ヘッドライナー・Kvi Babaが神戸で魅せたピースフルな時間ーー新たに屋内ステージが加わった『KOBE MELLOW CRUISE 2025』DAY1レポート

レポート
音楽
2025.5.28

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『KOBE MELLOW CRUISE 2025』5.10(SAT)兵庫・神戸メリケンパーク

5月10日(土)・11日(日)の2日間、神戸メリケンパークで『KOBE MELLOW CRUISE 2025』(以下、『メロクル』)が行われた。2022年からスタートし、今年で4回目の開催となった『メロクル』は初めてエリアを拡大。屋内ステージを1つ増やして3ステージへとパワーアップ。2日間で過去最多の38組が神戸の港町に音楽を響かせた。DAY1の出演者はKvi Baba、betcover!!、Daichi Yamamoto、田我流 - Band Set -、dodo、どんぐりず、G-k.i.d、Kaneee、KM、lilbesh ramko、MaisonDe、SEEDA、柴田聡子、清水翔太、Skaai、STUTS、鈴木真海子(体調不良のためキャンセル)、tofubeats、swetty(O.A)の19組。その中からいくつかのアーティストのライブをピックアップして、会場の様子と共にレポートする。

毎年、『メロクル』は実によく晴れていた。筆者にとっては新緑の芽吹きと同時に初夏の訪れを感じるイベントになっていたのだが、今年は朝から曇天が広がっていた。開場時から霧雨が降りはじめ、オープニングアクトのswettyがライブを行う頃には雨風が強まり、地面にはあっという間に水溜まりが。

それでも朝イチから行列をなして入場したオーディエンスは、買ったばかりのグッズのタオルや手ぬぐいを頭に被り、ステージの前へと詰めかける。寒いくらいの気温で、横なぐりの雨に突風という過酷な状況でも、笑顔と高揚感は失われない。オーディエンスが自由に熱量を持って楽しんでいるのも、『メロクル』の特徴だ。

音楽以外にもアート、ファッション、フードといったカルチャーがクルーズできる都市型フェスとあって、『メロクル』の来場者はファッション感度が高い。毎年会場内にも多くのアパレルショップが出店している。

今年は神戸発のセレクトショップ・LANTIKIや大阪・緑橋のPEEPLE、大阪・天王寺のJUNGLE GYM、京都・河原町のTHE TINY SHOP、大阪・南堀江のFIVE STAR MEGASTORE、大阪・住之江のアウトドアショップThe Best Shop & doorman store、北堀江のEpicと東心斎橋のLo_fi_usedclothingの合同ショップ、オンラインやイベントを中心に出店するDO THE POGO、トゥースジュエリーなど旬なアイテムが楽しめるso Good SISTERSの10店舗が集結。オーディエンスは思い思いに洋服やサングラスなどの小物を手に取って買い物を楽しむ姿が見られた。

また『メロクル』といえば、デザイン性の高いオフィシャルグッズも注目。『メロクル』とアートユニット・HOME ECONOMICS EXPERIMENT、アートディレクター・グラフィックアーティストのmidoriがそれぞれコラボしたTシャツ、手ぬぐい、タオル、バンダナ、ステッカーを販売。さらにタトゥースタジオ・TATTOO STUDIO YAMADAとのコラボレーションアイテム、神戸がホームタウンの兵庫県のJリーグクラブ・ヴィッセル神戸とのコラボキャップも大人気で、飛ぶように売れていた。

VIPを購入した人が利用できる「VIP専用ラウンジ」は屋根付きで、ベンチやソファがずらりと並ぶ。バーカウンターが併設で、雨風を機にせずゆったりと快適に楽しめるのも魅力だ。

そしていよいよライブがスタート! オープニングアクトとして雨の中ステージに立った17歳の若き新星・swettyは、20分という短い時間で新曲も含めた全7曲を堂々と披露。「oh, baby say my h」では韓国のラッパー・yeilを客演に呼び、自身の魅力を全力で提示した。

tofubeats

URBAN STAGEのトッパーは、神戸出身で『メロクル』常連のtofubeats。「神戸ただいまー!」と叫び「Don’t Stop The Music」「PEAK TIME」と雨を吹き飛ばすようなアッパーチューンでアゲていく。熱量を増して「RUN」「I CAN FEEL IT」「LONELY NIGHTS」と連投。

会場をひとつに導いた後は、神戸出身の後輩ラップユニット・Neibissを呼び込み「MINA GA MINA」、tofubeatsがNeibissをフィーチャーした3月リリースのシングル「ON&ON」、Neibissの楽曲「no sync」のtofubeats Remix を一気にプレイ。先輩後輩の息の合ったプレイでフロアは大盛り上がり。なおNeibissは、出演キャンセルとなった鈴木真海子の代わりに急遽SEASIDE STAGEに登場。自分たちらしく全力でラップをかましてフロアを湧かせていた。

