『神戸アリーナプロジェクトを動かす人々』第3弾――周辺施設・átoaが見据えた、アリーナの熱気が生み出す街効果
2025年4月4日(金)に、神戸市にて開業する関西最大級のアリーナ「GLION ARENA KOBE(ジーライオンアリーナコウベ)」。同アリーナはプロバスケットボールクラブ・神戸ストークスのホームアリーナとなるほか、音楽ライブ、MICEなどさまざまな興行が行われる。アリーナ横にはパークエリア「TOTTEI PARK」が設けられ、飲食店などが軒を連ねた「365日楽しめるエリア」になる予定だ。
このプロジェクトを動かしている「神戸アリーナプロジェクト」のキーパーソンたちに話を訊く、当連載。第3弾では、同プロジェクトを推進するOne Bright KOBEベニューマネジメントDivision の渋谷樹マネージャーと、GLION ARENA KOBEの隣接施設であるアクアリウムとアートが融合した新感覚の都市型水族館「átoa(アトア)」の中山寛美館長に取材。同アリーナの開業が街にどのような効果を生み出すのか、話を訊いた。
●神戸に一体感を生み出したい
――神戸アリーナプロジェクトはGLION KOBE ARENA周辺だけではなく、神戸の街全体を巻き込みながら賑わいを創出するというものですね。既存の施設・店舗はもちろんのこと、これから誕生する施設・店舗への効果も期待されています。
渋谷:神戸港・新港突堤西地区マリーナなどの整備・運営に関する計画も発表されましたし、ウォーターフロントエリア全体で、今後更なる開発も計画されていると聞いています。消費者のみなさんが1日中過ごせるような、充実した街へ発展するのではないでしょうか。また私は神戸アリーナプロジェクトで公式アプリ「TOTTEI KOBE」の開発を担当していますが、átoa様などの各施設と連携したクーポンや、街を周遊できる仕掛けなどを通じ、まるでアミューズメントパークを楽しむような感覚で神戸のウォーターフロントが楽しめるようになると考えています。消費者のみなさまが、神戸に長く滞在して街を満喫できるようになるのではないでしょうか。
――公式アプリTOTTEI KOBEでできることを、具体的に教えていただけますか。
渋谷:現時点でお伝えできることのみですが、まず独自決済システムの機能がございます。「GLION KOBE ARENA」が位置する新港第二突堤エリア「TOTTEI」の全店舗で利用できるほか、他の地域や店舗でもお使いいただけるようにしていきたいです。ちなみにアプリにはいくつか軸があります。一つは、ライブなどのイベント情報をお届けすること。そしてもう一つは、スタンプラリーやクーポンの機能です。このサービスをご利用いただくと、たとえばライブを目的に来たとしても、ただ音楽だけを楽しんで帰るのではなく、ライブを観る前、もしくは観た後、いろんなところを回るキッカケを作ることができると考えています。そしてそうやって周遊し、スタンプを集めた方には特別グッズをプレゼントするなど、神戸の街と絡めた使い方を想定しています。
――中山館長は、このプロジェクトによってátoaにどのような効果が生まれると期待していらっしゃいますか。
中山:我々は、みなさまに文化的体験をお届けしたいという思いでátoaを運営しています。ですので、渋谷さんがおっしゃるように、たとえばGLION KOBE ARENAへライブを観に来てくださったお客様がátoaにも立ち寄り、そこで文化的な楽しみを体験されることを期待しています。またそれが、賑わいの創出にも結びつくと感じています。
GLION ARENA KOBEまでの道中には、これからの神戸の姿を示す展示が多数
――確かにそういった可能性が広がりますね。
中山:あと個人的に「おもしろいな」と思っていることが、新港第二突堤エリアの居住スペースや働く環境をより充実させようというプランがあること。一時的にここへ足を運ばれる方も含め、いろんな方がこのエリアに集約されるようになるはず。私たちの施設は来街者の方を受け入れ、価値を提供していますので、その点でもさまざまな期待が膨らみます。
――神戸の街全体も活気づく気配がします。
渋谷:神戸アリーナプロジェクトのテーマは、賑わいを街へ染み出させていくこと。ここで生まれた盛り上がりや消費された物事を地域全体に還元させていきたい。それに関連した私の願望として、神戸に一体感を生み出したいです。ささやかなことかもしれませんが、ライブに来られるアーティストのみなさんがMCで「神戸!」と言ってくださるだけでも、その言葉がアーティストと神戸の街やそこで暮らす人をつなげるものになると信じています。
●神戸ストークスの存在の大きさ
