Azavana、即完の初ワンマン公式レポ「Azavanaとしてこの5人でしかできない音楽を届けたい」
Azavana
ヴィジュアル系バンド・Azavanaが10月24日に池袋・harevutaiで開催した1stワンマンライブ『灰の海に泳ぐホタル』のオフィシャルレポートが到着した。
Azavanaの記念すべき1st ONEMAN『灰の海に泳ぐホタル』が、10月24日に池袋・harevutaiにて開催された。
Ashmaze.と、ボーカリスト・遼(ex.VIRGE)という苦楽を共有してきた2つの存在が交わることで誕生したAzavana。奇跡の融合によって生まれたバンドが与えたインパクトは大きかったが、その幕開けは少々波乱に見舞われた。その要因は、Azavanaというバンドが持つ意義が未知数であったこと、これに尽きるのではないかと思う。裏を返せば計り知れない力を秘めているということにもなり得るわけだが、実際はいかに……? そこで、ズバリ「Azavanaとは?」ということに対する答えを自分の目で確かめようと足を運んだ人――この日の去り際に詩結が残した言葉を借りるならば“いろんな気持ちを抱えて、今日ここに〈知りたい〉と思ってきてくれた人”が詰めかけたことによって、見事SOLD OUTを記録。これはまさしく、Azavanaに対する期待値の大きさを示すこととイコールでもあった。
遼(Vo)
幕が開いた瞬間から、会場は即座に物々しい空気に包まれた。それは、板付きでステージにジッと構えた5人のオーラによるものだったことは言うまでもない。得も言われぬ緊張感を断ち切るように、遼が「頭!」とだけシンプルに扇動して「カトレア」からスタートすると、体に振動が伝わるほどの音圧を帯びたサウンドで見る見るうちに席巻していく。遼のスパルタとも言える攻めの姿勢に応えるオーディエンスとメンバーとで生み出す灼熱の空間には一切の隙がなく、他の追随を許さない。この混沌とした、ある種カルト的な共存性こそAzavanaの凄味であることを開始早々に思い知ることとなった。その中で「愛怨」では、諒平が率先して声をあげながらフロアとのコンタクトは欠かさず、ヘッドバンギングの嵐が広がる高揚した状況下で詩結がスタイリッシュにギターソロを決めるといった、メンバー個々の特性を生かしたアプローチもしっかりと魅せつけていく。
ライブは主に、11月13日に一般発売を控え、現在ストリーミングサービスにて先行配信中の2枚のミニ・アルバム「0=」 と「回想録」の楽曲で構成されていた。まずは、Azavanaが世に送り出す作品をもって真っ向から勝負しようといったところだろう。Ashmaze. / VIRGE双方の既存曲に新たな息を吹き込む形で完成した「回想録」に収録されている楽曲の内、「GENOM」「渇き」は曲中に描かれた“苦”の部分が遼のボーカリゼーションによって壮大なテイストで表現されていたのが印象的だったが、唯一本作に未収録の楽曲で披露されたのが「IGNITE」だった。演奏と歌とで繰り広げられる、業火のごとく湧き上がった“怒”のエネルギーは実に圧巻。いわゆる既存曲だからこそより一層感じられたのは、人間の内面に起こる負のエネルギーに寄り添うというだけでなく、むしろ同じ感情の中に強く引きずり込んでなお共に這い上がるというような共存のスタイルだった。その一見スリリングなせめぎあいもまた、一周回って痛快である。
諒平(Gt)
キラーチューンを畳みかけた序盤を経て、中盤には歌を活かしたセクションが設けられていた。その口火を切った「Q」は、儚くも美しさを増す形で再構築されたバラード。楽曲の奥行きを存分に味わわせる秀逸なプレイで会場中を陶酔させ、そこへさらに心を揺さぶるように投下された「三日月がただ遠い」は、諒平がギターを鳴らして素敵に冒頭を演出し、夜暗の怪しげな雰囲気に嘆きの咆哮を強調させながら激情で満たしていった。そして、新曲の中からこの日初披露となった「Morphine」。先に披露した「Q」の中にも“モルヒネ”という描写が登場するが、「Morphine」はAzavanaの、ひいては遼が描く世界の中で堪能できたことも興味深いワンシーンだった。
