TOMOO、「どんな場所に行ったとしても、私はいつも、歌の中で近くにいたいなと思ってます」歌の力で彼女の世界は広がり続ける

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音楽
2025.1.24
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TOMOO one-man live“Anchor” at PACIFICO YOKOHAMA 2024.12.13(fri)パシフィコ横浜

およそ5000枚のは完全ソールドアウト。2024年12月13日、パシフィコ横浜、『TOMOO one-man live“Anchor” at PACIFICO YOKOHAMA』。流行りとかラッキーとかでバズった訳ではなく、ただ歌の力でここまで来た。観客は落ち着いた大人の音楽ファンに支えられたTOMOOの世界。

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暗闇の中、ピアノの前に座るTOMOOをスポットライトが照らし出す。1曲目は一番新しいバラード「エンドレス」だ。豊かな低音が良く伸びる声、静かに流れるスモークの海。メンバーが一人ずつ入って来る。バンドが4人、ストリングスが4人、ホーンが4人。静かなバラードがいつのまにかアップテンポのダンスナンバーに転じて、「Super Ball」が始まった。ハンドマイクで軽やかに歌い踊るTOMOO。七色にきらめくライトと分厚い音圧のバンド。大会場に合わせ、冒頭からよく練られた演出が楽しい。楽しい夜になりそうだ。

「こんばんは、TOMOOです。今日はいい夜にしましょう」

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 ホーンとストリングスのメンバーも、手振りに加わって盛り上げる「酔ひもせす」。キーボードを弾きながら歌う「Friday」と、アップテンポのハッピーな曲が続く。広い会場ゆえ、2階席の最前列にいても表情はよく見えない。でも気持ちが入っていることは、はずんだ声を聴けばわかる。

「外は寒かったでしょう? あたたかい飲み物を渡すように、時には暖炉のそばでアイスクリームを食べていただくように、じっくりとお届けしたいと思います」

「レモン」はTOMOOの中で、灯りが恋しい12月の時期に似合う曲らしい。なんとなく、わかる。散歩するようなゆっくりテンポ、フルートの音色が心地よい。「あわいに」はぐっとスピードを上げ、満場のクラップと共に明るく華やかに。力強いバンドサウンドに乗せられて、間奏でカウベルをひっぱたく姿が可愛い。優れたメロディメイカー・TOMOOの人懐っこいポップセンスが発揮された、心躍る曲が続く。

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ここからは、切ない思いをまっすぐに伝えるミドルバラードのセクション。花言葉に込めた思いが愛おしい「ネリネ」は、こんな寒い季節にぴったりのセンチメンタルな1曲。同じく冬のラブソング「雪だった」、そして「ベーコンエピ」は、深夜バスの中や駅までの道や、歌詞の情景がくっきりと目の前に浮かんでくるドラマチックな2曲。

ライブタイトルのAnchor=アンカー=船のいかりには、港町・横浜からの連想と、水のイメージと、1年を締めくくるアンカーの月、12月のイメージがあるらしい。そしてもう一つ、今は遠くへ旅に出るよりも、この場所にいかりを下ろしたいという思いがあるらしい。MCの、TOMOO語のワードセンスは独特だが、なんとなく、わかる。

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「まばたき」ではアコースティックギターとチェロを加え、「ロマンスをこえよう」ではストリングスのロマンチックな音で飾ってみせる。TOMOOの歌詞、ことにバラードの歌詞の、切なすぎるリアリティは誰もが知るところ。二つの心と心、体と体のふれあいとすれ違いを描く、鮮烈な言葉使いは本当に絶品。ライブで聴くと特に心に沁みる。切ないにも程がある。

切ない曲がさらに続く。星空のような照明とスモークに飾られた、追憶のバラード「Cinderella」。オレンジ色の灯りに染められ、迫力あるホーンが躍動するエモーショナルな「Grapefruit Moon」。大所帯のバンドならではの、1曲ごとに変わる豊かなアレンジが、とてもゴージャスでハートフル。