中山:一体感を生むという点では、神戸ストークスの存在がとても大きいですよね。私は岐阜県の田舎町出身で、文化的施設は岐阜市内へ行かなければいけませんでしたし、プロスポーツは名古屋まで観に行っていました。でも神戸にはいろんなスポーツチームがありますし、そのなかでも、プロバスケットボールクラブの神戸ストークスがGLION KOBE ARENAを拠点にするなんて、新しい楽しみが増えた気分です。2021年の東京五輪でバスケットボールの日本代表が活躍し、私も競技への関心が湧いていたところでした。バスケットボールに対するアンテナがとても高くなっています。まずは、神戸ストークスのマスコットキャラクターであるストーキーのグッズを集めたいと思っています(笑)。
渋谷:ストーキーにも、ストークスの試合はもちろんのこと、いろんなところで活躍してもらいたいです。中山さんがおっしゃるように、スポーツが街に与えるパワーの大きさにはすごいものがありますよね。B.LEAGUEが2026年から設置する、トップカテゴリーのB.LEAGUE PREMIERにストークスが参入することが決まったときも、神戸ポートタワーと神戸海洋博物館が参入を祝してチームカラーである緑のライトアップを行ってくださいました。その光景を見て、ストークスがこの街に受け入れられていることを改めて実感できました。
――ストークスのことを街全体で盛り上げようという気持ちが感じられますね。ライブやイベントの情報も徐々に発表されてきていますね。
渋谷:オープン日の4月4日(金)には神戸市民や神戸を好きな方をご招待し、『Opening Night Party』として藤原紀香さんや神戸にゆかりのある方と一緒にお祝いするトークショーや音楽ライブなどを行う予定です。それから5月3日(土)までは「新たな船出を祝う30Days」をテーマとするオープニング月間「Turning point 30」の開催を予定しています。その期間、アーティストや地域のみなさんとどんなことができるのか、模索中です。一緒に盛り上げて、「これからの30年」に向けて良いスタートを切りたいです。
●神戸には、強い思いを抱いたプレイヤーがたくさんいる
神戸港震災メモリアルパークから望むGLION ARENA KOBEとátoa
――1995年1月17日に阪神・淡路大震災が起きて以降、神戸にとってこれまでは「復興の30年」でした。しかし2025年に節目の30年を迎え、神戸の街は、新たな発展を見据えた「これからの30年」へと足を踏み入れることになります。
渋谷:神戸で暮らす方々とコミュニケーションをとると、みなさん、当時のことを振り返ってくださいます。私自身は、年齢的に教科書で阪神・淡路大震災のことを知る世代でしたが、お話を聞いて、みなさんのなかにいかに震災が深く刻まれているかがよく分かります。そこで口にされるのが「これからの30年は、次のチャレンジする30年だ」ということ。そのモチベーションの強さを前にすると、自分も「よし、がんばろう」と気持ちが高まります。
中山:私も当時は岐阜で暮らしていました。しかし前職で別の施設の広報を担当していたとき、当時のお話を伝え聞く機会がたくさんありました。震災が起きたときに動物たちを助けることができなかったお話などを聞くと、心が痛むところもあります。一方、私が神戸で仕事をするようになった頃には街はとても綺麗になっていて、神戸の力強さを感じました。このパワーがあるからこそ、神戸アリーナプロジェクトを含め、再開発を実現させることができているんだなと思います。
渋谷樹マネージャーも足を運んだという阪神淡路大震災1.17のつどいの様子
渋谷:自分は大阪で生まれ、大学は東京で、このプロジェクトをキッカケに神戸で暮らすようになりました。それから5年、神戸アリーナプロジェクトを通じてまさに神戸のものすごいパワーを感じます。神戸には、強い思いを抱いたプレイヤーがたくさんいるんです。まだそれぞれがバラバラでやっている部分もあります。しかし、それぞれの場所で際立ったご活躍をされているところが、神戸らしさの一つ。そういった方々と、恐れることなく良い意味でのカオスを作り上げていきたいです。そうなると、これからの30年はより輝くものがたくさん生まれるはず。
中山:一方で変わらないで欲しい雰囲気もありますよね。それは、住みやすさと自然の豊かさ。神戸って疲れがとれる街だと思っています。なんだかホッとさせてくれる場所です。山がすぐ近くにあり、空も身近に感じられる。山の緑、空と海の青色が、心を落ち着かせてくれる。街はもっと整備され、コンテンツも増えるでしょう。でも自然の豊かさは変わらず、神戸の魅力として残してほしいです。
神戸アリーナプロジェクト 渋谷樹マネージャー、átoa 中山寛美館長
取材・文=田辺ユウキ 撮影=川井美波(SPICE編集)
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