ヴァイオリン石田泰尚×バンドネオン三浦一馬×ピアノ京増修史、スペシャルメッセージも到着!~人気企画『俺クラ・マチネ』ツアーがスタート【レポート】

レポート
クラシック
2026.2.18
『俺クラ・マチネ』

『俺クラ・マチネ』

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神奈川フィルハーモニー管弦楽団コンサートマスター、京都市交響楽団客演コンサートマスターを務めながら、ソロおよびさまざまなユニットでの演奏活動を展開する石田泰尚と、若手実力派のバンドネオン奏者として第一線で活動し、室内オーケストラの設立など、活躍の場を広げている三浦一馬。圧倒的な人気を誇る2人を中心とした人気企画『俺のクラシック(通称俺クラ)』、現在開催中のマチネ公演のシリーズでは、ショパン国際ピアノコンクールでも注目されたピアニスト・京増修史が加わり、新たな化学反応を起こしている。2026年1月30日(金)、調布公演の模様をお伝えする。

平日昼間ながら、ほぼ満席の聴衆に迎えられ、公演の幕が上がる。まずは京増のピアノ・ソロによるショパン「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズOp.22」から。俺クラ初出演の京増の生演奏を初めて聴く人も少なくないようだったが、序奏から桃源郷のような世界が広がり、会場を完全に骨抜きにしてしまった。クリスタルのように輝く高音、温かく心地の良い低音のうねり、どれだけ近寄ってもボヤけない解像度の高さと作品全体を俯瞰する大局観、わざとらしさが一切ない自然な歌い方……。ショパンの初期の傑作の魅力を満喫した。

続いて、全身黒、背中に柄の入ったシャツ姿の石田も舞台に現れ、京増とともに3曲を披露。バッハ=グノーの「アヴェ・マリア」は、崇高なまでに美しい音が、どこまでも高く伸びていくよう。ヘビーメタル系の見た目と、天使のような音楽。視覚と聴覚で得る情報が脳内で混乱するようなこの感覚、石田の演奏の醍醐味の一つだ。

クライスラーの「テンポ・ディ・メヌエット」では、上品さを保ちながら、テンポをいきいきと、絶妙に揺り動かす。明るく優雅な舞曲は、マチネの雰囲気にぴったり。

一転、メラメラとした前奏から始まったファリャ「火祭りの踊り」は、ジプシーの熱い血を感じさせる。推進力のあるピアノと、艶もアクもある地声のようなヴァイオリンが、ともに踊り狂うようにクライマックスへ。客席の温度が一気に上がった。

前半の最後、ようやく三浦が登場し、京増と2人でガーシュウィン「ラプソディ・イン・ブルー」を演奏。バンドネオンの哀愁漂う音色、自在な抑揚、オーケストラパートを一人で担えてしまうポテンシャルには、羨ましさを通り越し、ずるいと思ってしまうほどだ。ピアノも骨太な音色を響かせ、互いに鼓舞しあうように高揚感を増していく。中間部は大音量で歌うのではなく、エネルギーを宿しつつも親密なアンサンブルで、オーケストラ版とは一味違う華やかさをもった「ラプソディ・イン・ブルー」は新鮮で、聴きごたえ十分。客席からも大きな拍手が送られ、前半が終了。

リハーサルの様子

リハーサルの様子

後半は、石田と三浦の共演による2曲で始まる。ヘンデル「『リナルド』より〜私を泣かせてください」は、パイプオルガンのような響きのバンドネオンが作り出した神聖な空間に、清らかなヴァイオリンの音が響く。前半の「アヴェ・マリア」といい、石田にソプラノの名曲を弾かせたら、涙なしには聴けない。

続いては、ジョン・ウィリアムズの「シンドラーのリスト テーマ」。世界を灰色にしていくようなバンドネオンの音にのせて、淡々と歌うヴァイオリンの旋律は、かえって胸を抉られるような痛みに満ちている。最後の高音は言葉も出ないほどの美しさ。

ここからは3人揃っての演奏で、まずはドビュッシーの「月の光」から。湿気のある温かな空気を纏ったようなバンドネオン、透明感あふれるヴァイオリン、柔らかなピアノの音色がそれぞれに存在感を放つ。この不思議な組み合わせが目の前に淡い景色を繰り広げ、演奏が終わると会場からため息がもれた。余韻の美しさに思わずこぼれてしまったような「うーん」の声が近くで聞こえ、大いに共感。

