木村多江、「ロックな姿が見たい!」に揺さぶられた 主演舞台『わたしの書、頁を図る』インタビュー

2026.4.29
インタビュー
舞台

木村多江

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俳優の木村多江が今夏、舞台『わたしの書、頁を図る』(東京・紀伊國屋ホール、2026年7月3日~19日)に主演する。図書館を舞台にした新作を書き下ろした作・演出・美術を務める小沢道成氏から「ロックな木村さんが見てみたい!」と出演を依頼され、「私の中にあるロック魂が、その言葉にブルブルルッと反応した」と運命を感じたという。役どころや、作品の魅力について聞いた。

――新作では図書館職員の柳沢町子を演じます。依頼を受けた時の印象から振り返っていただけますでしょうか。

とても嬉しかったです。舞台で主演と聞き、舞台の内容もうかがって、「こういうの、私やりたかったかも!」って思いました。ただ、「歌がある」と言われて、「大丈夫かしら」とちょっとひるみました。自分の恐怖心を拭えるか、1歩踏み出せるのか……考えながら、小沢さんと色々なお話しをさせていただきました。言葉を交わす中で、小沢さんが役者にすごく寄り添ってくださる感覚があって、この方だったら〝役を生きる〟ということにフォーカスをした演出をしてくださると感じて、お受けすることを決めました。

――すごい葛藤があったのですね。

そうですね。歌は1人芝居の時にも歌ったことがありました。でもそれはお家で鼻歌ぐらいだったんです。でも今回は台本を読んだら1番最初から、「あれ?私が歌ってる??」と思って、「大丈夫かなぁ」って思ったんです。でも昨年から歌のレッスンを始めているので、夏までに間に合わせたいなと思っています。

――自信がついてきましたか?

自信は……、つくのかしらって感じです(笑)。歌が得意な方も今回ご一緒するので、そういう方に支えていただきながらやりたいなと思っています。

――演出家の小沢さんから、依頼時に「ロックな木村さんが見てみたい!」と言われたとうかがいました。

そうなんです。イメージが違うかも知れないんですけど、実は私自身は結構ロックに生きようと思ってるんです。仲がいい坂井真紀ちゃんからも「多江ちゃんは、ロックだよね!」って言われていて、だから「ロックな姿が見たい!」と言われて、私の中のロック魂が、その言葉に「ブルルルッ」って揺さぶられました。「これは私のためにある役か!」と、恐れ多いんですけど、そんな風に感じました。

――演じる図書館職員の柳沢町子については、どのような印象をお持ちですか。

町子さんは自分が傷つかないようにどんどん鎧を着て、その鎧がもう体の一部になってしまっている人。その鎧も含めて自分だ!ぐらいの感じで、その状態が変わらなくてもいいって思って生きている人だと思います。でも物語の中では、ある男性が現れたことで着ていた鎧にチャックが付いていたことに気づくんです。「あれ?脱げたんだっけ??」みたいな。人としてすごく愛しい人だなっていう風にとらえています。

――お稽古はこれから(3月現在)ですので、また役作りのイメージはそこでも広がって行きそうですね。

そうですね。先日、台本の初稿を読んでいてちょっと分からない点があったので、小沢さんに質問をしたら、またちょっとブラッシュアップするともおっしゃっていましたし、内容的には変わっていく部分があると思います。最終的な台本が来たら改めて全体像が見えて、町子さんがどういう生き方をしてきたのか、どういう感覚を持って生きているのか、人とどういう風に関係を築いている人なのかが、もうちょっと明確になってくると思います。でも、いまとらえてる感覚もこのまま大事にして、いま感じているものを、ギュッギュッってちっちゃくして、もうちょっと多面的にして、町子さんの苦しみを私の中に入れて共感してから、舞台の上に立つ……という作業がこれから始まる感じです。共演者の方とのお芝居が始まれば、いま私が想像している町子さんが変わっていくとも思うので、その化学反応も楽しみです。皆さんがどんな風にそれぞれの人物を生きるのかっていうことを、お客さんの気持ちでも見たいです。

――繰り返し上演する舞台ならではの変化もありますよね。

はい。ドラマでも映画でも、そこに化学反応が起きた時はすごい興奮するんですけど、舞台はその科学反応プラス、お客様が作り上げているところがあるんですよね。お客様がライブで感じていることを、役者もキャッチしている。舞台上で、役者同士がキャッチボールをしているんだけれども、実はお客様ともなんとなくキャッチボールをし始めるっていうのは舞台ならではのこと。それは舞台のすごさだし、怖さでもあるし、面白さだなって思いますね。

――ここからは少し、役にからめて木村さんご自身のことをうかがわせていただきたいです。町子は図書館職員をしていますが、図書館や本にまつわるエピソードを教えていただけますか?

