誠お兄さんといっしょにみんなで体操! からだいっぱいに音楽を感じて楽しもう! 【特集:こども音楽フェスティバル 2025】Vol.8
世界最大級のこどものためのクラシックの祭典『こども音楽フェスティバル 2025』が、ゴールデンウィークにサントリーホールで開催! 国内外の第一線で活躍する多数のアーティストを迎え、様々な年齢のこどもたちにあわせたバラエティ豊かなプログラムをお届けするこのフェスティバルは、“こころ はずむ ひびきあう”という言葉とともに、音楽に触れる感動と、音楽を分かち合う歓びをこどもたちに伝えていく。
フェスティバルの公演を紹介する連載第8弾として、今回は『クラシックたいそうコンサート』に出演する福尾誠さん(NHK Eテレ『おかあさんといっしょ』第12代体操のお兄さん)にインタビュー。公演の見どころや、ご本人の活動についてお話をうかがった。
生演奏に合わせて体を動かそう!
――福尾さんがご出演する『クラシックたいそうコンサート』について教えてください。
この公演は、からだで音楽を感じる楽しさを味わえるコンサートです。「体操とクラシック音楽」という組み合わせを不思議に思う人もいるかもしれませんが、じつは体操と音楽はとても密接な関係にあります。この2つを一緒に楽しんでいただきたいです。また、今回は生演奏に合わせて体操をします。これは僕にとっても経験したことのない世界です。おそらく、ご来場のお客さまも同じではないでしょうか。こどもから大人まで、みんなで一緒に「初めての経験」を楽しむことができたら嬉しいですね。少し心配しているのは、生演奏の衝撃が大きくて、僕が体操していることをお客さまが忘れてしまうのではないかと(笑)。みなさんには、音楽を楽しむことはもちろん、体を動かす楽しさも伝えられたらと思っています。
――耳から入ってくる音が生演奏になると、体の動きもおのずと変わりそうですね。
普段とは違ったものになると思います。おそらく、僕も上品な動きになるでしょうね(笑)。体の表現力の中で、柔らかさみたいなのが音楽に合わせて出てくるのではないかと期待しています。今回は、みなさんもどこかで聴いたことがあるかもしれないクラシックの名曲から、3曲取り上げました。現在YouTubeでも公開しているので、ぜひチェックしてみてください! 動画を見て予習することができるので、動きを頭に入れておくのもいいと思います。動画で体操をしつつ曲も聴いておくと、会場で生演奏を聴いたときの違いをより感じられるかもしれません。
――動画を拝見しましたが、3曲それぞれに音楽の特徴に合わせた楽しい構成になっていますね。
ありがとうございます。「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」は、たくさんの動物が登場します。こどもたちには自分ができるところから真似してもらえればいいと思っています。音楽に合わせて自然と体が動いてきて、僕の真似をしているうちに楽しんでもらえたら嬉しいです。
「カルメン」はリズム遊びになっていて、リズムに合わせて手を叩く、足踏みをする、体を動かすという点が醍醐味です。当日は生演奏に合わせるので、もしかしたら曲の中でリズムが変わったりするかもしれません。たとえば、僕がゆっくり動いたら音楽もゆっくりした演奏になるかもしれないし、何が起こるか僕自身もわかりません(笑)。ですから、お客さまには当日に起こるすべてを楽しんでいただきたいです。みなさんが手を叩く音がもしかしたらバラバラになるかもしれないし、きれいに揃うかもしれない。その音を聴くことで、舞台にいる僕らの動きや演奏も変わっていく気がしています。会場に集まったみなさんでこの1曲を完成させるのが楽しみです。
アイネ・クライネ・ナハトムジーク編 「バランス感覚を養う」
――福尾さんの動きを視覚で楽しみ、生演奏で聴覚が研ぎ澄まされ、自分の体も動かす。あらゆる感覚が刺激されるコンサートになりそうですね。
その通りです。そして、みなさんには想像力も膨らませてほしいと思っています。それを体現できるのが、「天国と地獄」です。この曲は、ひとつの物語と捉えて動きを考えました。でも、正解があるわけではありません。同じお話でも、それぞれが頭の中で組み立てる物語は少しずつ違いますよね。たとえば、「桃太郎」の大筋はみんな知っているけれど、鬼ヶ島まで何キロあるのか、鬼の身長は5メートルなのか170cmなのか、細かい点は人それぞれ自由に組み立てることができます。これと同じように、「天国と地獄」は僕の真似をするだけでなく、自由にストーリーを考えて動いてみてほしいです。目・耳・頭を使い、音楽に合わせて自然と動くことで、より楽しめると思います。
固定観念にとらわれず、音楽もスポーツも楽しもう
――『こども音楽フェスティバル 2025』は多彩なプログラムが開催されますが、福尾さんが気になる公演はありますか?
