EGO-WRAPPIN'、30周年を前に今年も変わらず野音を踊らせる
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EGO-WRAPPIN'『Dance, Dance, Dance』2025.07.12(sat) 日比谷公園大音楽堂
EGO-WRAPPIN'の野外ワンマンライブ『Dance, Dance, Dance』が7月から8月にかけて、東京と大阪で開催された。“夏の野外で踊れる”をテーマに長年にわたり実施されてきたお馴染みの本公演だが、今年の東京公演はまもなく建て替え工事に突入する日比谷公園大音楽堂で7月12日に、大阪公演は大阪城音楽堂で8月2日にそれぞれ実施。本項では東京公演について記す。
連日の猛暑が前日から一時的に和らぎ、東京公演当日も心地よい風が注ぎ込むという比較的過ごしやすい環境下で実施された東京公演。定刻が過ぎた頃にSly & The Family Stoneの名曲「Dance To The Music」が爆音で流れ始めると、観客は総立ちとなってクラップを始める。すると、ステージには伊藤大地(Dr)、真船勝博(Ba)、TUCKER(Key)、icchie(Tp, Trb)、武嶋聡(Sax, Flute)といったお馴染みのサポートメンバーとともに中納良恵(Vo)と森雅樹(Gt)が登場。「天気も味方してくれました」「今年でこの景色も最後」と中納や森がリラックスモードのトークを繰り広げてから、ライブはJonathan Richman & The Modern Loversのインストナンバー「Egyptian Reggae」のカバーにて緩やかにスタートする。鍵盤ハーモニカやバンジョーなどの音色が独特の空気を創り上げる中、美空ひばり「リンゴ追分」のメロディを用いたサックスソロがフィーチャーされると、客席からは大歓声が湧き起こる。
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アルコール片手にゆらゆらと気持ち良さげに踊るオーディエンスを前に、バンドはスイング感の強いアレンジが施された「PARANOIA」を立て続けに披露。また、中納の「久しぶりにやります」という発言に続いて、シングル『くちばしにチェリー』(2002年)のカップリング曲「クイック・マダム」が始まると、客席からは歓喜の声が響き渡る。さらに、グルーヴィーなレゲエチューン「レモン」が繰り出されると、会場は唯一無二のダンスホールへと一変した。
中納良恵(Vo)
中納は「2008年からここでやってます」と日比谷公園大音楽堂での思い出を振り返りつつ、そのまま「ここからもゆっくりいきます」と告げて「love scene」にて少しずつギアを上げていく。以降も中納の軽やかなステップが印象的な「裸足の果実」、曲中にオーディエンスとのコール&レスポンスもフィーチャーした「a love song」、名曲「サニーサイドメロディー」にロックステディを施した「Sunny Side Steady」と新旧の人気曲を連発。会場の一体感は曲を重ねるにつれ、次第に高まっていった。また、森が「酒タイム、トイレタイム大丈夫ですか?」と呼びかけると、中納と森は予定になかった「満ち汐のロマンス」を急遽演奏し始める。観客はこのサプライズを前に、ステージを食い入るように見つめながら、切なくも繊細な2人のパフォーマンスに聴き入っている様子だった。
森雅樹(Gt)
「予定では今頃、陽が落ちているはずだったんだけど、全然明るいし(笑)」という言葉に続いて披露されたのは、『Dance, Dance, Dance』のために制作された新曲「Treasures High」。曲が進むにつれてBPMが少しずつ上がっていき、それに合わせて演奏の熱量や照明演出の激しさも増していくと、オーディエンスの盛り上がりもさらに加速する。ダウナーなビートが印象的な「Summer Madness」、グラウンドビートを取り入れたスリリングな新曲「AQUA ROBE」と、曲を重ねるごとにバンドが放つ熱気も次第と高まり、その盛り上がりは「マンホールシンドローム」「Calling me」の連発でクライマックスへと近づいていった。
中納良恵(Vo)
ラストスパートと言わんばかりに「Mother Ship」でバンドの勢いが増すと、「サイコアナルシス」「くちばしにチェリー」といった代表曲の連発でオーディエンスの熱気も急上昇。会場の一体感が最高潮に達したところで、さらにダメ押しの「GO ACTION」が繰り出され、この日一番の盛り上がりとともにライブ本編は幕を下ろした。
EGO-WRAPPIN'
再びステージに戻ったEGO-WRAPPIN'とサポートメンバーの面々は、艶やかなブルースナンバー「色彩のブルース」にてアンコールを開始。完全に陽が落ちた、自然と共存する現在の日比谷公園大音楽堂でこの名曲を耳にするのがこれで最後かと思うと、なんとも言えない切なさが胸に押し寄せてくる。そんな感慨深げな我々オーディエンスを前に、中納は「EGO-WRAPPIN'は来年で30周年。今年は味園ユニバースや神奈川県民ホール、日比谷野音と取り壊しが続いているけど、ここから明るい未来を作っていきましょう」と前向きなメッセージを寄せ、今年の『Dance, Dance, Dance』を締めくくる1曲「WHOLE WORLD HAPPY」をプレイ。中納が弾くピアノとともに、バンドは大きなノリを作り上げていくと、そこにオーディエンスのシンガロングが加わり、会場はピースフルな空気に包まれていく……そんな「これぞ大団円」と呼ぶに相応しい光景が展開されたところで、2025年の『Dance, Dance, Dance』東京公演はフィナーレを迎えた。
取材・文=西廣智一 撮影=仁礼博
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