ミュージカル『complex』バラエティ豊かな日替わりゲストが決定&オフィシャルインタビューも公開
オフィシャルインタビュー
ーー初演、再演の映像をご覧になったり脚本をお読みになった感想をお願いします。
室:僕が演じる国木田威は無垢で真っ白な存在なんだろうなと思いました。だからいろんな影響を受けていろんな色に染まっていく。僕自身は無垢ではないんですけど、国木田は職を転々としていて、僕もいろいろなことをやってきたので、共感できる部分もあって、自分なりの国木田ができそうだなと。
麻央:これまであまり演じるチャンスのなかった等身大の女性の役で、面白そうだなと思いましたし、未完成な人が集まって、最後にまたみんなで成長していこうよって、人生を進めていく作品だなと感じました。座組の化学反応が楽しみです。
岡本:僕はまずお話を頂いた時に役名を確認して「ヨガ・パイナップル!?」「国木田威、蓉子、アキコといる中で俺はヨガ・パイナップル!?」と驚きまして(笑)。
室・麻央・大野:(笑)
岡本:「俺は飛び道具なのか?」と思いながら脚本を読んだら、すごい数の登場人物一人一人にドラマがあって、一つの役、一つの曲、一つのシーンをこの人たちと作っていけるんだと、楽しみでしょうがないし、いろんな感情がわきました。あと関西弁! ここにいる3人みんな関西弁マスターじゃないですか。
麻央:私はそんなことないです。
岡本:よかった。俺以外全員敵かと思ってました(笑)。これまで演じた関西弁の役は、セリフが少なかったり、曲で誤魔化せたりしたけど、この役はそうはいかないから。
大野:実は言葉は岡本さんに合わせて変えようと思っているんです。
室:いやいや、変えちゃダメです。
全員:(笑)
ーー『complex』初演は2005年。劇団「とっても便利」の10周年記念公演として上演された舞台です。そもそも作ろうと思ったきっかけはどんなことでしたか?
大野:当時、政治に関係のない若者が政治家になるための養成塾というものを知ったんですよ。なんじゃこりゃ?と思って、その塾に行く知り合いについて行って話を聞きました。そこでは政策とかではなく、こんなふうに準備してこんなことをしてこんな活動をする、という方法だけを教えてはる。それはとても奇妙だったんですよね。何がやりたいとかじゃなくて、政治家になって目立ちたい、認められたい、人の上に立ちたい。今ふうの言葉で言えば承認欲求ですね。でもそれって誰にでもあることだなと思ったのが出発点です。国木田の立候補をきっかけに、さまざまな人の夢や欲望が露わになってぶつかり合っていく群像劇が描けたらなと。
ーーその後2007〜2008年の再演、2023年の再再演を経て、今回、国木田役を主演にして、新たな形での上演となります。室さんと大野さんは今回が初めてですか?
室:そうです。でも実は「とっても便利」の劇団員の多井(一晃)くんとは共演したことがあって。
大野:僕は多井から室さんの話を聞いていたんですよ。「室さんて素晴らしい人がいるからうちの劇団の公演に、ぜひ客演に来てもらいましょうよ」ってずっとずっと言ってたんで、念願かないました!
室:ありがとうございます! 僕はそういうこと全然知らなくて、出演が決まって多井くんに電話してもドライに「よろしくね」くらいだったんで。ほんまツンデレですよ、彼は。
ーー「とっても便利」はもともとは大野さんが大学在学中に旗揚げされた劇団ですが、ミュージカルに興味を持たれたきっかけは?
大野:高校卒業して浪人してる時に軽い気持ちでバイトをして夏の間イギリスに行ったんです。僕は子どものころからチャップリンとビートルズが好きだったんで、そしたらイギリスでしょう? で、ロンドンといえば演劇の都なので、ちょっと観ようかなと思いまして、そうしたら劇場に入った瞬間磁場が違った。最初の音が鳴った瞬間うわーって泣いてしまった。それが僕のミュージカルとの出会いです。ちょうど『サンセット大通り』が初演をしていたんですけど、衝撃を受けまして。ミュージカルって明るくてハッピーなイメージだったんですよ。こんなおどろおどろしいドラマをできるんだ。ミュージカルってなんでもできるんだなと思いました。それで帰国してミュージカル劇団を作ったんですよ。だから僕はロンドンミュージカルにすごく影響受けてます。チャップリンも、彼のパントマイムには身体からの音楽性があってミュージカルとの共通点があると思います。この舞台に出演していただく峰蘭太郎さんは東映剣会のチャンバラの方ですが、チャンバラって本当にリズムが大事ですよね。チャップリンを歌舞伎化した『蝙蝠の安さん』の監修をさせていただいたり、7月に文楽『街の灯』の脚本・演出もするんですけど、歌舞伎や文楽もリズムと音楽でドラマを紡いでいくという意味では、日本のミュージカルなんじゃないかと思うんです。
ーー『complex』にも日本舞踊や文楽、殺陣などが取り入れられていますね。
大野:そうなんです。音楽でもなんでも、何を舞台にのせてもいいんだよっていうのが、僕にとってのミュージカルです。
ーー麻央さんと岡本さんはこれまでたくさんのミュージカルに出演されています。お二人にとってのミュージカルとは?
