作り手の想いを届ける『紙博』は「日常生活に彩りを与えてくれるようなアイテムが勢揃い」、担当者の「推し文具」への熱い想いも

インタビュー
イベント/レジャー
2025.7.29
左から紙博事務局・川上愛絵さん、吉澤凜花さん 撮影=福岡諒祠

左から紙博事務局・川上愛絵さん、吉澤凜花さん 撮影=福岡諒祠

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紙とイラストの祭典『紙博』が2025年8月9日(土)から11日(月・祝)まで京都市勧業館みやこめっせ 第3展示場にて、9月19日(金)~21日(日)に東京都立産業貿易センター台東館 4階南側〜7階展示室にて開催される。紙にまつわるさまざまなアイテムが揃うだけでなく、紙の魅力を体感できる魅力的なコンテンツも充実したイベントだ。さらに京都会場は布にまつわる祭典『布博』との同時開催となり、『紙博 & 布博 in 京都』と題して大きな注目を集めている。主催の手紙社で『紙博』の企画・運営を担当する川上愛絵さんと吉澤凜花さんに開催の経緯や見どころ、そして「推し文具」への熱い想いについて話を聞いた。

取材場所のTEGAMISHA BOOKSTOREには紙雑貨がずらり

取材場所のTEGAMISHA BOOKSTOREには紙雑貨がずらり

『紙博』誕生のきっかけは?

ーーまず、『紙博』はどのようなきっかけで開催されるようになったのでしょうか?

川上:2012年に『東京蚤の市』、2013年に『布博』を立ち上げて以来、天候に左右されない屋内での大規模イベントの開催を模索していました。そのような中で、2017年4月に、屋外ではそもそもベストコンディションであることが難しい一方で、手紙社を構成する重要な要素であった「紙」をテーマにしたイベントとして『紙博』を開催することになりました。開催にあたっては、高知をはじめさまざまな地域で開催していた『紙ものまつり』や、レトロ印刷JAMとコラボした『印刷工場ピクニック』といった紙にまつわる作り手を集めたイベントの実績があったこと、そして手紙社が雑貨店を始めるにあたって最初の主力商品となったのが、紙もの雑貨だったことが大きく影響しています。オリジナル雑貨を制作する際に、イラストレーターとコラボした紙もの雑貨が主軸となっていることも開催の後押しとなりました。

吉澤:現在までに東京、京都、福岡、神戸、大阪、岡山、仙台など日本全国で開催し、多くの紙もの雑貨ファンの皆様に支持いただけるようになりました。そして2019年11月には、39組の作り手とともに『紙博 in 台北』を開催し、4,500名以上のお客様にご来場いただくことができました。また、2024年から一部の『紙博』会場では、開催日程を3日間に拡大することで平日のご来場も可能となりました。年々出展者数も増えており、京都の次に開催する9月の『紙博 in 東京 vol.11』では国内外から総勢150組以上の作り手が集う予定です。

普段から作家との関わりを大切に

普段から作家との関わりを大切に

ーー『紙博』とほかのイベントの違いを教えてください。

川上:『紙博』は公募制ではなく、手紙社が選りすぐった珠玉の作り手にご出展いただいています。それぞれのブースに作り手本人が立つのもポイント。作品づくりに込めた思いや、制作の裏側を聴きながらお買いものをすれば、作品・商品にもっと愛着が湧くはずです。

吉澤:作り手にお手紙を届けられる「ラブレターポスト」や、作り手とコラボしたオリジナルグッズがもらえる「スタンプラリー」など、入場すれば誰もが参加できるお楽しみコンテンツにも力を入れています!

ーー実際、どのような方が来場されているのでしょうか?

吉澤:『布博』は世代問わずファッションや手芸が好きな方が多く来場されますが、『紙博』は若い女性の方が多い傾向にあります。手帳を使い始めて、アレンジを楽しんでいるうちに気がついたら紙もの雑貨の魅力に目覚めていた……という方もたくさんいらっしゃいますね。

作家の個性が光るパンフレットやオフィシャルグッズに注目!

メインビジュアル、右上が「エンドレス肉球スタンプ猫」

メインビジュアル、右上が「エンドレス肉球スタンプ猫」

ーー今回の『紙博』の見どころや注目ポイントについて教えてください。

川上:イラストレーターのトビマツショウイチロウさんにメインビジュアルを描いていただいたので、ぜひパンフレットやオフィシャルグッズに注目してみてください。パンフレットに登場しているかわいい動物にはそれぞれ名前がついているんですよ。個人的には「エンドレス肉球スタンプ猫」がお気に入りです。

ーーかわいすぎるネーミングですね! 思わず声に出して読んでみたくなります。オフィシャルグッズはどのようなものが販売される予定でしょうか。

吉澤:現在ちょうど制作中なのですが、トビマツさんから素敵なアイデアをたくさんいただいています。これまではマスキングテープや切手といった定番のグッズを多く扱っていましたが、今回はユニークな候補もいただているので例年とは違うグッズが登場するかもしれません。私たちもデザインの案を見るたびにわくわくしながら制作を進めているので、ぜひ心待ちにしていてください!

