多彩な楽曲群を輝かせるエモくて巧みな構成が光る！MyGO!!!!! 8th LIVE「想いのかたちが積もるとき」レポート

■2025.12.06MyGO!!!!!のワンマンライブ「想いのかたちが積もるとき」@京王アリーナTOKYO

ブシロードのメディアミックスプロジェクト『BanG Dream!』（バンドリ！）の一角を担う“リアルバンド”、MyGO!!!!!のワンマンライブ「想いのかたちが積もるとき」が12月6日、東京・京王アリーナTOKYOで開催された。MyGO!!!!!は結成以来、ライブツアーや対バン・合同ライブに加えて、単発のワンマンライブを「1st LIVE」から続くナンバリングシリーズとして実施している。今回のライブは、前回2024年12月の東京・日比谷野外大音楽堂での「7th LIVE」から約1年ぶりとなる8度目の単発ワンマンライブ。当日の京王アリーナTOKYOには1万人近くのMyGO!!!!!＆『バンドリ！』ファン、通称バンドリーマーたちが詰めかけた。

定刻、客電が落ち、ステージ背面の巨大スクリーンに煽り映像が流れ出すと、羊宮妃那が演じる燈（Vo.）、立石凛演じる愛音（Gt.）、青木陽菜演じる楽奈（Gt.）、小日向美香演じるそよ（Ba.）、林鼓子演じる立希（Dr.）がステージに登場。ピンスポットを浴びた燈が《何が僕にできるか わからないけれど》と「名無声」の一節をアカペラで歌い出すと、楽奈がそれを優しげなストロークを追いかける。そして燈のスクリームを合図に愛音、そよ、立希も合流するとバンドは、そのままこの曲で8th LIVEをキックした。

バンドリーマーたちと《Oh-oh-oh》とシンガロングしながら、このエッジの効いたパンクナンバーを届けた彼女たちは間髪入れずに「孤壊牢」を投下。キャッチーなギターリフとキメ、コロコロと変化し続けるリズムパターンが楽しいこの曲で《Hey! Hey!》のコール＆レスポンスを繰り広げるなど、バンドリーマーたちのさらなる熱狂を生み出した5人は、自己紹介を済ませつつ、新衣装をあらためてお披露目する、なんとものんびりしたMCに花を咲かせるも、楽奈の「早くライブしよ？」のひと言で表情を一変させる。

その後、MyGO!!!!!の面々は、短い幕間映像を挟みつつ、変幻自在のナンバーを6連発。4人のストレートなプレイに乗せて、燈がシリアスな言葉を真っ直ぐ歌い上げる「掌心正銘」、立希の繰り出すド派手なドラムパターンとそよのメロディアスなベースラインや、楽奈、愛音、燈が浮遊感あふれるアンサンブルが光る「処救生」、MyGO!!!!!のキラーチューンのひとつであるダンスロック「影色舞」、グルーヴィな人力ヒップホップチューン「エガクミライ」、J-ROCKライクなアレンジに、自身と周囲を讃える燈のリリックが優しく重なる「端程山」、冒頭、愛音がアルペジオを奏でるや大歓声が巻き起こった「迷星叫」を立て続けにパフォーマンスした。

中でも耳に残ったのが、この日の初披露となった「エガクミライ」だ。

太志と大介（共にAqua Timez）から提供されたこの楽曲を9月に発表した5人は、年末のライブですでに自らのものに。リズム隊と愛音によるレイドバックしまくったダンスビートと、楽奈が渋すぎる単音ギターをかぶせるアンサンブルと、楽器隊の産み出すグルーヴに巧みに呼応する燈のボーカルは、アリーナをリラックスムードで包み込んでみせていた。

今夏「エガクミライ」のMVを制作したという話から夏の想い出、ひいては2025年の想い出へと話題が転がったMCタイムから始まったライブ後半戦も、いざプレイとなればMyGO!!!!!の5人は変わらない。5人は本編ラストまでそのセットリストを一気に駆け抜けてみせる。

後半戦の幕開けを飾ったのは「砂寸奏」。愛音の「りっきーよろしく！」の声に立希が8ビートで応えると、愛音はバンドリーマーを相手にコーラス教室を開講。アリーナとひとしきりコール＆レスポンスすると、満足したのか笑顔で「OK、いい感じ！ それじゃあいくよ！」とバンドのプレイを誘って、この曲へと雪崩れ込んだ。

そしてバンドがバンドリーマーたちとコーラスパートをシンガロングするハッピーな空気を現出されたかと思えば、一転。燈のピーキー高速ボーカル、無闇に手数の多い立希のドラミング、1つの音を刻み続ける楽奈の不穏なソロ、妖しげなコーラスワークが印象的なポストロックナンバー「回層浮」と、メロディ・アレンジともに由緒正しきオールドスクールなハードロックながら、なぜかボーカルパートのほぼ全編に楽奈による高音コーラスがかぶさり続ける「無路矢」を続けて、アリーナを彩る空気の色を塗り替えた。

