今井文也「純文学と音楽、わちゃわちゃとした太宰と檀の掛け合いを楽しんで」 朗読劇『桜桃探偵舎』第二弾ビジュアル撮影レポ&インタビュー

インタビュー
舞台
2026.4.3

太宰治役:今井文也インタビュー

今井文也

今井文也

――今井さんは、前回公演にも太宰役でご出演されていらっしゃいましたが、前回公演を終えたときの感想を教えてください。

(本作を制作している)アメツチさんが上演している別のシリーズは、出演するキャストが多く、ステージの見栄えも圧巻でしたが、このシリーズは、キャストが約半分ほどです。その分、音や空間の使い方に広がりを感じた印象でした。

――人数が少ないことで難しさが増すということはあるのですか?

それはあまり意識したことはないです。むしろ、待っている時間が少ないので楽だと思います。セリフを話している時間が長い方が、集中して役に取り組めるので、僕は好きです。前回の『桜桃探偵舎』では、太宰は会話よりもモノローグが多かったんですよ。浦(和希)さんが演じる檀と会話をすることはありましたが、会話劇で進めていくというよりは、要所要所で刺しに来るという役割だったので、おいしい役ではありました(笑)。

――太宰というキャラクターについては、どのようにとらえていましたか?

太宰は数々の作品でさまざまなキャラクターとして描かれていますし、僕自身もこれまでも演じる機会がありましたが、この作品では、自堕落な部分を意識して演じようと思っていました。生気がないというか、生きているのか死んでいるのか分からない、絶妙なラインを作っていこうと。溌溂としたイメージのある人物でもないので、声優にあるまじきことですが、空気感や雰囲気を大切にしたいと思って演じました。背すじの曲がり方や息の漏れ方で彼の持つ雰囲気が出るのではないかと思ったんです。それから、側(がわ)からも作っていきました。

――朗読劇とはいえ、ステージに上がっている以上、側(がわ)、つまりビジュアル的なことも意識されていたということですね。

そうですね。立ち姿や振る舞いは意識しました。個人的には、足を組める役の方が舞台上では楽なんですよ。でも、太宰は組めない。組むと「生きている」感が出てしまうんです。生き生きとして見えるので、組むのをやめていました。それから、待ち時間はどうしても手持無沙汰になってしまいます。舞台と違って、黙っていなくてはいけないし、反応もしてはいけない。芝居をしてはいけないまま座っているならば、いない方が舞台の見栄えもよくなると思って、出はけを増やしてもらえるように相談もしました。

――なるほど。足を組む、組まないでイメージが変わるんですね。

足を組める役のときは、足の組み換えで感情を見せたりもできます。逆に、組まないで背すじをピンと伸ばして座っているからこそ威厳が生まれることもあって、本当に役によりけりですね。

――朗読劇の場合、お稽古期間も長くはないと思います。だからこそ、その場の空気ややりとりを大切にされているのでしょうか?

前回は稽古は1回だけでした。基本的に朗読劇は稽古が少ないですが、それにはメリットもデメリットもあると思います。稽古を重ねた方が深みが出るという方もいらっしゃれば、僕たちの世代ではあまり稽古をしすぎてしまうと、ただきっかけで話すだけになってしまうので、その場で新鮮な掛け合いをする方が良いという人もいます。これが演劇だったらまた考え方は変わってくると思いますが、朗読の現場ではどちらが良いのかは意見がわかれるところだと思います。

――今井さんとしてはいかがですか?

稽古をしなくていいと言ってしまうと語弊がありますが(笑)、新鮮にやり取りをしたいです。朗読劇は基本的に台本を持っていることもあり、1回1回の掛け合いで何かが変わっていくのかと言われると、どうなんだろうと思うんです。その場で動きが変わるということもないし、内容をなぞっていかなければいけないものなので、そう考えるとやりすぎない方がお互いに新鮮味があるのではないかなと思います。

――檀役は前回に続いて浦さんが演じます。再び、バディを組むことへの楽しみを聞かせてください。

実は芝居でご一緒する機会は、それほど多くないんですよ。わちゃわちゃする番組やイベントではありますが、お芝居でがっつり掛け合いをするという機会は少ないので、新鮮です。この作品は、間違いなく檀の方が大変だと思います。前回も冒頭からずっと叫んでいましたし、太宰の倍はモノローグがある。なので、先輩ですが、「頑張れよ」と思いながら見守っています(笑)。

――今井さんから見た浦さんはどんな声優ですか?

1現場に1人いた方がいい人です。その場の空気が明るくなるし、誰とでもなじめますし、僕のように斜に構えていないので、お芝居で気になったところもまっすぐに伝えてくれます。これは僕の勝手な印象ですが、いい意味で手の抜き方があまりうまくないのかなと思います。現場が続いても手を抜かず、同じテンションでやり切ってしまう。僕だったらきっと、テンションを抑えていこうと考えてしまいますが、どんな時も全力で取り組める人なんだろうなと思います。

――今回の掛け合いも楽しみにしています! ところで、本作はシリーズ2作目となる公演です。シリーズならではの面白さはどんなところに感じていますか?

