ロマンティックで抒情的な古典タンゴの世界 メンバーに"当て書き"!? 楽団のカラーを映すアレンジにも注目~公演迫る三浦一馬五重奏団(キンテート)見どころは?

インタビュー
クラシック
18:00

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2025年末のファン感謝祭でオール・ピアソラ・プログラムを組んで15周年を祝った三浦一馬五重奏団(キンテート)。2026年は、ピアソラだけでなく、古典タンゴやコンチネンタル・タンゴも披露する。三浦一馬に5月の栃木県文化総合センターやめぐろパーシモンホールでのキンテートの演奏会についてきいた。

――5月10日(日)の栃木県総合文化センターのコンサートでは、ピアソラだけでなく、ほかの作曲家の作品も演奏されるのですね。

いつも聴いていただいている我々の五重奏は、ピアソラが自作自演するために考えた編成ですから、演奏する作品はピアソラが核になっています。ただ、今回会場となる栃木県総合文化センターは私がデビューしたての頃から毎年のように呼んでいただいていた、特に思い出深い場所。昨年久しぶりにキンテートとして公演ができ、その時はALLピアソラだったので、今年は趣向を凝らして、前半にピアソラと違うものを演奏しようと思いました。それで、今回、2018年頃にツアーで演奏した古典タンゴの楽譜を久しぶりに引っ張り出してきました。

――古典タンゴとはどういうタンゴですか?

ピアソラは「モダン・タンゴ」の代表ですが、「古典タンゴ」は、今回のプログラムから挙げるなら、例えばロドリゲスの「ラ・クンパルシータ」が王道ですね。タンゴは、この「ラ・クンパルシータ」をはじめ、嘆き悲しむような作品が多いように思いますが、今回我々が演奏する「古典タンゴ」は、どちらかというとロマンティックで麗しく叙情的です。

若くして亡くなったマデルナの「降る星の如く」は、ピアニスティックでロマンティック。豪華でスペクタクルな作品です。「想いの届く日」を作曲したガルデルは、作曲家、歌手、俳優として、タンゴ史では欠かせない存在ですが、不幸な飛行機事故で亡くなりました。この曲は、歌手が歌ったり、ピアノで弾いたり――バレンボイムも演奏しています――よく演奏されています。もともと映画音楽のサントラとして人気を博しました。あと、今回のプログラムには入れていませんが、ガルデルでは「首の差で」もありますね。これも映画から派生した作品で、タイトルである「首の差で」はもともとは競馬の用語ですが、裏の意味では、「あと一歩で恋敵に負けてしまった」ことを表します。これらの作品には、タンゴに一貫して流れている、心の奥底に抱いている思いがあります。

「ラ・クンパルシータ」は、タンゴの黎明期からの代表曲で、伝統の中でそれぞれの解釈があります。ブエノスアイレスにはたくさんのタンゴ楽団があり、楽団ごとにアレンジが違い、それぞれのファンがいます。そのアレンジが楽団のカラーになり、醸し出すものが異なるのです。だから、タンゴはアレンジ文化ともいえます。クラシックは、作曲家の書いた楽譜の原典に向かう文化ですが、タンゴでは、「ラ・クンパルシータ」でも原曲がどんなものか知られていない、不思議な存在の仕方をしています。それぞれの楽団の形において受け継がれる、口伝えのようなところがあり、伝統芸能のようなものともいえるのです。

「ラ・クンパルシータ」は、タンゴの歴史、伝統、様式のすべてを象徴していて、私もいつくかのバージョンに編曲していますが、いずれのバージョンも我々のキンテートでの演奏を想定したものです。当て書きといいますか、石田泰尚さんだったらどう弾くかなとか、メンバーを思い浮かべながら編曲しました。

――コンサートの後半は、ピアソラですね。

有名な曲とそうでない曲、緩急を織り交ぜました。今回も「リベルタンゴ」をお約束のように入れていますが、タンゴをあまりご存じでない方にもこの曲をきっかけとしてタンゴの世界に入っていただければと思います。

「ミケランジェロ」や「ムムキ」は、ザ・ベストの名曲に入るというよりは、どちらかというとB級の作品ですが、知られざる傑作です。疾走する「ミケランジェロ」とたっぷりと歌う「ムムキ」。この2曲は、性格もスピード感も違い、対照的で面白いです。

――メンバーについて話していただけますか?

