山根綺・山口勝平・中井和哉、朗読劇『紫苑のもみじ』インタビュー~東京という土地が持つ“東京病”は「わかるけどわかりたくないもの」
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「日本の声優は世界に誇れる素晴らしい表現者・アーティスト」であると表現するのは、本作のプロデューサー、春口秀之氏だ。「声」が持つ力と、「場」が持つ歴史を大切にした朗読劇『READING WORLD』は、2020年より京都で毎年開催されており、京都・下鴨神社、舞鶴市、知恩院などで公演し、過去には佐久間大介(Snow Man)の出演もあり、大きな話題を呼んだ。今後は京都のみならず様々なゆかりの地で公演が予定されているという。
2026年7月17日(金)~19日(日)にはついに東京の地で『紫苑のもみじ』の上演となる。出演は、山根綺、佐藤流司、山口勝平、中井和哉、三石琴乃、伊藤かな恵、重松千晴、熊谷健太郎の8名。
公演を間近に控え、作品への想いや、「東京」という地が持つ力について語ってもらった。
僕は「リーディングワールドを応援したいおじさん」
中井和哉
――ご出演が決定した時のお気持ちや印象を教えてください。
山口勝平(以下、山口):最初にお話を伺った時、ちょうど朗読劇など舞台作品をたくさんやらせていただいているタイミングでした。元々は舞台出身の者なので、どちらかと言えば板の上で演じるほうが好きなタイプです。中井くんや三石琴乃ちゃんとか、最近でも別の朗読劇などでご一緒する機会があり、そこでの楽しかった思い出があるので、このふたりの名前があったのは僕の中ではすごく大きかったです。まだご一緒したことのない若い方も多くいるので、そのあたりもすごく新鮮なんじゃないかな。
山根綺(以下、山根):私はまず、マネージャーさんから電話で突然「朗読劇出る?」と。
中井和哉(以下、中井):怪しい誘いだ(笑)。
山根:「ぜひ出たいです!」という私の返事に、「じゃあやってみようか、 主人公!」と言われ驚きました。お相手の佐藤流司くんは何年か前にお会いしたことがあるだけですが、がっつりお芝居を一緒にするのはすごく楽しみだなと思っていたんです。そこから日が経って「他の共演者の方が決まりました!」と言われて資料を見ると、おふたり(山口さん、中井さん)の名前があり、「マジか……これは頑張らねば!」と思いました。最初は同世代くらいのメンバーで固まるのかなと思っていたんです。もう誰もが一緒にお芝居をしたいと願ってやまない皆様とご一緒できるということで身が引き締まる思いです。
――緊張ですか?
山根:いや、今は楽しみな気持ちです。緊張している場合でもないので頑張ります。
中井:今回は『READING WORLD』と『VISIONARY READING』さんのコラボということで。僕はもうリーディングワールドに関しては、なんて言うんでしょう?
山口:ベテラン!
中井:ベテランじゃなくて~! 僕の立場って難しいんですよ。「リーディングワールドを応援したいおじさん」なんです! いつも何かできることがあれば、力になれることがあればっていうことを言っている立場の人と思ってもらえば。だから、朗読劇に実際に出演するっていう、一番ダイレクトな形での貢献ができるっていうのは本当に嬉しいなと思いました。今回の作品はちょっと特別で、過去作との関連性みたいなものもあるので、そういう意味で2つの作品をつなぐ意味合いとして、僕は居てもいいんだろうなと思いましたね。
――脚本や台本を読んだ時の感想はいかがでしたか。(※インタビュー実施時は台本が配られた直後くらいでした)
山口:まだ一読したばかりなので、この本が伝えたいことやその根底がどこにあるのかを探っている状態ですね。さっき中井くんが言っていた「2つの作品をつなぐ要素」などそういう関わりがあるのかと思うと、またちょっと感じ方も変わってくると思います。単なる「親子の絆モノ」というだけではないような気がしています、というのが正直なところ。役どころとしてはとても面白そうですが、一本筋道を立てて物語に溶け込んでいく作業をする。そのためのきっかけを探っています。
山根:まず最初に思ったのは、「登場人物全員のキャラが濃い!」ということです。これらのキャラクターを、キャストの皆様がどんな味付けをして演じるのかというところがすごく楽しみです。私が演じる「もみじ」は私と同い年で、「東京病」というワードが出てきます。上京してからの時間や生活、感じてきたことを思い出して、「すごくわかるな」と同調する気持ちでした。「東京病」はこの作品の造語ではありますが、一番キャッチーでわかりやすく印象に残っている言葉だと思いましたね。それ以外の部分では稽古をして、みなさんと時間を共有してから作りこみが生まれるんでしょうけども。
山口勝平
――「東京病」は身近な存在でしたか?
