石井琢磨×Budoが語る! ピアノソロ、2台ピアノ、4台ピアノで豪華絢爛に描く『のだめカンタービレ』の世界【特集:こども音楽フェスティバル 2025】Vol.12

特集
クラシック
2025.4.25

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世界最大級のこどものためのクラシックの祭典『こども音楽フェスティバル 2025』が、ゴールデンウィークにサントリーホールで開催! 国内外の第一線で活躍する多数のアーティストを迎え、様々な年齢のこどもたちにあわせたバラエティ豊かなプログラムをお届けするこのフェスティバルは、“こころ はずむ ひびきあう”という言葉とともに、音楽に触れる感動と、音楽を分かち合う歓びをこどもたちに伝えていく。

フェスティバルの公演を紹介する連載第12弾として、今回は「ピアノで聴く『のだめカンタービレ』BEST」に出演する石井琢磨、Budoによる対談が実現!「のだめカンタービレ」に登場したクラシック作品の数々を、ピアノソロ、2台ピアノ、さらに4台ピアノでお届けする公演について、たっぷり語っていただいた。

お互いをリスペクトしているから成り立つ2台ピアノ、4台ピアノ

石井琢磨

石井琢磨

――今回は漫画「のだめカンタービレ」に登場したピアノ作品を中心に、名曲の数々がプログラムに並ぶそうですね。おふたりは「のだめカンタービレ」の物語のなかで、印象に残っている曲はありますか?

Budo:僕はやっぱりベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」の第2楽章ですね。破天荒なのだめと、エリートな千秋先輩が出会う瞬間に流れるあの曲が原点で、作品のすべてを物語っているように感じます。

石井:僕はモーツァルト「2台のピアノのためのソナタ」の第1楽章ですね。のだめのハチャメチャな演奏に対して、千秋先輩がしっかり合わせていくシーンが印象に残っています。2人で演奏する場合、必ずどちらかが相手に合わせようとするのですが、合わせてもらう側にもその心根がないと上手くいきません。これは僕の推測ですが、のだめは千秋先輩に合わせてもらっているという感覚を絶対に持っていたはずです。

Budo:2台ピアノの場面は、ふたりの人間模様も感じられますよね。偉大なクラシック作品へのリスペクトはありつつも、自分の色で自由に表現できるのだめに憧れを抱く千秋先輩と、そんな千秋先輩を尊敬するのだめの恋心も伝わってきます。

石井:そうだよね。僕らが2台ピアノで演奏するときも、合わせる比率は決して50:50ではなく、ギリギリでも49:51でどちらかが必ず合わせる方にまわるし、その比率や役回りは曲の展開のなかで常に変化していきます。その様子が上手く描かれているのが、あのシーン。僕が感動した場面のひとつです。

――今回の公演では2台ピアノ、さらに4台ピアノでの演奏も予定されていますが、人数が増えることでその比率も複雑になりますか?

石井:不思議なことに、人数が増えると目指す方向を見据える力が大きくなるように感じます。太い幹になって、よりブレなくなる感覚です。2台ピアノでは、左右にカーブする際も比較的まわりやすい。でも、4台になるとみんなの意見が一致して、太いレールの中をグワーっと進んでいく感じがあります。例えるとしたら、大きな川を流れる様子に少し似ていますね。ですから、比率がどうという次元ではないかもしれません。

Budo:僕もそう思います。特に今回の4台ピアノの場合は、石井さんがいるからこそ大きな川になっています。菊池亮太さん、ござさん、僕というメンバーが揃うなか、石井さんは地盤的な役割でみんなを支えてくれるので、千秋先輩に通じるところがあります!

石井:そう言っていただけると、とっても嬉しい(笑)。僕は4人のなかで年長者でもあるので、全体を調整する役柄になっているのかもしれませんが、僕もBudoくん、ござさん、亮太くんにリスペクトを持っています。4人で演奏しているときも、誰かが主になり、そのフレーズにみんなでついていこうという気持ちが自然に生まれます。たとえば、ここは亮太くんがあちらの方向へ連れていきたいのだなと感じ取れば、みんなが彼のテンポ、フレージング、音楽性についていきます。ござさんやBudoくんが「こう弾きたい」という意思を出せば、みんながついていきます。それはお互いへのリスペクトがあるからこそ成り立つのだと思います。

――大きな川のような流れを作る際、みなさんはどのようにコミュニケーションを取っているのですか?

