DNA GAINZ、故郷・島根を離れ東京で根を張る決意を表明、初の自主企画『DNA TEST』オフィシャルレポート

レポート
音楽
2025.3.10

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DNA GAINZ『DNA TEST』2025.2.14(FRI)東京・渋谷TOKIO TOKYO

2025年2月14日(金)、「DNAから響く歌の鼓動 体の底から踊り出す」を掲げる4人組・DNA GAINZが東京・渋谷TOKIO TOKYOにて『DNA TEST』を開催した。2カ月連続となる自主企画の1本目に該当するこの日は、redmarkerとTattletale、健やかなる子らの3組をゲストに召集。redmarkerが<まじでファッキン生きててよかった>とシャウトする「i'm happy i was born.」でDNA GAINZの有する生命力と高いシンクロ率を提示すると、Tattletaleは「お客さんは技術を聴きに来ているんじゃない。パッションを聴きに来ているんだ」の言葉に代表されるテクニカルな静のパートと喉をすり減らすパトスを点滅させる。続いて、健やかなる子らがマッシブなビートと音色も声色も違うフロント4人による連続爆発を起こし、満を持してDNA GAINZが登場した。

秒針の音と川の流れを彷彿とさせるSEの中、ながたなをや(Vo.Gt)が弾き語り始め、「Loop!!!」でショータイムの幕が上がった。DNA GAINZの楽曲は彼らのホームである島根県ののどかなムードや風を媒介に山や海、河川と溶け合っていく心地良さを内包しており、感情をそのまま身体所作として放出していくながたやキュートなスパイスを加えるはだいぶき(Ba)のコーラスワークによって、その壮大さが素朴な形に変換されて届けられる印象を受ける。つまりは、長きにわたり人々が敬意を表し続けてきた自然のエネルギーを拝借し、この場に出現させようとする営みが4人にとってのライブであると言えよう。それは雪崩れ込んだ「PARADISE HELL」も同様で、天国と地獄を喚起する赤と青のライティングやメタリックな手触りで刻まれるベース、宏武(Dr)のビートが重たく炸裂しながらも、<people!people!>と書くより「ピーポー! ピーポー!」と綴るのがドンズバなシャウトがどこかお茶目に響く。語りの延長線上に位置づけたくなる響きを所有しながらのボーカリゼーションは、わらべ歌さながらに聴き手を優しさと懐かしさで包みこんでくれるのだ。

「東京を歩いて作った曲です」とドロップされたのは「巣ニナル」。大都会に暮らす人それぞれが生活を抱きしめていることを見つめ直し、<言葉が見つからなくても わたしは進むのよ>と決意を新たにするこの曲は、彼らが故郷を離れたからこそ綴られたものにほかならない。暮らしの変化に飲み込まれる中で、周囲が冷たく敵に見えたこともあっただろうし、つられて強情に振る舞ってしまったこともあったはず。それでも、選んだこの場所で生き抜くことを、アウェーをホームに変え根を張ることを心に決めたDNA GAINZの表明は、讃美歌として以上に、正真正銘の応援歌として羽化する。そのまま「君に出会えて良かった」と「GOLD HUMAN」へ突入すれば、メンバーの大熱唱でもってここまで描き通してきた生活というテーマが生と愛を描くダイナミズムへ拡張されていく。より普遍的な真理を追究する4人と呼応するようにアンサンブルのボリュームも増大し、まばゆい光と共にパンキッシュな音塊が天へ昇っていった。

ライブも後半に差し掛かり、ながたは「東京で出会った仲間を呼んで自主企画を始めました。この先も続けていけたら」とこの企画の発端を話す。このタイミングでDNA GAINZに自主企画が必要だった理由とは、先刻の「巣ニナル」で宣言されたように東京に巣を作っていくためであると同時に、この数カ月で築いた相思相愛の関係を噛み締めるためだったのではないか。パイプオルガンをイメージさせる荘厳なイタガキタツヤ(Gt)のギターが印象的な「ラフラブ」は、<今ここにいる人たちへのフィーリング 何が伝わる何で伝える>と不可視の愛や歓喜を身体的な踊りを通じて獲得せんとした試みであり、それはこのイベントが誕生したバックグラウンドとも重なる。彼らが提唱し続けてきた踊りとは、心が弾んだ際に思わず飛び出してしまったスキップやついつい歌ってしまった鼻歌みたいな、ハッピーを体現するための原初的な行為であるが、私たちが踊るためには好きだと思える人たちと生活を謳歌しなくてはならない。「俺はここにいる」と証明するために自らに指を突き立てたながたをはじめ、思い思いの風姿で舞台を踏みしめる4人は、そんなバンドのメッセージを佇まいから背負っていた。

エンディングを彩った「Sound Check Baby」は、リフレインされる<サウンドチェック>の一節に言葉からの離脱を図る絶対音楽的な側面も垣間見ることができる一曲。自身初となる東京での自主企画のフィナーレにサウンドチェックの歌を据える構成からは、「バンドであり続ける」という強い意志を感じた。ながたは以前、インタビューで「生きる真理を歌いたい」と語ってくれたが、DNA GAINZが追い求めている真理とは「生きるとは何か」に違いない。どれだけの生き物が願っても覆せなかった死へ繋がるレールを承知の上で、彼らはこの一息で何を刻めるのかを模索している。彼らがリアルタイム性を強く孕んだライブを生活と切り離すことなく捉えているのも、そもそも人生が不可逆であることを痛いほどに知っているからだろう。木々ではなくビル群が連立する街に根を張り始めたDNA GAINZ。3月11日(火)には次なるテスト『New Cells vol.2』の開催も決定しており、各所でその息遣いを目撃できるはずだ。

取材・文=横堀つばさ 撮影=toya

 

リリース情報

DNA GAINZ 自主企画『New Cells vol.2』
日程:2025年3月11日(火)
会場:東京・Spotify O-Crest
時間:Open/Start 18:30/ 19:00
出演:DNA GAINZ/Lucie, Too/mother
 
料金>
前売り¥3,000- / 当日 ¥3,500-
ペア(2枚組) ¥5,000- *前売りのみ

ツアー情報

『DNA GAINZ TOUR -発展土壌-』
4月9日(水)東京・下北沢SHELTER ゲスト:Coming soon
4月16日(水)名古屋・RADSEVEN ゲスト:さよならポエジー
4月17日(木)大阪・心斎橋Pangea ゲスト:ネクライトーキー
4月19日(土)島根・出雲APOLLO ワンマンライブ
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