私の母は幼稚園の先生をしていたんです。幼稚園では〝みんなの先生〟で、私にとっても〝先生〟だったのですが、自宅でお母さんと子どもとして過ごす時、本を読んでもらう時間が、すごく大事な親子としての結びつきになっていました。その後の人生の中でも、節目節目で本に助けられました。誰かに何か差し上げたい時には、本をプレゼントするようにしています。贈る相手がどういうの好きかなとか、お子さんがいらしたら、お子さんにその方が読んであげるとしたら、どれがいいかしらって。その方の人生にちょっと入り込むような本を本屋さんで探す時間が私はすごい好きです。図書館も好きです。デジタルもありますけど、紙を触りながら読むのが好き。大切なものの1つですね。

――町子は図書館に訪れる青年・岸口慶太(味方良介)との出会いをきっかけに新しい扉が開いていきました。木村さんご自身も町子のように転機となった出会いなどはありましたか。

昔は私も町子のように鎧をいっぱい着ていました。仕事は一生懸命やるけど、傷つかないように人との関係はなるべく持たずにいたんです。共演者の方とも表面上だけのお付き合いで、自分の居場所を見つけられずに過ごしていました。その時に『ぐるりのこと。』(2008年公開の初主演作品)という映画のお話しをいただいて、この役をやるためには自分の扉を開けないとできないと感じて、開けてみようと決意をしました。感情をさらけ出さないとできない役だったので、素っ裸になってすべてを出し切った時に、初めて「私は役者のスタートのラインに立てたな」と思いました。自分の居場所はここなんだ。この場所にいていいと言われた気持ちがしました。

――子供を失いうつになった女性の痛みを壮絶な姿で表現しておられました。悲しみと再生を描いた作品でした。

橋口亮輔監督が、「この役は僕なんです」とおっしゃられて、それを聞いた時に私は、監督のためにもやりたいし、自分自身のためにもやりたい。そして、この作品は生きづらさを抱えている方たちの希望になるだろうと思いました。だから私は自分がどんなに苦しくても、自分自身が着ていた鎧を脱がなくては。抑えていた感情の蓋を開けなくてはって思って飛び込みました。

――木村さんご自身が鎧を身につけるようになったきっかけはどのような理由からだったのでしょうか。

弱い自分、周りとうまくできない自分に苦しんでいました。だから毎日いっぱい小さなことでも傷ついていたんです。誰かと仲良くなって、「ご飯に行こう」と話していたのに、予定を出したら返事がないとか……。ヒュッと伸ばした手を、パンってはたかれたみたいな、そういう経験をいっぱいしていたんです。だから傷つかないために鎧を身にまとうようになった。(『ぐるりのこと。』を経て)色々開いてからは、困ってる人がいたら手を差し出すし、「手を握って」って言われたら握る。握ったその手を相手が離したいと思ったら、離されてもいいじゃんって。自分が強くいればいいんだって思えるようになってからは、傷つくことを恐れなくなりました。

――劇中では〝歌〟も大切なキーワードのひとつです。木村さんがエネルギーをもらうなど、大切にしている1曲を教えてください。

私はSuperfly さんがすごく好きです。越智(志帆)さんが、力強い声でいやしてくれるので、いつもエネルギーをもらっています。実はプライベートでも交流しているのですが、彼女自身が大変な時でも力強く歌っている姿を見て、よりすごさを感じるようになりました。人間ってみんな弱いし、みんな未熟だし、完璧じゃない。彼女の歌を聴いていると、1人じゃないって思えるようになりました。1番好きな曲は「タマシイレボリューション」です!

――お話しの仕方は静かですが、細い体の中に燃えるロック魂を感じました。

役者って、今日は経理の役だったのに、明日は営業とか全然違う環境にポンッと置かれるので、現場に行く時、気合いを入れたい時に聴いています。

――最後に舞台を楽しみにしている人にメッセージをお願いします。

1人1人みんな価値観が違って、みんな違うんだけど、みんな違っていいんだよねって、こういう人たち、みんな一緒に生きているんだよねって感じる作品だと思います。みんな愛おしいなって思えたら、もっと優しい気持ちになれるのかなって。あとはデジタルとアナログが融合していて、ちょっとシェイクスピア劇のようなところもあるんです。古典と現代が混ざっていたり、人間の表と裏だったり。そういう2面的なところもこの芝居の面白いところだと思います。すごくステキな舞台になると思いますので、ぜひ劇場に足を運んでいただきたいです!

取材・文=翡翠 撮影=福岡諒祠
スタイリスト=森保夫(ラインヴァント) ヘアメイク=谷口ユリエ

公演情報

『わたしの書、貢を図る』
 
作・演出・美術:小沢道成
出演者:木村多江/味方良介 光嶌なづな 中井智彦 /坂口涼太郎 猫背 椿

公演日程:2026年7月3日(金)〜7月19日(日)
会場:紀伊國屋ホール

企画・製作:株式会社メディアミックス・ジャパン(MMJ)
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