川上:今回の『紙博』は「"かわいい"があるだけで、生きていける。」というコンセプトを掲げているのですが、まさにその通り! と思っておりまして。オフィシャルグッズをはじめ、みなさんの日常生活に彩りを与えてくれるようなアイテムが勢揃いしています。

『紙博 & 布博 in 京都』の特典(一番左)と9月開催の『紙博 in 東京 vol.11』特典

『紙博 & 布博 in 京都』の特典(一番左)と9月開催の『紙博 in 東京 vol.11』特典

ーーオフィシャルグッズの完成が楽しみですね。ちなみに、今回の『紙博』や『布博』でしかゲットできないアイテムもあるのでしょうか?

川上:『紙博』では毎回、前売券をご購入いただいた方に特典をお渡ししています。今回はトビマツさんが描いた動物のスタンプと、同時開催の『布博』のオリジナルポストカードをプレゼント予定です。京都会場でお渡しするスタンプには「おすそわけ」という言葉も描かれているのですが、こちらは『紙博』のSNSで事前募集して選ばれた言葉なんです。『紙博』には「おすそわけ」が好きな方がたくさんいらっしゃるので、さまざまなシーンで活用いただけると思います。

吉澤:今回は同時開催のため前売券をお持ちであれば『紙博』、『布博』両方のアイテムがもらえるのでかなりお得です! 来場予定の方はぜひ前売券の情報もチェックしてみてください。

『紙博』は出展者や来場者の方と一緒に作り上げていくイベント

川上愛絵さん

川上愛絵さん

ーー毎回、『紙博』ではたくさんの魅力あふれる紙もの雑貨が集まっていますが、アイテムのセレクトはどのように行われているのしょうか?

川上:出展者自身にアイテムの選定をお願いしています。はんこやマスキングテープといった紙もの雑貨のほか、トートバッグなどの作品の世界観を楽しめるグッズも販売されています。『紙博』限定のアイテムを用意してくださる方も多いですよ。

吉澤:ディスプレイの方法に関してもルールを定めていないので、存分に個性を生かしていただければと考えています。各ブースのサイズもこちらから指定はせず、希望の配置を伺ってから会場のレイアウトを組むようにしています。

ーー作家さんに出展を依頼されるときは、どのような項目を重視しているのでしょうか?

川上:毎回、私たちで十分に精査を重ねてから作家さんにお声がけをしています。作品を見て「この方だ!」とわかるくらいのしっかりした個性を持っている方にお願いすることが多いですね。もちろんトレンドも大切ですが、一緒に楽しみながら『紙博』のイベントをつくり上げてくださる方、という点を重視しています。

川上さんが購入した台湾(左)、韓国(右)、マレーシア(下)のアイテム

川上さんが購入した台湾(左)、韓国(右)、マレーシア(下)のアイテム

ーー今回は海外から出展される方もいらっしゃいますが、海外の紙もの雑貨と出合えるのも『紙博』の大きな魅力ですよね。

川上:そうですね。『紙博 & 布博 in 京都』もマレーシア、韓国、そして台湾から出展予定です。

紙もの雑貨との出合いを楽しむコンテンツも充実

吉澤凜花さん

吉澤凜花さん

ーーところで、『紙博』では紙もの雑貨の販売だけでなくお楽しみコンテンツも毎回充実していますよね。

川上:はい、いつも私たち自身もワクワクしながら企画しています。「はんこ押し放題スポット」と「紙ものお裾分けっこ」は『紙博』の2大お楽しみコンテンツとしていつもたくさんの方にご参加いただいています。

吉澤:「はんこ押し放題」は700個以上のハンコをご自身の手帳やメモ帳に押せるのですが、海外の方にもご参加いただいており、イベント後にSNSで紹介してくださる方も多いんですよ。はんこは工夫しだいでいろいろな使い方ができますし、長く愛用できるのも魅力に感じていただけているようです。

過去の「はんこ押し放題スポット」の様子

過去の「はんこ押し放題スポット」の様子

ーー「紙ものお裾分けっこ」もほかにはないユニークなコンテンツですよね。どのような内容なのでしょうか?