山根:おそらくみんな身近に思えるものだと思います。同世代の人間にとっては「わかるし、わかりたくない」もの。
――山口さん、中井さんにとっては?
中井:うーん、僕はそういうのにかからないように定期的に故郷に帰ってますけれど。
山口:五月病みたいなもの? あまりピンとこないかなぁ。僕が繊細じゃないだけかもしれないですけど……。
山根:「憧れの東京で、美大出て就職して、それなりに働き、遊び、食べ、飲み、夜は配信ドラマを見て溶かして、そういう独身生活のループから逃げ出したかったんだ」というセリフがあります。東京という巨大なジャングルの中で将来の悩みや漠然とした不安を感じて呆然とする瞬間、っていうのが私はあったんです。そういう不安定なモヤモヤを振り払うように、何かに熱中してみたり時間を溶かしてみたり人に会ったりして、娯楽で自分の時間を埋めていくような……。すごく令和っぽいワードでもありますね。
山口:多分、僕らの世代・時代だと東京に出てくるときは目的を持って来ている。僕でいえば「役者になりたい」とかね。大学に進学しに来てそのまま東京で就職するという感じではないんだよね。
中井:なるほど。
山口:役者になろうが上京の理由だから、それからずっと芝居の勉強。そういう世界に身を置いているから、あまり「東京病」のようなことを感じる時間がなかったのかもしれませんね。
中井:「東京」という土地が持つ意味が違ってきているんでしょうね。
山根:あと29~30歳って自分と周りとのライフステージが大きく変わるような年齢なんですよね。そんな中「自分はどうしたい?」と日々問われ続けているような感覚なんです。
山口:年齢感的なこともあるのか。
山根:そうですね。そういう感覚の機微のようなものもリアルに描かれているのかもって思いました。答えは出ないかもしれませんが、もみじはどんな決断をするのかっていうのも、この朗読劇で一緒に体験してもらえたらと思いますね。
山根綺
――令和ならではですね。
山根:SNSなどで情報が溢れすぎている時代でもあるので、人の生活の様子が一瞬で分かってしまい、周りと自分を比べやすすぎるんだと思います。
山口:いらない情報も簡単に入ってくるんだよね。
山根:見なくていい、知らなくていいこともいっぱいあるはずなんですが、取捨選択し辛い面もありますよね。アプリを開くとそういうものがわっと入ってくる。東京という土地も同じような性質をもっているのではと思います。
――中井さんにも台本脚本を見ての感想をお聞きしたいです。
中井:話がすごく戻った!(笑) これはドラマとして、はっきり起承転結がある形のお話ではないと思うんです。山根さんが言っていた、濃い個性を持つキャラクターたちがどう関わってどう会話し、どんな空気やテンポが生まれるのか。そういうところが重要で、そういうところを楽しく感じてもらえばいいのかなと。だから稽古大事だなって思います! これから台本を深く読んでいく作業になるんですけども……リーディングワールド大好きおじさんからすると変わるんですよ、台本。
全員:(笑)
――朗読劇の稽古ってどれくらいかかるものなんでしょうか?
中井:作品によりけりで、全然違いますね。
山口:少ないものは1回だけとか、良くて2~3回くらいでしょうか。出演者が多くいるものは当日本番でしか会わないなんてこともありますよね。
――役作りの仕方とかも、通常の舞台とは違う?
山口:そうですね、同じキャストで組みますなんて時はいろいろ試せたりしますが、そういう意味ではあまり気負った役作りはできないと言いますか、ある程度間口を広げた役作りにはなってしまいますね。
なんて贅沢な場所にいられるんだろう!
