新世代キャストが新しい風を吹かせる! ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』6年ぶりに上演~会見&ゲネプロレポート(城田優ver.)

2025.5.12
レポート
舞台

ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』のゲネプロの様子

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2025年5月10日(土)、ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』が東京建物Brillia HALLで開幕した。

『ダンス オブ ヴァンパイア』は、ミヒャエル・クンツェが脚本・歌詞、ジム・スタインマンが音楽を手掛け、1997年に世界初演されたウィーン発のゴシックミュージカル。日本では山田和也の演出で2006年に帝国劇場で初演されて以来、観客から熱狂的な支持を受ける人気作となり、今回は6年ぶり6度目の上演となる。

ヴァンパイアのクロロック伯爵役は日本初演から山口祐一郎がひとりで演じ続けてきたが、新たに城田優がWキャストを務めることでも話題を呼んでいる。他にも、長年本作を支え続けてきたベテランキャスト陣に加えて多くの新キャストが集い、新生『ダンス オブ ヴァンパイア』に期待が高まる。

本記事では5月10日(土)昼に行われた新キャスト組※のゲネプロと、その直後に行われた会見の模様をお届けする。(※この日のキャストは、クロロック伯爵:城田優、サラ:中村麗乃、アルフレート:寺西拓人、クコール:伊藤今人、ヴァンパイア・ダンサー:加賀谷一肇、アブロンシウス教授:武田真治)

ゲネプロレポート

物語の舞台はヴァンパイアの故郷とされている、ルーマニアのトランシルヴァニア地方。厳しい冬を感じさせる荘厳なオーヴァーチュアが流れ始めると、白い照明が吹雪となって客席へ降り注ぐ。すると客席通路から「プロフェッサ〜!」と何とも情けない声で叫ぶ少年、アルフレートが登場。どうやら雪山ではぐれてしまったアブロンシウス教授を探しているらしい。猛吹雪の中なんとか見つけた教授は、あまりの寒さに気絶してカチンコチンに凍っていた。またしても「プロフェッサ〜〜〜!」と絶叫するアルフレート。

……と、幕開けの雄大な音楽とは対照的に、何やらコミカルな展開で物語は始まっていく。そう、本作はゴシックであり、ホラーであり、コメディでもあるのだ。

アルフレートと教授が駆け込んだ宿屋の人々もちょっぴり風変わり。首からニンニクのネックレスをぶら下げて「ガーリック♪ガーリック♪」と陽気に歌い踊る客たち、女中に夢中な宿屋の主人シャガール、そんな夫に呆れながらも人情味のある女房のレベッカ、溢れ出る色気が隠せない女中のマグダなどなど。

ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』のゲネプロの様子

風変わりな宿屋の人々の介抱によって元気を取り戻した教授とアルフレートは、この辺りにヴァンパイアが住む城がないか尋ねる。二人はヴァンパイア研究の旅の途中だったのだ。しかし、“ヴァンパイア”と聞いた宿屋の人々の態度は一変。明らかに何かに怯えているような素振りを見せ、決してヴァンパイアに関する情報は教えてくれなかった。

宿屋に滞在することになった教授とアルフレートだが、アルフレートはひょんなことから宿屋の娘サラに一目惚れ。お風呂が大好きだという夢見がちな少女にくびったけだ。ところがある晩、入浴中のサラの前にヴァンパイアのクロロック伯爵が現れ、外の世界に憧れるサラを誘惑。サラは自ら進んで宿屋を飛び出し、姿を消してしまう。アルフレートは愛するサラを見つけ出すことができるのかーー

ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』のゲネプロの様子

ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』のゲネプロの様子

ヴァンパイアという人ならざるものを描く本作には、終始非現実的な空気が漂っている。ゴシック調の装飾が施された重厚な舞台美術、妖しくも耽美的な旋律を奏でるオーケストラ、大勢のヴァンパイアダンサー・シンガーたちの妖艶なパフォーマンス。これらによって他では味わえない唯一無二のヴァンパイアの世界観が作り出されているのだ。

ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』のゲネプロの様子

ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』のゲネプロの様子

ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』のゲネプロの様子

このヴァンパイアの世界観を確固たるものにしているのが、本作の黒幕であり主人公でもあるクロロック伯爵の存在だ。城田優はまるで黄泉の帝王を彷彿とさせるような冷徹で美しいヴァンパイアとして舞台上を生き、これまでにない新しいクロロック伯爵像を構築。その罪深い美貌は、もはや異次元。背中には孤独をまとっており、触れたら割れてしまいそうな、尖ったガラスのような繊細さがある。まだまだ秘めた可能性を感じさせるクロロック伯爵だった。

ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』のゲネプロの様子

ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』のゲネプロの様子

ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』のゲネプロの様子

クロロック伯爵とアルフレートに求められるヒロインのサラを演じたのは、中村麗乃だ。両親から過保護に育てられてきた世間知らずな可憐な少女を、中村は等身大の少女として溌剌と演じた。アルフレートを手のひらで転がす小悪魔的魅力も持ちつつ、外の世界へ憧れる瞳には純粋さが宿っていた。

ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』のゲネプロの様子

ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』のゲネプロの様子

ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』のゲネプロの様子

ミュージカル界屈指のヘタレキャラ、アルフレートを演じたのは寺西拓人。物語冒頭からへなちょこっぷりを発揮し、無駄に多い動きやクルクル変わる表情で、何事も一生懸命に取り組む一途なアルフレートを好演していた。キャラクターとしてはヘタレなのに、歌い出すとたちまち煌めく王子様ヴォイスなところがまた憎い。どこか爽やかさが隠しきれない、好青年なアルフレートだった。

ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』のゲネプロの様子

ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』のゲネプロの様子

一心不乱にヴァンパイア研究に勤しむアブロンシウス教授役は、武田真治。研究に熱心過ぎて周りが見えておらず、少々堅物の教授なのだが、ときどき見せる人間味が愛らしい。アルフレートとの掛け合いもバッチリで、本作名物(?)の早口ナンバー「人類の為に」も見事に歌いきっていた。

ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』のゲネプロの様子

芋洗坂係長は、娘思いだけれど浮気癖のあるシャガールをひょうきんな演技で軽快に表現。明星真由美はなんだかんだ亭主思いなレベッカを熱演し、哀愁を感じさせる。マグダ役の青野紗穂は、「死んじゃうなんて」で切なくもソウルフルな歌声を響かせ存在感を発揮していた。

ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』のゲネプロの様子

ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』のゲネプロの様子

クロロック伯爵の息子で、アルフレートに好意を寄せるヘルベルトはジュリアンが怪演。ワイルドかつ美しい身のこなしでアルフレートに迫る姿は恐怖を感じさせる程。クロロック伯爵に仕えるクコール役の伊藤今人(梅棒)は、細かい芝居で観客の笑いを誘った。

ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』のゲネプロの様子

ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』のゲネプロの様子

大勢の新キャストが加わり、新たな風が吹いた本作。新鮮な楽しみはもちろん、開演前のアルフレートによるアナウンスや、幕間のクコール劇場、「モラルもルールもまっぴら♪」と舞台と客席が一体となって盛り上がるカーテンコールなど、変わらない魅力もある。今回初めてヴァンパイアに出会う人も、ヴァンパイア通な人も、一緒になって楽しめること間違いない。帝国劇“城”ならぬ“ブリリア城”で、ヴァンパイアたちが待っている。