石井: アイコンタクトやボディランゲージ、それから音の強さや息づかいで表現するなど、いろいろなことを駆使して自分の考えを伝えます。わざとペダルの音を鳴らしてタイミングを取ることもありますね。4人で合わせるためには、そうしたアクションが必要になるという点も、面白いことのひとつかもしれません。

Budo:音楽的なコミュニケーションは、石井さんが話してくれた通りですね。あとは、リハーサルから本番にかけて、お互いのことをよく知るという点も大切だと思います。みなさんといろいろな話をするうちに自然と仲良くなるので、あうんの呼吸に繋がっているように感じます。ですから、いつも本番の公演がいちばん良い演奏になります。

――今回はラヴェルの名曲「ボレロ」を4台ピアノで演奏するのですね。

石井:この作品は、僕ら4人にとって十八番の曲なのです。「のだめカンタービレ」のなかでも大事な作品なので、非常に気合いが入っています。この曲こそ、あうんの呼吸がないと成り立ちません。4人だから、あうん×2が必要だねと話しています(笑)。とにかく息の合わせ方が難しい。そして、いろいろな場面でテーマとなるメロディが出てくるので、4人それぞれのキャラクターの音色の違いも楽しむことができます。僕らの個性がしっかり出てくると思います。

Budo:クラシック組とも言える僕と石井さんが「ここが地球だよ」と常に提示しておき、菊池さんとござさんが宇宙を拡大させていくような形ですね(笑)。地球と宇宙、どちらかが欠けたら成立しません。奇跡のバランスによって出来上がる音楽です。4人が揃うことによって、3次元の世界になります! 

石井:地球と宇宙の戦いを楽しんでください(笑)。

仲間と一緒に音楽を楽しむ姿をこどもたちに見せたい

Budo

Budo

――ところで、おふたりは幼少期どんなお子さんでしたか?

Budo:僕はとってもシャイで、人と仲良くするのが苦手でした。でも、ヤマハ音楽教室に通ってピアノが弾けるようになったことで、言葉を話すのは上手くなくても人の輪ができることを経験しました。それをきっかけに、音楽が好きになりました。

石井:僕はBudoくんと逆パターンで、シャイという言葉とは無縁な人生。いつだってクラスの中心という感じでした(笑)。逆にピアノを演奏する時が静かになれるタイミングで、自分の世界に没頭できるという位置づけでした。今ふりかえってみると、あれだけピアノを触るのが好きだったのは、ひとりになりたかったからなのかも。

Budo:石井さんのような人物は希有な存在だと、ピアニスト仲間がみんな言っています。ピアニストは内気な人が多くて、会話が続かなかったり、仲良くなりたいのにできなかったりということもしばしば。でも、石井さんは積極的にコミュニケーションを取ってくれます。石井さんがこの世界にいてくれて、本当に良かった! 菊池亮太さんも、「石井さんがまとめてくれて、場を明るくしてくれて、本当に助かるよね」と話していましたよ。

石井:みんな優しい(笑)。僕はね、結構言いたいことをバーッと話すタイプだけれど、みんなは会話の5秒先を読んでくれているなと感じます。これは演奏にも関連しますね。

Budo:音楽を通じて人の輪ができてコミュニティができるというのは、本当にかけがえのないものですよね。人生を楽しむ中で、音楽に関わることができたら良いことしかないと僕は思います。こどもたちにとっても、今回の公演が「音楽っていいな」と感じる入り口になったらいいですね。

石井:本当にそうだね。「のだめカンタービレ」がきっかけで来場する方も多いと思いますが、僕ら4人が楽しんでいる姿を見て、気持ちが明るくなったり、あんなに楽しいならもう少しピアノも頑張ってみようと思えたり、何らかの気持ちが芽生えてくれたら嬉しいですね。

――こどもたちに音楽を届けるにあたって、留意することはありますか?

