WINO、再結成と23年ぶりバンド編成でのワンマンライブへの想い
WINO
12月28日(日)、東京・恵比寿LIQUIDROOMでバンド編成としては23年ぶりとなるワンマンライブ『afterwords: WINO』を開催するWINOのメンバーがその意気込みを語ってくれた。
WINOは1995年結成の5人組ロックバンド。1998年9月にシングル「Devil's own [mix No.4]」でメジャーデビュー。ストレートに表現した海外のロックからの影響も含め、それ以前のドメスティックな日本のロックとは明らかに一線を画するグルーヴィーなロックサウンドが歓迎され、音楽シーンでめきめきと頭角を現してきたものの、『Useless Music』(1999年2月)、『WINO』(1999年12月)、『DIRGE No.9』(2001年5月)、『EVERLAST』(2002年8月)という4枚のアルバムを残して、2002年11月、新宿LIQUIDROOMライブを最後に解散してしまった。
その後、メンバーたちはそれぞれに活動していたが、2024年、突如、吉村潤(Vo)と久永直行(Gt)によるアコースティックセットでライブ活動を再開し、それが今回のワンマンライブを含む本格的なバンドの再結成に発展した。
そのワンマンライブでは、吉村、久永、外川慎一郎(Gt)のオリジナルメンバー3人にex.ナンバーガールの中尾憲太郎(Ba)と自身のバンド、LIGHTERSやACIDCLANKでも活躍するJuon Tahara(Dr)を迎えたラインナップで最新型のWINOサウンドを披露するという。
なぜ、今このタイミングなのか。なぜ再結成まで20余年かかってしまったのか。ワンマンライブ後は、どんなふうに活動をしていくのか。いろいろ尋ねたいことがある。
1999年の『FUJI ROCK FESTIVAL』でライブを観て、たちまち彼らの虜になってしまった筆者は久しぶりに彼らの音楽を聴き返して、記憶していた以上にかっこよかったことに驚き、ちょっと興奮しながらインタビューに臨んだ。
――12月28日のワンマンライブに向けて、リハーサルを重ねているそうですね。
吉村潤:そうです。今回はベースとドラムも新しいメンバーで。中尾憲太郎君とJuon Tahara君に入ってもらっているんですけど、2人を含めた5人で最初にスタジオで音を出した時は、もうほんとにぞくっとしました。
久永直行:俺は2人を誘う前に2人がそれぞれにやってるバンドのライブを観に行って、話もしてたから、なんとなくわかってましたけど、予想以上によかったんですよ。
外川慎一郎:僕は正直、もうちょっと時間が掛かるのかなと思ってたんですよ。やっぱりリズム隊も違うし、僕らも久しぶりだったので。だけど、実際、音を出してみたら、もうこれ行けるぞって。オリジナルのリズム隊とはまた違ったグルーヴもすごくいい感じで、ライブに向けてもっと良くなっていくと思います。
久永:これならね、絶対いいライブになるぞって今から楽しみですね。
――12月28日のライブがますます楽しみになりました。それにしても、なぜこのタイミングで再結成しようと? どんなきっかけがあったんでしょうか。
吉村:2年前の12月に僕がチョッコウ(久永の愛称)に連絡して、アコースティックでやってみないかって提案したんです。そこからですね、始まったのは。やっぱり何か心にひっかかるものがこの20何年かあって。これまでも何度かやろうって話になって、スタジオに入ったこともあったんですよ。それこそオリジナルメンバーでも定期的にスタジオに入って、練習していた時期なんかもあったんですけど、コロナ禍をきっかけに止まってしまって。そこからの動きとして、まずはアコースティックでってことだったんです。
――定期的にスタジオに入っていたというのは、コロナ禍の前だから。
吉村:2016年とか2017年だったかな。
――その後、いきなりバンドではなく、久永さんとのアコースティックセットから始めたのはなぜだったんですか?
吉村:アコースティックだったらすぐに動き出せるだろうって。“動き出さないと”っていうか、とにかく動き出したいと思って。連絡したらオッケーって言ってくれたので、すぐにライブを決めて、曲順を考えて、ライブをやり始めたら、やっぱりバンドでっていう流れにどんどんなっていったんです。
久永:実はその時、俺はバンドでまたやることは考えてなかったんですよ。アコギでやるならいいかなって感じで。やっているうちに自分もそういう気持ちになっていったっていうのが、俺的にはでかいですね。前に集まっていた時は、正直、そこまでではなかったんですよ。だから、コロナ禍云々は関係なくて、みんなそこまでモチベーションが上がらなかったんじゃないかな。でも、今回はやるべきだと思ったというか、今やらないと、今後もないだろうなって思いました。
――アコースティックでやっている2人を、外川さんはどんなふうに見ていましたか?
