絵本の世界に飛び込む、驚きのアート体験!『レオ・レオーニの絵本づくり展』レポート

レポート
アート
2025.7.25
『レオ・レオーニの絵本づくり展』展示風景、ヒカリエホール、2025年

『レオ・レオーニの絵本づくり展』展示風景、ヒカリエホール、2025年

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あの名作『スイミー』を生んだ巨匠の絵本ワールドが渋谷に。レオ・レオーニの絵本づくりの裏側を紹介する展覧会『レオ・レオーニの絵本づくり展』が、2025年8月27日(水)までヒカリエホール(東京・渋谷)にて開催中だ。本会場限定の絵本ワールドを体感できるコンテンツは必見。その魅力をお届けしよう。

ちぎって切って貼りつけて、さまざまな絵本づくりの技法

レオ・レオーニの作品には、小学校の国語の教科書で触れたという人や、子供の頃に親しんだという人も多いのではないだろうか。本展の冒頭ではレオーニの絵本の原画がずらりと並び、制作するうえでこだわったさまざまな技法を展覧する。愛らしくカラフルな絵の数々には心が弾み、子供向けのポップな吹き出しも楽しい。

『レオ・レオーニの絵本づくり展』展示風景、ヒカリエホール、2025年

『レオ・レオーニの絵本づくり展』展示風景、ヒカリエホール、2025年

思わず目が引き付けられたのは、レオーニの絵本によく登場する「ねずみ」の素材だ。柔らかな毛の質感が、色紙を手でちぎることで生まれているのはここで初めて知った。絵本がどのように作られているかに目を向ける機会は意外とないもので、新しい視点をくれるのが面白い。

『レオ・レオーニの絵本づくり展』展示風景、ヒカリエホール、2025年

『レオ・レオーニの絵本づくり展』展示風景、ヒカリエホール、2025年

また、フワフワの毛がある本物のねずみに対し、機械仕掛けのぜんまいねずみは色紙をハサミで切って、ツルンとした人工的なフォルムに仕上げられている。

レオ・レオーニ《アレクサンダとぜんまいねずみ》原画 1969年 Works by Leo Lionni, On Loan By The Lionni Family

レオ・レオーニ《アレクサンダとぜんまいねずみ》原画 1969年 Works by Leo Lionni, On Loan By The Lionni Family

レオーニの絵本が一堂に会する

第2章ではレオーニの絵本作品が出版年順に並び、彼の絵本の仕事の全貌を見ることができる。「これ、読んだことある!」と思わず懐かしい気持ちになる。家や図書館の本棚で手に取って、夢中で読んだあの頃の記憶が蘇るようだ。

『レオ・レオーニの絵本づくり展』展示風景、ヒカリエホール、2025年

『レオ・レオーニの絵本づくり展』展示風景、ヒカリエホール、2025年

ごく個人的な思い出だが、『ペツェッティーノ』はそのひとつ。耳慣れないカタカナのタイトルと、主人公がオレンジ色の四角いかけらという風変わりな物語が印象に残っている。「だれかの部分品のように思える自分自身も、小さな部分を組み合わせてできあがっている」というメッセージを大人になって読むと、なかなかに深い。レオーニの絵本は親しみやすいストーリーの中で、人生における大切なことや、哲学的な問いを表現しているのだ。

『レオ・レオーニの絵本づくり展』展示風景、ヒカリエホール、2025年

『レオ・レオーニの絵本づくり展』展示風景、ヒカリエホール、2025年

また、展覧会ならではの見せ方で興味を惹かれたのは、原画で絵本を読むコーナーだ。『6わのからす』は、農夫とからすが利害の不一致から諍いを起こすものの、話し合いで互いに歩み寄る筋立てとなっている。現代でもこのような二者対立は社会の中で頻繁に生まれているが、その度に相手を威嚇して恐れさせるのではなく、言葉で解決を試みることの大切さを説いてくれる。

『レオ・レオーニの絵本づくり展』展示風景、ヒカリエホール、2025年

『レオ・レオーニの絵本づくり展』展示風景、ヒカリエホール、2025年

これが、レオーニの絵本ワールドだ!