さらに一変して、S1TKが勢いよく叩き上げたビートによってアグレッシヴに高揚させた「飢えた球体」からラストスパートへ突入すると、「死め気でこい!」という遼の容赦ない一喝に観客は一心不乱に頭を振り乱していく。そして、遼にとって大切な曲の1つであるVIRGE時代の楽曲「Mother」も、Azavanaというバンドによって新たに生まれ変わることとなった。スピード感に見合う巧みな演奏とバンドのグルーヴによって極限まで高めたボルテージを、Яyuのベースが先導した「ノイズ」へと繋いでいく。歌、演奏、パフォーマンス、メンバー全員の見せ場を踏襲したとも言える1曲で迎えた充実感満載のエンディングとなった。
詩結(Gt)
アンコールに応えて登場したメンバーは、ノンストップに駆け抜けた本編とは裏腹に少し肩の力を抜いたラフな一面も見せていた。「アンコール、楽しもうぜ!」という諒平が満面の笑みで叫んだ言葉は、オーディエンスに対してはもちろんのこと、メンバーにも向けられていたのではないかと思うほど。実際に、「愛怨」で諒平が遼の元に歩み寄ったり、「飢えた球体」では遼が詩結の肩を抱きながら歌ったりなど、顔をほころばせながらその瞬間の臨場感をメンバー自身が楽しんでる様子も目に飛び込んでくる。そして、今日という日を“まだ一歩目”としながらも、遼は決意の念を明確に言葉にして伝えていた。
「『灰の海に泳ぐホタル』、今日はいろんな思いを持ってきてくれたと思います。俺らもこの一歩を踏み出す前は、本当に大きな覚悟や迷いもありました。でもこうやって5人で立ててることを嬉しく思うし、これからAzavanaとして、この5人でしかできない音楽を届けていこうと思っているので、よろしくお願いします」
Яyu(Ba)
これに続いて、諒平は堂々と「かっこいいっしょ!? このまま勢い付けて、武道館まで行きたいと思うので、よろしくお願いします!」と持ち前の朗らかさで伝え、「Azavana、楽しいっしょ?」と諒平に問いかけられた遼は「楽しい」と笑顔をのぞかせていた。この一連の様子を踏まえて詩結は「人間味が見えたんじゃないか」と話していたが、本編中の崇高な世界観も、アンコールで見せた本音もすべて、Azavanaとして生きることを決めた5人の人間性である。すべてをさらけ出し、「これからこの5人で、自分たちが愛してる音楽を届けていこうと思ってるので、ついてきてください。最後、この5人の思いとしてこの曲を贈ります」と届けられた「痣花」は、紛れもないクライマックスであった。闇と光、両極ながらもその両方から目を背けずに先へ進もうとするAzavanaの姿に、曲中に重なるカリヨンベルの音が一際輝かしく聴こえた気がした。……しかし、これで終わるはずはない。なんと「もう1曲!」と、3度目の披露となった「飢えた球体」を追加し、再び白熱した情景を描き出してライブは締めくくられたのだった。
S1TK(Dr)
終演後には、映像にてONEMAN TOUR 2025「証」と、ツアーファイナル公演は4月30日 恵比寿LIQUIDROOMであることが発表された。興奮を胸に、会場を後にしようとすると、出口でメンバーからのメッセージが添えられた一輪の花を手渡されるというドラマチックな計らいが待っていた。その花は白いダリアで、花言葉は“感謝”。音楽に、言葉に、そして“花”というモチーフに込められたたくさんの想いや感情が溢れた日。冒頭の「Azavanaとは?」に対する現時点での答えを一つ提示するならば、“最強の生命体”であるということ。これから唯一無二な花を、彼らにしかできない方法でいかに開花させるのか? そこにはもう、期待以外の感情が浮かばない。
文=平井綾子 撮影=Lestat C&M Project