Empty old City、水槽、DAZBEE(ダズビー)が出演 出自や国籍を越え、“ここでしか見られないコラボ”も届けた『FAVOY TOKYO -電鈴合図-』DAY2をレポート
水槽、DAZBEE
eplus presents FAVOY TOKYO -電鈴合図-
2025.8.8 Zepp Shinjuku(TOKYO)
細分化されたネット音楽を網羅するために立ち上がったプロジェクト・『FAVOY』。そのライブイベント第1弾となる『eplus presents FAVOY TOKYO -電鈴合図-』が、8月7日(木)・8日(金)にZepp Shinjuku(TOKYO)にて開催された。このレポートでは、Empty old City、水槽、DAZBEE(ダズビー)の3組が出演した8日公演の模様をお届けする。
1組目に登場したのは、コンポーザー&プロデューサーのNeuronと、ボーカリストのkahocaによるEmpty old Cityだ。SE「BitV」が流れる中、2人はサポートメンバーと共に登場。電子の海を泳ぐような神秘的な音が鳴り響き、強烈な重低音がZepp Shinjukuを震わせる。その瞬間、オーディエンスは一気にEmpty old Cityの世界へ引きずり込まれていった。そのまま「アニマリズムと25人の子どもたち」へ。儚さを帯びたkahocaの歌声と躍動的なビートが絡み合い、じわじわと高揚感があがっていく。続く「トワイライト・セレナーデ」も、サウンドの質感こそクールなものの、熱を帯びたビートがフロアを揺らしていた。Neuronが柔らかなタッチで奏でた鍵盤の音色から幕を開けた「Astronomy」では、kahocaがときに穏やかに、ときに力強くメロディを紡ぐ。幻想的なミディアムナンバーながらも、ビートはやはり強烈。曲の繋ぎも含め、スマホのスピーカーやイヤホンで音源を聴くだけでは味わえない、ライブならではの音楽空間を作り上げていった。「この日を本当に心待ちにしていました。水槽さん、DAZBEEさんと一緒に、思う存分音楽を楽しんでいきましょう」とkahocaがフロアに語りかけると、「Daizy Crown」の美しいメロディを響き渡らせる。
Empty old City
Empty old City
ここからライブは徐々にピークを目指して進んでいく。和楽器とシャーマニックなコーラスがフィーチャーされた「Death Designer」では、kahocaがこぶしを効かせた歌い回しで曲の情感を高めれば、Neuronの流麗かつ情熱的なピアノソロに歓声が上がる。そんなフロアの熱をさらに高めるように投下されたのが、水槽を迎えたユニット初のコラボ曲「Offline Saga」だった。『FAVOY TOKYO』では出演者によるコラボパフォーマンスが行なわれることが発表されており、Empty old Cityは同曲をライブで初披露することをアナウンスしていたこともあって、イントロが鳴った瞬間に大歓声。ダークなトラップビートに乗って、kahocaがクールなラップで魅せると、水槽はクラップを煽りながら儚さを帯びた歌声を響かせ、ドロップでは2人が手を挙げてフロアのハンズアップを求める。Neuronもサンプラーを叩き、楽曲の空気感をよりディープなものにさせていた。
Empty old City、水槽
水槽がステージを後にすると、「ノスタグラム」の途中からはリズム隊が合流。有機的なグルーヴでフロアを席巻し、そのまま「Buffer」に繋げる。凄まじい躍動感を放つバンドメンバーの演奏に、オーディエンスが打ち鳴らすクラップのボリュームが増していくと、それらと呼応するようにkahocaの歌声にもより熱がこもっていき、ラストナンバーの「Moonian」でピークに到達。退廃的でメランコリックな空気が漂いながらも、凄まじい高揚感が場内を包み込んでいた。
Empty old City
