動物から、私たちの生活に身近にいる可愛いイエネコまで、最新の研究に基づいたネコ科動物がもつ魅力に科学で迫っている。
展示は世界の野生ネコ科動物41種すべてを、はく製、骨格、映像や画像などを用いて紹介しながら、「超肉食獣」として進化したネコ科の身体の特徴や生態を解説。日本に生息する2種のヤマネコの紹介では、臭いや音、手触りなど五感を使って生態を学ぶことができ、さらにフィールド研究や保全活動などについても詳しく紹介。イエネコの紹介では野生のネコ科動物との共通性や最新の研究までを楽しみながら学ぶことができる。
同展は昨年、名古屋市科学館で開催された展覧会の巡回となっているが、今回の大阪展で本邦初公開となる野生のネコ科動物も登場。世界的にも貴重な標本や資料も多く、ネコ好きはもちろん、子どもの夏休みの自由研究にもぴったりな内容となっている。今回、SPICE編集部は会期直前に開催されたプレス内覧会に参加。『特別展「ネコ」』の楽しみ方を紹介したい。
起源と進化から知るネコ科動物の魅力
ネコ科の動物たちの祖先は、およそ3000万年前にユーラシア大陸で誕生。それより以前、「ミアキス」とよばれるネコやイヌ、クマやイタチなどの共通の祖先がおよそ6200万年前に出現。4000万~3000万年前にはイヌとネコの仲間に大きくわかれ、過去には絶滅してしまったネコ科に似た動物たちも多く存在していたことがわかっている。
展示ではミアキス科の化石(複製)や大型肉食獣の化石などを展示。共通の祖先をもつ動物として、可愛いラッコやアザラシなどのはく製も展示されていて、現生する生き物の起源や進化を学ぶことができる。
ネコ科動物の「ネコ」ぶりをよく知ることができるのが骨格標本だ。現生のネコ科41種は体重わずか1kgのサビイロネコから300kgのトラまで種によって体のサイズは大きく異なるが、全ての種で歯の数や骨の数はほぼ同じなうえ、体の基本的な構造は変わらない。ずらりと並ぶ、たくさんのネコ科動物たちの頭骨の骨格標本を見れば一目瞭然。
体の構造だけでなく、獲物を狙う動きもよく似ている。トラやジャガーが獲物を狙って、音を立てずに忍び寄り、素早い動きで襲い掛かる。ネコ科動物の「ハンター」ならではの特徴的な動きはイエネコも同じ。映像展示ではしっぽをふりふりしながら体を低く構えて獲物に近づくイエネコと、野生のネコ科動物の動きを見比べるとよくわかる。
展示のメインとなる場所には東南アジア・ユーラシア、アフリカ、南北アメリカと3つの地域に分かれ、ネコ科動物のはく製がずらりと並んでいる。サーバルやマヌルネコなど、近年キャラクター化されて人気を集めている野生ネコのほか、ここでしか観ることのできない珍しい種にも注目してほしい。
寒い地域に住むカナダオオヤマネコの展示では肉球にまでびしっと毛が覆っていることがわかるよう、足裏に鏡を設置。さらに同展で本邦初公開となる「コロコロ」のはく製も必見! 東京にある国立科学博物館でも展示されていない、超レアなはく製だ。同展を企画・監修した北九州市立自然史・歴史博物館(北九州市立いのちのたび博物館)の中西希学芸員曰く、「ジャガランディ」「ジョフロワネコ」の展示もかなり貴重らしいのでぜひチェックを。
大型から超小型までリアルなはく製がずらりと並ぶなか、いまにも襲い掛かってきそうな睨みを効かせた大型のトラのはく製が飛び込んでくる。ここではトラのはく製が同時に2体展示されていて、生息地によって異なる毛の色に注目してほしい。しかも大型のはく製はかなり貴重で、絶滅が心配されている種ということもあり、野生下でもこのサイズが観られることはほぼないんだとか。
ほかにも、ネコ科動物の毛皮の模様をじっくりと目視できるフラットスキンや仮はく製など、どれも貴重な資料ばかり。しかもそのほとんどが国内の博物館などの収蔵品というから驚きだ。ここまでの資料が一堂にそろう展示は国内外でもかなり貴重な機会なのだそう。今回の展示は中西学芸員が「ネコ好きのスタッフが執念で集めました!」というだけあって随所にネコ愛が溢れているのもいい。
可愛いだけじゃない! にゃんともすごい「イエネコ」の研究最前線
科学的に学ぶことができるはく製や骨格標本、解説が並ぶなかで突如として現れるのが巨大なイエネコの大型人形だ。低い姿勢で今にも獲物にとびかかろうとする姿が再現されていて、可愛いのに肉食獣ならではの特徴を知ることができる。ここでは爪の出し入れや明暗で瞳孔の大きさを変える、ネコ科動物の特徴を可動式の模型で再現している。