外川:ライブに誘ってくれたから観に行ったんですけど、シンプルでいいと思ったし、その時初めて客としてWINOを見て、いい曲だなって思ったし。アコースティックセットはアコースティックセットでよかったですね。ただ、何回も観たいか?っていうと、どうだろうなと思ってたら、何回目かのライブの時、「次はバンドでやるから」みたいなことを吉村がMCで言い出して。聞いてねえぞって(笑)。
■「バンドをやるってやっぱりめんどくさい(笑)」
――ワンマンライブを開催することを発表した時のステートメントの中で、久永さんは「最高で時折り面倒な仲間連中がいる」とおっしゃっていましたが、もちろん、それはWINOのメンバーのことですよね?
久永:メンバーも含めて、ですね。バンドをやるってやっぱりめんどくさいですからね(笑)。
――確かに(笑)。
久永:だって、他人が5人集まるわけだから。考えが違うこともある。ただ、それをまとめるようなことは、俺はしたくなくて。あるがままボロボロになってやるのもいいんじゃないかなと、ちょっと思ってます。俺らもいろいろなことを経験したというか、別に音楽だけやってきたわけじゃないから。その分、他の分野でもサバイバルしてきて、今ここにいるわけで。そういう経験も強みにして、ごちゃごちゃになってやっていければなと思っているんです。それがおもしろいと思って。
――みなさん、年齢を重ねて、それぞれに丸くなったところもあるとは思うんですけど、だからって譲ったりせずに?
久永:何かにつけて、そういうほうが世の中的には好まれるんでしょうけどね。俺らは元々、歪(いびつ)な関係で成り立っているので、バンドとしてね。そこは出していってもいいんじゃないかなと思ってます。
――よりめんどくさいのは、吉村さんですか、外川さんですか?(笑)
久永:全員ですよ。
――あぁ、久永さんも含め。
久永:そうです(笑)。
――久永さんはそんなふうにおっしゃっていますけど。
吉村:久しぶりに集まって、話してみたら、最初はめっちゃやさしい、いい奴になったなって思ったけど。
外川:チョッコウは昔もっと話しづらい奴だったからね。
吉村:でも段々、やっぱりあんまり変わってねえなって(笑)。
外川:オリジナルの5人でやっていた時とは、人間関係のバランスはまた違うと思うんですけど、吉村も言ってたように結局、みんな根っこは変わってないんじゃないかって思います。話していると、昔の感じを思い出しますからね。でも、みんなちゃんと大人として話せるようになったとは思いますけど。
■再結成を決意させた背景とは? やり残したもの、後輩バンドたちの存在
――ところで、再結成しようと思った背景には、やはり何かしらやり残したことがあるとか、もっとやれたんじゃないかとか、そういう思いもあったわけですよね?
吉村:そうですね。やり残したまま終わってしまった、みたいな気持ちはやっぱりありました。だから、またできるのはほんとうれしいですよ。またやろうと思ったきっかけの話に付け加えると、活動していない間、昔、自分たちが作ったものが20年経っても残っていると感じることができたってこともあるんです。WINOに影響を受けたというバンドがいたりとか、南米で聴かれていたりとか、音楽の素晴らしさっていうのかな。曲を録音して、世の中に残したことの意味を、この3、4年の間に感じてたから。また、そんなふうに取り組むことができる機会を作れたことに感謝もしているし、前とはまたちょっと違う意気込みで、ちゃんと残せるものを作ろうって、今はやってますね。
――WINOに影響を受けたバンドって、[Alexandros]のことだと思うんですけど、フロントマンの川上洋平さんがWINOからの影響をラジオで語ったり、[Alexandros]がテレビの音楽番組(21年放送日本テレビ『MUSIC BLOOD』)でWINOの「Loaded」を演奏したりしたことは、みなさんの耳にも届いていたんですか?