次に登場したのは水槽。シンガー/トラックメイカー/DJという顔を持つ水槽は、自らラップトップを操作してライブを進行していく。切れ味たっぷりのラップを畳み掛ける「イントロは終わり」で幕を開けると、「東京楽しんでいきましょう!」と「SINKER」のショートバージョンを挟んで弾みをつけて、最新曲の「カンフルショット」へ。ステージを歩き回りながらビートに身を委ねて歌う彼女の声に、フロアから大量の手が上がる。また、アッパーにフロアを上げていくだけでなく、「普段クラブではやらないゆっくりした曲もやりたい」と、「ランタノイド」を披露。儚さを帯びた内省的な言葉を紡ぎながらも、サウンド的には低音がしっかりと効いていて、フロアを心地よく揺らしていく。続けて披露されたのは、ライブでやるのは珍しいという「はやく夜へ」。この曲をチョイスした理由は「インタビューでDAZBEEさんが“この曲が好きです”って話していたから」。メランコリックな空気が立ち込める中、消え入りそうなほど繊細な歌声でメロディを紡ぐと、続く「空室」では感傷を爆発させるように歌を届けていた。
水槽
水槽
アーティストコラボは、Empty old Cityのkahocaと「SWITCH」を披露。歌いながらステージインしたkahocaと、クラップして飛び跳ねる水槽。先ほどの「Offline Saga」とは異なった、クールかつポップなアップチューンでフロアを揺らし、サビでは美麗なハーモニーを響かせていた。曲を終えた後、水槽はkahocaと肩を組み、感謝を告げて見送ると、次の曲に入る前に「今日はこの曲のコラボ相手がいないので、みなさん手伝ってもらっていいですか?」とフロアに語りかけ、「報酬系」へ。サビでフロアにマイクを向け、声を求める水槽。ライティングで表情までは見えなかったが、「助かります!」と叫んだ声の様子から、おそらく笑顔であることが伝わってきた。高まる興奮を「MONOCHROME」の性急なビートがさらに引きずり上げていく。
kahoca(Empty old City)、水槽
曲を終えると「動画撮影、SNS投稿OKです」とアナウンス。水槽は、同会場でクラブとして運営されているZEROTOKYOには出演経験があるものの、ライブホールであるZepp Shinjukuに立つのは今日が初めてということもあり「今から3分間、このライブハウスをクラブにしたいんですけどいいですか?」と、完全新曲の「Dive in Music」を披露。アッパーなサウンドと強烈なドロップに刺激されたオーディエンスが飛び跳ね、フロアが大きく波打っていた。ラストナンバーの「夜天邂逅」までしっかりとオーディエンスを揺らし続けていた水槽。楽曲のチョイスや完全新曲のサプライズなど、とにかくこの空間を楽しみたいし、楽しませたいという思いがひしひしと伝わってくるステージだった(ちなみに、各出演者のオープニング映像や、SNSでのイベント告知映像に使われていたBGMは水槽が作曲を担当。そのことも記しておきたい)。
水槽
トリを務めたのは、韓国在住のボーカリスト/歌い手であるDAZBEE。サポートバンドがパワフルかつダイナミックな演奏を繰り広げると、DAZEBEEがステージに登場。1曲目は「フェアリィ」。幻想的なサウンドとエアリーな歌声でフロアを一気に惹きつけると、MCでは丁寧な日本語で客席に語りかけていく。「すごく緊張していますが頑張ります!」と意気込みを話し、「アディオス」へ。DAZBEEはリズムに身体を揺らしながら、耳に残るメロディをリズミカルに紡いでいく。この日披露された楽曲はどれもバンドアレンジが施されていたのだが、バックバンドによる大音量の演奏に埋もれることなく、フロアに向かってときにまっすぐに、ときに包み込むように響き渡るウィスパーボイスが、なんとも心地よかった。
DAZBEE
DAZBEE
アーティストコラボは、水槽を迎えて「シュガーコート」を披露。ハンドマイクに切り替えたDAZBEEは、オーディエンスのクラップを求めながらアンニュイな声で歌い上げると、途中から水槽がステージイン。この日が初対面/初共演だったのだが、2人のハーモニーの相性がとにかく抜群! 心地よいまどろみがフロアを包み込んでいく。アウトロではサポートバンドの強烈すぎるソロ回しも飛び出し、大興奮のコラボレーションとなった。曲を終えて談笑する2人。「シュガーコート」は自分の好きな曲でもあるという水槽は「リハーサルで(DAZBEEの)歌を聴いたときに、こんな天使みたいな声が本当に出ていることにびっくりした」とコメント。DAZBEEは「コラボステージに憧れていたんですけど、大好きな水槽さんと歌えて本当に嬉しかったです」と話していたが、これを機に2人の距離が縮まり、またどこかであの美麗なハーモニーを聴きたいと思ったオーディエンスは、かなり多かったと思われる。