ペットとして世界中で親しまれている「イエネコ」は研究しやすいこともあって専門的な研究家も数多くいるらしい。ここでは、最新の研究結果を知ることができるブースも登場。「イエネコ」の毛色の遺伝学について紹介するブースでは三毛やブチ、キジや二毛など、親仔の毛色がどうやって決まるのかを、パズル形式で楽しみながら学ぶこともできる。ほかにも耳の動きで感情が分かるなど、多彩な研究結果が丁寧に解説されているので、家でネコを飼っている人は見比べるのも楽しそうだ。
ここで驚いたのが「イエネコ」の名前について。記者はイヌと同じように、ペットとして親しまれている「ネコ」が「イエネコ」だと思っていたが、実は「イエネコ」はヤマネコが家畜化されたもので、生物学上は野良猫も同じ種。さらに、広義的にはヤマネコやネコ科動物全般を指すこともあるので、トラもジャガーもサーバルもみ~んな「ネコ」なのだ。
館内にずらりと並ぶ解説はピンクと青の2つのカラーリングがあり、ピンクは「イエネコ」、青は「野生のネコ科動物」について解説されている。会場内には本展オリジナルのキャラクターも登場し、ユキヒョウやマヌルネコ、オセロットやスナネコなど、可愛いくイラスト化されたネコ科動物たちが案内しているので、そちらもぜひチェックしてほしい。
日本ならではの2種類の野生ネコを徹底解説!
41種の野生ネコ科動物のなか、日本には「イリオモテヤマネコ」と「ツシマヤマネコ」が生息している。同展ではこれらのヤマネコが何を食べて、どのように生きているのか、フィールド研究に基づいた彼らの生態を詳しく紹介。
はく製や骨格標本だけでなく、ヤマネコの毛皮を触ったり、マーキングの臭いを嗅いだりできる体験展示コーナーもある。しかも「ツシマヤマネコ」は夏毛と冬毛の2種の毛皮があるのも興味深い。これは「イリオモテヤマネコ」が生息する西表島は一年を通じて温かな亜熱帯地域で、「ツシマヤマネコ」が生息する対馬は温暖な地域という生息地の違いがあるからだという。
日本の固有のヤマネコを研究し、同展の展示でも豊富な資料を提供しているのは中西学芸員さん自身。はく製や骨格標本だけでなく、自身がフィールド研究で使用する機材なども展示。貴重なヤマネコをどのように研究しているのか、そして生態への理解を深めることで、保護への意識を高めることもできる。動物研究が好きな子どもにとっても興味深いアイテムが展示されているので、夏休みの自由研究の参考にもなりそうだ。
展示の最後は、世界中で展開されているネコ科動物たちの保全・保護活動について紹介。「可愛い」「カッコ良い」だけじゃない。「究極のハンター」であるネコ科動物たちは人間の活動の影響を受け、数が減少し続けているのが今の世界の現状。美しくしなやかなネコ科動物たちがこれからものびのびと暮らしていけるかどうかは私たち人間しだい。イエネコを通じてネコ科動物の魅力を知り、興味を持つことでより良い地球へと繋がるはずだ。
音声ガイド/横山由依
なお、同展では音声ガイドのレンタルもあり。ネコ好きで知られる、元AKB48の横山由依がネコ科動物たちの魅力を科学的に解説。
ほかにも、館内のいくつかのスポットでは、展示資料と一緒に記念撮影が楽しめるスポットを設置。展示の最後にプリント&データダウンロードできるので、来場の記念にぜひ撮影してみよう。
展示の最後にはグッズの販売ブースもあり。同展オリジナルのキャラクターを用いたTシャツやぬいぐるみなど、ネコ好きにはたまらないデザインのものばかり。人気イラストレーター・松尾ミユキデザインの展覧会オリジナルグッズはファン必見!
コラボメニュー ※画像はイメージ
ほかにも近隣の施設と同展とのコラボレーションとして「大阪市立長居ユースホステル」では可愛いネコのマシュマロが乗ったドリンクが、「ヤンマーマルシェ長居」ではネコ柄のロールケーキやネコクッキーが可愛いスイーツが登場。
見て触れて学んで、五感いっぱいにネコの魅力に触れられる『特別展「ネコ」 ~にゃんと!クールなハンターたち~』。2024年の夏、にゃんとも素晴らしい体験ができる展示をぜひとも体験してほしい。
取材・文・撮影=黒田奈保子