吉村:その前から洋平が連絡をくれて、ハワイの僕の家にも遊びに来てくれたから。元々面識はなかったんですけど、そういう関係もあったので。すごくうれしかったし、モチベーションを上げる力にもなりましたし。SuchmosのYONCEと洋平で「Loaded」を歌ってくれたこともありましたね。
――え、そんなこともあったんですか。それは知らなかった。あー、なるほど。調べてみたら、2017年にスペースシャワーTVの『Welcome! [Alexandros]』で[Alexandros]がYONCEさんをゲストに迎え、「Loaded」を演奏していたんですね。
久永:お陰で、活動はいったん止まっちゃったけど、さっき吉村も言ってたように曲はちゃんと残せたと思えたし、それが今、財産になってるわけですからね。
外川:僕らの音楽から影響を受けたバンドがいるなんてびっくりだったし、うれしかったですけど、[Alexandros]のベースの磯部(寛之)君と喋ったとき、「Loaded」はノリが独特で演奏しづらかったみたいなことを言われたのもうれしかったですね。俺たち、独特のノリを出せてたんだって。
――さて、現在のリズム隊の2人についても聞かせてほしいんですけど、中尾さんとJuonさんは今回、どんなきっかけで加わったんでしょうか? 中尾さんがいたナンバーガールとWINOは同期と言えるから……。
久永:いや、ナンバーガールとはそんなに共演するってことはなかったんですよ。
――そうなんですか。
久永:だから、ナンバーガールでも憲太郎だけなんですよ、交流があったのは。Number (N)ineっていうブランドのデザイナーの宮下(貴裕)さんとの繋がりがあったりとか、一緒にバンドを組んだりとかっていうのがあって、2、3年ぐらい前からよく会うようになって。WINOをまたやりたいんだけど、参加してもらえないか? みたいな雰囲気を出しつつ(笑)、元々、憲太郎のベースも好きだったから、彼が入ってくれればさらに良くなりそうだなって思っていて。もちろん、オリジナルメンバーでやりたかったですけど、川添(宏之/Ba)と黒沼(征孝/Dr)は、今はちょっと無理かなってことだったので、それならしょうがない。俺も俺で、さっきも言ったようにこの機会を逃したら、またやろうとは思えないかもっていうのもあったので。吉村と外川に他のメンバーとやりたいんだけどって話をして、憲太郎にも事情を説明して、全員が納得しているならいいよって言ってもらえたので。そんなふうに割と、ちゃんと話を進めていきました。
――その後、Juonさんが加わった、と。
久永:憲太郎にJuonを薦められて、ACIDCLANKのライブを観に行ってみたら器用に叩けるドラマーだなと思って。しかも黒沼に似た感覚もちょっとあって。そこまでパワフルではないけど、16ビートもちゃんと叩けるし、すごいなって言ってたら、憲太郎がじゃあ誘うよって。その2人がいればいい感じになるっていう、俺の中ではある程度、確信があったんですけど、実際、合わせてみたら冒頭でも言ったとおり予想していた以上に良かったっていう。
■23年ぶりにバンドで出すWINOの音、その一発目を体感してほしい
――そんなラインナップで臨む12月28日のワンマンは、どんなライブにしたいと考えていますか?
吉村:WINOの音を、バンドで出すのが23年ぶりなので、その一発目を体感しに来てほしいですね。ほんとに後にも先にもこんなことはないので。20年間眠っていた何かが目覚めるみたいなことなので、なかなか見応えあるものになるんじゃないかなと思います。バンドの再結成ってよくありますけど、20年ぶりにやるってなかなかないと思うので、ぜひその瞬間に立ち会ってほしいです。僕ら自身もすごく手応えがあるので。
外川:昔のライブって、瞬間的な爆発があったこと以外、実はそんなに憶えてないんですけど、その爆発を味わいに来てほしいです。それがたまたま20年ぶりになってしまいましたけど、すごいものが見せられるんじゃないかなと思っています。
――久永さんは、どんなライブを考えていますか?
久永:この先どうなるかわからないから、今観に来てほしいですね。どんなライブって言われても、今の俺ららしいって感じかな。ただ、手応えはあるから、絶対おもしろいものが見られるんじゃないかなとは思ってます。来た人がみんな、心の中に宝物がまた一つ増えたみたいな気持ちで帰ってもらえればうれしいです。年末なので、来年に向けてね。
――ライブのタイトル『afterwords: WINO』の“afterwords”は“あとがき”という意味ですけど、そこにはどんな意味が?
