【なきごと×眞名子新】「ラジオディレクターが気になるアーティストに対バンをお願いしました」出演3組によるまさかの同級生クロストーク企画Day2

長いタイトルがそのまま中身を表すユニークなイベントが、年末の東京で開催されることが決まった。12月22日、東京・日本橋三井ホールで開催される「ラジオディレクターが気になるアーティストに対バンをお願いしました」は、ニッポン放送の主要番組をはじめ、首都圏のFM局・ラジオ番組を制作している制作会社「ミックスゾーン」が手掛ける音楽イベントだ。時代を作る多くのアーティストを紹介してきた、ラジオというメディアの視点から選ばれた出演者は、レトロリロン、なきごと、眞名子新の3組。それぞれに音楽性は異なるが実は同じ年生まれという共通点を持ち、まさに次世代を担う注目アーティスト呼ぶにふさわしい顔ぶれだ。
SPICEではこのイベントを盛り上げるべく、3組のクロストークを企画。それぞれの音楽的ルーツ、楽曲制作の裏側から趣味のトークに至るまで、様々なトピックを語ってもらった。フレッシュなアーティスト同士がぶつかりあう熱いライブに、ぜひ足を運んでほしい。

――お二人は、これが初対面なんですよね。

水上えみり：本当に初めてです。

眞名子新：よろしくお願いします。

水上：眞名子さんの曲を聴かせてもらった純粋な感想は、朝の起き抜けに聴いた時に、その1日を丁寧に暮らせそうだなと思いました。ご本人の生活が、音にも出ているんじゃないかと思いました。

眞名子：ありがとうございます。そうですね、僕も丁寧に暮らすほうかもしれないです。最近コーヒーにハマっていて、朝はコーヒーを淹れて飲んだりしています。

――丁寧な暮らし、身近な生活感というのは、フォークソングやカントリーミュージックがルーツにある眞名子さんの歌に、よく出ていると思いますね。

眞名子：もともとフォーク系の音楽が大好きで、アコースティックギターと歌というシンプルな構成がすごく好きだったんですけど、コロナ禍ぐらいで音楽を一瞬やめた時があって。その後カントリーミュージックに出会って、それはルミニアーズというバンドだったんですけど、そのバンドがアコースティックギターを持って、お客さんと一体になって楽しんでいるライブ映像を見た時に、「アコースティックギターでもこんなお客さんと一緒に楽しむことができるんだ」と衝撃を受けたのがきっかけで、そこから自分もこういう音楽をしたいなと思ったのが、今のルーツになっていますね。

水上：私のルーツは、バンドで言うとスピッツで、スピッツみたいな歌詞の表現方法や、4ピースの編成や、私の中では「これがバンドだ」いう認識が小さい頃からあったぐらい、自分の中の教科書になっています。ただその後、吹奏楽をやっていた姉が演奏会の出し物でバンドをやっているのを見た時に、「私もこれやりたい！」と思ったこともすごく大きかったので、音楽を始めたことに関しては姉の影響が大きいかなと思います。

眞名子：僕にも兄がいて、今は作詞をしてくれているんですけど、5歳離れているんです。

水上：うちは7歳差です。

眞名子：それは、影響を受けますよね。僕も、兄の影響をもろに受けて育ちました。

水上：私は、お姉ちゃんの部屋を散策するのが大好きで(笑)。姉はパーカッションをやっていたんですけど、練習用のパッドとスティックが部屋にあって、クリックを勝手につけてカパカパって叩いたり、あとはお姉ちゃんが読んでいる漫画を片っ端から読んだり。

眞名子：めっちゃ一緒です(笑)。兄の部屋にアコースティックギターがあったので、それを弾いてみたり、兄の漫画を読んだりしていました。「緑のマキバオー」とか。

水上：たぶん、可愛くて仕方ないと思うんですよね、弟や妹が自分の影響を受けていたら。めっちゃ可愛がられてないですか？

眞名子：わかんない…(笑)。仲はいいですけどね。

水上：私も、めっちゃ仲いいです。

――眞名子さんの場合は、作詞作曲の共同作業者というか、ビジネス・パートナー的な目線もあるんじゃないかと思うんですが。

眞名子：基本、そうです。音楽をやり始めてからすごく仲良くなり出した感じで、元々はお互いが別々な感じだったんです。

――曲作りは、どういうやり方で進行していくんですか。

眞名子：兄が歌詞を書いて、僕が曲を書いているんですけど、元々僕が作詞作曲の両方をしていて、3、4曲目ぐらいから兄が参加してきたんです。「俺のほうがいい歌詞書ける」みたいな感じで、ちょっと偉そうに(笑)。