岡本:僕がこの世界を志したのは宝塚の影響です。
麻央:へえ!
岡本:ミュージカルの原点が宝塚で、だから僕はすごくきれいな世界を見て育ってきたんです。それとはまったく趣の違う、一人一人に魂が燃えて生きている『complex』みたいな作品もあれば、2.5次元舞台やディズニー原作の舞台もある。ミュージカルはいろんな型があると今は思っています。
麻央:家族の影響で『キャッツ』や『オペラ座の怪人』のような完成された作品を見て育って、宝塚では「美しいものを見せる」ということを第一にずっとやってきました。だから本当にこの等身大の人間を演じることに憧れがあって、研究しがいがあるなと思っています。バレエもあるし、日舞もあるし、私は殺陣はやらないですが、清家(三彦)先生が殺陣で入っていらっしゃることも楽しみで、それが一つの作品で成立するミュージカルって、本当に面白いですよね。
ーー室さんはいかがでしょうか。
室:今回が初ミュージカルです。ミュージカルは大好きな歌と踊りが役者として生かせる場所だと思うので、機会を頂けてうれしいです。本当に未知数すぎるんですけど、これを機にいろんなことを吸収したいです。
ーー室さんと麻央さんはご夫婦の役ですが、お互いのことはご存知でしたか?
室:今日初めてお会いしたんですが、すごく大人の女性だなという印象なので必死についていきたいです。夫婦役としては高低差カップルなので、壁ドンをしたいです!
大野:そんな場面はないのですが(笑)。
室:めちゃおもろいと思いますよ。見上げる壁ドン。
麻央:されてみたいのはある(笑)。私は室さんのお兄ちゃんの龍太くんと共演したことがあって、しっかりしていて礼儀正しい方だったので、弟さんはどんな感じかなと今日会えるのを楽しみにしていたんです。そしたらとても面白い方で、稽古が楽しみになりました。
ーー岡本さんと大野さんはダブルキャストでヨガ・パイナップル役を演じられますが。
岡本:作曲・脚本・演出をされるって、もうこの作品のマスターじゃないですか。そういう方とダブルキャストってだけでもうすごくプレッシャーなんですが、しかも僕の姉(演出家/岡本寛子)がチャップリンに倣ってハットを被ったりするくらいのチャップリン好きで、もちろん大野さんのことを存じ上げていて「あんた大丈夫?」「くれぐれも失礼ないように」とずっと言われていたんです。だからもう本当にプレッシャーを感じていますが、人生初のダブルキャストなので大野さんの背中を追いかけながら楽しみつつ切磋琢磨していきたいと思います。
大野:僕もすごくプレッシャーです。岡本さんはミュージカルの世界でご活躍の大プロフェッショナルじゃないですか。うちの劇団は学生演劇から始まってるので、どこか僕にはアマチュアの意識があって、それはいい意味で、知らないことにどんどん挑戦していけるという側面もあるんですけど、それでもミュージカル俳優としてプロの方にやっていただいて、自分の至らなさが目立ったらあかんな、一生懸命やらなあかんなってずっと思っています。それと、自分で書いた役だけど自分のことってなかなか気づかないものなので、岡本さんにやっていただいて、ヨガ・パイナップルはこういうお役だったんだって教わることになると思うので、それはとても楽しみです。
ーー最後に今の時点で「この作品の魅力はこういうことになりそう」というのを教えてください。
大野:歌で新しい世界を拓きたいと思っているのでそこを感じていただけたらなということと、演出的には曲もダンスもいろんなものをのっけて、舞台装置は非常にシンプルに、なんでもありの意欲的な作品にするので、いろんなパターンの楽しみ方ができるのではないかということ。それから、国木田が立候補することをきっかけに登場人物がそれぞれ胸に秘めていた夢が噴出しぶつかり合って、破壊され再生していく物語なので、お客様はその誰かには感情移入できるのではないかと思っています。僕たちはコロナ禍で日常がバンっと崩壊した瞬間を経験して、そこを乗り越えてきました。そういうふうな「暁の光が差し込む」ような気持ちになってもらえたらと思います。
岡本:お客様によって感じることも感じる瞬間も違う作品になるんじゃないかな。見終わった後語り合ってほしいなと思うし、僕もそのお客様同士の感想を聞いてみたいです。それから、演出と脚本と作曲を全部やるのって絶対大変だと思うんですよ。『RENT』のジョナサン・ラーソンが同じことをやってるんですけど、だから僕は大野さんを和製ジョナサン・ラーソンだと思っていまして、そんな方の作品の一部になれることが、何より楽しみです。
麻央:演じ手のこれまで生きてきた人生が鏡のように映し出される作品になるんじゃないかと思います。登場人物の誰かには「この子会ったことあるな」って親近感がわくんじゃないかな。そして、この先の人生で、ドラマチックなことから些細なことまでいろんな壁にぶつかったときに思い出して背中を押してくれる応援歌になるような、そんな舞台になったら面白いなと思っています。
室:国木田が主役ということになっていますが、登場人物全員にフォーカスが当たるので、絶対気に入っていただける役柄がいると思います。さらに歌と踊り、エンタメ要素も強いので、多くの方の感情を動せる作品です。観てくださった皆さんに愛される舞台になるように、全力で頑張ります!