ホリエアツシ×橋口洋平×石崎ひゅーい 歌もトークも空気もグルーヴしまくりの弾き語りツアー『go-show』ファイナルをレポート

2026.3.26
レポート
音楽

写真左から:石崎ひゅーい、ホリエアツシ、橋口洋平 撮影=大橋祐希

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弾き語りライブgo-show -歌楽反応- vol.2  
2026.3.17  渋谷CLUB QUATTRO

連動するポッドキャスト番組でお馴染みなジングルのロングバージョンが流れ、登場したホリエアツシと橋口洋平がいきなり当たり前のように横並びでトークを始めたのを見て、その脱力感と息の合いっぷりを目の当たりにして、「そう、これこれ!」といきなりご満悦な筆者。まだ2回目だというのに、何を古参ヅラしてんだ?と言われたらその通りだが、観客たちのリアクションを見る限り似たような心境の人はかなりいたと思われる。かつて阿佐ヶ谷ロフトAで始まった、ホリエ&橋口の2人+ゲストによる弾き語り&トーク(&飲み)イベントがリニューアルを果たしてから約1年。待望のvol.2はゲストに石崎ひゅーいを招いての開催、この日は東名阪ツアーのファイナルだ。

ほどなく石崎もステージへ合流。「トラウマ」を「タワマン」と聞き間違える、「担ぎ上げる」と言おうとして「カツアゲ」と言ってしまう──そんな会話中のふとした瞬間を拾い、擦っては盛り上げていく。まあ、あらためて文字に起こすほどの内容でもないけれど、いつまでだって聞いていられる緩めのテンションのトークは、ポッドキャストのまんまだし、3公演目であるためグルーヴも仕上がっている。明確にボケとツッコミがあるわけではなく、でもどちらかがボールを投げればすかさず乗っかったり切り返したりする阿吽の呼吸は、昨年と比較しても明らかに磨きがかかっており、特に仕切り役がいないからなのか、よりフリーダムに転がっていくのが面白い。

たっぷり15分くらい喋ったあとフロアも交えて乾杯をして、1番手としてステージに上がったのは橋口。フロアの上手(かみて)側の一角にはサブステージとして長机と椅子が設置され、残りの2名はそこからライブを見守り、適宜コメントやガヤを入れていくという『go-show』ならではのスタイルである。1曲目はポッドキャスト中で募集したリクエスト曲から「面と向かってはなかなか言えない気持ちを僕らは歌にしている」という橋口の自覚がそのまま歌詞に乗った「歌にするから」を、染み入るようなアルペジオの音色とともに歌った。話している時とあまり変わらない声色なのに、自然と豊かな倍音を得た歌声は、穏やかでいながらパワフル。

「弾き語りではあんまりやらない」という「正義と悪」では場内から送られるクラップに乗り、リズミカルな中にブルースも香る大人なプレイを繰り出す。フォーキーにしっとりと歌い上げた「君だ」に続いては、石崎の「あなたはどこにいるの」とストレイテナーの「叫ぶ星」をカバー。途中から“ご本人登場”するスタイルの共演で大いに盛り上がる。前者はマイナー調のコードが導く力強い疾走の中に、哀愁の歌謡テイストとロック魂が滲む石崎の真骨頂なナンバーで、後者はバンド界隈でもよく独特だと評されるホリエのコードセンスとメロディメイクが、橋口が歌うことでより新鮮に聴こえてきた。ラストは「いまや代表曲になってる一曲」との紹介から「恋だろ」。この日いちばんの優しい立ち上がりから、朗々と歌声を響かせるサビへと至る真っ直ぐなラブソングでライブを締め括った。

2番手は石崎。大真面目な顔をして間を外すような発言を繰り返したり、同い年の橋口を弄ることで「やられ顔」を引き出しまくったりと、この日の『go-show』を終始和やかで笑いに満ちた空間にした立役者は、もちろんパフォーマンス面でも素晴らしかった。まずいきなり「さよならエレジー」を放り込んで場内を沸かせ、でっかいクラップのさらに上をいく思い切りローを効かせたアコギの音色が走り出す。ややハスキー成分の入った直線的でハリのある歌声は記名性抜群。橋口の「かっこいいもん。今までの失言が全部許せる」との評価も納得である。

続いては翌日にリリースするニューアルバム『Tokyo City Lights』から、表題曲と「宝島」を続けて演奏。どちらもコードの展開は控えめでループ主体の音作りながら、メロディと歌声でたっぷり抑揚とストーリーをつけていく構成となっており、キャリアを重ねた最新形の石崎ひゅーいを堪能できる一幕に。「宝島」の《ありったけの丈が短くなっていく》はホリエも絶賛の名ラインであった。「『go-show』って楽しいね。あったようでなかったよね。見たことないもん、こんなライブ」と率直に嬉しさを語った後はリクエスト曲「星をつかまえて」をエネルギッシュに1フレーズ演奏し、そのままコール&レスポンスも交えた「夜間飛行」へ。さらに場内をあたためきったところで、『go-show』が何年も続くようにという願いを込めた名バラード「花瓶の花」は、抜群の求心力を備えた名演だった。

ラストはホリエアツシ。歳を重ねても色褪せる気配が全くない凛然とした歌声で最初に届けたのは「シーグラス」だ。コードストローク中心のオーソドックスなスタイルながら、シャープでキレを感じさせるギターの音色も瑞々しく、続く「DAY TO DAY」の力強さと爽やかさをナチュラルに両立したプレイングも絶品。全員アコギの弾き語りではあるものの、音色もスタイルも三者三様。そこにそれぞれの美学やバックボーンを垣間見ることもできる『go-show』、実に豊かな時間じゃないか。

「ガソリンや石油が高くなることよりも、ただとにかく、戦争をやめろと思ってます」──そうはっきり口にしてから演奏したのは最新EPからの「Next Chapter」。一人ひとりがより良い未来を思い描き、そこへ手を伸ばそう、選び取ろうというメッセージに込められた反戦の意志は、2026年3月の夜にとてつもなく輝かしく響いた。そこから、過去にバンドとしてもカバーした秦基博「鱗」をカバーして大いに盛り上げたあと、弾き語りではあまりやらないという曲ながらリクエストに答えて披露したのは「WHITE ROOM BLACK STAR」だ。ポストロック的な内向性とアンセミックな高揚を併せ持つ、いわゆる歌ものとは一線を画したはずの楽曲を歯切れの良いプレイとリバーヴを効かせた音作りで届けると、フロアのあちらこちらから拳が突き上がる。その勢いのまま、イントロでさらっと「最後の曲です」と告げて「REBIRTH」でフィニッシュ。

アンコールでは3人揃って登場。みなさんのおかげで最高のファイナルになった、何年も続いていくようなイベントになったらいいな、と率直な想いを口にした後は「今日は特別に2曲やります」と宣言、スピッツ「楓」と『go-show』のオリジナルテーマソングを届けてくれた。異なる個性を持った3つの歌声がフレーズを歌い分けながら、時折ハーモニーを重ねていく様子は、とにかく耳が幸せと言うほかない。『go-show vol.2』は終始ハッピーでハートフルな空気に包まれたまま終わりを迎えたのだった。前身イベントがあったとはいえ、2度目にしてこの老舗の味わいである。石崎登場回のポッドキャストで話題になっていた某キャンディじゃないが、「特別な存在」として末長く愛されていってほしい。


取材・文=風間大洋 撮影=大橋祐希

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