ラストチューンは、メリケンパークがMVの撮影地でもある「水星」。オーディエンスは待ってましたとばかりに歓声を上げ、手を左右に振って一体に。30分間ほぼMCなしのDJスタイルで全9曲をノンストップで駆け抜けた。

Daichi Yamamoto

雨がやみ、会場の空気が緩んで和やかさが戻ってきた。URBAN STAGEの2番手は京都出身のラッパー・Daichi Yamamoto。DJ Phennel Koliander、トークボクサーのKzyboostと3人でステージに立ち、「Newtone」「Taxi」「ヤバいな」「Expressions」と、高いラップスキルを見せつけながら風に乗せてフロウをどんどん飛ばしていく。

KM作曲でKzyboostのトークボックスが印象的な「MYPPL」を経て「晴れてきたし、海が近いから」と、Daichiが作詞で参加したYo-seaの「Nana」をカバー。イントロから湧き上がった「Let It Be」では「(シンガロング)もっといける! こんなグラサンかけた奴の言うこと聞けへんよな」とグラサンを外し、目にも止まらぬ高速ラップでバチバチに魅せていく。フロアからの熱視線を受けたDaichiは、今年4月に逝去したラッパー・JJJと作った「ガラスの京都」を真っ直ぐな瞳で披露してライブを締め括った。オーディエンスもDaichiのJJJへの想いに共鳴するように、リリックを口ずさんでいた。

清水翔太

リハから大歓声に包まれたのは、2年連続出演の清水翔太。ダンサー2人と生バンドを引き連れ、惚れ惚れする歌声でオーディエンスを釘付けにした。1曲目からオートチューンを使ってクールな歌声を響かせ、清水自身も華麗なステップを踏んだ「Friday」、ダンサーと3人で椅子に座ったままパフォーマンスした「Gamble」、人生観を歌い聴く人の背中を押す「Good Life」と、デビューから17年のキャリアに裏打ちされた実力を存分に提示する。一挙手一投足に宿るスキルの高さはさすがだ。

短い挨拶を挟み、抜群のフェイクに絡みつくギタープレイも素晴らしい「Feel Good」、清水の美声をダイレクトに感じるバラード曲「花束のかわりにメロディーを」を歌い上げた。ラストは自身の出身校で、現在は特別講師として指導するキャレスボーカル&ダンススクールの生徒たちと一緒に「PUZZLE」を披露。シンガーとしての現在地と表現力の広さ、音楽の未来への希望を見せてくれた。

STUTS

『メロクル』皆勤賞のSTUTSは、客演も迎えつつ、盟友への想いを込めたセットリストで誠実に音楽を届けてくれた。「Orbit Intro」から海辺にぴったりのSIKK-Oと鈴木真海子をフィーチャーした「Summer Situation」へと繋ぎ、tofubeatsとのコラボ曲「One」を経て、SEASIDE STAGEでライブを終えたばかりのKaneeeと「Feel Missing」をグルーヴィーに披露。続けて4月に逝去した盟友のJJJをフィーチャリングした「PRISM」を1人プレイした。より想いを込めて力強く歌う姿に胸が熱くなる。

ここで、DAY2に出演するKohjiyaがシークレットゲストで登場! 湧き立つフロアに「ポカリスエット」のTVCMソングで最新曲の「99 Steps」をパワフルに投下。チルな雰囲気ながら熱くプレイしたKohjiyaがステージを去ると、今度は「Breeze」でDaichi Yamamotoがイン。瞬間晴れ間がさし、神戸の街がくっきりと浮かび上がる。Kzyboostと3人で叩き込んだ「Cage Birds」に続け、「歌える人は歌いましょう」と、JJJ自身が亡くなった友人のFebbに向けて作詞した「Changes」を、Daichiと2人空高く飛ばしていった。

betcover!!

初出演のbetcover!! は、斜陽のSEASIDE STAGEで、唯一無二の音楽性と高い演奏力で圧倒的なライブを見せつけた。SEなしで現れた柳瀬二郎(Vo.&Gt.&Sax)、ファルコンマン(Ba)、日高理樹(Gt)、高砂祐大(Dr)、白瀬元(Key)、サポートの松丸契(Sax)は「炎天の日」からライブをスタート。文学的な歌詞を喋るように歌う柳瀬の佇まいや表情、歌謡曲的なメロディーは昭和ノスタルジックを想起させる。初見の人、しかもHIPHOPを聴きに来た人にとっては衝撃だろう。でも不思議な中毒性があるのがbetcover!!の音楽だ。

「ロックンロール!」と叫び投下された新曲「GOGO スチーム」から「バーチャルセックス」まで一気に疾走すると、低音ボーカルでゆったりと演奏される「不滅の国」からシームレスに「壁」へ突入。バンドサウンドも激しく熱を帯び、松丸と高砂のセッションに柳瀬のサックスもジョインして、緩急つけた大迫力のアンサンブルで圧倒した。最後は語りを聞かせるように「野猿」を披露してライブを終えた。久々の『メロクル』で最高のインパクトを与えたbetcover!! だった。