川上:お手持ちの包装紙やシール、メモ帳などを自由にラッピングしてメッセージを添えていただきます。それを会場内に設置された本棚に置いていただき、ほかの方が持参したものと交換する……という内容になってます。物々交換に近いイメージですね。メッセージのカードをちらりと拝見すると、みなさんの紙もの雑貨への想いを感じられていつも感動しています。「誰かにプレゼントを準備する」という段階から楽しんでいただいているようでこちらも嬉しいです。

吉澤:新品でなくてもOKというルールにしているので、使いきれなかったかわいい紙もの雑貨をまとめてくださる方が多いです。『布博』でも「お裾分けっこ」を実施しているのですが、はぎれやリボン、ボタン、糸といった手芸の素材をギフトのようにきれいにラッピングして持参いただいています。「お裾分けしたい!」という気持ちが強い方も多く、お裾分けをたくさんご用意くださる方も。これだけでも来場者の方の布や手芸への愛を感じられて嬉しい気分になれます。

ーー『紙博』、『布博』ともにお裾分けっこを通して、さまざまなアイテムに出合えそうですね。ほかにおすすめのコンテンツがあれば教えてください。

川上:今回は「紙博マスターはあなた!」というコンテンツもイチオシです。『紙博』は事前に予習をしてからお越しいただく方が多く、お買い物リストやオリジナルの会場マップを作成される方もいらっしゃいます。そこで感謝の気持ちを込めて、先着でしおりをプレゼントさせていただきます! 予習してきたよ、というのがわかれば何をご提示いただいても大丈夫なので、ぜひ会場で気軽にお声がけください。

吉澤:『布博』では、はじめての試みとして「京都布博コレクション」と題したランウェイを企画しています。スタッフが出展者の方にコーディネートしていただいたファッションで会場を歩くのですが、着用している布をさまざまな角度から眺められるようにできればと考えています。ほかにも『布博』ならではの企画を準備しているので楽しみにしていてください!

ーー最後に、現在お2人が心惹かれている文具や紙もの雑貨を教えてください。

吉澤:紙もの雑貨全般が好きでいろいろ集めているのですが、最近ガラスペンの世界にどっぷりはまっています。贈り物に添える手紙を書くときなどに主に使用していますが、インクもセットになっているのでさまざまな色を試すことができるんです。今後はインクの色を自由に組み合わせてなぞり絵に挑戦したり、ご当地インクなどもチェックしてみたいです。

吉澤さんお気に入りのガラスペンとインクのセット

吉澤さんお気に入りのガラスペンとインクのセット

ーーご当地インク! どんな商品なんでしょうか?

吉澤:地域の風景や、名産品をイメージしてつくられたインクがあるんです! インクの色でその地域が表現されているのが特徴で、旅行のおみやげにもおすすめですよ。インクの世界はとにかく奥が深くて……これからさらに沼っていきそうな予感がしています。

川上さんのはんこコレクション

川上さんのはんこコレクション

川上:私も日々、さまざまな種類の紙もの雑貨をリサーチしているのですが、町の文房具店や出展者のブースに行くたびにはんこの売り場は欠かさずチェックしています。パッケージに力を入れているものも多く、使わないときにもインテリアとして飾っておきたくなっちゃいます。

吉澤、一同:え〜! かわいい!(大絶賛)

川上:1つひとつ手作業で制作されているものも多いんです。はんこに限らず、作り手の気持ちが伝わってくるような作品にはいつも心が揺さぶられます。『紙博』や『布博』でもただ作品を販売するだけでなく、出展者の方が作品とともに想いを届ける……という部分をとても大切にしています。会場ではぜひ作家さんとの交流も楽しみながらお気に入りの紙もの雑貨を探してみてくださいね。

取材・文=丹下紋香 撮影=福岡諒祠 

イベント情報

『紙博 & 布博 in 京都』
日程:2025年8月9日(土)・10日(日)・11日(月・祝)
会場:京都市勧業館みやこめっせ 第3展示場(京都市左京区岡崎成勝寺町9-1)
時間:10:00~17:00 ※8月11日(月・祝)のみ10:00~16:00
出展者数:150組以上
 
入場料:前売券(特典はんこ付き)1,300円/当日券1,500円
※小学生以下無料
 
『紙博 in 東京 vol.11』
日程:2025年9月19日(金)~21日(日)
会場:東京都立産業貿易センター台東館 4階南側〜7階展示室
時間:9:00~17:00 ※9月21日(日)のみ9:00~16:00
出展者数:150組以上
 
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