山根綺
――共演者の方についてのお話をお聞きしたいです。
山口:中井くん、琴乃ちゃん、(伊藤)かな恵ちゃんが、アニメの現場でよく一緒になってるくらいで、他の方とがっつりご一緒するのは初めてのことが多いです。山根ちゃんも『ONE PIECE』に来てくれたのは知ってますけど、特に絡みがあったわけではないし。そういう方と芝居作りができるという意味では、すごく新鮮な形で取り組むことができます。さっきの「東京病」の話でもそうですが、自分が知らないことが新しい発見になっていくので、そういう発見がたくさんあるといいなと思っています。
山根:ほかの現場でお会いすることはありますが、朗読という舞台の上で掛け合いのお芝居をする状況では皆様初めまして、になります!
中井:僕も関係性としては勝平さんがおっしゃったのと同じ感じですかね。ただ、すごくベテラン枠に入れられているような気がしていますけど、僕が勝平さんや三石さんと共演するのも緊張するんですよ!! ですから頑張ってふたりについていきつつ、若い方とご一緒するのも楽しみだなと思っていますね。山根さんとも同じ事務所なのに、しっかりとした共演はなかったですし。
山根:はい、そうなんです。スーパースターすぎる方です。事務所の役者全員が「おい山根、代われ」って思うくらい、なんて贅沢な場所に私いられるんだろうって。それは本当に思っているので、有難く目をガン開いていろんなものを吸収したいと思います。
山口:ちょっとまんざらでもない?(笑)
中井:違いますって! 窮屈な事務所に思われてしまったらどうしよう~。
――佐藤流司さんも2.5次元舞台やアーティスト活動をされているイメージでしたので、声優のみなさまとご一緒に朗読劇に出演されると聞いて驚きました。
中井:いわゆる声優ではない方とも絡むので僕はすごく興味深いです。知らず知らずのうちに「声優さんってこんな感じのお芝居しがち」みたいなパターンに自分も入ってしまっているなと気付かされたりすることがあるので、今回を通して何かまたひとつ気付きがあれば面白いなって思ってますね。
ファンの方の入場待機列に並んでいました
山口勝平
――今回の会場周辺(日本青年館や神宮球場)に思い出はありますか?
中井:勝平さんはエピソードがあるんですよね。
山口:そう、日本青年館は、デビューして一番最初、『らんま1/2』という作品の発表イベントで行ったんですが、どこから入ればいいのかわからなくて。あの頃はファンの方々同士が自主的に誘導係などをやっている時代で。
中井:自主的に!? すげぇ!
山口:コミケのようなボランティアでやっている方々ですね。最初にどこに行っていいのかわからなかったんだけど、その方にこっち(一般入場待機列)に並んでくださいって誘導されたので、そのまま並んでました。
中井:違う違う、場所が違う!(笑)
山口:デビューしたての本当に何も知らない時だったので、あれよあれよという感じで出されたステージが日本青年館という場所だったので、思い出深いですね。上京して多分初めて野球を見に行ったのも神宮球場でした。舞台の本番期間中に、師匠の肝付(兼太)さんに「夜野球見に行こう」と誘われて。行ったことがなかったので、わー!ってすごく楽しんでしまったら、翌日全く声が出なくなってしまい……。そんなオホホな思い出もあったりしますね。
山根:私はあまり縁の薄い場所です。事務所が近いので通ることはしますね。
山口:昔はフリーマーケットがあったりしたけど、今は開発されてきれいになったんだよね。明治公園っていうのかな。おしゃれなカフェやサウナとかもあるみたい?
中井:僕は神宮球場に、今は北海道日本ハムファイターズに所属している清宮(幸太郎)くんの試合を見に行こうとしたことがあります。まぁ、満員で入れなかったんですが、それを取材に来ていた朝の情報番組のスタッフに見つかって、「中井さん撮らせてください!」なんて、すごく恥ずかしかった……そんな思い出です。
――皆様が力をもらえたり、励ましたりしてもらえると思う場所をお聞きしたいです。
山根:東京・日本橋にある小網神社です。関東大震災や東京大空襲でも被災しなかったと言われる「強運厄除」の神社として知られていて、運気を上げたいならここだよと教えていただいたんです。お参りをした後、そこから駅までの帰り道にマネージャーさんから「大きな仕事決まったよ」という電話がかかってきて!
山口:オーディションの時とかに行ったらいいのかな?
山根:効果あるかもしれませんね! え~、中井さん信じてない顔をされてる!
中井:そんなことないよ!