石井:こども向けに何かをするというよりも、いつも以上に真剣に音楽と向きあって、自分たちが楽しんで演奏することが一番伝わるのではないかと思います。基本的には自然体でいつも通り公演に臨み、僕らのリアル、コンサートのリアルをこどもたちにお見せしたいですね。

Budo:石井さんの言うとおりですね。僕らがこどもの時も、楽しいことが一番大事でしたよね。僕は学校の勉強がつまらない時期があって、ゲームをしたり、絵を描いたりしながら、その都度一番楽しいことにフォーカスしていました。そして、その延長線上でいま音楽を楽しんで演奏しています。それは、今回出演する4人の共通点でもあります。だから、僕らのような大人が音楽を楽しむ姿を見せたいです。

石井:たぶん、ピアノはひとりで弾くイメージが強いと思います。でも、4人が集まって仲間になって一緒に演奏する姿を見てもらうのは、とても素敵なことですよね。Budoくんが話したとおり、僕も学校が楽しくない、勉強が楽しくないという時期がありました。こどもたちがそんな気持ちになった時、今回のコンサートを体験して「なにか楽しいことをやってみたい!」となってくれたらいいですね。ピアノでもいいし、4人集まって何かのチームプレーを始めてもいいですよね。

――4台のピアノが並ぶ光景を初めて目にするお子さんもいるかもしれませんね。

Budo:確かに! 僕はこどものころエレクトーンなどの電子鍵盤楽器がたくさん並ぶのは見たことがあるけれど、アコースティックなグランドピアノが4台並ぶ機会はなかなかありませんよね。僕も演奏する前は、4台で出来るのかなって疑問に思っていたくらいですから。

石井:4台ピアノが並ぶ光景は、僕も大人になってスイスで行われているヴェルビエ音楽祭で初めて見たかな。演奏者は大変そうだなと思って聴いていたけれど、まさか自分がやるようになるとは思ってもみませんでした(笑)。

――ところで今回の公演は配信もあるそうですが、オンラインならではの楽しみ方はありますか?

Budo:配信の良さは、特等席で見ることができることじゃないですか。プロのカメラマンが撮る画角によって、迫り来る臨場感を感じられると思います。

石井:コンサート会場では間近に見ることができない鍵盤での手の動きをアップにしたり、演奏者の表情も撮ってくれたりするでしょうね。それに今回は2台ピアノや4台ピアノの演奏中、ピアノを弾かずにいるタイミングでどんな所作をしているのか見ることができるかもしれません。またアーカイブもあるので、コンサート当日に何か予定があって見られない人も、後日楽しむことができるのもいいですね。さらにアーカイブを何度もくり返して見ることで、いろいろな発見があるかもしれません。

コンサートもYouTubeも、新たな活動にも意欲的に取り組みたい

――多岐に渡って活動しているおふたりですが、なかでもコンサートで演奏する際はどんなことを大切にしていますか?

石井:僕はどのコンサートも、お客さまが聞き終わった後に「明日も生きよう」「明日も頑張ろう」といったパワーを受け取ってもらえるコンサートにしたいと思っています。だからこそ、コンサートに向けての準備は万端にして、より一層楽しんでもらえるためにどうしたらいいか、日々試行錯誤しています。

Budo:僕は自分名義のコンサートでも、究極自分はサブでしかないと思っています。僕のコンサートに来てくださった方の人生が変わっていくのを、何度か目の当たりにしてきました。たとえば、Budoを好きになったことで友人ができたとか、音楽を語れる仲間ができたとか、新しい音楽の世界を知ったとか。そうやって人の輪、音楽の輪が広がっていくコンサートを大切にしたいと思っています。さらに、今回のように素晴らしいアーティストの方々と共演させていただくことで、僕自身の世界も拡張されています。ですから、もうすべてが、宇宙が広がっていくようなコンサートにしたいです。

――おふたりにとってはYouTubeでの発信も欠かせない活動のひとつですね。石井さんは3月にチャンネル開設5周年を迎えたそうで、おめでとうございます!

石井:ありがとうございます! 石井琢磨という人間を語る上で欠かせないのが、YouTubeの活動です。たくさんの企画をやってきて、たくさんの方と出会うことができて、僕の目標のひとつだった「生の音を聞いてもらう」ということも実行に移すことができました。YouTubeは僕にとって夢を叶えさせてくれるツールです。これからもピアノ系YouTuberとして誇りやプライドを持って活動していきたいと思います。

――BudoさんはYouTube登録者数12.5万人を越え、2月から始まった「厳選 ! 目で知るクラシックチャンネル」ではナレーターにも挑戦していますね。

Budo:僕はYouTubeによっていろんなステージにあがることができるようになりました。YouTubeがなければ今の僕はありませんし、もう親友みたいな存在です。「目で知るクラシックチャンネル」では、アーティストの方々の活動を僕自身もより知ることができるので、ナレーターをしながら育てていただいているなと感じています。今回の「こども音楽フェスティバル 2025」の記者発表会も、じつは記者席に座って参加させていただき、恐縮しました。めったにない機会ですから、本当にありがたかったですね。

――石井さんは昨年「SPICE」でインタビュアーの役も務めましたね。いかがでしたか?