水上：強敵が出てきた、みたいな(笑)。

眞名子：でもそれが結構型にはまって、ずっとそれでやってきて、最近は歌詞が先にあって曲をつける形も多いです。

――眞名子さんの歌には飾らない日常があって、なきごとの歌はリアルをベースにしつつ、自由な空想や物語の世界観もあって。歌詞で伝えたいメッセージには、アプローチの違いを感じたりします。

眞名子：作詞は兄が担当しているので、うまく答えられないかもしれないですけど、おっしゃっていただいたように、日常の部分というか、あんまり自分のことを大きく見せないというか、自分がちゃんと感じていることをしっかり言葉や曲に落とし込むことは意識しています。どういう意味あいの歌詞とか、どういう気持ちで作った歌詞とか、そういうことは日常生活からすり合わせていることが多いですね。普段からよく会話をしている中で、兄は最近こういう感じで思っているんだなとか、自分はこういうふうに思っているとか、こういう曲が最近好きでとか、そういうこともよく喋ったりします。兄は、そういうところから歌詞を書くことが多いので。

水上：私は基本的に、本音を聞かれたくないから、それを妄想で隠しているみたいな感じです。日常を切り取ったように聴こえる曲もいっぱいあるけど、全部の曲において、日常生活で私が思うこと、自分の泣き言や、誰かの泣き言や、「これについてこう思っている」ということを主軸に置いて、そこの周りを…伝えるためにいかにわかりやすくするか、とかじゃなくて、「伝えるためにいかに遠回りさせるか」みたいなことは、結構私の中で考えていて。遠回りの中で見えた景色を盛り込むことによって、聴いてくれた人がその景色を思い浮かべつつ、「これって〇〇っぽいな」とか、自分の本音が見えてくるような空間になったらいいなと思っていて、そういう書き方をしているかもしれないですね。

――お二人の違いがすごく面白いですね。

水上：ただ、私も作詞が先なので、工程としては似ているのかな？と思います。

眞名子：そうですね。

水上：私は言葉の持つメロディと、歌い方の譜割りや歌のメロディを合わせることが多いんですけど、人の歌詞に曲をつける時は、「ここは抑揚をつけるためにあえてこう行きたい」みたいな、作曲者としての意図が出て来そうだなと思うんですけど、どうですか？

眞名子：僕は、兄の送ってきた歌詞を元に作っていく中で、自分がそれを歌うので、ここは母音を「あ列」で歌いたいとか、そういうことを発注したりはしています。

水上：声の出し方的に、口の形が縦の方がいいから、「あ」とか「お」にしてくれみたいな、そういう話ですよね。

眞名子：そうです。そこをしっかりまとめたいから、とかは結構言ったりしています。

水上：面白いなぁ。

――作詞と作曲の、せめぎあいがあるんですね。

水上：私はどっちも自分で作っているので、かなり自由度が高いと思うんですけど、メロディが良すぎると思ったら、歌詞のほうを合わせに行ったりもしますし、この歌詞はこっちの方がいいんだよなと思ったら、メロディを合わせに行きます。どっちがいいかを自分の中で判定して、より良いものにするという感じですね。

眞名子：僕も同じです。ただ、例えば思いついたメロディがあって、歌詞と合わない時に、無理やり歌詞に合わせに行くと、自分が思い描いてたメロディじゃないけれど、「意外といいメロディだな」となる時があるので、そこは結構面白いなと思って楽しんでいたりはします。

水上：メロディを先に作ると、パズルみたいな感覚になっちゃうんですよね。「この5音にハマる言葉は何だろう」みたいな感じで、ゲーム要素が入ってきて、それがハマった時に「うまいこと行ったな」という気持ちになっちゃいそうで。それより、もっと自分の素直な気持ちを入れ込んだ楽曲になったほうがいいなと思っているから、そういう書き方をしています。

眞名子：確かにそうかもしれないですね。兄も、曲先だと「パズルみたいな感じで難しい」と言うことが多いので、作先が多くなっているんですね。

――例えば、えみりさんが書いた歌詞に曲につけてほしいと言ったら、つけられそうですか。

眞名子：つけれるとは思います。

水上：えー、すごい。恥ずかしい(笑)。何かのタイミングで、やってみたいですね。

――「ラジオディレクターが気になるアーティストに対バンをお願いしました」なので、ラジオについて一つ質問させてください。眞名子さんには「ラジオ」という楽曲もありますが、お二人にとってラジオはどういう存在ですか？

眞名子：ラジオは、僕の青春時代を支えてくれた媒体だと思います。僕は中学校ぐらいから、兄の影響でお笑い芸人さんのラジオを聞いていて、おぎやはぎさんのラジオがすごく好きだったんですけど、「小木の美学」というコーナーがあって、彼の変な考え方に中学校の時にもろに影響を受けて(笑)。だからラジオは、精神性もすごく教えてもらった媒体です。