僕の場合は、シリーズで同じ役を演じるということはあまりないんですよ。同じシリーズであっても違う役で出ることも多いので、こうして同じ役を続けて演じるのは初めてかもしれません。今回は、過去の物語ということもあり、前回培ったものがそのまま活かせるかと言われると、それもまた違う気もします。ただ、太宰は、作り込み過ぎずに周りの流れに沿って雰囲気で作れる、ある意味では演じやすいキャラクターです。だからこそ、「お客さまが飽きないように」と考えて、少しスパイスを足してみたり、冷静に組み立てて、この新しい作品で太宰をどう見せていくのかも楽しみの1つです。

――いろいろなお仕事がある中で、朗読劇は今井さんにとってどのような存在ですか?

最近は、増えましたよね、朗読劇。令和の時代に朗読劇が流行るというのは意外にも感じますが、きっと手軽に壮大さを出せるメディアだからなのかなと思います。舞台ほどの作り込みは必要ないけれど、視覚での楽しみを作り込もうと思えば作り込むこともできる。良くも悪くも作り手の手腕が問われるのだと思います。舞台は、演出が複雑だったり、難しい表現がある作品もあり、見慣れない人にはハードルが高い場合もあります。ですが、朗読劇は舞台よりも情報が少ないので、誤魔化しが効かないんです。だからこそ、見慣れていない人も入り込みやすいと思います。その分、出演者としての重圧も感じますが(笑)。それに生ならではのプレッシャーもあります。

――公演がスタートしたらやり直しは効かないですもんね。

やり直しも効かないですし、後から差し替えもできない。もし、噛んでしまったら、それまで作ってきた流れを自分で切ることになってしまう。しかも、そういうときに限って長台詞だったりするんですよ(笑)。「板の上には魔物がいる」とよく言いますが、その魔物は朗読劇にも出現します(笑)。

――お客さまが目の前にいるというのもまた、生の朗読劇ならではなのではないですか?

僕は、お客さまが目の前にいることをあまり気にしたことはないです。役が見ている風景は、お客さまがいてもいなくても変わらないので。強いていうならば、お客さまが多いから空気が乾燥しているなというくらいです(笑)。

――この作品は生演奏ですが、生演奏についてはいかがですか?

「音楽に引っ張られる」ということは感じます。生になると余計な感情が省かれて、生々しさや臨場感がより伝わってきますよね。演奏される方々は、我々の芝居をきっかけにして演奏をされるので、そういう意味で言うとお互い引っ張られて表現が変わることはあります。ただ、急に大きな音がすると、驚いてしまうんですよね(笑)。太宰は絶対に驚かない人なのに、ビクッと驚いてしまって。でも、生の方が総じていいと思います。

――客席から観ていても、生演奏の方が感動も深くなるように思います。

やっぱり臨場感が全く違いますよね。でも、観ている人の中にも大きな音にびっくりする人がいると思いますよ(笑)。

――本作では、数々の文豪たちが登場しますが、今井さんご自身は純文学や小説を読む機会は多いですか?

全く読まないですね(笑)。もちろん、太宰の「人間失格」などの代表作は読んだことはありますが、日常的に嗜んでいるわけではないです。それは、ハマると時間が取られてしまうからというのが一番大きい理由です。それに、純文学や小説はちょっと体力がいりますよね。哲学書や心理学の本の方がまだとっつきやすいように思います。没頭する時間を作らないといけないので、ふらっと外でちょっと読もうかなという手軽さがなくて。嫌いではないんですよ。読み始めたら、ハマってずっと読んでしまうのですが、スイッチを入れてようやく読み始めることができる。自分でもいつからか分からないですが、作品を読むのに体力がいるようになってきました。例えば、登場人物たちが悲惨な運命を辿ったり、死ぬのが分かっているような、誰もが泣いてしまう作品を観るのって、疲れませんか? 僕の中での文学はそれに近いところがあるんだと思います。

――ありがとうございました! 最後に公演に向けての意気込みをお願いします。

4月19日、日経ホールにてお待ちしております。貴重な日曜日ですが、純文学と生演奏、それから、わちゃわちゃとした太宰と檀の掛け合いも楽しんでいただけると思います。前作をご覧になられた方はもちろん、今、気になっているという方もぜひお越しいただければ嬉しいです。

取材・文=嶋田真己

公演情報

『桜桃探偵舎 天沼心中 太宰治と檀一雄の事件簿2』
 
日時:2026年4月18日(土)〜4月19日(日)
場所:日経ホール
 
キャスト:
4/18(土)
太宰治 岡本信彦
檀一雄 大塚剛央
中原中也 堀江瞬
林八郎 松岡禎丞
北一輝 野島健児
坂口安吾 森久保祥太郎
 
4/19(日)
太宰治 今井文也
檀一雄 浦和希
中原中也 村瀬歩
林八郎 神尾晋一郎
北一輝 櫻井孝宏
坂口安吾 安元洋貴
 
演奏:
吉田健一(吉田兄弟)(津軽三味線)
森保まどか(ピアノ/出演)
村田恵子(ヴィオラ)
 
スタッフ
原作 イシイジロウ
脚本 小田竜世
演出 扇田賢(Bobjack Theater)
キャラクターイラスト りさ湊
音楽 水流ともゆき
企画・プロデュース 安藤匠郎
製作 アメツチ
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