ファン感謝祭は15年の節目でしたが、みなさんと長きにわたるお付き合いをして、これだけ続けてこられたことに感謝しています。本当に個性的な方々で、“○○レンジャー”みたいな、戦隊もののチームようです(笑)。

石田泰尚さんはカリスマ性があり、石田組で武道館コンサートをひらいたりされていますが、私にとっては、このメンバーのなかで一番長い付き合いの方で、高校生の私が、オーケストラとの初共演をしたときの神奈川フィルのコンサートマスターでした。石田さんは忙しいのに誰よりも努力する方で、言葉ではなく現場や楽屋での立ち振る舞いで、音楽家として、プロとしてどうやっていくかを教えられました。

先日、仙台でキンテートで3日間連続公演をしたのですが、全員集まったのが初日のゲネプロ(舞台リハーサル)。でも、パッと音出ししたところから、何の危うさもありませんでした。もちろん楽譜を押さえつつ、何の相談もなしにゲネプロからいろんなことをやり、誰かが何かを言う訳でもないのに、確実に2日目、3日目と音楽が変わっていきました。言葉ではない会話で微調整が反映されていきます。手前味噌ですが、昨日、今日のバンドではないということです(笑)。

――5月27日(水)のめぐろパーシモンホールでのコンサートでは、コンチネンタル・タンゴを演奏されますね。

タンゴは、ヨーロッパからの移民などによってアルゼンチンで生まれたものですが、その後、逆輸入されてヨーロッパに戻り、(ヨーロッパの)社交界で洗練されたものに生まれ変わったのがコンチネンタル・タンゴです。ドイツに多く、ジャーマン・タンゴとも呼ばれます。バンドネオンではなくアコーディオンを使うのが特徴で、コンチネンタル・タンゴ用のアコーディオンも存在します。バンドネオン奏者はあまり足を踏み入れないジャンルなのですが、コンチネンタル・タンゴには独自に発展した不思議な世界があります。

代表曲には「ジェラシー」、「碧空」、「奥様、お手をどうぞ」、などがあり、どれもヨーロッパで作曲されたもので、私たちがあまり足を踏み入れてこなかったレパートリーです。アルフレッド・ハウゼ楽団などのイメージですね。

――最後に5月10日(日)の栃木県総合文化センターでのコンサートに向けて、ひとことお願いいたします。

栃木県総合文化センターは、駆け出しの頃、そして数年前からまた毎年のように呼んでいただいて、私の大切な場所になっています。みなさんと楽しい時間を共有したいと思っています。

取材・文=山田治生 撮影=iwa

公演情報

栃木県総合文化センター開館35周年記念
『三浦一馬五重奏団(キンテート)』
 
日時:2026年5月10日(日)開演14:00(13:15開場)
会場:栃木県総合文化センター メインホール

プレミアム(サイン入りポストカード付き):6,500円(
税込)
全席指定:5,000円(税込)
 
プログラム(予定)
マデルナ:降る星の如く
ガルデル:想いの届く日
ロドリゲス:ラ・クンパルシータ
ピアソラ:リベルタンゴ
ピアソラ:ミケランジェロ’70
ピアソラ:ムムキ
 
※就学前のお子様の入場はご遠慮ください。
※車イスでご鑑賞の方は、ご購入前に栃木県総合文化センタープレイガイド(028-643-1013)までご連絡ください。
※やむを得ない事情により、出演者・曲目等が変更となる場合があります。
※会場には駐車場がございません。周辺の有料駐車場等をご利用ください。
 
【主催】イープラス/Moon
【共催】公益財団法人とちぎ未来づくり財団

公演情報

『三浦一馬五重奏団』
《コンチネンタルタンゴ&ピアソラ》
 
公演日:2026年5月27日(水)18:30開場/19:00開演
会場:めぐろパーシモンホール 大ホール
料金(全席指定)
プレミアム 7,500円
A席 6,000円
*プレミアム席:前方席・サイン入ポストカード付(サインは全出演者の自筆の印刷となります)
 
プログラム(予定)
ヤコブ・ゲーゼ:ジェラシー
ピアソラ:オブリヴィオン、リベルタンゴ 他
※全曲三浦一馬編曲
 
※やむを得ぬ事情により、出演者・曲目などが変更になる場合がありますのでご了承ください。
※一度お求め頂いたは、公演中止の場合を除きキャンセルできません。
※未就学児の入場はご遠慮ください。
※駐車場がないため、ご来館には公共交通機関をご利用ください。
 
主催:Moon/イープラス
共催:公益財団法人目黒区芸術文化振興財団
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