フローレンス・ロード 幅広い音楽性と華やかなパフォーマンスを見せつけた、堂々の初来日単独公演レポート
フローレンス・ロード(Florence Road)
SUMMER SONIC EXTRA
2026.8.17(月) 代官山 SPACE ODD
いくら新世代のポップスターであるオリヴィア・ロドリゴ(Olivia Rodrigo)のツアーのオープニングアクトに抜擢されたとは言え、まだまだこれからの新人だ。単独ライブにどれだけの人が集まるんだろうと思いきや、8月17日(月)、『SUMMER SONIC EXTRA』として代官山SPACE ODDで開催されたワンマンライブで彼女たち――つまりフローレンス・ロード(Florence Road)を歓迎したのは、スタンディングのフロアを埋めた観客たちだった。
日本のファンの早耳に感心させられつつ、開演前からフロアに漂う熱気に胸が躍る。
フローレンス・ロードは2019年結成のアイルランドの女性4人組のロックバンドだ。
SNSにアップしたライブ動画やカバーを通して、早耳のリスナーの支持を集めたのち、2025年3月からオリジナル曲を次々とリリースして、さらに支持を広げてきた。その後、オリヴィア・ロドリゴのツアーでオープニングアクトに抜擢され、さらなる注目を集めたことは前述したとおり。そして、ブレイク必至の新人と期待されるようになった彼女たちはこの8月、『SUMMER SONIC』に出演するため、早くも初来日を実現させたわけだ。
その彼女たちのエクストラショウは、8月7日にリリースしたばかりの最新シングル「7563」からスタートした。リリー・アロン(Vo, Gt)がハイトーン交じりに歌い上げる裏でエマ・ブランドン(Gt)が奏でる不穏な単音フレーズが90’sグランジ/オルタナの影響を窺わせる。が、しかし、「Tokyo!!」とリリーが声を上げ、アルヴァ・バリー(Ba)がブギっぽいリズムを刻でんからの、ハンナ・ケリー(Dr)によるドラムの連打を含むいなたい展開が連想させたのは、案外、レトロなハードロックも好きなのかもという彼女たちのバックグラウンドに対する興味だった。
そして、その興味は観客の歓声と拍手の中、「日本で初めてのヘッドラインショウよ!」とリリーが言いながら、繋げた2曲目の「Storm Warnings」以降、どんどん膨らんでいった。なぜなら、その「Storm Warnings」は、まるでむせび泣いているようにエマが奏でるギターフレーズがフィドルの音色のように聴こえ、ムーディーな曲調にトラッドフォーキーなニュアンスを落とし込んだように感じられたからだ。続く「Heavy」はメランコリーとアンセミックな魅力が交錯するロックナンバーだが、ピアノバラードになる最後のサビもハンナがピアノを奏で、音源通りに見事再現してみせる。そして、そのまま繋げたピアノバラードの「Rabbits Can Swim」が、彼女たちが持つ曲の振り幅をさらに印象づける。
この日、彼女たちが演奏したのは、『Fall Back』と『Spring Forward』というこれまでリリースしてきた2枚のEPにライブ音源を加えた日本オリジナル企画盤『ビトウィーン・シーズンズ』からの10曲を軸にした全15曲。エキゾチックなメロディーが印象的な未音源化の「White Smile」といったグランジ/オルタナの影響がストレートに反映されたロックナンバーがある一方で、そこここにトラッドフォーキーなニュアンスが滲むのは、やはりアイルランドのバンドだからなのか。そう言えば、歌いながら声をしばしば裏返らせる歌唱法がエモーショナルな魅力に繋がるリリーのボーカルは、アイルランドの国民的人気バンド、クランベリーズ(The Cranberries)のドロレス・オリオーダンをちょっと連想させるところもある。
タイトルコールに観客たちが色めき立ったメランコリックなスローナンバー「Miss」のようにグランジ/オルタナの影響とトラッドフォーキーな魅力が絶妙に入り混じる曲もあるが、もちろん彼女たちの曲の振り幅はそれだけにとどまらない。
たとえば、敢えてギターを持たずに“Ahhh Ahhh”と歌いながら、リリーが観客と一緒に両手をアップダウンして一体感を作り出した、やはり未音源化の「Surprise Surprise」におけるパフォーマンスは、ポップシンガーのような華やかさが感じられ、見どころの一つになっていたと思う。ちなみに2ヵ月前のライブ動画ではギターを弾きながらだったから、どこかのタイミングでギターを持たずに大胆にパフォーマンスしたほうがいいと考えたようだ。
そんな華やかなパフォーマンスは、この日、最後の最後にハジけ、鮮烈な印象を残すのだが、前述の「Miss」から、リリーとエマがユニゾンでギターリフを奏でながらなだれこんだアンセミックなロックナンバー「No Better Woman」、ピアノバラードの「Caterpillar」、そしてエモーショナルに歌い上げる「Hanging Out To Dry」と曲の振り幅を見せつけるように曲を繋げ、観客の感情を揺さぶった終盤の展開もまた、大きな見どころだった。
そして、「大好き!」とリリーが日本語で言いながら、さらに「Goodnight」と「Break The Girl」の2曲を演奏したアンコール。
観客にハンドクラップを求め、それに応えた観客と再び一体感を作り上げたグルーヴィーな「Goodnight」もさることながら、それ以上に彼女たちのポップな魅力をダメ押しするようにアピールしたのが「Break The Girl」だった。
エレキから持ち替えたアコースティックギターで、エマがコードスロトロークを軽やかに鳴らしたポップナンバーは、声を上げながら手を振る観客が最後、マイク片手に華やかなパフォーマンスを繰り広げるリリーに促され、バンドとともに“La la la”とシンガロング。一夜限りのワンマンライブの最後を飾るにふさわしい大きな盛り上がりが生まれたのだった。
「大好き!」
再び日本語で叫んだリリーをはじめ、ステージの4人に観客が拍手喝采を送る。
フローレンス・ロードの初来日は、メンバーたちにとってもファンにとっても記憶に残るものになったに違いない。
90’sグランジ/オルタナをバックボーンにしながら、それだけにとどまらない幅広い音楽性を持ち、華やかなパフォーマンスができることを見せつけた堂々のステージだった。
取材・文=山口智男 撮影=岸田哲平
リリース情報
2026 年8月5日(水)発売
品番:WPCR-18850 税込価格:¥3,410 税抜価格:¥3,100
<収録曲>
01. Hanging Out To Dry / ハンギング・アウト・トゥ・ドライ
02. Miss / ミス
03. Rabbits Can Swim / ラビッツ・キャン・スウィム
04. Storm Warnings / ストーム・ウォーニングス
05. Break The Girl / ブレイク・ザ・ガール
06. Hand Me Downs / ハンド・ミー・ダウンズ
07. Goodnight / グッドナイト
08. Caterpillar / キャタピラー
09. Figure It Out / フィギュア・イット・アウト
10. Heavy / ヘヴィ
11. Hanging Out To Dry (Dublin Version) / ハンギング・アウト・トゥ・ドライ(ダブリン・ヴァージョン)
12. Miss (Live from the Bus) / ミス(ライヴ・フロム・ザ・バス)
13. Storm Warnings (Dublin Version) / ストーム・ウォーニングス(ダブリン・ヴァージョン)