続いて、サン=サーンスの「白鳥」。ピアノのさざ波にのってバンドネオンが朗々とメロディーを奏で、ヴァイオリンがオブリガードで寄り添う。情熱的ながらも、高いところから低いところへ水が流れるような、すべてが自然な音楽に、呼吸が一層深くなる。

この日のトリは、バッハ「2つのヴァイオリンのための協奏曲」。直球勝負のクラシックの傑作は、その名の通り、本来は2本の独奏ヴァイオリンが対話するような形式で書かれているが、この日は第1ヴァイオリンパートを石田、第2ヴァイオリンパートは三浦のバンドネオンが演奏。2本のヴァイオリンでは響きにまとまりが感じられるのに対し、全く異なる音色の楽器が歌うことで、音楽がより立体的になるように感じた。第2楽章では、ゆっくりと、より親密に2つの旋律が絡み合い、教会の中にいるような雰囲気に。第3楽章は、一度流れ出したら息をつく間もないような緊張感に満ちた音楽が、客席の集中力をも高めていく。荘厳な響きで会場を満たし、プログラムのフィナーレを飾った。ヴァイオリンとバンドネオンとモダンピアノという、バッハ自身が想像もしていなかったであろう3つの楽器による演奏は、新たな可能性を示し、大作曲家の残した作品の懐の深さに改めて感服する。

アンコールはピアソラの2作品。一曲目は「ヴィオレンタンゴ」。ヴァイオリンの妖艶なポルタメントで始まり、中間部はまさにバンドネオンの独壇場。3+3+2のリズムでどんどんボルテージをあげ、言い切るように曲を終えると、会場から割れるような拍手がおこった。三浦の「バッハは内向きの青い炎、ピアソラは外向きの赤い炎」という言葉に納得。

「“俺のクラシック”という名前を聞いて、最初は断っちゃおうかと思いました(笑)」と話した京増も、素晴らしいメンバーとの共演で得るところも大きかったようだ。インスピレーションに溢れる刺激的な共演を重ね、さらに深みを増していくであろう音楽に期待が膨らむ。

我らが組長、石田の「どうもこんにちは。ありがとうございました。もう1曲やります!」の短い挨拶の後は、「リベルタンゴ」。「待ってました!」の客席に、気高さと、ちょっぴり毒も含んだ魅惑的な音楽を撒き散らすように奏で、大充実の公演を終えた。

他のどこでも聴けない、まさに『俺のクラシック』。大満足の観客から惜しみない拍手が送られた。『俺クラ・マチネ』公演ツアーは3月末まで続く。

取材・文(レポート)=正鬼奈保

《Special Message――スペシャルメッセージ》
日立・調布公演を終えた3人から、2公演終えての感想と2〜3月の公演(三島、栃木、福岡)を楽しみにされているお客様へメッセージが届きました!
 
石田泰尚、京増修史、三浦一馬

石田泰尚、京増修史、三浦一馬

 
⽯⽥泰尚
頑張ります。待ってます。
 
三浦一馬
こうして沢山の皆様へ”俺クラ・サウンド”をお届けできますこと、大変嬉しく光栄に思っております。「ツアー」というものの良いところは、回を重ねるごとに、どんどんアイディアが足され、内容がブラッシュアップされて行くところ。実はそれは我々演奏家だけの力ではなく、何を隠そう聴いてくださる皆様方のお力添えがあってこそ……!ぜひ、同じ時間・空間を共有しましょう。皆様のお越しを、会場にてお待ち申し上げております!!
 
京増修史
俺クラ初参加、そして石田さんとは初共演というダブルの緊張感がありましたが、なんとか乗り切ることができました。多彩なプログラム、ここでしか聴けないアレンジ、そして三者三様の個性が重なり合うことで生まれる化学反応こそが、何よりの魅力だと思います。それぞれの会場で生まれる音楽を、ぜひ全身で浴びていただければ嬉しいです。

 

公演情報

『俺クラ・マチネ』
 
出演:石田泰尚(ヴァイオリン)、三浦一馬(バンドネオン)、京増修史(ピアノ)
 
日程(2026年)
1月28日(水)14:00公演 日立シビックセンター音楽ホール(茨城)終了
1月30日(金)14:00公演 調布グリーンホール大ホール(東京)終了
2月24日(火) 14:00公演 三島市民文化会館大ホール(静岡)
2月26日(木)14:00公演 栃木県総合文化センターメインホール(栃木)
3月30日(月)14:00公演 FFGホール(福岡)
 
料金:
スペシャルシート(前方席、サイン入りポストカード付き)8,000円
A席 6,000円
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