「冬は空気が澄んでいて、星が近く見える気がします」

何気なく話し出したMCが、音楽を生み出す不思議の話へと発展する。遠くの星が消えても、その光は目に届く。音楽の本質は見えなくても、存在を受け取ることができる。なんとなく、わかる。あたたかく包み込まれるピアノポップ「スーパースター」、さらにテンポを上げて「Should be」へ。広い会場がよく似合う、開放感いっぱいのポップソング。気持ちが上がってきた。

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「そろそろもう一つ気温を、体温を上げたくないですか? 立ってもいいんですよ」

ここまで行儀よく座って聴いていた、5000人が一斉に立ち上がる壮観。手拍子で盛り上がるファンキーなダンスナンバー「オセロ」、ソウルフルなホーンの音色がかっこいい「Ginger」と、ライブのキラーチューン連発で波に乗る。客席にマイクを向け、「3階席!2階席!1階席!」と、全員の声をもらって盛り上がる。5000人のクラップに後押しされた「Present」は、ホーン隊がステージ前に飛び出して賑やかに吹きまくる。タンバリンを叩き、くるくる回り、足を蹴り上げてぴょんぴょん跳ねる。小さな体からほとばしるエナジーが、広い空間をハッピーなヴァイブスで満たしていく。もう残すは1曲だ。

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「上へ向かいたい時こそ、下を意識します。広いところへ向かう時こそ、小さな景色を思います。開けた場所に行こうと思う時こそ、誰にも分かち合えない自分の心の真ん中を思います」

音楽について、生き方について、しみじみと語るTOMOO。なんとなく、わかる。「ここが帰りたい場所であるような、そんな思いを持って帰ってもらえたら」と前置きして、ラストチューン「高台」を歌う。はずむピアノ、寄り添うバンド、支えるホーンとストリングス。ポケットの中のカイロのように、かじかんだ手をそっと温めるような絶妙な温度感。

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盛大な手拍子に呼び戻され、アンコールの1曲目に披露したのはまっさらな新曲だった。「近々嬉しいお知らせができると思うので」と、期待を煽る言葉がはずんでる。自信作だろう。さらにもう1曲、フルバンドのゴージャスなサウンドに乗せて「夢はさめても」を歌い、大団円のムードの中でライブは終了。楽しかった。切なさもいっぱいあったけど、楽しかった。

と思ったら、まだ続きがあった。背後のビジョンに映し出される、TOMOOのこれまでの歩みを振り返る映像とモノローグ。一人でステージに戻ってきたTOMOOが話し出す。「来年5月23日、日本武道館でライブをします」。湧き上がる今日一番の歓声、拍手、感情。誰もが自分のことのように、心からの喜びを感じているのがわかる。TOMOOはとうとうここまで来た。

「どんな場所に行ったとしても、私はいつも、歌の中で近くにいたいなと思ってます。5月23日、よろしくお願いします」

さらにもう1曲、フルメンバーで「夜明けの君へ」を披露して、2時間半に及ぶライブを締めくくる。ステージの端から端まで歩きながら、一人一人に手を振る姿が大きく見える。武道館もきっと、この自然体でステージに立つだろう。ただ歌の力でここまで来た。TOMOOの世界は広がり続ける。


取材・文=宮本英夫 撮影=Kana Tarumi

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ツアー情報

TOMOO Live at 日本武道館
2025年5月23日(金)日本武道館
Open 17:00 / Start 18:30

セットリスト

TOMOO one-man live“Anchor” at PACIFICO YOKOHAMA
2024.12.13(fri)パシフィコ横浜
01.エンドレス
02.Super Ball
03.酔ひもせす
04.Friday
05.レモン
06.あわいに
07.ネリネ
08.雪だった
09.ベーコンエピ
10.まばたき(※未配信曲)
11.ロマンスをこえよう
12.Cinderella
13.Grapefruit Moon
14.スーパースター
15.Should be
16.オセロ
17.Ginger
18.Present
19.高台(※未配信曲)
EN1.新曲(※未配信曲)
EN2.夢はさめても
EN3.夜明けの君へ
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