水上：私は、中学生の頃に聞いていたラジオは一つしかなくて、「この番組を聞くときは聞く」みたいな聞き方をしていたんですね。それからコロナ禍に入って、情報を得るためにラジオがずっと流れている環境に身を置くことも増えて、そこらへんからラジオとの向き合い方が結構変わって、一緒に生活しているなという感じがあります。学校に行ってみんなと会うのと近いような感じで、ラジオをつけたら、そこにパーソナリティさんがいて、「こんな懐かしい曲を久々に持ってきたけど、どう？」みたいな会話があって、「ああ懐かしいな」と思ったりするのが、すごく生活っぽいなと思っています。

ーー普段、どういう時にラジオを聞きますか。

眞名子：歩いている時、電車に乗っている時、家でも聞きますね。

水上：中学生の頃は、夜寝る前に聞いていました。ウォークマンで聞いていたので。電波が全然入らないこともあって。夜なので、イヤホンをつけて親にバレないように聞いていました。

――ライブの話に戻って。対バンイベントに臨む時の心構えとか、あったりしますか。

眞名子：僕はアコースティックギターなので、バンドと一緒にやる時はやっぱり音が大きいので、「負けないぞ」という気持ちは常にあります。結構バチバチですね。

水上：私も弾き語りでライブさせてもらうことがあるんですけど、そういうイベントに出ると、孤独な感じはしますね。それぞれに個がすごく強いから、「慣れ合わないぜ」みたいな感じがあって、それに対してバンドのほうは、友達っぽい雰囲気がすごくあるなと思っています。バンドの中に一人で来ると、寂しさとか感じたりしないですか？

眞名子：感じます。みんなが楽屋でバンドメンバーと話していて、自分は一人で行くことが多いので、そもそもの人数差があるというか。

――今度の対バンは大丈夫だと思います。仲良くしてくださいね(笑)。

水上：みんな同い年なんですよね。しかも、ここ(水上＆眞名子)は誕生日が2日違い。

眞名子：びっくりですね。

ーー同世代のアーティストは、やっぱり意識するものですか。

眞名子：意識しているかもしれない。「あ、同世代なんだ」って、ちょっとは思うかも。それは普段から、年上との対バンが多いからかもしれないですね。同い年が嬉しいなという気持ちと、負けてらんねぇなという気持ちと、両方あるかも。

水上：負けてらんねぇなの気持ちは、めっちゃわかりますね。曲を聴いて、「こんな表現を、同い年ができるのか」みたいな悔しさもありつつ、「すげぇワクワクすっぞ！」という気持ちもあって、同じ時間を生きてきて、こんなことができるのはすごいな、みたいな感じで、私も頑張ろうと思ったりします。

――ちなみに、ライブの本番前のルーティンは、何かあったりしますか。

水上：メンバーみんなで円陣をやりますね。「虎と龍、虎と龍、虎と龍」って言いながら。それは、最初のサポートメンバーに「掛け声を決めていいよ」と言ったら、決めてくれて、もう7年ぐらいやってます。人差し指を真ん中に合わせて、「せーの、虎と龍、虎と龍龍、虎と龍」って言って、入っていくのを毎回やっています。

眞名子：何か意味があるんですか？

水上：強そうだから(笑)。私たちは虎と龍ぐらい強い！という心持ちでやっています。

眞名子：僕は筋トレをちょっとして、体温を上げて、戦闘モードにすることをやりますね。スクワットしたり、腹筋したりしています。あとは、トイレにこもってぼーっとしたりとか。本番前の一人の時間は、結構大事かもしれないです。

――眞名子さんは兵庫県神戸市出身。東京に来られて、関西のライブシーンとの違いを感じたりしましたか。

眞名子：全然違いますね。

水上：関西のライブハウスはめちゃめちゃすごい！というイメージがあるんです。店員さんとか、スタッフさんのノリがいいなぁと思います。

眞名子：確かに、ちょっと変わってはいますね(笑)。

水上：今年のツアーで大阪に行った時に、ライブハウスのスタッフの女性が柔道の黒帯を持っていると言うので、足技をかけてもらって、一回天井を見ました(笑)。そういうノリもいいし、関西のライブハウスって大好きなんですよね。

眞名子：東京は、新しい音楽を探しているお客さんがすごく多い印象があって。神戸でライブしている時よりも、東京でライブしているほうがいろんな人に聴かれるチャンスが多いなというのが、大きな違いかなと思いますね。

――12月22日、熱いライブを楽しみにしています。よろしくお願いします。

眞名子＆水上：よろしくお願いします！

取材・文＝宮本英夫　撮影＝大塚秀美