DAZBEE
そこから「ビターロス」「シンパシー」と、ダンサブルな楽曲を立て続けに披露してフロアを揺らしていくDAZBEE。「バンドメンバーさんのおかげで今日のステージが素敵になったと思います」とMCで話していたが、なかでも強く印象に残ったのが「オセロ」だ。リフレインする8bit音はそのままに、ヘヴィでハードかつグルーヴィーな形にライブアレンジが施されていて、その演奏を受けたDAZBEEの歌声も熱を増していき、曲を終えると一際大きな歓声が上がっていた。そこから続けて届けられた「愛じゃない」の引き締まったグルーヴも極上。DAZBEEはラップを交えながら物憂げなトーンでメロディを届けていた。ちなみに、オリジナル曲だけでライブをするのは今日が初めてだったそうで、「みなさんのおかげで大切な記憶になりました」と感謝を告げたDAZBEEは、近いうちに日本でワンマンすることを予定していると明かすと、フロアからは歓喜の声が上がっていた。ラストナンバーは「イビツナコトバ」。別れを惜しむようにフロアの端々まで見渡しながら、甘酸っぱさが溢れるポップソングを歌い上げてステージを締め括った。
DAZBEE
初開催ながら両日とも大盛況で幕を下ろした『FAVOY TOKYO』。各アーティストが持ち味を存分に発揮したステージを繰り広げたが、初日と2日目ではカラーがまったく異なっていたのが印象的だった。特に2日目は、出自や国籍を越えたラインナップでありながらも、その親和性は抜群。サブスクのレコメンド機能で「このアーティストが好きな人はこちらもおすすめ」と表示されたら、一発で気に入るような組み合わせだった。それは、“細分化されたネット音楽を網羅する”という『FAVOY』のテーマに真正面から取り組んだ成果であり、良質なイベントであることの確かな証でもあるだろう。
イベントの最後には、次回の『FAVOY TOKYO』が2026年3月25日(水)・26日(木)に開催されることが発表された。初開催にして今後の『FAVOY』の動向に大きな期待を抱かずにはいられない2日間となった。
文=山口哲生
撮影=Kota Maruyama
セットリスト
2025.8.8 Zepp Shinjuku(TOKYO)
1. BitV
2. アニマリズムと25人の子どもたち
3. トワイライト・セレナーデ
4. Astronomy
5. Daisy Crown(ENG)
6. Death Designer
7. Offline Saga(feat. 水槽)
8. ノスタグラム
9. Buffer
10. Moonian
1. SINKER
2. イントロは終わり
3. カンフルショット
4. ランタノイド
5. はやく夜へ
6. 空室
7. SWITCH(feat. kahoca from Empty old City)
8. 報酬系
9. MONOCHROME
10. Dive in Music
11. 夜天邂逅
1. フェアリィ
2. アディオス
3. シュガーコート(feat. 水槽)
4. ビターロス
5. シンパシー
6. オセロ
7. 愛じゃない
8. イビツナコトバ
Empty old City Information
2025.9月6日(土) RELEASE
『原神』や『崩壊:スターレイル』を手がけるグローバルエンターテインメントブランド・HoYoverseのゲーム『ゼンレスゾーンゼロ』の新キャラクター「シード」のイメージソングをEmpty old Cityが担当。9月6日にデジタルシングルとして緊急リリース決定!
THANK YOU SOLDOUT
『5th Anniversary Live “Quintennial: recall”』
2025/10/19(日)
開演:17:00~(開場 16:00~)
渋谷WOMBLIVE(東京都)