山根:とても驚いた体験だったので、力をもらえた場所として強く記憶に残っています。ほかのパワースポットでいうと、横浜みなとみらいですね。高校生の頃にアルバイトをしていた場所でもあります。すごく大変な仕事で疲れた~って思いながらぼーっとしていると、きれいな夜景に英気が養われる気持ちがするんですよね。
山口:僕はお寺かな。最寄り駅からお寺までの間に大きな木が立っていて。四季を感じられて好きだなーと思っていたんですが、ある日突然無くなっていて! その時にすごく寂しく悲しい気持ちになったんです。この木に結構思い入れがあったのかもしれない。
中井:気付かぬうちにってありますよね。
山口:僕は木や川とか、自然が好きなのかもしれないって思った。お寺や神社はよく役者さんたちは験担ぎで行ったりするよね。
中井:僕が元気が出るのは新幹線の新神戸駅。帰ってきたー! という実感が大きいです。ここは裏手がすぐ山になっていて、しばらく山道を進むと布引の滝という水辺があるんですが、そこのマイナスイオンが届いているんじゃないかなというような澄んだ空気を感じられます。
山口:なかなか山側へは行かないもんね。
中井:ちょっと覚悟を決めないといけないようなハイキングロードになっていますね。こんなところに新幹線の駅が!? と一見驚く駅なんですが、そこに着くと気持ちが清澄になるというか。帰ってきたときは安心するし、東京に向かうときは頑張ろうという気持ちになるし。そういう意味ですごくリセットされる場所です。「東京病」予防ですね。
中井和哉
――公演を観に来てくださる皆様にメッセージをお願いします。
山口:昨今は配信など観る方法はたくさんありますが、こういう舞台でやるものはやっぱり極力直接足を運んでもらって観てもらいたいですね。お客さんが入ることで、最終的に作品は完成するものだなと思っているので、場の空気感とかも楽しんでほしいです。ぜひぜひ劇場に遊びに来てください。
山根:まだ稽古前なので未知なところもありますが、登場人物一人一人のキャラクターが濃く、そうなるまでのそれぞれの人生や道のりを想像できるように描かれているかと思えます。きっと誰かには共感できるものがあるんじゃないかな。自分の物語とも重ねながら楽しんでください。
中井:大体出演者の顔ぶれを見ると、こういう雰囲気になるんだろうなというのが想像できると思うんです。でも今回はちょっとわからない、フレッシュな魅力にあふれている作品になるんじゃないかと想像しています。僕もどんなものになるんだろうなというワクワクがあります。ぜひ、新しいものに触れる気持ちで来ていただけるといいんじゃないかなと思います。お待ちしております。
――ありがとうございました。
今作は映像や生演奏を奏でる『VISIONARY READING』とのコラボレーションで、声優の芸術的な声との相乗効果も期待されるとのこと。また、鴨の音 第五夜『浅黄の桜-あさぎのさくら-』とのつながりもあるという。シリーズファンはもちろん、声優・俳優ファンにもその声と演技をじっくり堪能できる絶好の機会であること間違いなしだ。
『紫苑のもみじ』は7月17日(金)~19日(日)東京・日本青年館にて上演予定。
取材・文=松本裕美
公演情報
朗読劇『紫苑のもみじ』
2026年7⽉17⽇(金)〜7⽉19⽇(⽇) 計5公演
灯敦生
岡本昌也(AOI MANAGEMENT)
つつましく「応援席」から誰かを支える日々を送ってきた雨宮もみじだったが、結婚目前で彼氏の浮気が発覚してしまう。逃げるように実家へ帰省した彼女を待っていたのは、家族の温かい迎えと、亡き父・文吾の魂だった。しかし不思議なことに、周囲には届くその父の声が、なぜかもみじにだけは聞こえなくて……。家族や幼馴染の周太を巻き込んだ大騒動が幕を開ける。明治神宮外苑の美しい景色を舞台に、迷える大人たちが自分の足で一歩を踏み出す姿を描く、笑って泣ける家族と恋のエンターテインメント。
山根綺 佐藤流司
山口勝平 中井和哉 三石琴乃
伊藤かな恵 重松千晴 熊谷健太郎
日本青年館ホール
東京都新宿区霞ヶ丘町4-1
東京銀座線「外苑前駅」2b出口(徒歩5分)
S席:11,000円(税込)
A席:9,000円(税込)
※未就学児のご入場はお断りいたします。