さらに幕間MV中のポエトリーリーディングに燈が「当たり前の1秒なんか、ないから。二度とない今日の僕らを忘れないで」とアンサーし、立希がハイハットでカウントを刻むと、またも様相は一変。ポジティブなメッセージを高らかに歌う「碧天伴走」では楽奈と愛音がステージの両サイドに伸びたランウェイへと駆け出し、スタンド席のバンドリーマーたちを大いに煽り、そのアウトロで愛音が「よーし！ このまま次の曲いっちゃいます！」「みなさん準備はいいですか？」と笑顔でバンドリーマーを挑発すると、バンドは「明弦音」を初披露。「碧天伴走」に続けてポジティブな正統派メロコアチューンを畳みかけて、アリーナのボルテージをさらに一段階上へと押し上げてみせていた。

「明弦音」に続いて、立希のカウントからバンドは「聿日箋秋」をドロップ。ドラム、ベース、サイドギター、リードギターがそれぞれ“変態的”ともいえる複雑なフレーズを刻みながらも、エモくもあり、またなぜかポップでもあるこの曲でまたも熱狂を演出すると、暗転を経て、メンバー一人一人から言の葉が降り落ちる。

バンドリーマーが思い思いに叫ぶ中「束の間に落ち合って」と立希が語り出すと、「交じり合うかけらが」「震えて肩を寄せる」「静けさのなか」と、そよ、楽奈、愛音へと言葉はリレーし、燈が「しんしんと降り積もってく」とそのバトンを受け取ると、MyGO!!!!!はまたも当日初披露となるバラード「静降想」を本編ラストナンバーにセレクト。想いが《しんしんと 降り積もってく》その様をしっとりと、しかしながらしっかりとプレイして、バンドリーマーたちの大きな感動の歓声の中、ステージをあとにした。

アンコール代わりのMyGO!!!!!コールに応えてライブTシャツ姿でステージに舞い戻った彼女たちは、まずは「歩拾道」を奏でだし、そのジェントルな演奏で〈ずっと 受け取ってばかりだった やさしさを 誰かへと 手渡せる人になりたい〉と、アンコールを贈ってくれたバンドリーマーへの感謝を伝えてみせた。

その後、ライブを振り返るMCタイムでは、そよ役小日向が泣き出すひと幕も。インフルエンザに罹患したため出演できなかった昨年12月の7th LIVEを「そよちゃんをステージに上げてあげられずすみませんでした」と涙ながらに振り返った、また温かく易しい励ましの言葉や慰めの言葉を贈ったメンバーと多くのバンドリーマーたちに感謝しつつ、だからこそそよとして、小日向美香として出演できた8th LIVEの日は一生忘れられない1日になったと叫んで、アリーナいっぱいの祝福の拍手を受けていた。

この日のラストナンバーは「往欄印」。羊宮がメンバーに「みんな準備いい？」、バンドリーマーに「みんな準備いいですか？」と尋ねつつ、曲名を叫ぶや、アリーナから割れんばかりの大歓声が巻き起こり、これを受けたMyGO!!!!!の5人は林の高速ツービートに、そのスピードでも自在に乗りこなす小日向と立石のリズムバッキング、青木の熱くてクレイジーなオブリガード、羊宮の超高速ボーカルが絡み合うこの曲で、PAから鳴り響くサウンドに負けない爆音の歓声を集めて、8度目のワンマンライブにして、2025年最後のステージを締めくくった。

アンコールのMCタイム中、林が、冬だけど熱いセットリストを組めたと笑顔で語り、青木がセットリストはメンバー自身も考えていることを明かしつつ、バンドリーマーが楽しんでくれたことを喜ぶひと幕があったが、確かに今回のワンマンではとにかく構成の妙が光っていた。

この日のMyGO!!!!!はド直球のパンクナンバーやアップリフティングなメロコアナンバーでアリーナを熱狂させたかと思えば、シンプルな8ビートはどこへやら。ストレンジなアンサンブルで魅せる1曲や、メロウでダルなダンスナンバーをすぐさま繰り出すステージングを展開。超弾力的かつ超強力なセットリストを作り上げ、青木の言葉どおりのリアクションを現出させていた。

この日のバンドリーマーたちの様子は上記のとおり。変幻自在のビートを繰り出しながらも、今の季節を見越したとも取れる演出も施すバンドに的確に呼応し、時にはノリよく熱い声援を送りながらペンライトを振り、また時には軽快にステップを踏みながら8th LIVEを存分に満喫していた。

ポストロックにヒップホップ……。自身のルーツであるパンクロックの延長線上にある、まさにポストパンク的な楽曲をもモノにしてみせたMyGO!!!!!は2026年、どんな景色を見せてくれるのか。今から期待しておきたい。

取材・文：成松 哲 撮影：ハタサトシ、高田梓