こどもたちが楽しめるコンテンツが満載で、どのコンサートも生演奏を聴くことができるので興味深いですね。そのなかでも、僕はアーク・カラヤン広場で体験できる「ゆるミュージック(※1)」に関心があります。楽器に触れる機会がない人にとっては、「ゆる楽器(※2)」を体験することで、楽器に対するハードルが下がると思います。鼻歌で演奏できる「ウルトラライトサックス」や、光や振動で音を感じることができる「ハグドラム」は、面白くてこどもたちが興味を持って触れたくなりそうな楽器ですね。「楽器はこうあるべき!」という固定観念を覆されます。そうした楽器を自分で奏でることで、さらに音楽の楽しさを味わうことができますよね。音楽の楽しみ方や捉え方は、無限にあると思います。このフェスティバルを通して、僕自身も音楽に対する考え方が変わると予感しています。みなさんもさまざまなコンテンツに参加して、新しい音楽に出会ってほしいです。
ハグドラム
ウルトラライトサックス
――福尾さんが取り組んでいる、みんなにとっての”からだを動かすことの楽しさ”を一緒に探す活動に通じるところがありますね。
まさにいま話していたことを、僕は「チュロスポ」という活動で伝えていきたいと思い、「世界ゆるスポーツ協会(※3)」さんとご一緒させていただいています。「チュロスポ」は、誰でも気軽に楽しめるスポーツフェスティバルとして立ち上げました。運動が苦手、あまり好きではない、むしろ嫌いという人にとっては、「運動する」ということがもう嫌なのですよね。ですから、「簡単な運動ですよ」と言ってハードルを下げるというより、もうハードルを置かないことにしました。例えば、会場まで歩いてきたとすれば、それだけでもう運動しているし、靴を履く・写真を撮るなどの何気ない動きでも必ず体のどこかを使っています。日常生活でいえば、文字を書くときも手首をたくさん使っていますよね。デスクワークばかりという人には、普段から指をたくさん動かしているだろうから、タイピング選手権をやってみようとか。この記事を読んでくださっている方も、画面のスクロールなどで手や指を動かしているはず。そうした日常自体をスポーツと捉えることで、誰もが運動を楽しめるようになったら、すごく素敵だと思いませんか?
――生活のなかにある動きをスポーツにしようという発想なのですね。まさに固定観念が覆されます。
こどもたちがさまざまな夢を抱くコンサートになりますように
――福尾さんは小学生の時から体操競技に取り組まれてきたそうですが、幼少期に体を動かす重要性はどんな点にあると思いますか?
運動をすれば筋力がつくとか、骨端軟骨が伸びやすくなるといったスポーツ科学の視点から解説できることは多くあります。体を強くすることは、フィジカル面で重要なことのひとつです。また、別の側面からみると、運動は人間形成の上でもメリットがあると考えています。僕は体操競技をやっていたので、「この技ができるようになりたい」→「そのためにどんな練習を組み立てるか」という思考を持って取り組んできました。この思考を、たとえばボール遊びが大好きなお子さんに置き換えてみます。「公園でボールを投げた」→「これだけ距離が飛んだ」→「翌日はもう少し遠くまで飛んだ」→「もっと飛ばしたい!」→「どうすればいい?」→「もっと振りかぶって投げてみよう」「助走をつけてみたらいいかも」。こんな考えが頭の中に生まれると思います。こうした経験をすることで、大人になるにつれて受験勉強や仕事のプロジェクトなどに取り組むとき、目標に対して自分がどういう組み立てをして、どうやって努力を積み重ねたらいいのかが身についていくのです。これは社会に出たとき大きな強みになります。
――幼少期にスポーツに取り組むことで、体と思考の両面で成長が期待できるのですね。
スポーツも大事ですが、まずは「遊び」が重要です。とにかくこどものころは何が好きか、どういう遊びが好きかをベースにして進めばいい。そもそも運動が好きじゃないお子さんに強要するのは難しいですから。じゃあどうすればいいかと言うと、行き着くところが今回の“誰もが楽しめる”「こども音楽フェスティバル 2025」です。このコンサートで、初めてクラシック音楽に触れるこどもたちも多いのかなと思います。「クラシックたいそう」に興味を持ってくれるのか、はたまた音楽・体操どちらか一方に強く惹かれるのか、こどもたちの感性は様々。「楽器を弾けるようになりたい!」と思うこどもたちもたくさんいることと思いますが、実現のために目標に向かって計画を組み立てていくのは、スポーツでも音楽でも遊びでも同じです。大切なのは、自分から興味を持ってスタートするということ。やっぱりスポーツと音楽は密接な関係ですね!
――本当にその通りですね。では、最後にみなさんへのメッセージをお願いします。
コンサート当日は、こどもたちが「自分も楽器を演奏したい!」「生演奏のなかで体操をする人になりたい!」といったさまざまな夢を抱く機会になるのではないかと期待しています。体を動かす楽しさも経験できるし、生の楽器の演奏を聴くこともできる良いこと満載のフェスティバルですから、ぜひ会場に足を運んでみてください。みんなで一緒に「初めての経験」を楽しみましょう!
