「鬼パン」動画で話題のテノール歌手・鳥尾匠海がソロ・リサイタル開催 インタビューが到着
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IL DIVOに始まった、クラシカル・クロスオーヴァーの男性ヴォーカル・ユニットの潮流。国際的なキャリアをもつ、テノールの高島健一郎をリーダーとして、東京芸術大学を卒業した声楽家たち4人が集まって結成されたのが、REAL TRAUM(リアル・トラウム)である。2025年2月のBunkamuraオーチャードホールでの公演は、ドイツ語で「正夢・夢を実現する」といった意味のグループ名通りに完売公演となり、続々とその後のコンサートが発表となっており、今月には平安神宮の桜音夜でも出演した。そんなリアル・トラウムにおいて、テノールでグループの末っ子、そして驚異の再生回数を記録した「鬼のパンツ」動画で、ついに地上波テレビにも登場したのが、鳥尾匠海である。3月30日にオペラシティのリサイタル・ホールで行われたソロ・コンサートの模様も含め、その日に発表となり、現在先行販売中の12月三越劇場での公演についても話を聞けたので、ご紹介したい。
――「鬼のパンツ(フニクリ・フニクラ)」がさらに大変な話題になっていますね。
正直自分でもよくここまで来たなと思います。動画が話題を呼んでヤフーニュースになったことも驚きでしたが、めざまし8から出演の連絡をもらったときには、夢じゃないかと。
――反響はいかがでしたか?
地上波のテレビってやはり影響力が大きいなと。多くの方に連絡をいただいたり、なによりもYouTubeチャンネルのフォロー数もXのフォロー数も急に伸びました。
――そんな中での、オペラシティでのソロ・リサイタルでしたが、ご自分ではいかがでしたか?
前回の地元鶴川でのソロとちがって、自分を見失うくらいに緊張ししまいてましたね。
――私も見させていただきましたが、まったくそんな風には思えませんでしたが。日本語の歌やJ-POPのヒットソングまで歌詞の一言一句を大事に歌われて、歌詞が心に染入って来るような気持ちになれたのは、前回の公演同様に特別な体験でしたが。
そう言っていただけると、嬉しいです。リアル・トラウムでのオーチャードホール公演のような大きな舞台を経験させていただいたこともあるのでしょうか、よりステージで自分に求められるものが大きくなっているように感じて緊張してしまったのかもしれません。それだけ皆さんの気持ちに応えなければという自分の気持ちや責任も大きくなっているせいかも。
――お得意の「グラナダ」やイタリアの古典歌曲「カロ・ミオ・ベン」などの、クラシカルな曲も、伸びやかな鳥尾さんの声にフィットするなあと感じました。
「グラナダ」は何度も歌ってきましたが、いつも自分でもビックリするくらい大きな拍手を皆さんからいただいてますね。自分の素直で情熱的な性格にも合ってるんですかね?
――「いのちの歌」は、前回同様クラシック的な歌唱がこんなにもフィットするんだということにも改めて驚かされましたし、もう一曲、「アンパンマンのマーチ」には不覚にも涙が止まらなくなってしまいました。
どちらの曲もいろんな歌を試しながら、自分で発見して自分の表現にあっているのか、確認してきたので。前にも話しましたが、ヒット曲を歌えばいいということではなくて、僕のクラシック的な歌唱に合う曲と合わない曲があると思います。最初、プロデューサーから、「アンパンマンのマーチ」を歌ってみたらと勧められたとき、自分でもそれはさすがにどうなんだろう?って思う自分がいたのですが、1年以上前に上野公演でトライしてみたときはまだしっくり来なかったのですが、ピアニストの追川礼章さんにしっかりと伴奏のアレンジを固めていただいて、テンポをぐっと落として歌ってみたら、これならリサイタルでトライしても、お客様に満足していただけそうだと思えたのでプログラムに入れてみました。
【感動】何故だか涙が出るオペラ歌手が歌うアンパンマンのマーチ
――リサイタルの翌日からNHKの朝の連続テレビ小説「あんぱん」がスタートしましたが、これも意識されていたのでしょうか?
いいえ、まったくの偶然の一致でした。申し上げたようにずいぶん前からこの歌は「鳥尾君に合うんじゃない?」とプロデューサーに提案してもらってて、自分なりにフィットする表現を模索しているうちに時間がたち、やっと自分でも歌って伝わるかなと思えたので、リサイタルのプログラムに加えてリハーサルをしていたのです。すると、マネージャーから「あんぱん」がリサイタルの翌日から始まるね!って言われて。家にテレビがないので全く気付いてなくて(笑)今はネットで見てますが。この歌は、やなせたかしさんの書かれた歌詞が本当に素晴らしくて、どう生きるのか、自分にも問題を突きつけられますし、歌うたびに自分でも胸を打たれるものがあります。子供のための歌ではなくて、すべての人に聴いて欲しい歌です。
――鳥尾さんは「鬼パン」もそうですが、運をもってますね。
いろんな人からよく言われますね。リアル・トラウムに参加できたこともそうですが、良いタイミングで良い出会いがあって、ここまで活動できているなと思います。
――リサイタルの翌日には、「アンパンマンのマーチ」の動画をYouTubeにアップされてましたね。
撮影してもらった素材を、徹夜で編集しました。なんとか、「あんぱん」の初日に間に合わせたくて。
――すでに20万回以上再生されて、好評ですね。
そうですね。「鬼パン」並みによくご覧いただいてます。ご覧いただいた皆さんからは、「あんぱん」のエンディングテーマがわりに動画を見てますって声をよく見聞きする気がします。そんな風に見てもらえて、思ってもらえるなんて、本当に有難いですね。
―――ピアニストのBudoさんも新チャンネル「目で知るクラシック」でいち早く鳥尾さんのリサイタルを紹介してましたね。
彼のような同じ世代の音楽家が活躍して、こういうチャンネルを展開していることも含めて、本当に良い刺激をもらっていると感じます。
【アンパンマンのマーチ】オペラ歌手が歌い上げるアンパンマンの歌に涙が止まらない【鳥尾匠海】
――そして、年末にも三越劇場でソロ・リサイタルが。
今回のソロ・リサイタルでも自分でまだまだだなと感じる部分もありました。今年は、のだめのニューイヤーに始まり、オーチャード・ガラ、クラシカル・レジェンド、プリンス・ガラ+、貴公子たちの音楽会、ウィーン・ヨハン・シュトラウス・ヴィルトオーゾとの共演、新日本フィルとの共演などなど、去年には想像できなかった、新しい挑戦を次々とさせていただいています。テレビやラジオもそうです。そんな経験を経て、いろんなものを吸収して、三越劇場では、新しい鳥尾匠海を皆さんにお見せしたいです。
――今日も精力的ですね。
今年は「鬼のパンツ」に加えて、「アンパンマン」も味方ですから。
文:神山薫