石井:インタビューする方は大変ですね。5秒、10秒、1分、2分と先を読み、お話を聞きながら次の質問をして、しかも自分が聞きたい内容に誘導していかなければならない(笑)。自分がインタビューされることも多いので、どう答えたらいいのかを知る良い機会になりました。今後も演奏以外のお仕事に取り組むことがあるかもしれません。その時、その仕事を通していろんな勉強をしつつ、自分がその立場になった時に思いやることができる人間になりたいと思いました。

――おふたりの今後の活動がますます楽しみです。では、最後にメッセージをお願いします。

石井:今回の公演は、「のだめカンタービレ」のファンはもちろん、「のだめカンタービレ」を知らない方でも楽しめる内容になっています。みなさんが聞いたことのある作品も演奏します。そして、おそらくほとんどの方が見たことのない景色とサウンドを楽しめるコンサートです。この公演をきっかけに「のだめカンタービレ」を知り、興味を持って漫画を読むお子さんがいたら、こんなに嬉しいことはありません。ご都合がよろしければ、ぜひ会場にいらしてください。

Budo:ここジャパンにおいて、これ以上のステージはないというくらい素晴らしい作品とアーティストが揃っていると思います。ですから、お子さんたちにとって一生に一度の記憶に残る経験になるのではないかと期待しています。そして、きっと僕らはステージ上で誰よりも楽しんでいるので、その姿を楽しみに遊びに来てくれたら嬉しいです。

インタビュー・文=鬼木玲子 

公演情報

『こども音楽フェスティバル 2025』
【公演3】ピアノで聴く『のだめカンタービレ』BEST
 
<日程>2025年5月3日(土・祝)
<時間>開場 15:50 開演 16:30 終演 17:30(予定)休憩なし
<会場>サントリーホール 大ホール
<URL>https://www.kofes.jp/program/1546/
 
<出演者>
石井琢磨 (ピアノ)
菊池亮太 (ピアノ)
ござ (ピアノ)
Budo (ピアノ)
 
<演奏予定曲>
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」より 第2楽章
モーツァルト:2台のピアノのためのソナタ K. 448 より 第1楽章
ストラヴィンスキー:『ペトルーシュカ』~冨田 勲:「きょうの料理」テーマ
ラヴェル:ボレロ(4台ピアノ)
ほか 
 
【公演
<全席指定・税込>
S席 こども(小1~19才) 2,000円
S席 保護者(20才以上) 5,000円
A席 こども(小1~19才) 1,500円
A席 保護者(20才以上) 3,500円
P席 こども(小1~19才) 1,000円
P席 保護者(20才以上) 2,500円
 
【オンライン配信】
視聴 2,000円
 
●無料アプリ「子育てクラシックナビ」に「フォトフレーム」機能を追加!
お子さまとそのご家族を対象に配信している、クラシック音楽を身近に楽しむことができる無料アプリ「子育てクラシックナビ」(ソニー音楽財団提供)。「こども音楽フェスティバル 2025」の開催を記念して、ドレスや楽器のイラストと共に撮影できるフレームや、Concert for KIDSオリジナル・キャラクター「そらくん」と一緒に撮影できるフレームなど、親子で楽しく遊べる「フォトフレーム」機能が登場しました。
日本全国で開催される子ども向けコンサートの検索機能や音楽を楽しく学べる「ゲーム」機能、子どもでも簡単・安全に動画を視聴する機能などと共にお楽しみください。
 
『こども音楽フェスティバル 2025』
◆日時:2025年5月3日(土・祝)~6日(火・休)の4日間
◆会場:サントリーホール<東京都港区赤坂>およびアーク・カラヤン広場
◆出演:清塚信也、角野隼斗、鈴木優人、チョコレートプラネット、福尾誠、多久潤一朗、池村碧彩、高見侑里ほか
◆公式WEBサイト:https://www.kofes.jp/
◆公式YouTube「子どものためのクラシック」(ソニー音楽財団):https://www.youtube.com/channel/UCjtxBdsKe5RBSgcqTj_SL0A
◆主催:公益財団法人ソニー音楽財団
    公益財団法人サントリー芸術財団 サントリーホール

 

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