~番外編~
「あれ?今日はずいぶん小さくなっちゃったね」と言いながらも、そらくん(※4)と久々の再会を喜ぶ福尾さん。5月に開催される『クラシックたいそうコンサート』での共演について、全力のパフォーマンスを誓い合う二人。
※1すべての⼈に楽器を演奏する喜びを提供するプロジェクト。
⼈々が楽器をやらない理由は、「⾃分には才能がない(と思い込んでいる)」「挫折した経験がある」「始めるきっかけがない」「騒⾳が気になる」など様々だ。それなら、「⼈が楽器をやらない理由をなくす新しい楽器」をつくれないだろうか。
リズム感や⾳感がなくても⼤丈夫。騒⾳が気にならない。気軽に、そして気兼ねなくプレイできて、多様なラインアップから⾃分に最適な⼀つを選べる。これまで100以上の「ゆるスポーツ」を開発してきた世界ゆるスポーツ協会が「ゆる楽器」の開発を⾏っている。
※2 ⽼若男⼥、体の不⾃由な⼈から健常者まで、誰もがすぐに奏でることができる楽器。
鼻歌をうたうだけで演奏できる「ウルトラライトサックス」、光と振動で音を感じられる「ハグドラム」など、楽器演奏のハードルを無くし、リズム感や音感がなくても誰でも演奏出来て、すぐに合奏できるのが特徴。
※3 ゆるスポーツ協会
世界ゆるスポーツ協会は“スポーツ弱者を、世界からなくす”ことをコンセプトに、2015年4⽉10⽇に発⾜。当協会は、だれでも楽しめる新しいスポーツジャンルを創りだすことを追求し、100種類以上(2022年1⽉1⽇現在)の競技を公開し、幅広く親しんでいただく活動を⾏っている。
また、運営にあたりプロデューサー、ディレクターを中⼼に、スポーツアンバサダーおよび、多数のスポーツクリエーターにより推進している(https://yurusports.com/members)。
2017年12⽉に「HEROs AWARD」の第1回となる「HEROs Award 2017」を受賞。
※4ソニー音楽財団が贈る、未就学児でも参加できる大人気クラシック・コンサート・シリーズ「Concert for KIDS」のオリジナル・キャラクター。福尾誠さんとは「クラシックたいそう」動画で共演。
5月に開催される「こども音楽フェスティバル 2025」では、「クラシックたいそうコンサート」への出演が決定しており、福尾誠さんとの共演が注目される。
(フェスティバル開催期間中は公演以外でも会えるかも!?)
「Concert for KIDS」のオリジナル・キャラクター“そらくん”
インタビュー・文=鬼木玲子
写真=平舘平
衣装協力=BAYFLOW
公演情報
【公演12】クラシックたいそうコンサート
<日程>2025年5月6日(火・休)
<時間>開場 10:00 開演 10:30 終演 11:30(予定)休憩なし
<会場>サントリーホール ブルーローズ(小ホール)
<出演者>
福尾 誠 (体操、ナビゲーター)
石上 真由子 (ヴァイオリン)
北川 千紗 (ヴァイオリン)
中 恵菜 (ヴィオラ)
鈴木 皓矢 (チェロ)
石川 浩之 (コントラバス)
齋藤 綾乃 (パーカッション)
<全席指定・税込>※予定枚数終了
こども(0才~19才) 1,000円
保護者(20才以上) 3,000円
無料
お子さまとそのご家族を対象に配信している、クラシック音楽を身近に楽しむことができる無料アプリ「子育てクラシックナビ」(ソニー音楽財団提供)。「こども音楽フェスティバル 2025」の開催を記念して、ドレスや楽器のイラストと共に撮影できるフレームや、Concert for KIDSオリジナル・キャラクター「そらくん」と一緒に撮影できるフレームなど、親子で楽しく遊べる「フォトフレーム」機能が登場しました。
日本全国で開催される子ども向けコンサートの検索機能や音楽を楽しく学べる「ゲーム」機能、子どもでも簡単・安全に動画を視聴する機能などと共にお楽しみください。
◆日時:2025年5月3日(土・祝)~6日(火・休)の4日間
◆会場:サントリーホール<東京都港区赤坂>およびアーク・カラヤン広場
◆出演:清塚信也、角野隼斗、鈴木優人、チョコレートプラネット、福尾誠、多久潤一朗、池村碧彩、高見侑里ほか
◆公式WEBサイト:https://www.kofes.jp/
◆主催:公益財団法人ソニー音楽財団
公益財団法人サントリー芸術財団 サントリーホール
【こども音楽フェスティバル 2025】清塚信也よりメッセージ動画到着!