久永:タイトルは今回、ビジュアル面で関わってもらっているNumber (N)ineの宮下(貴裕)さんが考えたんですけど、その後とか、あの時の続きってことだと思うんですよ。終わったように見えて、まだ終わってないぞっていう続きがどんな感じなのか、ここで見られるよってことだと俺は解釈しているんですけど。
吉村:そうそう、ちょうど再結成の発表のタイミングで、宮下さんもNumber (N)ineをまた始めることになったんですけど、その宮下さんが会場限定のWINOのTシャツを作ってくれたので、それもぜひ手に取ってほしいです。
――28日は新曲もやるんですか?
久永:やる予定です。
――新曲はどんな感じですか? いや、ライブを観に来て、そこで聴けって話なんですけど。
久永:ちょっと新しいです。
――これまでのWINOとはちょっと違うってことですね?
久永:みんなが思ってるWINOのイメージはそれぞれにあると思うから、よくわからないけど、この20年間の変化がたぶん出ていると思うから、新たな気持ちで聴いてもらいたいし、それがモチベーションにもなっているし。再結成したバンドが出した新曲が最高のものかって言ったら、正直、難しいところがあるじゃないですか。俺の記憶では、たぶんそういうバンドとか、アーティストとかっていないと思うんですよ。
――うーん、確かに。
久永:再結成して、そのバンド史上最高の曲を出したって。だから、そこにも挑戦したい。今の俺らで出せる最高の曲を、やっぱり作りたいですね。昔の曲が好きな人は昔の曲をやってくれって言うと思うけど、それだけだと、俺らはやっぱりモチベーションが上がらない。それで盛り上がるのは、前回のアコースティックライブで終わったかなと俺的には思ったんですよ。昔の曲が好きという人に応えることももちろん大事なんですけど、やっぱり前に進んでいかないと、またバンドを始める意味はないかな。
――そういう意味では、かつてファンだった人はもちろんですけど、若い人にも来てほしいですよね。ところで、ワンマンライブ以降の活動についてはどんなふうに考えているんですか?
久永:今はワンマンライブまできっちりがつっとやることだけ考えているので、それ以降のことは全然決まってないです。
――でも、前に進んでいかないととおっしゃったように、可能であれば続けていきたいという気持ちはもちろんあるんですよね?
久永:それはもちろん。
――去年、『FUJI ROCK FESTIVAL '24』に久永さんと吉村さんで出たとき、次はバンドで出たいというふうにおっしゃったとか。
久永:ね(笑)。そういうのもありつつ、2000年に『HUNTER×HUNTER』っていうテレビアニメの主題歌(「太陽は夜も輝く」)もやったこともあって、海外からメールがけっこう来るんですよ。
――なるほど。
久永:だから、海外でもやってみたいというのもあります。
――外川さんと吉村さんも今後の展望について聞かせてください。
外川:さっき言ってたあとがきがどれくらいの長さになるのか、そこから続編ができるのか、そこはまだわからないというか、今度のワンマンで見えてくるものもあると思うんですけど、これが最後のチャンスだから、できるかぎりやりたいという気持ちはすごくあります。
吉村:続けられるところまで続けますよ。ただ、バンドってやっぱりいろいろなことが起きるから。久々にやってもほんとにいろいろなことが起きるんですよ。だから、再結成もそうだけど、続けるってことも奇跡みたいなものだと思うんですよ。仕事って感じじゃ全然ない。それぞれに自由だし、自分勝手だし、そういう5人が集まると、いろいろなことが起きるから、再結成するまでに20年もかかったわけで。でも、続けられるところまでは続けたいと思ってるので、ぜひ目撃しに来てほしいです。そう言えば、リキッドルームって会場も、解散前の最後のライブがリキッドルームだったので。
――観に行きましたよ。
吉村:ありがとうございます。
久永:あの時は新宿にありましたよね。
――そうでした。
吉村:場所は今とは違うけど、同じ会場でまた始められるってところも感慨深くて、ものすごく楽しみなんですよ。
取材・文=山口智男
リリース情報
2025年12月10日(水)発売 ※VICTOR ONLINE STORE限定商品
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Blu-ray:商品番号 NXS-733 https://victor-store.jp/item/104540
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ライブ情報
12月28日(日) 恵比寿LIQUIDROOM
開場/開演 17:00/18:00