お待ちかねの第3章は、まるで広大なプレイグラウンドのような空間が気分を高揚させる。サウンドデザインにもこだわった世界で、絵本の中に飛び込んだ感覚を味わえる。よく見ると、色鮮やかなパネルの裏側にはレオーニの絵本から抜粋したメッセージも書かれているので、遊びながら注目してみたい。

『レオ・レオーニの絵本づくり展』展示風景、ヒカリエホール、2025年

『レオ・レオーニの絵本づくり展』展示風景、ヒカリエホール、2025年

『レオ・レオーニの絵本づくり展』展示風景、ヒカリエホール、2025年

『レオ・レオーニの絵本づくり展』展示風景、ヒカリエホール、2025年

『レオ・レオーニの絵本づくり展』展示風景、ヒカリエホール、2025年

『レオ・レオーニの絵本づくり展』展示風景、ヒカリエホール、2025年

題して、レオ・レオーニの名前とテラリウムをかけ合わせた「レオレオリウム!」。子供の頃から石を拾ったり、植物を採集したりと、自然物を愛していたレオーニへのリスペクトから生まれた造語だ。

『レオ・レオーニの絵本づくり展』展示風景、ヒカリエホール、2025年

『レオ・レオーニの絵本づくり展』展示風景、ヒカリエホール、2025年

『レオ・レオーニの絵本づくり展』展示風景、ヒカリエホール、2025年

『レオ・レオーニの絵本づくり展』展示風景、ヒカリエホール、2025年

第3章のコンテンツプランニング・制作を手がけたアートユニットplaplaxの近森基氏は、「レオーニは、『自分が絵本の中でやっていたことは、子供の頃のテラリウム作りとほぼ同じことだった』という言葉を残しています。そこから発想し、レオーニの世界の作り方と同じようなことができないか、この会場を使って考えてみました」と紹介した。

アートユニットplaplaxの近森基氏(右)

アートユニットplaplaxの近森基氏(右)

中央で円形スクリーンに投射されている映像とジオラマ作品は、近森氏曰く「レオーニの頭の中にある世界を一つひとつ取り出してみた、というのがコンセプト」とのことだ。

『レオ・レオーニの絵本づくり展』展示風景、ヒカリエホール、2025年

『レオ・レオーニの絵本づくり展』展示風景、ヒカリエホール、2025年

ここには、絵本づくりの技法を実際に手を動かして体験できるコーナーもある。好きな形の色紙を選び、クレヨンで色を塗るときに、モノの模様を擦りとる技法「フロッタージュ」ができる仕組みだ。テーブルに用意された6種類ほどの素材は、ゴツゴツとした岩肌や、均一な網目模様など多種多様。完成した作品を壁に貼れば、自分自身もレオーニの絵本ワールドの一員になれる。

第3章「レオレオリウム!」では、「フロッタージュ」の体験ができる

第3章「レオレオリウム!」では、「フロッタージュ」の体験ができる

このほか、フォトスポットや展覧会グッズなどのお楽しみも満載で、夏の思い出づくりにはぴったりだ。レオーニの絵本の世界を体感しつつ、作品に込められた優しさや愛のあるメッセージを今一度考えてみたい。『レオ・レオーニの絵本づくり展』は8月27日(水)まで、ヒカリエホール(渋谷ヒカリエ9F)にて開催中。


文・写真=さつま瑠璃

イベント情報

レオ・レオーニの絵本づくり展
◆会期:2025年7月5日[土]~8月27日[水]
◆開館時間:午前10時~午後7時
※最終入場は午後6時30分まで
◆会場:ヒカリエホール(渋谷ヒカリエ9F)
◆主催:Bunkamura、朝日新聞社
◆企画協力:Blueandyellow, LLC、コスモマーチャンダイズィング
◆協力:好学社、あすなろ書房、至光社、印傳屋上原勇七
◆後援:J-WAVE
◆お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
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