「謎」に満ちた世界をのぞく『デ・キリコ展』神戸で開催中、担当学芸員によるオフィシャルレポート到着
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12月8日(日)まで神戸市立博物館にて開催中の『デ・キリコ展』。同展の担当学芸員によるオフィシャルレポートが到着したので紹介する。
ジョルジョ・デ・キリコ(1888-1978)の初期から晩年まで100点以上を集めた大回顧展が、神戸市立博物館で開催中です。本展の意義と見どころをオフィシャルリポートで紹介します。
デ・キリコ展 謎がいっぱいの世界
20世紀美術に衝撃を与えた孤高の画家デ・キリコ(1888-1978)。夢のような世界、不自然なモチーフの配置、顔のないマヌカン(マネキン)…。彼の作品は、一度見たら忘れられない不思議な魅力をまとっています。
神戸市立博物館では、デ・キリコのおよそ70年にわたる画業を、「イタリア広場」「形而上的室内」「マヌカン」などのテーマに分け、初期から晩年までをご紹介する大回顧展を開催中です。
その「謎」に満ちた世界を早速のぞいてみましょう!
会場入り口では、デ・キリコが好んで描いたモチーフであるアーチが皆様をお出迎え。
デ・キリコの不思議な世界観に入り込んでいくような、ワクワク感を味わうことができます。
さて、どんな作品が待っているのでしょうか…?
※本展では、一部の作品が撮影可能です(詳細は神戸展公式HPをご覧ください)。
【第1章 自画像・肖像画】
自画像は、多くの画家にとって重要なテーマの一つです。自分の姿を描くことは、自己との対峙であると同時に、周囲からどのように見られたいか、という画家の意識を反映するものでもあります。
デ・キリコは自身を、豪華な衣裳で着飾った姿で描きました。まさに自信満々! といった感じです。
自分に酔っているようなこの表現、当時はかなり批評の的になったんだとか。
デ・キリコのユーモアあふれる人柄が感じられる、興味深い作品が展示されています。
【第2章 形而上絵画】
続く第2章には、デ・キリコの代名詞ともいえる「形而上(けいじじょう)絵画」が並んでいます。
まずご紹介するのは「イタリア広場」です。
緑色の空に、不気味で巨大な赤い塔。はっきりと浮かび上がる影のコントラストが、劇的な雰囲気を醸し出しています。人の姿は描かれていないのですが、よく見ると二つの人影が。何とも「謎」に満ちた作品です。
「形而上的室内」もデ・キリコを代表するテーマです。
定規やビスケットなど、様々なモチーフが不自然に配置されています。なぜこんな風に置かれているのか、考えれば考えるほど分からなくなってきますね……。
この頭の中がハテナでいっぱいになる感覚こそが、デ・キリコ芸術の醍醐味ですよ!
そして顔のないマヌカンたち。
ちょっと怖いものからポップなものまで、様々なマヌカンが楽しめるのも本展の見どころの一つ。ぜひお気に入りのマヌカンを見つけてくださいね。
【第3章 1920年代の展開】
1920年代になると、デ・キリコはそれまでの「形而上絵画」に加え、「室内風景と谷間の家具」や「剣闘士」などの新しいテーマに取り組むようになります。
部屋のなかに家があったり、逆に家の外に家具が置かれていたり、そのちぐはぐな世界観にどんどんひき込まれます!
【第4章 伝統的な絵画への回帰―「秩序への回帰」から「ネオ・バロック」へ】
「形而上絵画」でよく知られるデ・キリコですが、実は古典絵画にも大きな関心をもっていました。過去の巨匠たちの作品を模写し、絵画の技法や絵具の層を強く意識した作品を手掛けたのです。本展では、「形而上絵画」だけではない、デ・キリコの幅広い画風をお楽しみいただけます。
【第5章 新形而上絵画】
何と90歳まで創作を続けたデ・キリコ。ほとばしる芸術家の魂は、老境に入っても衰えることを知らなかったようです。旺盛に作品を生み出し続けた彼がたどり着いた新境地が「新形而上絵画」です。自由で生き生きとした作品の数々からは、力強いエネルギーを感じます。
こんなに幅広いデ・キリコの作品をご鑑賞いただけるのは、本展ならではです! さらに、油彩画だけではなく、挿絵・彫刻・舞台美術もご紹介しています。
デ・キリコの世界観がそのまま三次元化された彫刻作品や、不思議でかわいい舞台衣装など、見どころがたくさん! ぜひこの機会に、『デ・キリコ展』を訪れてみてくださいね。