どんぐりず

今年新しく設けられたFISHDANCE STAGEのトリを担ったどんぐりずは、「祭りだぜ!」と超満員のフロアを踊らせ湧かせまくった。暗い場内、ド派手な照明とレーザーが縦横無尽に走り回る中、一段高いステージでラッパーの森がキレキレのラップを叩き込むごとに会場の熱が上がっていく。プロデューサーのチョモが繰り出すビートに乗せて踊り狂うフロアは、もはやクラブの様相だ。入場規制の会場にはライブ中もどんどん人が押し寄せる。

2人は「Odotchatta」で<踊っちゃった方がいいや>、「Yoppa Ratta」で<飲め飲め飲め>と煽り、何度もピークを作っていく。「WANI」では同じステージに出演していたラッパー・Skaaiを呼び込み、中南米でストリーミング・ヒットを飛ばした「NO WAY」でフロアを狂喜させる。森は「最高っすね。マジヤバい!」とAwichプロデュースのHABUSHをあおり、MONDO GROSSOとのコラボ曲「B.S.M.F」でこれ以上ないほどの熱狂でフィニッシュ! 初出演ながら最高潮のエネルギーを生み出した。

田我流- Band set -

夕陽が美しく輝く頃、テントが吹き飛びそうなほどの強風をもスパイスにして熱々のライブを繰り広げたのは、SEASIDE STAGEのトリを担った田我流。「Sunset! 海風が気持ち良いね神戸!」と笑顔で現れ、1曲目の「ゆれる」で早速コール&レスポンス。「俺が田我流。a.k.a.嵐を呼ぶ男。俺のこと知っていようといまいと、何か言ったらイエーッて言っときゃいいんだよ。それがHIPHOPだと思ってる」という言葉で瞬く間にオーディエンスの心を掴み、ナイスバイブスでフロアを揺らした「Old Rookie」から「LAID BACK」「Saudade」「Ride On Time」と怒涛の展開で熱狂の渦を作り出した。

「やべ~勢いですげー盛り上がる」で田我流はフロアに降り立ち、端から端まで自由に動いてオーディエンスの間でラップ! 言わずもがなの盛り上がりでひとつになった会場に、アカペラで「Hands Up」を投下。真面目な表情で日本もいつ戦争や災害に見舞われるかわからないと話し、「でもやることはひとつ! マジで生きるだけだろ!」と叫び、ホーン隊が世界観を広げた「あの鐘を鳴らすのは、、俺」を経て、「『メロクル』らしい曲」と「夢の続き」で締め括った。マジックアワーの空を見上げると月が顔を見せる。風を感じながらシンガロングしたメロウでチルな時間。心の繋がりを感じる素晴らしいフィナーレだった。

Kvi Baba

DAY1の大トリはKvi Baba。大阪・茨木市出身で、4年連続出演『メロクル』皆勤賞の彼が、満を持してヘッドライナーをつとめた。生バンドによるSEとビジョンに映し出された巨大な満月が場を高め、やがてKvi Babaが登場。「Fool in the Moon」で上質なメロディーとあたたかみのある歌声を響かせると、「Fuck U & Love U」ではシンガロングに頷いて笑顔を見せる。「メロウで力強い夜にしよう!」と叫んだ「Ms.U」の2番では、シンガーソングライターのidomが登場! idomはパワフルな歌声で盟友ライブを後押しする。

ラップと歌を行き来して、代名詞とも言える内省的なリリックが印象的な楽曲群を、優しくも強い瞳で噛み締めるように歌うKvi Baba。ぐっと心を掴まれたフロアは漏れなく手が上がる。ライトアップされたポートタワーも呼応するように光り輝いていた。

ラストスパートは客演の嵐。「Too Bad Day But…」と「Luv Myself」ではAKLOが登場。さらに「HANEDA」では、URBAN STAGEでライブを行ったG-k.i.dとELIONEがジョイン。G-k.i.dは「Friends, Family & God」も歌い上げ、フロアは大喜びで手を上げる。Kvi Babaは幸せそうに「皆のこと大大大好きモード入ってる」と笑い、ラストチューン「City Love City Love City Love」へ。

神戸という街で、日常と仲間と家族と愛を歌う。見事なグルーヴで包み込んだ後は「あっち見てもらってもいい?」とKvi Babaが指差した方向から花火が上がる! 初回からずっと愛を歌い、愛を交換してきたKvi Babaらしいピースフルなライブで、『KOBE MELLOW CRUISE 2025』DAY1は幕を閉じた。

取材・文=久保田瑛理 写真=『KOBE MELLOW CRUISE』提供

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『KOBE MELLOW CRUISE 2025』PHOTO REPORT

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